あれから10年、2021年の福島の「今」(前編)

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2020年3月に供用を開始したJR双葉駅と東日本大震災・原子力災害伝承館、双葉町産業交流センターをつなぐシャトルバス(2021年3月撮影)

東日本大震災が起こった2011年から、今年で10年。被災地域ではさまざまな復旧・復興の取り組みが進められています。これまで、資源エネルギー庁スペシャルコンテンツでは、大震災が引き起こした原子力発電所の事故により大きな影響を受けた福島県にフォーカスし、「2017年、福島の『今』の姿は」「福島の7年~廃炉・汚染水対策と復興の動き」として、復興の現状についてご紹介してきました。あれから10年、福島の「今」をご紹介します。

「オンサイト」と「オフサイト」の両輪で進められる、福島の復興

福島の復興に関する政府の体制は、省庁を横断しながら、「オンサイト」領域と「オフサイト」領域で構成されています。

オンサイトの取り組みでは、事故を起こした福島第一原子力発電所(福島第一原発)の廃炉作業が進められています。一方、オフサイトの取り組みは、避難指示・区域の見直し、除染・中間貯蔵施設、被災地の復旧・復興の3つの分野で進められています。

このオンサイトの取り組みとオフサイトの取り組みは、“車の両輪”として同時に進めていくことが重要です。今回は、オフサイトの取り組みについて見ていきましょう。

避難指示は段階的に解除、空間線量率は約8割減少

まず、避難指示区域については、どうなっているのでしょうか。

福島第一原発の事故によって、政府から福島県の一部に「避難指示・屋内退避」の指示が出されたのは2011年3月のこと。2011年12月に福島第一原発の“冷温停止状態”が確認されると、その後、2013年8月までに避難指示区域の見直しが実施されました。

除染やインフラ整備が進められ、2014年以降、避難指示の解除が段階的におこなわれ、2020年3月には「帰還困難区域」以外の避難指示がすべて解除されました。また同月、JR常磐線の駅周辺の区域の避難指示が解除され、「帰還困難区域」の一部ではじめての解除となりました。

2013年8月時点の避難指示区域の区分
帰還困難区域
(2021年現在、一部解除済み)
居住制限区域
(2021年現在、全て解除済み)
避難指示解除準備区域
(2021年現在、全て解除済み)
2011年当時、年間積算線量が50ミリシーベルト(mSv)超の地域2011年当時からの年間積算線量が20ミリシーベルト(mSv)を超えるおそれがあった地域2011年当時、年間積算線量が20ミリシーベルト(mSv)以下となることが確実であることが確認された地域
原則立ち入り禁止、宿泊禁止
※2015年6月19日以降は一部事業活動可
立ち入り可、一部事業活動可、宿泊原則禁止立ち入り可、事業活動可、宿泊原則禁止

さらに、残されている「帰還困難区域」のうち6つの町村で、「特定復興再生拠点区域」が認定され(上の右側地図の青色になっている部分)、住民がふたたび住むことができるように整備が進められています。原発事故で一部区間が不通となっていたJR常磐線が2020年3月に全線再開したことはTVでも広く報道されましたが、このJR常磐線が通る双葉町では、双葉駅を中心とする一部地域が「特定復興再生拠点区域」に認定されており、2022年春の避難指示解除を目標として環境整備が進められています。

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全線再開したJR常磐線(2020年3月撮影)

2021年3月時点での東日本大震災による福島県全体の避難者は約3.6万人(ピーク時は2012年5月の約16.5万人)、避難指示区域からの避難対象者は約2.3万人(ピーク時は2013年8月の約8.1万人)となっています。

これらの地域の「今」を、数値でも見てみましょう。右側の図は、2020年に測定された、福島第一原発から80km圏内のエリアにおける、地表面から1メートルの高さの「空間線量率」を示したものです。「空間線量率」は、放射性物質が発する「放射線量」が、空間で1時間あたりどのくらいになるかという「率」をあらわしています。左側の2011年11月に測定したデータとくらべると、線量の平均値は約8割減少しています。

進む経済・産業拠点の整備、再開

このように、かつて避難指示が出されていた地域では、上述のJR常磐線の再開をはじめとしたインフラや産業拠点の整備、再開が進んでいます。

2020年10月、避難指示が続く双葉町内において、「双葉町産業交流センター」がオープンしました。事業者向けの産業拠点とするだけでなく、地域特産品の販売や、地元グルメの提供を通じた地域産業振興にも役立てられることとなっています。このように、地域経済の拠点の回復も着実に進んでいます。

そのほかにも、2020年4月に浪江町の請戸漁港の利用がスタート、また2020年10月には相馬市に地元水産品を取りあつかう「浜の駅 松川浦」がオープンするなど、水産業においてもさまざまな産業拠点が整備されています。

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9年ぶりにセリを再開した請戸漁港(2020年4月)

福島からの新産業創出に向けて、重点分野をさらに拡大

また、避難指示の対象となった地域については、その将来像を議論する「福島12市町村の将来像に関する有識者検討会」がおこなわれてきました。検討会は、(1)産業・生業(なりわい)の再生・創出 (2)住民生活に不可欠な健康・医療・介護 (3)未来を担う、地域を担うひとづくり (4)広域インフラ整備・まちづくり・広域連携 (5)観光振興、風評・風化対策、文化・スポーツ振興の5分野に関し、22項目の主要な取り組みを提言として取りまとめ、復興大臣に提出しました。

このうち、(1)産業・生業(なりわい)の再生・創出の取り組みとしては、スペシャルコンテンツ「次世代の『新エネルギー社会』は福島から始まる」でもご紹介した、浜通り地域などにおける新たな産業の創出を目指す「福島イノベーション・コースト構想」の推進などがかかげられています。

2019年には、復興庁・経済産業省・福島県の三者が、「福島イノベーション・コースト構想を基軸とした産業発展の青写真」をまとめました。翌年の2020年5月、福島県は、この青写真を踏まえ、同構想を位置付けた「重点推進計画」を改定しました。浜通り地域などを「あらゆるチャレンジが可能な地域」とし、「地域の企業が主役」となって、「構想を支える人材育成」を進める、という取り組みの3つの柱とともに、これまでの重点分野(「廃炉」「ロボット・ドローン」「エネルギー・環境・リサイクル」「農林水産」)に加えて、「医療関連」「航空宇宙」の2分野を追加しました。

この構想のもと、福島県浪江町では、次世代エネルギーとして期待される水素エネルギーの実証拠点「福島水素エネルギー研究フィールド(FH2R)」が設置され、再生可能エネルギーを使ったカーボンフリーな水素の製造実験が進められています。

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福島水素エネルギー研究フィールド(FH2R)
(提供)東芝エネルギーシステムズ株式会社

このほかにも、ロボットやドローンの研究開発などが進められている南相馬市など、さまざまな次世代の技術と産業が、福島から芽吹こうとしています。

このように、福島の復興へのあゆみは、着実に前へと進められています。次回は、オンサイトの取り組みについてご紹介します。

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