地熱発電も「次世代」へ!課題をクリアし日本の地熱を最大限に活用
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再生可能エネルギー(再エネ)のひとつで、天候などの自然条件に左右されず安定的に発電できる「ベースロード電源」でもある、地熱発電(「知っておきたいエネルギーの基礎用語 ~地方創生にも役立つ再エネ『地熱発電』」参照)。日本は、世界第3位の豊富な地熱資源量があり、地熱発電のポテンシャルが非常に高い国です。一方で、この“ポテンシャル”を活かすためには、これまでの地熱発電の課題をクリアできるような、さまざまな技術開発や制度づくりが必要となります。そこで期待されているのが「次世代型」と呼ばれる地熱発電です。官民の協議会の取りまとめも参照しながら、これからの地熱発電について見ていきましょう。
2025年4月、行政と民間企業が地熱発電に関して協議する「次世代型地熱推進官民協議会」が立ち上げられました。さらに10月には、日本で「次世代型地熱」を実用化していくための課題や方針をまとめた「中間取りまとめ」が公表されました。
「次世代型地熱」とは、これまでの地熱発電とは異なる、新しい技術を使った地熱発電のことです。協議会では、おもに次の3つの技術が取り上げられています。
①「超臨界地熱」
これまでの地熱発電は、地下2~3kmを掘り200~300℃の熱を取り出していましたが、「超臨界地熱」は、それよりもさらに深い4~6kmの地下から400~600℃という高熱(超臨界状態)を取り出します。エネルギーが大きいため、発電量が多く大規模な発電が期待できます。
②「クローズドループ」
地熱発電事業の不確実性は、「実際に掘ってみないと地下に熱水があるか分からない」という点にありました。「クローズドループ」は、熱水がなくても熱い岩盤さえあれば発電をおこなうことができる方式です。地下に人工的なループ(配管)を構築し、地上から液体を流し込んで熱い岩盤で温め、熱水にすることで発電に利用します。
③「EGS(Enhanced Geothermal Systems)」
「クローズドループ」と同じく、熱水がなくても熱い岩盤さえあれば発電をおこなうことができます。「フラッキング(水圧破砕)」技術(米国で、シェールガスを採掘する際に使われた技術)を使って地下の岩盤を割り、人工的に水路を設置。そこに水を流し込んで熱水にし、発電するという方式です。
次世代型地熱の種類
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なぜ今、次世代型地熱について協議する会議が始まったのでしょうか?その背景には、2025年2月に、「第7次エネルギー基本計画」が閣議決定されたことがあります。「エネルギー基本計画」とは、日本のエネルギー政策の基本的な方向性が記されたもので、地熱発電をふくむ再エネについても今後の方針が示されています。
その最新版となる「第7次エネルギー基本計画」では、次世代型地熱が、「地熱ポテンシャルを現状の4倍以上に拡大する可能性がある技術」と明記されたのです。
従来型地熱発電+次世代型地熱発電で地熱ポテンシャルが増大
現在、日本の発電電力量全体のうち地熱発電の割合は0.3%ほど(2022年度)と、ごく少ない状況ですが、2040年度におけるエネルギーの見通しでは1~2%ほどに増やすこととなっています。これを実現するためには、深い地下の熱や熱い岩盤といった、これまで活用できていなかった地熱資源を活かせる「次世代型地熱」の存在は欠かせません。
2040年度におけるエネルギー需給の見通し
そこで、次世代型地熱の実証実験を国内で早期にスタートし、導入拡大を目指すための取り組みが進められています。
次世代型地熱発電技術は、これまでの地熱発電がかかえていた課題もクリアできると考えられています。 まず、開発エリアの拡大です。地下に熱水があることが必須となる従来型の地熱発電にくらべ、次世代型は熱い岩盤さえあれば開発できるため、開発対象にできるエリアは大きく広がります。 次に、規制を回避できる可能性があることです。従来型の地熱資源は、火山活動のある山間地域にかたよって存在し、国立・国定公園などと重なって「自然公園法」の規制対象エリアとなっていたり、温泉資源を保護する「温泉法」の規制対象エリアになっていたりすることが多くありました。しかし「クローズドループ」や「EGS」であれば熱水を直接使用せず、また「超臨界」であれば通常の従来型地熱よりもさらに深度深くの熱水を使用するため、その熱水は温泉法で定義されている温泉とは別ではないかという考え方もあります。そうすると温泉法の“適用範囲外”として整理できるのではないかと考えられ、関係省庁間で議論が進められています。適用範囲外として整理できれば、開発にかかる時間(リードタイム)を短縮する効果が期待されます。 さらに、発電コストの低減も期待されます。従来の地熱発電は不確実性が大きく、また出力(発電量)も1万5,000kWほどしか得られないため、どうしても発電コストが高くなっていました。「超臨界地熱」などの次世代型であれば大規模な発電量が見込めるため、発電コストが下がる可能性があります。
世界的な動向を見ても、IT企業やAI企業が「24時間365日天候に左右されない、クリーンな電源」として、地熱発電に注目しています。たとえばGoogleは、自社のデータセンターの電力として、地熱発電所から直接電力を購入しています。さらに世界各国では、国が地熱発電を資金的に支援、企業やスタートアップが研究を進めるなど、実用化に向けた競争が起きています。
世界の主な次世代型地熱プロジェクト
日本もこの競争に乗り遅れるわけにはいきません。国は長期的なロードマップを策定し、3つのフェーズに分けて、次世代地熱発電のこれからを考えています。
次世代型地熱実現に向けたロードマップ
まずフェーズ1では、2030年までに「国内先行導入」として、「グリーンイノベーション基金」(「カーボンニュートラルに向けた産業政策“グリーン成長戦略”とは?」参照)などを活用し、国内実証をしっかりおこないます。そこで技術を確立したのち、2030年代早期のフェーズ2に、次世代型地熱発電所の運転を開始します。これは、まったく新しい発電所を開設することが考えられています。 フェーズ3は普及拡大期として、2040年までに1.4GW、2050年までに7.7GWの開発を目指します。この達成のため、国としても資源量調査を強化し、開発候補地点を拡大していきます。 ただし、留意する必要があるのは、地熱の“ポテンシャル”は可能性であって、実際の開発量や地熱エネルギーの採掘量をそのまま意味するものではない、ということです。また、地熱資源を探し当て発電にいたるまでにはそれ相応の時間がかかること、次世代型地熱発電でもこれまで同様に「地域との共生」は必須であり、地域の理解醸成のための活動は変わらず求められることも忘れてはなりません。
地域共生をこれまでどおり重視しながら、日本の地熱ポテンシャルを最大限活かすための取り組みを進めていきます。
資源・燃料部 政策課
長官官房 総務課 調査広報室
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