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資源エネルギー庁では、エネルギーの需給に関しておこなった施策について国会に年次報告を提出しています。これに基づいて、毎年発行されるのが「エネルギー白書」です。エネルギーに関する取り組みや政策、今後の方向性などがまとめられ、エネルギーについて知るには欠かせない資料となっています。2020年6月5日に公開された「エネルギー白書2020」から、その読みどころをお伝えします。
エネルギー白書は、その年のエネルギーをめぐる状況と主な対策をまとめたものです。2年前に当たる2018年のエネルギー白書では、中長期的な日本のエネルギー施策の基本方針を示した「エネルギー基本計画」の見直しに向けて、日本を取り巻くエネルギー情勢の変化や、今後の課題を中心に解説しました。(「2018年の『エネルギー白書』からエネルギーの『今』を読み解く」参照)。この年のエネルギー白書でも取り上げられていた地球温暖化対策を、より大きなトピックとして取り上げたのが2019年のエネルギー白書でした。パリ協定をふまえて、温室効果ガス(GHG)削減目標に向けて取り組んでいる日本のエネルギー政策や、その進捗状況などを報告しています。また、2011年の東日本大震災と東京電力福島第一原子力発電所の事故について、その対策と復興の状況について解説しているほか、近年目立ってきた自然災害に対する対応と「レジリエンス(強じん性)」の重要性についても取り上げています。(「『エネルギー白書2019』で、災害や地球温暖化に向けた日本のエネルギー政策がわかる!」参照)。こうした流れを受けて作成された「エネルギー白書2020」は、基本的にこれまでのトピックを受け継ぎながら、福島の復興・再生に向けた取り組みや、激変する国際資源情勢や自然災害など日本を取り巻くさまざまなリスクに対応する、強じんなエネルギーシステムづくり、温暖化対策へのさらなる対応についてデータを交えながら取り上げており、現在進行形の政策や国際戦略なども紹介しています。
それでは、「エネルギー白書2020」の主なトピックについて見ていきましょう。
福島の復興・再生に向けた取り組みは、前回の白書でも大きなトピックとなっていました。2019年までに、汚染水対策として「凍土壁」を築いて地下水を遮断する方法が明確な効果をあげ、汚染水の発生が事故発生当時より1万分の1以下へ減少していることが確認されています。また、3号機では2019年4月から燃料の取り出しが始まり、2号機では内部調査が進んでいます。今後も廃炉に向けた具体的なアクションが実行されていく計画です。
新たな動きとしては、2020年3月、「帰還困難区域」としては初めて、双葉町・大熊町・富岡町の一部地域の避難指示が解除されました。帰還困難区域以外のすべての地域の避難指示も解除されており、今後は2022年および2023年の「特定復興再生拠点区域」全域の避難指示解除を目指して、帰還環境を整備していきます。また、地域産業回復のための取り組みである「福島イノベーション・コースト構想」では、フィールドロボットの研究開発・実証試験のための「福島ロボットテストフィールド」が2020年3月に全面開所しています。同じく20年3月には、福島を新エネルギーのモデル拠点とする「福島新エネ社会構想」のもと、「福島水素エネルギー研究フィールド」が開所しました。
世界のエネルギー情勢の将来像は不確実性を増し、国際情勢に左右されやすい原油などのエネルギー資源は、価格や市場の動きがより不安定になっています。一方で、これから成長が拡大する新興国では、エネルギー需要が大きく伸びていくと考えられます。今年は新型コロナウイルスによる影響もあり、エネルギー資源を輸入にたよる日本はさまざまな側面で備える必要があります。
災害・地政学リスクを踏まえた「国際資源戦略」としては、燃料調達先を中東以外の国々へ多角化するとともに、アジア全域での協力関係を深めていくことも課題となります。アジアや産油国と燃料備蓄の協力をおこない、国際的な液化天然ガス(LNG)市場を拡大させて、アジア全体でのエネルギーセキュリティの強化を目指すことが紹介されています。国内に目を移すと、近年目立つのが災害によるリスクです。2018~19年は、地震や台風などの自然災害により大規模停電や、ガス・燃料の供給がストップする被害がもたらされました。災害に強いエネルギーシステムをつくり出すには、これまでの仕組みを変えていく必要性があります。
持続可能な電力システムをつくるために有効な方法として、電源(電気をつくる方法)を大規模集中型に限らず、太陽光発電や風力発電などの「分散型電源」を組み合わせていくという考え方があります。また、電気自動車や蓄電池など蓄電の機能をもつ機器を活用して、需要が高まった場合には貯めた電気を電力系統に流すといった、“電気の双方向化”などが紹介されています。一方、地域間をつないで電気を融通し合う「連系線」をさらに増強するなど、電力ネットワークの改革も課題となります。次世代型の電力ネットワークは再生可能エネルギーを主力電源化するためにも重要で、高度なデジタル技術の導入により、他業種を巻き込んだ新ビジネスの可能性も期待されています。
2020年以降の地球温暖化対策に関する国際的枠組み「パリ協定」が、いよいよ今年から運用されることになりました。
温暖化をめぐる動きは、先進国でCO2の排出削減が進む一方で、新興国では増加しており、世界全体で見ると減少していません。世界のGHGを実質的に削減するためには、新たな視点での対応が必要とされています。エネルギー白書2020では、気候変動対策やイノベーションに取り組む企業を支援するため、エネルギーファイナンスの重要性や、世界の産業界・金融界のトップを集めた「TCFDサミット」などの具体的な動きを紹介しています。また2020年1月に策定された「革新的環境イノベーション戦略」のもと、GHG削減につながる多彩な戦略に取り組んでいくことを報告しています。
災害や地政学的なリスクに対応してエネルギーレジリエンスを高めるには、さまざまな政策や制度を運用していく必要がありますが、それらを支えるのが各種の法律です。エネルギー白書2020の中ではエネルギー供給強靱化法案として、「電気事業法」、「電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法(再エネ特措法)」、「独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構法(JOGMEC法)」を一部改正することが記載されています。これらの法改正は、日本のエネルギー政策のこれから、日本の社会のこれからをつくることにもなります。この法改正については、スペシャルコンテンツで今後わかりやすくご紹介する予定です。みなさんも、これからの社会づくりにつながるエネルギーの問題を、「エネルギー白書2020」を読んで考えてみませんか?
長官官房 総務課 調査広報室
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