「COP30」で日本の脱炭素技術を世界に発信!持続可能燃料の共同宣言にも注目

COP30で撮影された写真です。

2025年11月10日〜22日まで、世界の国々が気候変動について話し合う「COP30」がブラジルのベレンでおこなわれました。議長国のブラジルをはじめ、イギリス、フランス、ドイツなどから首脳級の参加者があり、日本からは石原宏高環境大臣が日本政府を代表して交渉団長として参加しました。今回は、日本がジャパン・パビリオンやセミナーを通じて発信した、脱炭素に関する技術や取り組みを中心に紹介します。

日本が世界に発信する3つの基本メッセージ

アマゾン川の河口の街、ベレンで開催された「国連気候変動枠組条約第30回締約国会議」(COP30)では、ポルトガル語で共同作業を意味する「ムラチオ」がテーマとなり、パリ協定の実施の加速と国際協力の進展について議論されました。その成果は最終日に「ベレン・ポリティカル・パッケージ」として発表されています。

日本は多くの交渉の場に参加して議論に貢献したほか、ジャパン・パビリオンでの技術展示や、さまざまなイニシアチブへの賛同を表明するなど、独自の情報発信を積極的におこないました。

日本の基本的なスタンスとして、世界に発信するメッセージは大きく3つあります。1つ目は、排出削減・経済成長・エネルギー安定供給の3つの同時実現(トリプル・ブレイクスルー)の考え方です。2つ目は、2050年カーボンニュートラルを達成する上で多様な道筋(マルチパスウェイ)が重要であること。3つ目は、日本の温室効果ガス(GHG)排出量は世界全体の3%ですが、自国の脱炭素だけでなく世界の脱炭素化に貢献していく必要があることです。とりわけ、世界のGHG排出量の半分以上を占めるアジアの脱炭素は重要です。

日本が発信する3つのメッセージ
COP30で世界に向けて発信した、日本の基本的なスタンスである3つのメッセージを図で表しています。

地球全体のネットゼロをめざすのはきわめて野心的な目標であり、各国にとって実践可能な取り組みでなくては目標の実現はありえません。日本の技術を通じて世界の脱炭素に貢献していくことは重要なことです。

「ベレン持続可能燃料4倍宣言」を共同提案

COP30において、ブラジル、日本、イタリアが共同提案する形で立ち上げたのが「ベレン持続可能燃料4倍宣言」です。バイオ燃料(「ガソリンのカーボンニュートラル移行に欠かせない『バイオエタノール』とは?」参照、「飛行機もクリーンな乗り物に!持続可能なジェット燃料『SAF』とは?」参照)や合成燃料(「ガソリンに代わる新燃料の原料は、なんとCO2!?」参照)・合成メタンといった持続可能燃料の需要を、2035年までに2024年比で少なくとも4倍以上に拡大するという目標をかかげています。目標達成のために、日本も必要な取り組みや国際協力を積極的に進めていく方針です。

航空や船舶、道路交通といった運輸部門や産業部門など幅広い分野で持続可能燃料の活用を進めるとともに、とくに道路交通分野において、持続可能燃料と、ハイブリッドエンジンなどの高性能なモビリティ機器を組み合わせて脱炭素を進める重要性を強調しています。

日本は、持続可能燃料の活用について、カーボンニュートラルへ向けた多様な道筋のひとつとして重要視しています。2025年9月15日には、「持続可能燃料閣僚会議」を大阪で初開催しました。この会議は、ISFM(アイスファム:持続可能な燃料とモビリティのためのイニシアチブ)の取り組みの一環として日本とブラジルが共催したものです。席上で、「国際エネルギー機関」(IEA)から「持続可能な燃料の生産と利用は、2035年までに2024年比で少なくとも4倍になる」旨のプレゼンが実施されたほか、同じ趣旨のレポートもCOP30開催前に発出されており、COP30での「持続可能燃料4倍宣言」は、大阪の会議での議論の成果を具体的な取り組みにつなげるものでもあります。

「ベレン持続可能燃料4倍宣言」は、10月14日のPre-COPでブラジルが主導して宣言を立ち上げ、11月7日のCOPサミットでブラジルのルーラ大統領から正式発表されました。11月14日現在で23カ国・地域が支持を表明しており、今後も賛同国を募っていく方針です。

11月7日のCOPサミットで、外務省の高橋気候変動担当大使による支持表明をおこなったときの写真および、11月14日におこなわれた閣僚級イベントの様子の写真です。

独自技術や取り組みを紹介、ジャパン・パビリオンとセミナー

COP30の会場にはジャパン・パビリオンを設置し、技術展示として9社が出展しました。会期を通じて日本の再エネ、蓄電、省エネ、建築資材、衛星データの利活用、廃棄物の再利用などに関する技術や取り組みを発信しました。

また、冒頭で述べた「日本の3つの基本メッセージ」を発信するため、期間中に30のセミナーを開催しました。AZECの下での日本とインドネシア間の連携強化、トランジション・ファイナンスの促進、産業の脱炭素化、持続可能な燃料の活用など、そのテーマは多様な分野におよんでいます。

COP30ジャパン・パビリオンで実施された経済産業省主催・関連セミナー
ジャパン・パビリオンで実施された経済産業省主催・関連セミナーの一覧表です。

自工会・経団連が持続可能燃料や多様な道筋について発信

好評だったセミナーのうち、一般社団法人日本自動車工業会(自工会)主催の「カーボンニュートラルに向けた多様な選択肢―持続可能な燃料を活用した脱炭素化の推進―」についてご紹介しましょう。

道路交通分野においては、多様な道筋での脱炭素化、とくに、バイオ燃料などの持続可能燃料とハイブリッドエンジンとの組み合わせの重要性が注目されています。このセミナーの冒頭には、連携を深めるブラジル、日本、イタリアの政府関係者、パネルディスカッションには、IEA、ブラジル自工会(ANFAVEA)、欧州自工会(ACEA)、米国オークリッジ国立研究所、欧州燃料製造連盟(FuelsEurope)など、世界各国のさまざまなステークホルダーが参加。それぞれの視点で、道路交通部門での持続可能燃料の活用は、脱炭素化だけでなく、経済成長、エネルギー安全保障の観点でも重要であり、電化だけでなく多様な道筋が必要であるというメッセージが述べられました。

このセミナーを通じて、前出の「ベレン持続可能燃料4倍宣言」をはじめとした国際連携の重要性、さらには官民産学による取り組みの一層の推進が再確認されました。

同セミナーの登壇者集合写真
ジャパン・パビリオンでおこなわれたセミナー「持続可能な燃料を活用した脱炭素化の推進」の登壇者の集合写真です。

ジャパン・パビリオンの展示やセミナーは日々盛況で、20カ国以上から閣僚級の来場者が視察に訪れました。COP30は日本の脱炭素技術を世界に向けて力強く発信する場となりました。

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