2025—日本が抱えているエネルギー問題(前編)
日本のエネルギー政策やエネルギーに関する各種統計データ、エネルギー関連技術などを分かりやすくまとめたパンフレット「日本のエネルギー」を2026年2月に発行しました。この内容を2回に分けてご紹介します。
「S+3E(エス プラス スリーイー)」の大原則
日本のエネルギー政策のもっとも重要な点は、安全性(Safety)の確保を大前提に、エネルギー安定供給(Energy Security)を第一として、経済効率性の向上(Economic Efficiency)と環境への適合(Environment)を図る「S+3Eの大原則」です。日本は、すぐに使える資源に乏しく、国土が山と深い海に囲まれているという地理的制約を抱えています。エネルギーの安定供給と脱炭素(CO2を含む温室効果ガスの排出を削減すること)を両立するためには、太陽光発電や風力発電などといった再生可能エネルギー(再エネ)を主力電源(電気をつくる方法)として最大限導入するとともに、特定の電源や燃料源に過度に依存しないようバランスのとれた電源構成を目指す必要があります。
2040年度におけるエネルギー需給の見通し、いわゆる「エネルギーミックス」にも、「S+3E」の大原則が反映されています。この2040年度エネルギー需給見通しを実現するためには、化石エネルギーへの過度な依存からの脱却を目指し、需要サイドにおける徹底した省エネルギーや製造業などでの燃料転換などを進めるとともに、供給サイドでは、再エネ、原子力などのエネルギー安全保障に寄与し、脱炭素効果の高い電源を最大限活用する必要があります。
エネルギー需給の見通し(イメージ)
(注)左のグラフは最終エネルギー消費量、右のグラフは発電電力量であり、送配電損失量と所内電力量を差し引いたものが電力需要。
出典:総合エネルギー統計(2024年度速報)、2040年度におけるエネルギー需給の見通しを元に資源エネルギー庁作成
これまでは、人口減少や節電・省エネルギーなどにより家庭部門の電力需要は減少傾向でしたが、足元では増加に転じ、今後もAIの活用に伴うデータセンターや半導体工場の新増設などによる産業部門の電力需要の増加により、省エネなどの進展を考慮しても、全体として電力需要は増加すると見込まれます。
※現時点でのデータセンター・半導体工場の申込状況をもとに想定、将来の新増設申込の動向により変わる可能性がある。
出典:電力広域的運営推進機関HP2026年度 全国及び供給区域ごとの需要想定について
安定供給への取り組み
エネルギー資源の乏しい日本では、そのほとんどを輸入に頼っています。2024年度のエネルギー自給率は16.4%で、東日本大震災前の2010年度の20.2%よりも低い水準にあります。
日本のエネルギー自給率の推移
出典:資源エネルギー庁「総合エネルギー統計」の2024年度速報値
※一次エネルギー:石油、天然ガス、石炭、原子力、太陽光、風力などのエネルギーのもともとの形態
※エネルギー自給率:国民生活や経済活動に必要な一次エネルギーのうち、自国内で産出・確保できる比率
2023年における日本のエネルギー自給率は、他のOECD(経済協力開発機構)諸国とくらべても低い水準です(
日本のエネルギー自給率は1割ってホント?参照)。
主要国の一次エネルギー自給率比較(2023年)
出典:IEA「World Energy Balances 2025」の2023年推計値、日本のみ資源エネルギー庁「総合エネルギー統計」の2023年度確報値。
※表内の順位はOECD38カ国中の順位
日本における一次エネルギーは海外から輸入される石油・石炭・天然ガス(LNG)などの化石燃料に大きく依存しています。第一次オイルショック時の1973年度は一次エネルギーの94.0%を化石燃料に頼っていました(
「【日本のエネルギー、150年の歴史④】2度のオイルショックを経て、エネルギー政策の見直しが進む」参照)。その後、化石燃料依存度の提言の取り組みを進めてきていますが、2024年度においても一次エネルギーの80%化石燃料に頼っている状況にあります。
日本の一次エネルギー供給構成の推移
出典:資源エネルギー庁「総合エネルギー統計」の2024年度速報値
※四捨五入の関係で、合計が100%にならない場合がある
※再エネ等(水力除く地熱、風力、太陽光など)は未活用エネルギーを含む
化石燃料の輸入は、国際情勢などの影響を受けやすく、どの国や地域から調達するかは重要な問題です。原油は中東地域に約95.1%依存しています。LNGや石炭は、オーストラリアやアジア地域からの輸入に多く依存しています。
日本はエネルギー資源を安定的に確保できるよう、原油調達先である中東諸国との関係強化を進め、LNGでは調達先の多角化や権益の獲得に向けた取り組み、メタンハイドレートなどの国内資源開発の促進のほか、LNG長期契約の確保を促進するなど、化石燃料資源の安定確保に向けた取り組みを進めています。
鉱物資源は、DXやGXの進展に伴い重要性を増していますが、日本はほぼ100%輸入に頼っています。たとえば電気自動車(EV)に使われているリチウムイオン電池には、リチウム、コバルト、ニッケルなどのレアメタルが使用されています。輸入依存度が高い鉱物資源は国際情勢の影響を受けやすいため、政府は安定的な確保に向けて国内における製錬(取り出した金属から不純物を取り除くこと)事業への投資支援や、国産海洋鉱物資源の開発にも取り組んでいます。
経済性とのバランス
電気料金は、東日本大震災以降、原子力発電所の運転停止や燃料価格の高騰などの影響で火力発電の費用が増加したことにより、上昇傾向にあります。特に2022年度はロシアによるウクライナ侵略の影響で燃料の輸入価格が高騰し、電気料金が大きく上昇しました。その後、燃料輸入価格が低下したことなどにより、足下の電気料金は高騰時と比較して低くなっています。
電気料金やエネルギーコストに影響する燃料価格は、2021年から2022年にかけてウクライナ情勢をめぐる地政学的緊張の高まりなどを受け大きく上昇しました。その後、やや落ち着きを見せています。海外に化石燃料の大半を頼る状況は、安定供給に加え、需給ひっ迫による急激な価格上昇に直面する課題を抱えています。
再エネの導入も電気料金に影響を与える要因のひとつです。2012年の「固定価格買取制度(FIT制度:再エネで発電した電気を固定価格で一定期間電力会社が買い取る制度)」の導入以降、再エネの設備容量(発電設備の最大出力)は急速に伸びており、制度開始前から約5倍になりました。一方、買い取り費用は4.9兆円に達し、総務省家計調査に基づく一般的な世帯の電力使用量(月400kWh)で賦課金負担は1,592円/月となっています。再エネの最大限の導入と国民負担の抑制の両立を図るために、コスト効率的な導入拡大を進めていく必要があります。
電気料金を国際比較すると、日本の電気料金は高い水準となっていましたが、各国での課税・再エネ導入に伴う負担増により格差は縮小し、現在は欧州における電気料金よりも低い価格水準となっています。
電気料金の国際比較(2024年)
※ドイツ、イタリア、日本、英国、フランス、米国、韓国、台湾はIEA発表のデータを引用。再エネ賦課金等を含んだもの(諸元は国ごとに異なる)。
※上記料金は、各国の算定方法で求められた単純単価を、出典の資料に掲載されている各年の円ドル為替レートで変換したもの。
出典:IEA Energy Prices and Taxes(2025年8月20日時点)などを基に資源エネルギー庁作成
脱炭素を目指す環境対策
カーボンニュートラルは「CO2を含む温室効果ガス(GHG)の排出を全体としてゼロにする」ことで、地球温暖化対策に有効と考えられています(
「『カーボンニュートラル』って何ですか?(前編)~いつ、誰が実現するの?」参照)。日本のGHG排出量は2023年度で年間10.7億トンですが、このうち86%(9.2億トン)は、エネルギー起源CO2(燃料の燃焼によって排出されるCO2)です。
日本をはじめ、期限付きカーボンニュートラル目標を表明する国・地域は136あります。これらの国のCO2排出量は世界全体のCO2排出量の約7割を占めています(2023年実績)。
期限付きカーボンニュートラルを表明する国・地域
出典:各国政府HP, UNFCCC NDC Registry, Long term strategies, World Bank databaseなどを基に作成
日本のGHG排出量は、東日本大震災後に原子力発電所が停止し、その不足分を補うために火力発電の稼働が増えたため増加しました。その後、省エネなどさまざまな努力によって2023年度の温室効果ガス排出量は、10.7億トンまで減少しました。今後も、削減に向けた努力を続ける必要があります。
日本の温室効果ガス排出量の推移
数値はエネルギー起源CO2
DACCS(direct air capture with carbon storage):大気中にすでに存在するCO2を直接回収して貯留する技術
日本は2050年までのカーボンニュートラル達成に向け、2035年度、2040年度にGHG排出量を2013年度からそれぞれ60%、73%削減するというNDC(Nationally Determined Contribution:GHGの削減目標)を国連気候変動枠組条約(UNFCCC)事務局へ提出しました。達成に向けて、中長期的な予見可能性を高め、エネルギー安定供給、経済成長、脱炭素の同時実現に向けたGX(グリーントランスフォーメーション)の取り組みを進めています。
日本の削減目標(NDC)
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- 脱炭素と経済成長を同時に実現!「GX政策」の今
自然災害に対する安全性
激甚化する自然災害に対しては、エネルギーの安定供給と安全性の確保が重要です。電気については、一般送配電事業者間による災害時の連携計画の作成・実施のほか、送配電網の強靱化、災害に強い分散型電力システムの構築などを進めています。ガスについても同様に、一般ガス導管事業者間による災害時の連携計画、ガスの需給ひっ迫時の需要家に対するガスの使用制限、緊急時に備えたLNGの確保などの対策をおこなっています。
災害時を含めた安定供給と安全性のために重要な取り組みのひとつが、電力インフラの強靱化です。再エネの更なる導入拡大と電力の安定供給、電力インフラの強靱化を実現するため、電力系統の増強を進めています。地域同士で電力を融通するために必要となる「地域間連系線」の整備を進め、費用を再エネ賦課金や全国の託送料金(小売電気事業者が発電所から各家庭に送電するときに利用する、送配電網の利用料金)などを通じて負担する仕組みを導入しています。こうした制度の下で、北海道~本州間で電気を送りあうことができる「海底直流送電」や、中国~九州間で電気を融通することができる連系設備(関門連系線)の整備など、設備の新設や増強をおこなっていきます。
原子力発電所の再稼働にあたっては、安全性を高めた新規制基準への対応を進めています。原子力規制委員会によって、新規制基準に適合することが求められ、従来の規制基準にくらべて事故防止のための対策が強化されるとともに、万一の際の備えやテロ対策を追加でおこなっています。
今回紹介した情報以外にも、日本のエネルギーについてさらに詳しい情報が「日本のエネルギー2025」に掲載されています。日本のエネルギーについて考えるために、ぜひ一度ご覧ください。
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「2025―日本が抱えているエネルギー問題(後編)」では、福島の復興や、エネルギー問題を解決するための取り組みについて解説します。
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長官官房 総務課 調査広報室
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