今こそ知りたい、日本の「石油備蓄」のしくみとは?
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2026年3月に備蓄原油が放出された基地のひとつ、白島国家石油備蓄基地
中東の情勢により、石油(原油)を各国へと運ぶタンカーが、ホルムズ海峡を事実上通れなくなるという状況が続いています。2026年3月以降、中東から日本への原油輸入は大幅に減少しており、中東への依存度がきわめて高い日本は大きな影響を受けます。そうした中、日本のエネルギーの安定供給に重要な役割を果たすのが、日本の「石油備蓄」のしくみです。世界でも有数の備蓄量となっていますが、そもそもどんなしくみで、どのくらいの量が備蓄され、どのように使われるのでしょうか。今回は、これを機会に知っておきたい、日本の石油備蓄についてご紹介しましょう。
2026年3月現在、日本には、官民合わせて、約8ヶ月分の石油備蓄があります。そうした中で、3月、経済産業省は、「石油の備蓄の確保等に関する法律(石油備蓄法)」に基づいて、当面1カ月分(約850万キロリットル)の「国家備蓄原油」を放出することを決めました。
国家備蓄の放出の目的は、中東依存度が9割以上と世界の中でも突出して高い日本において、万が一にもガソリンなどの石油製品の供給に支障が生じないようにすることです。そしてこの日本の石油備蓄放出の動きは、G7各国や国際エネルギー機関(IEA)とも連携しながら、日本が率先して決め、その後、国際エネルギー機関(IEA)による協調放出の決定もあり、国際エネルギー市場の安定化にも寄与するものです。
日本の原油及びLNG燃料輸入先(2025年)
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(出典)財務省貿易統計
「国家備蓄」とは、石油備蓄法にさだめられた、国として石油を備蓄する事業のことです。日本では、1970年代~1980年代に起こった2度のオイルショックを教訓に、備蓄の増強がはかられました。まずは民間企業の備蓄を増強、1975年(昭和50年)には石油備蓄法がつくられ、1978年(昭和54年)に国家備蓄が始まりました。備蓄には、現在3種類があります。
国家備蓄は、1978年時点で、当初目標1,000万キロリットル、次いで3,000万キロリットルが目標とされ、1989年度(平成元年度)に目標を達成。1997年度(平成9年度)には5,000万キロリットルに達しました。2026年1月末現在では、7,289万キロリットル(製品換算で7,006万キロリットル)、約8ヶ月分に当たる248日分の石油が備蓄されています。
民間備蓄と国家備蓄の推移
※石油備蓄量は年度末実績。民間備蓄、国家備蓄とも製品換算後ベース。表中の数字は日数(備蓄法基準)。
(出典)資源エネルギー庁「石油備蓄の現況」
石油の「国家備蓄基地」は、地上・地中・地下・洋上にある10基地。また、民間企業が持っている製油所や原油を貯める「油槽所」の一部のタンクを借り上げて国家備蓄の場としている所も10か所あります(下図の青)。
石油の国家備蓄基地
志布志国家石油備蓄基地(地上)
上五島国家石油備蓄基地(洋上)
苫小牧東部国家石油備蓄基地(地上)
菊間国家石油備蓄基地(地下)
石油備蓄の制度が始まって以来、はじめて国家備蓄原油が放出されたのは、実は2022年度(令和4年度)のこと。ロシアのウクライナ侵略による世界的なエネルギー危機が起こる中、IEAへの協調行動として実施されたものです(2022.8.10 白島国家石油備蓄基地からの国家備蓄石油放出作業に密着」参照)。
そのため、今回の国家備蓄放出は制度創設以来2回目ということになります。3月26日以降、国家石油備蓄基地と民間タンク借り上げの両方から、順次放出される予定です。
2026年(令和8年)3月26日、菊間国家石油備蓄基地での放出開始指示のようす2026年3月の「国家備蓄」放出基地・借り上げタンク一覧
放出された原油は、国内の石油精製事業者によって精製され、ガソリン、灯油、軽油、重油などが、国内に供給され、国民の皆様に届けられていきます。 また、民間備蓄についても備蓄義務が15日分引き下げられ(従来の義務は70日分)、備蓄されていた原油や製品の活用も開始されています。 過去の教訓を活かした万が一に備えた石油備蓄のしくみを通じて、日本のエネルギー安定供給が図られていくのです。
国家備蓄の現場を守り、すべての国家備蓄基地や備蓄原油の統合管理をおこなっているのは、独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構(JOGMEC)の「資源備蓄本部」です。 資源備蓄本部の下には、管理を統括する「備蓄企画部」、現地で運転管理をおこなう民間の操業会社を管理する「石油・石油ガス備蓄部」、備蓄の安全確保と技術支援などを担当する「環境安全・技術部」の3つがあります。また、各国家備蓄基地に基地事務所が設置されています。
JOGMECの石油・石油ガス備蓄事業体制・組織
JOGMECは、備蓄事業運営の基本理念として、安全性・機動性・効率性それぞれが適切なバランスの元に成り立つ業務運営に努めており、資源備蓄を着実に運営・実施するとともに、緊急時における機動的な備蓄の放出を実行する体制を整備しています。 まず、石油という“危険物”を備蓄しているため、「安全性」の確保を常に意識しています。法律でさだめられた訓練だけでなく自主的な訓練、技術の向上に常に取り組んでおり、さまざまな防災訓練や、万が一原油が流出する事故が起こった場合には環境汚染を最小限におさえる「油防除訓練」などを計画的に実施しています。
志布志国家石油備蓄基地でおこなわれた総合防災訓練のようす
白島国家石油備蓄基地でおこなわれた総合防災訓練のようす
その上で、いざという時すみやかに放出できる体制を維持・整備する「機動性」の確保と、備蓄コストの低減など「効率性」を意識した事業運営を目指しています。また、有事・災害時の放出機会にそなえることがこれまで以上に求められる中、放出の際の手順や機器の取り扱いなどを訓練する「緊急放出訓練」もおこなっています。 今回の国家備蓄原油の放出でも、安全性・機動性・効率性を重視しながら、いつでも適切な対応を行うことができる体制をとっており、安全かつ確実な放出を進めています。 JOGMECは2026年3月16日、経済産業省による石油備蓄法第31条の規定による国家備蓄原油の放出の決定を受け、資源備蓄本部長を長とする緊急放出対策本部を設置するとともに、3月26日以降、苫小牧東部、菊間、白島、上五島、志布志の各国家石油備蓄基地において順次、国家備蓄原油の放出を行っております。
資源・燃料部 資源供給基盤整備課
長官官房 総務課 調査広報室
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