アジアの脱炭素化と経済成長をめざす「AZEC」(前編)2025年の成果は?

アジアの脱炭素化と経済成長をめざす「AZEC」(前編)2025年の成果は?

(出典:内閣広報室)

2025年10月に「アジア・ゼロエミッション共同体(AZEC)」の第3回首脳会合・閣僚会合がそれぞれマレーシアで開催されました。AZECはアジアの脱炭素化を進めるために創設された枠組みで、現在、日本や、東南アジアの国々、オーストラリアを含む11カ国が参加しています。2023年に第1回の首脳・閣僚会合、2024年に第2回の首脳・閣僚会合が開催され、着実に歩みを進めています。その成果を2回に分けてご紹介します。前編では、本格的な実行へと踏み出した2025年のAZECについて解説します。

アジアの脱炭素に欠かせないAZECの取り組み

東南アジアではGDPに占める製造業の割合が高く、現在もいちじるしい経済成長を続けています。それにともなって、今後も、エネルギー需要が増加すると予測されています。そのエネルギー需要の多くは、CO2が発生する化石燃料(石炭・天然ガスなど)を使った火力発電が担っています。一方で、多くの国では、カーボンニュートラル実現を表明しており、増大する電力需要に対応しながら、同時に脱炭素を実現するという難しい課題に直面しているのです。

主要国の電力調達先比率
東南アジア主要国の電力の調達先の比率について、国別に円グラフで示しています。

脱炭素において再生可能エネルギー(再エネ)の活用は重要ですが、東南アジアでは、日射量や風量に恵まれておらず、太陽光発電や風力発電の潜在力は欧州などと比べると豊かではありません。また、東南アジアでは、今後も、経済成長や人口増加にともない、電力需要が大きく増加することが見込まれます。そのため、再エネだけでなく、土地環境や社会制度などの各国それぞれの状況をふまえ、既存の火力発電所の活用も含め、現実的な道筋にそって、電力需要をまかなう必要があります。とはいえ、脱炭素化の取り組みが遅れるとグローバルなビジネス機会を失うおそれがあります。そのため、アジアでは経済成長と安定したエネルギー供給を両立しながら脱炭素化を進めていくことが必須です。

こうしたアジアの課題の解決に向けて、AZECでは、エネルギー・トランジション(持続可能で環境に配慮した新たなエネルギーシステムへの移行)を進めています。取り組みにあたっては、日本の持つ多様な技術やファイナンスを活用して、それぞれの国の事情に合った「多様な道筋」による「現実的な」方法で、アジアの脱炭素化を進めていくことをめざしています。

AZEC参加国
AZECに参加している11カ国の国旗を表示しています。

2024年には「今後10年のためのアクションプラン」を採択

2024年におこなわれた第2回首脳会合では、「多様な道筋でネットゼロをめざす」というAZECの原則を再確認し、「今後10年のためのアクションプラン」が策定されました。

アクションプランには3つの柱があります。1つ目は、脱炭素化のための活動を促進する「AZECソリューション」です。温室効果ガス(GHG)排出の可視化、トランジション・ファイナンスの促進、農林分野の排出削減や運輸部門の脱炭素化などが含まれています。2つ目は、具体的なプロジェクトをより多く生み出すことです。政府開発援助(ODA)、国際協力銀行(JBIC)といった各種機関を活用して、脱炭素プロジェクトを創出します。3つ目は、カーボンニュートラルに向けた、電力・運輸・産業のセクター別イニシアティブの始動です。知的エンジンとして取り組みを推進する「アジア・ゼロエミッションセンター」も立ち上げられました。

「今後10年のためのアクションプラン」は、個別プロジェクトの推進と政策協調を通じて、電力・運輸・産業という3つのセクター別イニシアティブを促進するための好循環を生み出すことを大きな目的としています。

2025年からはアクションプランを本格的に実行へ

AZEC発足3年目となる2025年は、前年に採択されたアクションプランを本格的に実行する年となりました。

第3回AZEC首脳会合・閣僚会合では、アクションプランにもとづくこれまでの成果・取り組みが確認されました。たとえば、アジア開発銀行(ADB)や国際エネルギー機関(IEA)などが策定した、アジアの現実的なエネルギー移行に必要なトランジション・ファイナンスについてのレポートを発出したほか、AZECでの炭素市場構築に関する国際会合(AZEC-DCM)を通じたGHG排出量の可視化や、質の高い炭素市場の構築に向けた議論の進捗が成果物に盛り込まれました。

実効性を高めるしかけとして、課題解決のためのメカニズムも重要です。「東アジア・アセアン経済研究センター」(ERIA)が、各国の取り組みの現状と課題を整理するプログレスレポートを策定。IEAが進捗状況や取り組み内容をレビューするしくみを取り入れました。また、実務者レベルで、取り組み状況や課題の共有をおこなうフォーラム「AZEC LEAF」を立ち上げています。

加えてAZECでは、民間企業が参画し、各国と協力しながら、具体的なプロジェクトに取り組んでいます。これまでの会合において、それぞれ新たなプロジェクトが公表されており、第3回閣僚会合において公表された覚書(MOU)は、約50件となりました。その結果、立ち上げからこれまでの会合において公表されたプロジェクトは、延べ約540件にのぼります。協力分野についても、これまでの再エネ、水素・アンモニア、CCUSなどから、バイオや生産プロセスの脱炭素化などへも広がりを見せています。

このような民間企業の取り組みを支援するものとして、各国との対話を実施しています。たとえば、インドネシアの脱炭素化に協力するためのプラットフォーム「AZEC Indonesia Joint Task Force」を立ち上げたほか、ベトナムではグリーン成長とエネルギー移行を推進する「AZEC/GX推進ワーキングチーム」を発足させ、早期の事業化をめざすプロジェクトの選定をおこないました。また、タイでも産業の省エネを支援する枠組み「AZEC-SAVE」を立ち上げています。これらに加え、各国との二国間対話などの機会も活用しながら、個別プロジェクトの推進に向けて、議論をおこなっています。

AZEC SAVE立ち上げ
タイにおける産業の省エネを支援する枠組み「AZEC-SAVE」立ち上げ時の写真です。

(出典:株式会社国際協力銀行)

今後も、AZECでは、政府が後押しをしながら、日本や東南アジアの民間企業が主体となって進める具体的なプロジェクトの推進に力を入れていく方針です。

後編では、AZECの枠組みの中で進む、日本企業が参加する具体的なプロジェクトをご紹介します。

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