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いま、世界では原油の価格が大幅に下がっています。日常生活の中でも、「ガソリンの価格が安くなっているな」などと感じられるのではないでしょうか。日本のような原油消費国にとって、原油価格が下がるのはよい面もありますが、産油国にとっては、経済状態を悪化させ、国際経済にも影響をおよぼすこともあります。そこでエネルギー市場の安定化に向けて、2020年4月10日、「G20臨時エネルギー大臣会合」がオンラインで開かれました。今回は、なぜ原油の価格が下がっているのか、また各国間でどのような協議が行われたのかについてお伝えします 。
原油価格は、3月はじめには1バレル50ドル前後で取引されていましたが、その後、20ドル前後に急落しました。価格が下がっている大きな理由のひとつは、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大です。各国の主要都市はあいついで封鎖され、人の移動が禁止されたり自粛が求められたりしています。それによって車の通行量が減り、飛行機が減便され、工場は稼働しないところが出てきています。そのため、石油が使われなくなっているのです。
原油価格の下落
(出典)Chicago Mercantile Exchange
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通常、原油は世界で1日に1億バレルほど消費されていますが、国際エネルギー機関(IEA)の報告によれば、4月は、前年比で1日2900万バレル程度消費量が減っているとされています。余剰分については、各国でタンカーやパイプライン、貯蔵用タンクなどに貯めてしのいでいますが、この状態が続けば、貯蔵スペースがなくなるのも時間の問題です。特に、4月20日には、アメリカで生産されている原油であるWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)を貯蔵するスペースが少なくなっていることを背景に、WTIの原油価格がマイナスになりました。
原油の需給バランス
(出典)IEA Oil Market Report :15 April 2020
こうした原油価格の下落のもっとも大きな理由は、新型コロナウイルスの感染拡大による経済活動の停滞ですが、産油国の間の複雑な国際事情もあります。ご存知のとおり、産油国の利益を守る国際的な枠組みとして設立された石油輸出国機構(OPEC)は、中東の産油国を中心に構成されています。しかし時代を経るにつれ、ロシアなどOPEC非加盟の産油国を加えた枠組みが必要となり、「OPECプラス」が誕生します。OPECプラスでは、2016年ごろから、国際的な原油の需要減少への対応として、減産に向けた調整がおこなわれていました。ところが、2020年3月、コロナウイルス感染拡大による影響を受けて追加減産の提案をしたサウジアラビアと、それを拒否したロシアが対立。さらに、サウジアラビアは逆に増産を表明しました。これを受け、3月初旬に原油価格は大きく下落しました。このように、とくに生産量の多い産油国であり、「OPECプラス」の軸となっているサウジアラビア、ロシアの行動は、国際原油市場の動向に大きな影響を与えます。それに加えて、近年では米国の存在が大きくなっています。米国は2000年代後半の「シェール革命」(「2018年5月、『シェール革命』が産んだ天然ガスが日本にも到来」 参照)によって、今や、サウジアラビア、ロシアを抜いて世界最大の産油国となっているのです。
世界三大産油国の一日当たりの原油生産量(2014年1月~2020年1月)
そこで、2020年4月10日、サウジアラビア、ロシア、米国3カ国や主要な消費国が加盟している枠組みであるG20の場で、原油市場の安定化について話し合うため、議長国であるサウジアラビアの呼びかけによって、「G20臨時エネルギー大臣会合」が開催されました。会合はテレビ会議形式で行われ、日本からは梶山経済産業大臣が参加しました。
会合では、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、エネルギー市場の安定化と、世界経済の強化に向けた協力を促進することについて話し合われました。梶山大臣からは、以下の3点が指摘・提案されました。
原油の価格が不安定になると、企業は事業計画を立てにくくなり、経済状態も不安定になります。また、原油価格の下落は、産油国の経済状態を悪化させるだけでなく、エネルギー投資の停滞を通じてエネルギー市場の不安定化を引き起こすため、長期的には日本経済にも悪影響を及ぼします。原油市場の安定化は、生産国・消費国双方にとって非常に重要なのです。また、最近では中東地域にも新型コロナウイルスの感染が拡大しつつあります。今後ウイルスの感染がさらに広がり、原油の生産にかかわる人々が業務につけなくなった場合、生産量が大幅に落ち込む可能性も否定できません。そうした事態を避けるためにも、G20はじめ各国の感染防止にかかわる事例や知見を互いに共有しながら、対策をしっかり取り、エネルギーの供給が絶えないようにすることが重要なのです。今回の会合では、閣僚声明として以下の内容が合意されました。
G20には、産油国だけでなく、日本や中国などの消費国も参加しています。今回の会合では、産油国・消費国が同時に話し合いの場を持ち、以上の内容について合意したことに大きな意義があります。この会合ののち、4月13日には、OPECプラスが世界の原油生産の1割に当たる1日970万バレルの協調減産をすることで合意しました。米国もこれに協力し、5月1日から2カ月の期間で、減産がおこなわれる予定です。今後も引き続き、市場の安定化やエネルギー安全保障強化の観点から、G20としての連携を強化していきます。
長官官房 国際課資源・燃料部 政策課
長官官房 総務課 調査広報室
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