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2022年12月、今後10年を見据えて、エネルギー安定供給・経済成長・脱炭素を同時に実現する政策をまとめたロードマップ「GX実現に向けた基本方針」をご紹介するシリーズ。前編(「『GX実現』に向けた日本のエネルギー政策(前編)安定供給を前提に脱炭素を進める」参照)に引き続き、後編では、脱炭素社会への移行と経済成長の同時実現に向けて、どのような構想が打ち出されているかをご紹介します。
脱炭素社会の実現と、エネルギーの安定供給を両立させ、日本経済をふたたび成長軌道に乗せていくことを重要課題として示された「GX実現に向けた基本方針」。この中には、大きく分けて、エネルギー政策の全体論と、GXを進めるための方法論の2つが盛り込まれています。
後編では、GXを進める方法として、「成長志向型カーボンプライシング」構想について見ていきましょう。
「2050年カーボンニュートラル」の達成とともに、日本の産業競争力強化・経済成長を実現するためには、さまざまな分野で投資が必要となります。その規模については、政府として、今後 10 年間で 150 兆円を超える規模が必要と想定しています。こうした巨額のGX 投資を官民が協調して実現するために、「成長志向型カーボンプライシング構想」を実行していきます。「カーボンプライシング」とは、炭素に価格をつけて、炭素の排出者の行動を変容させる政策手法です(「脱炭素に向けて各国が取り組む『カーボンプライシング』とは?」参照)。今回の基本方針で示された「成長志向型カーボンプライシング構想」では、新たな国債の発行による先行投資支援や、炭素の排出量取引、炭素に対する賦課金制度の導入など、以下の3つの措置が盛り込まれました。「成長志向型」とある通り、規制と支援を一体化した投資促進策により、経済成長につなげるようなしくみが示されています。
大規模なGX投資を官民協調で実現していくためには、まず国として支援策を講じ、民間投資を後押しする必要があります。そこで、新たに「GX経済移行債」を創設し、これを活用して、国が20兆円規模の先行投資支援を実行することで、官民で150兆円超のGX投資の実現に向け、民間投資を引き出していきます。
企業が自主的に参加するGXリーグにおいて、2023年4月から試行的に「排出量取引制度」がスタート。これをさらに強化する形で2026年度頃から本格的に稼働させます。「排出量取引」とは、各企業の排出実態に応じて、目標以上に削減を達成した企業が、目標達成できずに排出した企業と、排出量を取引することができる制度です。これに加えて、電力の脱炭素化を進めるため、発電事業者に対して「有償オークション」を段階的に導入します。これは、発電事業者に対して、排出量に応じた排出枠の調達を義務付けるとともに、その排出枠を、オークションの対象とするものです。この際、段階的にオークションの対象となる排出枠の比率を上げていきます。導入は2033年度頃の見込みです。また、石油や石炭などの化石燃料の輸入事業者などに対し、炭素の排出量に応じた「賦課金」を、2028年度頃を目途に導入します。これもはじめは低い負担で導入し、段階的に引き上げていきます。
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大規模なGX投資を実現するためには、「GX経済移行債」による国の支援と合わせて、国内外のESG投資(環境・社会・企業統治に配慮している企業におこなう投資)の呼び込みを促し、民間金融機関や機関投資家の力を活用することが必要です。そこで、グリーン・ファイナンス(環境に配慮した事業に特化した金融)の国内市場発展の整備を進めるとともに、炭素を排出する事業活動を脱炭素型事業に移行させるための投融資(トランジション・ファイナンス)に対する国際的な理解を深める取り組みを強化していきます。また、GX分野の中には技術や需要の不透明性が高く、民間金融だけではリスクをとりきれないケースもあるため、公的資金と民間資金を組み合わせた金融手法(ブレンデッド・ファイナンス)の確立に向けて、官民での知見の共有に取り組みます。*****今回の基本方針では、今後のエネルギー政策の方向性とともに、GX実現のための投資を促進する手法や具体的な時期が示されたことが大きなポイントです。また、GX投資によって見込める市場規模や排出削減効果など、それぞれの産業分野についての道行きも、あわせて示されました。詳しい内容については、今後の記事でも取り上げていく予定です。
資源エネルギー庁 長官官房 総務課産業技術環境局 環境政策課
資源エネルギー庁 長官官房 総務課 調査広報室
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