「エネルギー基本計画」をもっと読み解く⑤:脱炭素電源としての原子力の活用

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2025年2月、「第7次エネルギー基本計画」が閣議決定されました。世界では、ロシアのウクライナ侵略によるエネルギー危機や中東情勢の不安定化、それにともなう各種コストの増大など、エネルギー安全保障の問題に直面しています。そのなかで、脱炭素化に向けての取り組みや、DX(デジタルトランスフォーメーション)・GX(グリーントランスフォーメーション)の進展により今後増えるとも予想される電力需要への対応も必須です。将来的なエネルギー動向が不透明な状態で、日本はどのようなかじ取りをしていくのか、シリーズで解説していきます。今回は原子力についてどのような方向性が示されたのかご紹介しましょう。

原子力は安定的に電気を供給できる「脱炭素電源」

第7次エネルギー基本計画では、下記のまとめ記事でもご紹介したように、DX・GXにともなって、今後、電力需要の増加が見込まれることが指摘されています。たとえば、日常的に使用され始めたAIを支えるデータセンターや、さまざまなデジタルデバイスに必要な半導体の工場は、多くの安定的な電力を必要とします。こうした増加する電力ニーズに対しては、国際的に遜色のない価格の、かつ安定的な、「脱炭素電源」(温室効果ガス排出量ゼロで電気をつくる方法)を確保することが不可欠です。

そこで、第7次エネルギー基本計画では、「再生可能エネルギー(再エネ)か原子力か」ではなく、脱炭素電源である再エネと原子力を共に最大限活用していくことの重要性が示されています。

なぜ原子力の最大限活用がうたわれているのでしょうか。その理由は、原子力発電(原発)が持つ次のような特性にあります。

原発の特性
リストアイコン 安定供給性が高い
リストアイコン 技術自給率が高い
リストアイコン ほかの電源と比べて遜色のないコスト水準
リストアイコン 変動が少ない

原発は、常に一定量の電力を発電できる「安定供給性」のある電源で、「変動」が少ない電源です。これは、昼夜問わず稼働するデータセンターや半導体工場など、新しい電力需要にもマッチする特性といえます。

さらに、日本の原発の大きな特性として、部品の多くが国内で製造されており、国産化率が高い(技術自給率が高い)という点があげられます。10年ほど前の調査では、原発を設置するために必要な技術のうち、約90%を国内企業が持っていることがわかっています。

原子力発電所の国産化率の推移
運転開始年1966年~1997年までの各原子力発電所の国産化率の推移を表で表しています。

(出典)独立行政法人経済産業研究(RIETI)「原子力発電の効率化と産業政策-国産化と改良標準化-」、電力会社HP (第41回 総合資源エネルギー調査会 電力・ガス事業分科会 原子力小委員会「資料1 原子力に関する動向と課題・論点(事務局提出資料)」(PDF形式:6,595KB)より)

日本のエネルギー・原子力政策は、2011年に起こった東京電力福島第一原子力発電所事故からの教訓を踏まえ、「安全性の確保」を大前提としており、その方針に変わりはありません。原子力の活用にあたっては、これからも、国民の信頼獲得に努めていく必要があり、そのためには、原発が立地している地域との共生や、国民各層とのコミュニケーションの深化、充実といった「地域の理解」を得る取り組みは欠かせません。

加えて、原発で使い終えた燃料(使用済燃料)を再利用する「核燃料サイクル」や、廃炉、高レベル放射性廃棄物の「最終処分」といった、バックエンドプロセスも加速化せねばなりません。

原発は、このように、「安全性の確保」と「地域の理解」を大前提にしながら、最大限活用していくことが求められています。

CO2削減待ったなしの中、世界でも高まる原子力活用の機運

原子力については、近年、世界でもさまざまな動きが起こっています。

2023年の「COP28」でおこなわれた、世界全体の排出削減の進捗状況を評価する「グローバル・ストックテイク」では、「世界の気温上昇を1.5度に抑える」というパリ協定の目標まで隔たりがあることが示されました。こうした各国の排出削減状況や、全世界的に見た進捗の遅れに関する議論をふまえ、あらためて、原子力の活用の有効性についてスポットが当たったのです。決定文書にも、「気候変動に対する解決策の一つ」として原子力の利用が明記されました。

さらに、日本を含む22カ国により、「2050年までに2020年比で世界全体の原発容量を3倍にする」という野心的な目標と、協力方針を掲げた共同宣言も発表されました。なお、その後COP29、COP30で計11ヵ国が賛同し、2025年12月時点では33ヵ国がこの宣言に賛同しています。このように、脱炭素電源としての原子力の活用に世界的な注目が集まっています。

世界の原子力発電設備容量は増加の見通し(高予測シナリオ※)
2023年~2050年までの世界の原子力発電設備容量の見通しをグラフで表しています

※各国の気候変動対応および原子力拡大意向を考慮したシナリオ
(出典)IAEA 「Energy, Electricity and Nuclear Power Estimates for the Period up to 2050(2024 edition)」を基に資源エネルギー庁作成(第41回 総合資源エネルギー調査会 電力・ガス事業分科会 原子力小委員会「資料1 原子力に関する動向と課題・論点(事務局提出資料)」(PDF形式:6,595KB)より)

一方、民間企業の動きに目を転じると、米国アマゾン社やマイクロソフト社、グーグル社といった主要テック企業が、データセンターなどで電力需要が増えるという見通しを背景に、原子力の活用を相次いで公表しています。

企業名概要
アマゾン
(Amazon)
2025年10月、アマゾン、小型モジュール炉(SMR)を開発するX-energy、電力会社のEnergy Northwestの3社が、SMR構想プロジェクト(最大12基のSMR建設、2030年代運転開始)を発表
マイクロソフト
(Microsoft)
2024年9月、米国の発電事業者コンステレーション社は、スリーマイル島原子力発電所1号機を再稼働させ、全発電量を20年間にわたりマイクロソフト社に供給する計画を発表
グーグル
(Google)
2025年10月、NextEra Energyと提携し、2029年初めに休止中のデュアン・アーノルド・エネルギーセンター原子力発電所の稼働を目指す協定を締結すると共に、グーグルが25年間にわたる電力購入契約を締結

スリーマイル島原子力発電所
スリーマイル島原子力発電所の写真です

(出典)米エネルギー省ウェブサイト
※1号機が停止する2019年より前の写真。1979年に事故が起きたのは2号機

第7次エネルギー基本計画が、脱炭素電源として再エネと原子力を共に最大限活用することをかかげた背景には、こうした世界の動きも念頭にあるのです。

安全性を確保することを大前提に、再稼働や革新炉開発を進める

第7次エネルギー基本計画では、原子力について具体的に次のような取り組みをおこなうことが示されています。

まず原発の再稼働については、原子力規制委員会から新規制基準に適合すると認められたものについて、安全性確保と地域の理解を大前提に、原子力産業界の連携や原子力防災対策の強化などに取り組みながら、加速に向け官民を挙げて取り組んでいきます。

一方で、「次世代革新炉」と呼ばれる、新しい安全メカニズムを組み込んだ原子炉については、開発・設置の具体化を進めていくことが示されました。原発の「新設」に関しては、第6次エネルギー基本計画では触れられていませんでしたが、2023年に策定された「GX実現に向けた基本方針」と2023年7月に公表された「脱炭素成長型経済構造移行推進戦略」(GX推進戦略)において、次世代革新炉の開発・建設に取り組むことが記載されました。

第7次エネルギー基本計画では、この「GX推進戦略」をふまえ、原子力に関する文言が改められることとなりました。具体的には、次世代革新炉の開発・設置は、「廃炉を決定した原子炉を持つ事業者の運営する原発のサイト内(敷地内)における、次世代型革新炉への建て替え」を対象とし、地域の産業や雇用の維持・発展に寄与し、地域の理解が得られるものについて進めるとしています。また、前述したバックエンドプロセスの進展もふまえて検討されます。

なお、今回の第7次エネルギー基本計画では、「GX推進戦略」と比較して、同一事業者の所有する原子力発電所であれば同一サイト内でなくともよいという方針の変更がおこなわれています。

さらに、次世代革新炉の研究開発を進めることも明言されました。加えて、現在の技術自給率の高さを維持するため、サプライチェーンや人材の維持・強化も盛り込まれました。日本企業は、原発に必要な大型鍛造品や蒸気発生器、タービンなどで国際競争力を有しています。今後、海外をふくむ新規の原発建設や市場拡大が想定される中で、こうしたサプライチェーンの維持・強化はきわめて重要です。

主要国の原子力サプライチェーンの状況
主要国の原子力サプライチェーンの状況を原発に必要な項目ごとに表で表しています。

(出典)各社HP、各種資料等を基に、資源エネルギー庁作成(第41回 総合資源エネルギー調査会 電力・ガス事業分科会 原子力小委員会「資料1 原子力に関する動向と課題・論点(事務局提出資料)」(PDF形式:6,595KB)より)
(※)米英の鍛造品メーカーは300t以上の重量の大型インゴット加工設備を所有していない

安全性の確保と地域の理解を大前提に、脱炭素と電力需要増の両方に対応するため、より安全性の高い革新技術も開発・導入しながら、新たな原子力政策への取り組みを進めていきます。

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