“エネルギー業界ではたらく”ってどうなの?「エネキャリ」でわかるキャリアの今とリアル
私たちの生活になくてはならないエネルギー。毎日スイッチを押せば電気がつき、ガスでお湯が沸き、海外でつくられた商品が船や飛行機、トラックで運ばれて手元に届く…そんな日常が当たり前になっていますが、その裏には、エネルギー情勢がどんなに変わってもエネルギーを安定して供給できるよう奔走する、たくさんの人たちがいます。そんなエネルギー業界の人々の働きぶりを、ちょっとのぞいてみたいと思いませんか?「エネキャリ」は、未来のエネルギー業界を担う学生の皆さんに、業界の状況や、未来へ向けた挑戦、そこではたらく人の本音など、エネルギー業界ではたらくリアルをお届けする、資源エネルギー庁の取り組みです。今回は、その具体的な内容を、2024年度の活動内容とともにご紹介します。
エネルギー業界を担う次世代のイノベーターを育成する「エネキャリ」
エネルギーは生活や経済活動に欠かせないものですが、さまざまな国際情勢や社会情勢に影響を受けます。たとえば、①エネルギーの安定供給の確保が経済安全保障上の観点からますます重要になっていること、②「DX」や「GX」の進展で電力需要の増加が見込まれること、③各国でカーボンニュートラル実現に向けた野心的な目標を維持しつつ、多様かつ現実的なアプローチが拡大していること、④世界でエネルギー構造転換を経済成長につなげるための産業政策が強化されていることなどです。こうした日本を取り巻くエネルギー情勢をふまえて、エネルギー政策の基本的な方向性を記した「第7次エネルギー基本計画」(2025年2月閣議決定)は策定されました。
こうした不透明な状況が続く中、エネルギーを安定供給していくには、さまざまな取り組みが必要となります。特に、日本は石油・天然ガスなどのエネルギー資源の多くを輸入に依存しているため、資源開発をおこなう上流から参画し権益を確保する、供給源を多角化するといった取り組みをおこなうとともに、特定のエネルギー源に依存しないことも重要です。同時に、カーボンニュートラル実現に向けて、低炭素な燃料である「バイオ燃料」や「合成燃料」といった次世代燃料のサプライチェーンの構築・強化を進め、製造技術開発へのチャレンジも必要となっています。
ところが、いま日本では、上流開発をになう人材を育成する大学学部や講座が減少傾向にあります。くわえて、石油・石炭・天然ガスといった化石燃料に関する産業について、世界的な脱炭素の流れの中で、将来性を疑問視する声も聞かれます。しかし、日本のエネルギー安定供給を確保し、同時にカーボンニュートラル実現に向けエネルギー・産業部門の構造転換、大胆な投資によるイノベーションの創出を起こしていくためには、化石燃料や次世代燃料をはじめ多様なエネルギー資源の開発と確保にかかわる優秀な人材が不可欠です。
「エネキャリ(Energy Career Academy)」は、こうしたエネルギー業界をになう人材を確保すべく、未来のエネルギー業界を支える大学生・大学院生などを対象に、エネルギー業界を巡る最新動向や政策、この業界ではたらくことの魅力について幅広く学ぶ機会を、キャリアフォーラムやフィールドワーク、webサイトを通じて提供しています。
特に、エネルギー業界を「就職先」として考えている学生の皆さんが気になる、仕事のやりがいやキャリア形成、そして待遇面まで、実際に働いている方から、リアルな声を聞くことができます。
フォーラムや現場視察でエネルギー業界のリアルに出会える、「エネキャリ」のプログラム
「エネキャリ」は2023年度から2年連続で実施し、多くの学生が参加しています。
第2回(2024年度)のプログラムは、「キャリアフォーラム」「フィールドワーク」の2つ。それぞれのプログラムを簡単にご紹介しましょう。
エネルギー事業に関わる先輩たちの生の声を聞ける「キャリアフォーラム」
「キャリアフォーラム」は2025年3月1日(土)、都内の会場で開催され、16人のオフライン参加者、46人のオンライン参加者、計62人の学生が参加しました。
当日はまず、上流開発をけん引する企業の代表や、エネルギー安定供給を支えるべく資源開発を支援する資源エネルギー庁職員による3本の基調講演を開催。海外の資源開発の現場や、国際情勢などエネルギーを取り巻く現状、「2050年カーボンニュートラル」へ向けた次世代燃料の取り組みなどが紹介されました。エネルギーの安定供給と脱炭素を両輪で進めることの重要性、そこに挑む人々の想いなどが語られ、世界をまたにかけるエネルギー業界の圧倒的な規模感やイノベーションのポテンシャル、エネルギーを通じた社会問題解決の道筋が実感できる内容でした。
基調講演の1つを担当した、エネルギー資源開発連盟中原俊也会長(ENEOS Xplora株式会社代表取締役社長)
キャリアフォーラムの様子
その後、エネルギー関連企業の中堅社員によるパネルディスカッションが実施されました。「文系は活躍できるのか」「福利厚生や働きやすさは」「待遇は」といった気になるテーマで各社の様子が語られ、“勤め先”として具体的にイメージするための、さまざまな情報が得られる時間となりました。
開催後には、「リアルなお話を聞くことができ、業界への理解・志望度が高まった」「事業規模の大きさ、社会に与える影響の大きさ、安定供給、脱炭素化などエネルギー業界ではたらく魅力をより深く知ることができた」など、より具体的なイメージを持てたという感想も多く寄せられました。
パネルディスカッションの様子
エネルギーの現場を自分の目で見て確かめる「フィールドワーク」
「フィールドワーク」は、2025年3月8日・9日の2日間にわたりおこなわれ、エネルギー業界を志望する16人の学生の皆さんとともに、新潟県柏崎市にある株式会社INPEXの「ブルー水素・アンモニア実証試験プラント」および、独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構(JOGMEC)の「柏崎テストフィールド」をおとずれました。
水素・アンモニアは、利用時にCO2を発生しないクリーンな二次エネルギーとして期待されています。この実証試験プラントでは、その製造から利用まで一貫して実施する、国内初のプロジェクトを進めています。建設中の年間700トン規模の水素を製造する設備はもちろん、水素製造時に発生するCO2の分離・回収設備、CO2の地下圧入設備、アンモニア製造・貯蔵・出荷設備など、さまざまな革新的技術を使った設備が組み合わされています。先進的なプラントを実際に自分の目で見ることができ、参加した学生の皆さんも興奮を隠せない様子でした。
INPEX「ブルー水素・アンモニア実証試験プラント」の建設現場を見学する様子
2日目は、広大な敷地を活用し、エネルギー資源を開発するための技術開発に取り組むJOGMECの「柏崎テストフィールド」を訪問。シミュレーターを用いて、地下にあるエネルギーを掘る掘削体験をしたり、地質調査などで使用する機械を見学したりと、さまざまな最先端の技術に実際に触れ、より仕事のイメージを具体化できた様子でした。
掘削機器のシミュレーターを操作する様子
2施設の見学のあとは、見学・インプットに終わらせず、よりエネルギー事情を自分ゴトとして落とし込むためのワークショップがスタート。これからの電源構成(再エネ、原子力、火力などのエネルギー源の割合)がどうあるべきかを班ごとに考え、意見を交わしました。カーボンニュートラルを目指すには、再生可能エネルギーや原子力などの脱炭素電源を拡大することが重要ですが、エネルギー安定供給を実現するには、調整力をもった火力発電も必要不可欠となるため、燃料である化石燃料の確保や、CO2排出量低減に役立つ次世代エネルギー燃料の開発・実証を同時に進めなくてはなりません。そのような事情をふまえながら、どのような電源構成が最適なのかを参加者の皆さんで考えました。
2施設の見学で得られた学びを活かして、これからのエネルギーのあり方をディスカッション
終了後の参加者アンケートでは、「現場でしか得られない臨場感や新技術実験の実情など、参加しなければ得られない経験をたくさんできた」などのフィールドワークへの満足の声や、「ワークショップを通じて、エネルギー業界の課題や将来の展望について深く考える機会を得ることができた」など、エネルギーの未来を自分ごととして考えられることができたという声も見られました。
2025年度もエネルギー業界の魅力を伝える「エネキャリ」の企画を進行中!
今回ご紹介したプログラムの様子は、「エネキャリ」のwebサイトで、動画で公開しています。また、2023年度のエネキャリのレポートも公開しています。エネルギー業界に関心がある方は、ぜひ一度ご覧ください。
2025年度も、エネルギー業界ではたらくことの魅力を知っていただくために、さまざまな企画を検討しています。最新情報は「エネキャリ」webサイトでお知らせしますので、ぜひ定期的にチェックしてみてください!
お問合せ先
記事内容について
資源燃料部 資源開発課
スペシャルコンテンツについて
長官官房 総務課 調査広報室
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