エネルギーに関するさまざまな動きの今がわかる!「エネルギー白書2024」

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エネルギーをめぐる国内外の状況は、刻一刻と変化しています。そんなエネルギーの「今」を一冊にまとめ、その年のエネルギーを取り巻く動向や、日本の取り組み、今後の方針などを紹介しているのが「エネルギー白書」です。この1年、エネルギーはどのような状況にあったのでしょうか?2024年6月に公開された「エネルギー白書2024」のポイントをお伝えします。

この1年の、エネルギーを取り巻く状況は?

「エネルギー白書2024」は3部構成となっており、第1部はエネルギーを取り巻く動向をふまえた分析、第2部は国内外のエネルギーに関するデータ、第3部はエネルギーに関する政策がまとめられています。

今回第1部で取り上げられているのは、福島復興の進捗、「カーボンニュートラル」と「エネルギーセキュリティ」、そしてカーボンニュートラル実現のためにクリーンエネルギーを中心とした社会へと変革する「GX」(グリーントランスフォーメーション)に関するトピックです。各トピックの主なポイントをご紹介しましょう。

「エネルギー白書2024」のポイント

①福島復興の進捗

「エネルギー白書」で例年取り上げている、福島の復興に関するトピック。2011年の東日本大震災と東京電力福島第一原子力発電所(福島第一原発)の事故の発生から、2024年で13年が経ちました。福島の復興にはまだ多くの課題が残されているものの、一歩一歩着実に進展しています。

2023年8月には、大きな出来事がありました。廃炉を着実に進め、福島の復興を実現するためには、決して先送りにできない課題である「ALPS処理水」の海洋放出の開始です。ALPS処理水とは、福島第一原発で発生している汚染水を浄化処理し、「トリチウム」以外の放射性物質について安全基準を満たすまで浄化した水のことを指します。

ALPS処理水とは
ALPS処理水とは何か、汚染水の発生時点からALPS処理を経て処理水となるまでの流れとともに示しています。

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海洋放出にあたっては、トリチウム以外の放射性物質について、ALPS(多核種除去設備)で安全基準を満たすまで浄化した上で、残るトリチウムについても、安全基準を大幅に下回るまで海水で薄められています。海洋放出は、これらの放射性物質が安全基準を下回っていることを確認した上で実施されるため、環境や人体への影響は考えられません。

海洋放出されるALPS処理水のトリチウム濃度
ALPS処理水を海洋放出する際のトリチウム濃度が1,500ベクトル/L未満と安全基準を大幅に下回っていることを、国の安全基準が60,000ベクレル/L、WHO飲料水基準が10,000ベクレル/Lと比較して示しています。

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海洋放出の前後には、東京電力・福島県・環境省・原子力規制委員会・水産庁などによる海水や魚類などのモニタリングが実施されており、その結果、これまで計画どおり、安全に放出がおこなわれていることが確認されています。このモニタリング結果は、Webサイトなどで国内外に発信されています。

また、国際原子力機関(IAEA)による安全性のレビューもおこなわれ、ALPS処理水に関わる取り組みは「国際安全基準に合致している」という結論が出されました。また、欧米など各国でも、海洋放出に対する理解が広がっています。

さらに、日本では官民が協力し、水産物の消費拡大を図る取り組みも各地で展開しています。

海洋放出に対する海外からの反応例
ALPS処理水の海洋放出に対する米国・欧州・太平洋島嶼国からの反応例について、箇条書きにしてまとめています。

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国内水産物の消費拡大に向けた取り組みの例
岸田総理や齋藤大臣が食べて応援した事例、岩田副大臣が出席したイベント事例、ホタテを用いた学校給食事例を写真付きでまとめています。

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また、福島では、将来にわたって居住を制限するとされてきた「帰還困難区域」のうち、「特定復興再生拠点区域」の避難指示を、2023年11月までにすべて解除しました。

加えて、2020年代をかけて、帰還意向のあるすべての住民が帰還できるよう、避難指示解除の取り組みを進めていく「特定帰還居住区域制度」を2023年6月に創設し、計画の認定などを進めており、今後、除染やインフラ整備などがおこなわれます。

避難指示の解除状況
2013年8月・2023年11月・2024年2月の福島県の帰還困難区域における避難解除の変遷を、地図上で特定復興再生拠点区域・特定帰還居住区域制度を示しながら表しています。

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さらに、福島では、浜通り地域などにおける新産業の創出を目指す「福島イノベーション・コースト構想」をはじめ、復興に向けたさまざまな取り組みが進められています。

「福島イノベーション・コースト構想」の6つの重点分野
6つの重点分野である「廃炉」「エネルギー・環境・リサイクル」「医療関連」「ロボット・ドローン」「農林水産業」「航空宇宙」の詳細をまとめています。

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②カーボンニュートラルと両立したエネルギーセキュリティの確保

2022年はロシアによるウクライナ侵略が発生し、「エネルギーセキュリティ」の重要性が世界中で再認識されましたが、2023年には中東情勢の悪化なども生じ、エネルギーを巡る不確実性が増加することとなりました。紛争や気象の影響により、海上交通において重要な地点である紅海やパナマ運河を航行する船の数(通航量)も大幅に減少していることで、エネルギー安定供給への懸念も生じており、サプライチェーン全体でのセキュリティ確保がますます重要な課題となっています。

エネルギーを巡る不確実性の増加に関する主な事象
2022年~2023年に世界で起こったエネルギーをめぐる不確実性の増加に関する事象を世界地図の上でまとめ、特に輸送距離・コスト増加となった航路の変更などへの影響を示しています。

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紅海(スエズ運河)・喜望峰の通航船舶数
2022年4月~2024年4月の紅海(スエズ運河)・喜望峰の通航船舶数を折れ線グラフでまとめ、紛争や気象の影響により、紅海の通行数は5割減少、航路変更で+7,000km、+約10日となった旨示しています。

(出典)PortWatch

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パナマ運河の通航船舶数
2022年4月~2024年4月のパナマ運河の通航船舶を折れ線グラフでまとめ、2023年10月頃から4割減少、通過のために数週間待機という事例も発生した旨紹介しています。

(出典)PortWatch

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こうした状況もあり、石炭や天然ガスの市場価格は2022年の急騰時の水準からは下落したものの、いまだ2010年代後半にくらべて2~3倍の水準となっています。

石炭の市場価格の推移
2015年~2024年における南ア一般炭と豪州一般炭の市場価格の推移を折れ線グラフでまとめ、2010年代後半と比べ、豪州一般炭の値段が2~3倍程度の水準が続いていることを表しています。

(出典)The World Bank「Commodity Markets」

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天然ガス・LNGのスポット市場価格の推移
2015年~2024年におけるTTF(欧州)とJKM(アジア)の市場価格の推移を折れ線グラフでまとめ、2010年代後半と比べ、値段が2~3倍程度の水準が続いていることを表しています。

(出典)S&P Global Plattsなど

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世界の半分以上の石炭を生産・消費する中国による石炭輸入も2023年に増加するなど、燃料価格の今後の見通しはいぜん不透明な状況です。

また、カーボンニュートラルを目指す取り組みが世界的に進んでいることで、LNGなどの上流部門に対する投資が減少しているといった課題が生じていることに加えて、「GX」×「DX(デジタルトランスフォーメーション)」の進展により日本の今後の電力需要が増える可能性も指摘されているなど、日本のエネルギーに影響を与えうる「変数」も増加しています。

電力広域的運営推進機関による日本の今後の電力需要の見通し
2012年度~2023年度までの各年の電力需要の推移を折れ線グラフで示し、2023年まではテレワーク率減少・節電・省エネにより需要が減少トレンドにあったものの、2028年のデータセンター・半導体工場の新増設等の予定などもあり今後は増えると見込まれていることを示しています。

(出典)電力広域的運営推進機関「全国及び供給区域ごとの需要想定(2024年度)」

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さらに、日本では「円安」の問題があります。燃料価格高騰×円安によって、石油や石炭などの化石燃料の輸入額は2年間で22兆円以上も増加し、2022年には過去最大の貿易赤字(年間20兆円超)を記録しました。

日本の化石燃料の輸入金額の推移
2011年~2023年の日本の化石燃料の輸入量を棒グラフで、輸入金額を折れ線グラフで表し、燃料価格高騰×円安により、2020年から2022年の2年で22.4兆円輸入金額が増加したこと示しています。

(出典)財務省「貿易統計」

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日本の貿易収支の推移
2000年~2023年の食料品・化学燃料・原料品・化学製品など9品目の貿易収支を棒グラフで示し、合計を折れ線グラフで示しています。特に化学燃料輸入額の増加などにより、2022年は過去最大の貿易赤字となったことを示しています。

(出典)財務省「貿易統計」

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エネルギー自給率がわずか12.6%(2022年度)の日本。エネルギーの大半を海外に頼る構造が続く限り、日本は今後も価格高騰などのリスクにさらされ続けます。エネルギーをめぐる不確実性が高まる中で、このようなリスクを根本的に解決するには、徹底した省エネや、脱炭素エネルギーへの投資促進策などを通じて、エネルギー危機に強い需給構造へと転換することがきわめて重要となっています。

③GX・カーボンニュートラルの実現に向けた課題と対応

最後は、「GX」・「カーボンニュートラル」に関するトピック。カーボンニュートラルに向けた取り組みが世界中で進められていますが、世界全体の温室効果ガス(GHG)排出量は、途上国(非OECD)の排出増加により増加しています。なお、日本は世界全体の3%を排出していますが、2030年度の46%削減目標(2013年度比)に向けて、着実に削減が進捗しています。

世界のエネルギー起源CO2排出量の推移
1990年~2021年における、OECD・非OECDのCO2排出量を棒グラフで示し、OECDは1990年から2%減少している一方、非OECDは1990年の2.5倍に成長している旨示しています。

(出典)IEA「CO2 Emissions from Fuel Combustion」

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世界のエネルギー起源CO2排出割合(2021年)
中国・米国・EU・インド・ロシア・日本・その他の世界各国のエネルギー起源CO2排出割合を円グラフで示しています。

(出典)IEA「CO2 Emissions from Fuel Combustion」

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日本の温室効果ガス排出・吸収量の推移
2013年度~2022年度の排出量・吸収量を棒グラフに、排出・吸収量を折れ線グラフで示しているとともに、2050年度カーボンニュートラルに向けた2022年度実績、2030年度目標を記載しています。

(出典)環境省

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2023年11月~12月に開催されたCOP28では、世界全体の脱炭素の取り組みの進捗についての確認がおこなわれ、「世界の気温上昇を1.5度に抑えるという目標まで隔たりがある(オントラックではない)」という評価がおこなわれています。

こうした中、化石エネルギーを中心とした産業構造・社会構造を変革し、CO2を排出しないクリーンエネルギー中心へと転換する「GX」に向けた取り組みが世界中で加速しています。

日本では、2023年7月に「GX推進戦略」を策定しました。さらに同年12月には「分野別投資戦略」をとりまとめ、官民によるGX実現に向けた投資促進策は、“実行”フェーズへと突入しています。脱炭素化がむずかしい分野におけるGXの推進に向けて、クリーンエネルギーとして期待される低炭素な「水素等」の供給・利用を進めるための法律や、CO2を分離・回収して地中に貯留する「CCS」事業を開始するための法律も、2024年5月に成立しています。

水素等やCCSの導入に向けた取り組み
水素等やCCSの導入に向けた取り組みについて、背景とともに箇条書きでまとめています。

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カーボンニュートラルに向けた国際的な動きにも、注目すべき点がありました。COP28の決定文書では、「世界全体で再生可能エネルギー(再エネ)発電容量を3倍に、エネルギー効率改善率を2倍にする」ことが記載されたほか、気候変動対策として「原子力」が初めて明記されました。さらに、有志国による「原子力3倍宣言」も発出され、2024年1月時点で日本を含む25カ国が賛同しています。日本には、原子力利用を拡大したいと望む国々に対する技術・人材などの支援や、サプライチェーンへの協力が期待されています。

日本では、水素等やCCUSなどのさまざまな技術を用いてGXの実現を目指しています。こうした技術は、成長がいちじるしいことに加え、エネルギーを化石燃料に依存しているアジアのGXにもつながります。日本が2022年に構想を提唱し、2023年12月には首脳会合が開催された「アジア・ゼロエミッション共同体(AZEC)」の取り組みは、日本のGXの取り組みとアジアのGXをつなぐ架け橋となるものです。日本は、こうしたGX技術などを通じて、アジアのGX、ひいては世界のGXに貢献することを目指しています。

多様化・複雑化するエネルギーの話題をこの一冊で学ぶ

「エネルギー白書2024」では、これらのトピック以外にもエネルギーに関するさまざまなデータや施策について学ぶことができます。
エネルギーの「今」を知り、「これから」を考えるためにも、ぜひ「エネルギー白書2024」にアクセスしてみてください。

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長官官房 総務課 調査広報室

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