成長志向の資源循環経済システム「サーキュラーエコノミー」(後編)動きだす産官学パートナーシップ
SAFの導入拡大をめざして、官民で取り組む開発と制度づくり
なぜ、日本は石炭火力発電の活用をつづけているのか?~2030年度のエネルギーミックスとCO2削減を達成するための取り組み
成長志向の資源循環経済システム「サーキュラーエコノミー」(前編)どんな課題を解決するの?
菅総理が2020年10月の臨時国会で「2050年カーボンニュートラル宣言」をおこなって以来、メディアなどで「カーボンニュートラル」という言葉を見聞きする機会が増えています。しかし、「カーボンニュートラル」って、そもそもどういうことなのでしょう?CO2排出を減らすことだろうなとはなんとなく想像がつくものの、きちんと説明できる方はそれほど多くないのではないでしょうか。そこで今回は、「カーボンニュートラル」について、解説しましょう。
「カーボンニュートラル」とは何かを知るために、まずは、2020年10月におこなわれた、菅総理の所信表明演説を見てみましょう。
ここで第一に着目すべきは、「温室効果ガス」というワードです。つまり、日本が目指す「カーボンニュートラル」は、CO2だけに限らず、メタン、N2O(一酸化二窒素)、フロンガスを含む「温室効果ガス」を対象にすると述べているわけです。
温室効果ガス(GHG)の種類
※UNFCCCインベントリ報告ガイドラインに基づく報告義務のある温室効果ガス。
大きい画像で見る
日本のGHG排出量(2018)
(出典)国立環境研究所 温室効果ガスインベントリオフィス「日本の温室効果ガス排出量データ」より経済産業省作成
次に着目すべきワードは、これらの温室効果ガスについて、「排出を全体としてゼロにする」とのべているところです。「全体としてゼロに」とは、「排出量から吸収量と除去量を差し引いた合計をゼロにする」ことを意味します。つまり、排出を完全にゼロに抑えることは現実的に難しいため、排出せざるを得なかったぶんについては同じ量を「吸収」または「除去」することで、差し引きゼロ、正味ゼロ(ネットゼロ)を目指しましょう、ということです。これが、「カーボンニュートラル」の「ニュートラル(中立)」が意味するところです。そのためには、まずは排出する温室効果ガスの総量を大幅に削減することが大前提となります。
(出典)左図は、国立環境研究所 温室効果ガスインベントリオフィス「日本の温室効果ガス排出量データ」より経済産業省作成
しかし、排出量をゼロにすることが難しい分野も多くあります。そこで、これら削減が難しい排出分を埋め合わせるために、「吸収」や「除去」をおこないます。たとえば、植林を進めることにより、光合成に使われる大気中のCO2の吸収量を増やすことが考えられます。あるいは、スペシャルコンテンツでもご紹介してきた、CO2を回収して貯留する「CCS」技術を利用し(「知っておきたいエネルギーの基礎用語 ~CO2を集めて埋めて役立てる『CCUS』」参照)、「DACCS」や「BECCS」といった、大気中に存在する二酸化炭素を回収して貯留する「ネガティブエミッション技術」を活用することも考えられます。
では、いつまでにカーボンニュートラルが必要なのでしょうか?2020年から運用開始した、気候変動問題に関する国際的な枠組み「パリ協定」(「今さら聞けない『パリ協定』」参照)では、「今世紀後半のカーボンニュートラルを実現」するために、排出削減に取り組むことを目的とする、とされています。
これに加えて、国連気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の「IPCC1.5度特別報告書」によると、産業革命以降の温度上昇を1.5度以内におさえるという努力目標(1.5度努力目標)を達成するためには、2050年近辺までのカーボンニュートラルが必要という報告がされています。こうした背景に加えて、各国の野心的な目標の引き上げなどの気運もますます高まっており、「2050年のカーボンニュートラル実現」を目指す動きが国際的に広まっています。
では、どの国がカーボンニュートラルを目指しているのでしょうか?2021年1月20日時点では、日本を含む124か国と1地域が、2050年までのカーボンニュートラル実現を表明しています。これらの国の、世界全体のCO2排出量に占める割合は37.7%となります(エネルギー起源CO2のみ、2017年実績)。2060年までのカーボンニュートラル実現を表明した中国も含めると、全世界の約3分の2を占めており、多くの国がカーボンニュートラルの旗を掲げていることがわかります。
(出典)COP25におけるClimate Ambition Alliance及び国連への長期戦略提出状況等を受けて経済産業省作成(2021年1月20日時点)https://climateaction.unfccc.int/views/cooperative-initiative-details.html?id=94
この宣言は国だけではなく、企業においてもカーボンニュートラルを目指す動きが進んでいます。
カーボンニュートラルを宣言した企業の中には、日本企業の名前も多くあります。2050年のカーボンニュートラルを宣言した日本の取り組みは、今どうなっているのでしょうか?次回は、なぜ、2050年カーボンニュートラルを目指すのか、カーボンニュートラルを実現するための方向性について解説します。
経済産業省 産業技術環境局 地球環境対策室
長官官房 総務課 調査広報室
※掲載内容は公開日時点のものであり、時間経過などにともなって状況が異なっている場合もございます。あらかじめご了承ください。
従来の太陽電池のデメリットを解決する新たな技術として、「ペロブスカイト太陽電池」が注目されています。これまでの太陽電池との違いやメリットについて、分かりやすくご紹介します。