あれから10年、2021年の福島の「今」(後編)

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福島第一原発の1号機~4号機(2020年撮影)

東日本大震災が起こった2011年から、今年で10年。被災地域ではさまざまな復旧・復興の取り組みが進められています。これまで、資源エネルギー庁スペシャルコンテンツでは、原子力発電所の事故により大きな影響を受けた福島県にフォーカスし、復興の状況についてお伝えしてきました。あれから10年、福島の「今」をご紹介します。後編では、「オンサイト」、東京電力福島第一原子力発電所(福島第一原発)の今について、たくさんの写真を通じてお伝えしましょう。

ふつうの作業服で歩けるようになった、「今」の福島第一原発

「あれから10年、2021年の福島の『今』(前編)」でお伝えしたように、福島の復興の取り組みは、福島第一原発を対象とした「オンサイト」の取り組みと、それ以外の「オフサイト」の取り組みで構成されています。オンサイトで進められているのは、原発の廃炉作業です。

みなさんもご存じのとおり、東日本大震災により発生した津波は、福島第一原発をも襲いました。その結果、原発事故が発生したのです。下の写真は、2011年3月15日に撮影された、福島第一原発3号機の原子炉建屋です。

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爆発後の3号機原子炉建屋の外観(2011年3月15日撮影)

福島第一原発では、1号機・3号機・4号機で「水素爆発」が起こり、原子炉建屋が大きく損壊しました。この写真はまさに、水素爆発が起こった後の様子を写したものです。

事故についてはテレビや新聞などでも大きく報じられたことから、「福島第一原発」というとこの時のイメージで止まっている、という方もいるかもしれません。しかし、福島第一原発では廃炉に向けたさまざまな取り組みが進められており、現在では環境が大幅に改善しています。

こちらが現在の福島第一原発の様子です。

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上空から撮影した福島第一原発

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現在の福島第一原発3号機

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現在の福島第一原発構内

これらの写真を見て、おや?と感じた方もいるのではないでしょうか。実は、現在の福島第一原発では、構内の96%で、どこにでもあるような作業服で行き来し、作業をおこなうことができます。いわゆる防護服は必要ありません。さらに、視察には私服で参加することができます。下の写真は2020年2月におこなわれた周辺住民の視察の様子ですが、みなさんが私服で建屋に近づいていることがわかります。

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周辺住民による福島第一原発の視察(2020年2月撮影)

構内には、大型の休憩所や、あたたかな食事が提供される地元企業運営の食堂、コンビニエンスストアなどが設置されていて、作業員の労働環境もずいぶん改善しています。

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福島第一原発内にある食堂

福島第一原発は、“高い放射線とガレキにまみれた事故現場”から、すっかり様変わりしているのです。

とはいえ、廃炉作業はまだまだ道半ば。

このように、廃炉作業はしっかりと前へと進められています。とはいえ、福島第一原発の廃炉作業は世界でも前例を見ないきわめて困難な取り組みであり、10年たった今でも、廃炉作業が終わったわけではありません。

福島第一原発の原子炉建屋の使用済燃料プールの中には燃料が残っています。さらに、原子炉内部の核燃料が溶け、さまざまな構造物と混じりながら冷えて固まった「燃料デブリ」も存在しています。これらは継続的な注水をおこなうことにより安定した状態を保っていますが、いまだ放射線のリスクがあることに変わりはありません。

さらに、建屋への注水や地下水の流入などにより、発生する「汚染水」については、さまざまな対策が進展していることにより、発生量の低減や外部環境への漏洩防止を実現しているものの、今後も対策を続けていく必要があります。

このような課題を解決し、福島第一原発の廃炉をおこなうことは、復興の“大前提”です。復興を成しとげるためにも、廃炉作業を安全かつ着実に進めなくてはなりません。

廃炉に向けて、今どんな取り組みが進んでいる?

そもそも、なぜ福島第一原発の廃炉作業は困難な取り組みなのでしょう?理由のひとつは、原子炉建屋の中がどうなっているか、まだ正確にわからない点にあります。また、原子炉建屋内はきわめて高い放射線量が観測されているため立ち入りができず、手探りで作業を進めていく必要があることも、困難さの理由となっています。

さらに重要な点として、放射線リスクを下げるための取り組みである廃炉作業によって、かえってリスクを増加させることがあってはならないということがあります。作業によってダストが飛び散ったり汚染水が漏れたりすれば、元も子もありません。周囲の環境や作業員の安全を最優先にしながら、慎重に丁寧に作業を進めていく必要があります。

こうしたことから、福島第一原発の廃炉作業には事故の発生後30年~40年という長い時間がかかると考えられています。廃炉をおこなう責任は東京電力にありますが、これだけの困難な取り組みであることから、国も前面に立って取り組んでいくことが求められます。そこで、2011年12月に政府は「中長期ロードマップ」をさだめ、現場の状況を踏まえながら改定をおこなうなどして、廃炉の進捗を管理しています。

廃炉作業の中心は、「燃料の取り出し」「燃料デブリの取り出し」「汚染水対策」の3つです。

福島第一原発の廃炉における主な作業
福島第一原発の構造と廃炉における主な作業を図であらわしています

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燃料の取り出しについては、まず4号機から着手され、2014年12月22日に完了しました。さらに、3号機からの取り出しも2021年2月28日に完了しています。特に3号機での取り出し作業は、作業員の被ばくを防ぐために遠隔技術を用いておこなわれ、燃料デブリが残る原子炉建屋から取り出しが完了した最初の例となりました。今後は、ダストの飛散対策やガレキ撤去を進め、1号機では2027年度~2028度から、2号機では2024年度~2026年度から取り出しを開始する予定です。

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4号機の燃料取り出しの様子(2014年)

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遠隔技術を利用して3号機の燃料を取り出す様子(2020年)

燃料デブリについては、取り出しに向けて遠隔操作ロボットなどによる調査が実施されてきました。これまでの調査で、燃料デブリの分布状況や、燃料デブリにアクセスするためのルートを確認するための情報、工事の安全性の判断に役立つ情報などが集まっています。

こうした調査を経て、初めに燃料デブリの試験的取り出しがおこなわれるのは2号機に決定。取り出しのためのロボットアームの開発が進められています。

ロボットアーム開発の写真

(出典)Veolia Nuclear Solutions (UK) Ltd

汚染水については、①漏らさない ②近づけない ③取り除くという3つの方針のもと、汚染した水を漏らさないための「海側遮水壁」や、水を汚染源に近づけないための「陸側遮水壁(凍土壁)」、地下水を汲み上げる「サブドレン(井戸)」などの対策が進められています。

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汚染水対策のひとつ「海側遮水壁」

これらの対策により、福島第一原発の近海の水質はWHO(世界保健機関)のさだめる「飲料水ガイドライン」の基準をじゅうぶんにクリアしていることが確認されているほか、1日あたりの汚染水発生量は対策前の2014年5月以前とくらべ、2019年春には約3分の1に、現在では約4分の1に減っています。

汚染水対策とその効果
①汚染源に水を近づけない、②汚染水を漏らさない、③汚染源を取り除くという三つの汚染水対策とその効果をグラフで示しています

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また、汚染水を浄化処理し大部分の放射性物質を取り除いた「ALPS処理水」の取り扱いについても、当面の課題となっています。

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福島第一原発構内に並ぶ処理水タンク群

地元産業にも貢献しながら、廃炉の歩みをまた一歩先へ

廃炉作業では、作業に関連してさまざまな物資やサービスが必要となります。地元企業にそのような事業へ参入してもらうことができれば、地域の産業や雇用の回復に貢献することができます。

そこで、地元企業の参入を促す取り組みが進められ、現在、福島第一原発で働くひとの60%が、地元企業の方となっています。前述した食堂の運営のほか、防護服を製造している有限会社キャニオンワークス(福島県いわき市)、排気筒の解体工事にたずさわる株式会社エイブル(福島県大熊町)などの地元企業が参入しています。

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エイブルによる排気筒の解体工事の様子

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キャニオンワークスによる防護服の製造

東日本大震災から10年がたったということは、廃炉作業が始まってから10年がたつということでもあります。歩みはゆっくりしたものではありますが、“廃炉の本丸”とも言える、原子炉建屋内の燃料デブリや燃料の取り出し作業が本格化する地点まで、ようやくやってきました。

とはいえ、長い時間がかかる廃炉作業は、まだまだ道半ばです。ここからは、今まで以上に困難な壁が待ち構えていることも間違いありません。気持ちをまたあらたにし、一歩一歩着実に、歩みを前へと進めていきます。

遠くから見た福島第一原発と桜の写真

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