2023―日本が抱えているエネルギー問題(中編)

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脱炭素化のイノベーション

2050年までのカーボンニュートラルの実現を表明している日本では、さまざまな技術開発や社会構造の変革がおこなわれています。その中には革新的・野心的な取り組みも多くあります。多様な分野で進んでいる脱炭素化のためのイノベーションを、いくつかご紹介します。

① 水素
水素は、次世代のエネルギーとして検討されている資源のひとつです。水素は使用してもCO2が発生せず、水はもちろんガスや石炭など多様な資源からつくることができます。さらに、製造過程で再生可能エネルギー(再エネ)由来の電気を使えば、CO2フリーの水素をつくり出すことができます。すでに燃料電池自動車の燃料として活用されていますが、水素社会を実現するためには、水素のさらなる需要の拡大と、その需要をまかなえるだけの水素の供給に向けて、国内で最大限製造を進めるとともに、国際的な水素サプライチェーンの構築を進めていく必要があります(「次世代エネルギー『水素』、そもそもどうやってつくる?」参照)。

水素社会の実現に向けた取り組み
水素の製造から、サプライチェーンの構築、利活用に至るまで、水素社会の実現に向けた さまざまな取り組みを図で示しています。

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② アンモニア
アンモニアも次世代のエネルギーとして期待されています。アンモニアは、以前から製造・利用されているため、既存の技術を活用できるというメリットがあり、水素を効率的に輸送・貯蔵する「水素キャリア」としても活用できます。また、燃焼速度(火炎中の化学反応の速さ)が石炭に近いことから、石炭火力の脱炭素化を目指してアンモニアの利用検討が進められており、CO2排出量の少ない火力発電を目指しています(「アンモニアが“燃料”になる?!(前編)~身近だけど実は知らないアンモニアの利用先」参照)。

③ CO2を削減する技術の開発
大気中へのCO2排出を削減する技術のひとつとして、発電所や工場などから排出されたCO2を分離・回収し、コンクリートやプラスチック原料などの資源として利用する「CCU/カーボンリサイクル」や、分離・回収したCO2を地中に貯留する「CCS」などがあります。

CCUS、カーボンリサイクル
回収したCO2をどのような技術を使って再利用するのかについて、図で示しています。

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まずは、分離・回収したCO2を地中に貯留する「CCS」の普及が期待されています。CCSは地下1000メートル以上の深い地層で実施するため、適した地下の構造として、CO2を貯留するすき間のある地層(貯留層)があること、その上がCO2を通さない地層(遮へい層)でおおわれていることなどの条件を満たす必要があります(「CO2を回収して埋める『CCS』、実証試験を経て、いよいよ実現も間近に(前編)」参照)。

CCS
CCSを実施する場所の条件について、図で示しています。

(出典)JCCS

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④ ペロブスカイト太陽電池
次世代型の太陽電池として、今注目されているのが「ペロブスカイト太陽電池」です。従来の太陽電池とくらべて製造工程が少なく、軽量で柔軟といった特徴があります。ビルの壁面や重い荷重に耐えられない小さな屋根にも設置することができるため、設置場所の拡大が期待されています(「日本の再エネ拡大の切り札、ペロブスカイト太陽電池とは?(前編)~今までの太陽電池とどう違う?」参照)。

建物の壁面に太陽光パネルを設置した場合のイメージ写真です。

壁面などに太陽光パネルを設置するイメージ

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⑤ 燃料電池
現在すでに実用化されているイノベーション技術もあります。たとえば、水素を活用する家庭用燃料電池エネファームは、2009年に世界に先駆けて日本で販売が開始されて以降、普及が進み、2023年度で49万台以上が普及しています(「あらためて知る『燃料電池』~私にもできるカーボンニュートラルへの貢献(前編)」参照)。

国内のエネファーム普及台数(累計)
2009~2023年度にかけての国内エネファーム累計普及台数の推移をグラフで示しています。

(出典)コージェネ財団

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⑥ 今後期待されるCO2削減技術
このほか、今後実用化が期待される技術として、CO2を出さずに水素を利用して製鉄する技術や、太陽エネルギーとCO2を利用して化学品を合成する「人工光合成」、バイオマス原料などをもとに製造される航空燃料である「SAF」、水素とCO2を反応させてメタンを合成する「メタネーション」、CO2を大気中から直接分離・回収する「DAC」などが挙げられます。「DAC」は、「CDR」(Carbon Dioxide Removal:二酸化炭素除去)という大気中のCO2を除去するさまざまな方法のうちのひとつです。さらに洋上風力や地熱発電の導入拡大など、多様な技術を組み合わせることで、効果的に脱炭素化を実現していきます。

さまざまな技術の実用化でCO2を削減
CO2を削減するためのさまざまな技術について、図や写真で示しています。

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再エネの導入拡大

エネルギーの脱炭素化には、再エネの導入拡大が欠かせません。日本の再エネ電力比率は、2021年度で約20.3%となっており、年々増えています。再エネ発電導入容量は世界第6位です。太陽光発電の導入容量は世界第3位であり、国土面積あたりの導入容量は主要国の中で最大級です。

主要国の発電電力量に占める再エネ比率の比較
主要国の発電電力量の内訳と、再エネが占める割合について、棒グラフで比較しています。

(出典)IEA「Market Report Series - Renewables 2022(各国2021年時点の発電量)」、IEA データベース、総合エネルギー統計(2021年度確報値) 等より資源エネルギー庁作成

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各国の再エネ発電導入容量(2021年実績)
各国の再エネ発電導入容量とその内訳を棒グラフで示し、比較しています。

(出典)IEA「Renewables 2022」より資源エネルギー庁作成

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各国の太陽光発電導入容量(2021年実績)
各国の太陽光発電導入容量を棒グラフで示し、比較しています。

(出典)IEA「Renewables 2022」より資源エネルギー庁作成

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日本は、再エネの主力電源化を掲げ、再エネ最優先の原則で取り組んでいますが、現時点では再エネだけで必要なエネルギーをまかなうことはできません。電気を安定して使うためには、発電量(供給)と消費量(需要)を同じにする必要がありますが、再エネは季節や天候によって発電量が変動するため、その変動を調整するための手段を確保しておくことが必須です。具体的には、火力発電など出力が調整できる電源(電気をつくる方法)や、エネルギーを蓄積できる蓄電池などの設備と組み合わせながら、再エネを活用する必要があります。

最小需要日の需給イメージ
電気の最小需要日に、電力需要に応じてどのように発電量のバランスをとるのか、その需給イメージを図で表しています。

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2030年度のエネルギー構成のあるべき姿を示した「エネルギーミックス」では、再エネの主力電源化のため、電源構成比で36~38%の再エネの導入を目指しています。そのためには太陽光だけでなく、さまざまな再エネの導入促進を後押しする必要があります。具体的には、建築物に対する太陽光発電の導入の強化、洋上風力発電のさらなる導入促進、ペロブスカイト太陽電池や浮体式洋上風力の技術開発などを進めることが挙げられます。

2030年度エネルギーミックスにおける再エネの目標導入量
太陽光、陸上風力、洋上風力、地熱、水力、バイオマス発電の各再エネについて、2022年度と比較した2030年度の目標導入量を図で示しています。

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再エネを各地で事業展開する際には、地域社会と一体となった、長期的で安定した、責任ある事業運営が不可欠です。安全面・防災面・景観など、地域が懸念する問題に適切に対応できるよう、「再生可能エネルギー電気の利用の促進に関する特別措置法(再エネ特措法)」を改正(2024年4月施行)するなど、事業規律を強化して、地域と共生した再エネの導入に取り組んでいきます。

日本のエネルギーについてさらに詳しい情報が「日本のエネルギー2023」に掲載されていますのでご覧ください。
日本のエネルギー2023

「2023―日本が抱えているエネルギー問題(後編)」では、福島の復興、原子力発電の展望、省エネの取り組みについて解説します。

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長官官房 総務課 調査広報室

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