あらためて知りたい、原発の「再稼働」~なぜ必要なの?ほんとうに安全なの?

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2011年に起こった東京電力・福島第一原子力発電所(福島第一原発)の事故の後、日本全国の原発は、安全対策をおこなうために運転を停止しました。その後、さまざまなルールの見直しと、それに応じた安全対策の追加・強化がおこなわれ、いくつかの原発は「再稼働」へといたっています。今回は、あらためて原発の「再稼働」のプロセスと、日本の原発の現状を一緒に見ていきましょう。

日本の原発、いまの現状は?再稼働までのプロセスは?

2025年8月時点で、日本における原発の状況は、次の図のようになっています。

原発の現状(2025年8月5日時点)
2025年8月5日時点の各原発の状況を日本地図上に示しています

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現在、再稼働している原発は14基。これらの原発は、どのような判断を経て、再稼働にいたったのでしょう?また、「設置変更許可」「審査中」「未申請」となっている原発は、どういう状態なのでしょう?それを理解するために、再稼働までのプロセスをあらためて見てみましょう。

独立した機関「原子力規制委員会」が安全性を審査

原発の再稼働を希望する電力会社は、まず「原子力規制委員会」という機関に申請して審査を受け、許可を得なくてはなりません。「未申請」は審査を申請していない原発、「審査中」は安全性についての審査を受けている最中の原発です。

原子力規制委員会とは、2012年に福島第一原発の事故をふまえて新しく設置された、独立性の高い機関です。2011年までは、原子力発電を推進する組織と規制する組織が同じ経済産業省の下に存在していましたが、原発事故の教訓のひとつとしてこれを分離し、新たに環境省の外部組織として発足しました。専門家で構成され、政府の方針にかかわらず、原発の安全性の確保について科学的・技術的に審査し、判断します。

事故後、審査の基準を見直して新しい基準に

審査の基準となるのは、原子力規制委員会が2013年に策定した新しい規制基準です。福島第一原発の事故をふまえ、IAEA(国際原子力機関)や諸外国の規制基準も考慮して策定されたもので、これまでの基準とくらべてみると、多くの項目が新設または強化されたことがわかります。

原子力発電に関する新規性基準
新規性基準を一覧にして記載しています

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これまでの規制基準と「新規性基準」の違い
これまでの規制基準と「新規性基準」の違いを図で示しています

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福島第一原発の事故は、電源の水没により核燃料の冷却ができなくなったことが大きな要因のひとつと言われています。そこで、新規制基準では、津波や地震の想定を大きく引き上げ、それに耐えうる設備や、電源の設置場所の工夫などの取り組みを求めています。また、事故が起きた際には、事故の拡大を防ぐような設備や対策を備えることも要求しています。地震以外にも火山や竜巻、森林火災などの自然災害への対策が必要となっています。

さらに、「意図的な航空機衝突への対応」といった、テロへの対策も盛り込まれています。新規制基準では、そうした状況が生じた場合の安全対策も求めています。

原発が立地する地元の人々の理解も必須

このような原子力規制委員会の審査を経て、新規制基準をクリアしたと認められた原発は、「設置変更許可」を受けます。2025年8月時点で「設置変更許可」を受けているのは、東京電力・柏崎刈羽原子力発電所の6号機と7号機、日本原子力発電・東海第二発電所、北海道電力・泊発電所3号機の、合計4基です。

とはいえ、審査で認められたからといって、すぐに原発を再稼働できるわけではありません。原発は、日本のエネルギー問題の解決に役立とうと協力を申し出た自治体があってこそ、設置・建設されたものです。再稼働にあたっては、地元の理解を得ることは欠かせず、「設置変更許可」の4基は、立地地域、および周辺地域の方々へ説明などをおこなう、まさに地元の理解が得られるように取り組んでいる段階にあります。

原発の「再稼働」は必要なの?

2011年の原発停止後、これらのプロセスを経て最初に再稼働にいたった原発は、九州電力・川内原子力発電所の「加圧水型炉(PWR)」です(「世界の原子力技術の動向を追う」 参照)。その後、西日本方面で再稼働が進んできました。

一方、東日本方面では、2024年11月、東北電力・女川原子力発電所の2号機が震災後初めて再稼働しました。「沸騰水型炉(BWR)」というタイプで(「世界の原子力技術の動向を追う」 参照)、この型としては初の再稼働となりました。

原発の再稼働がはたして必要かという議論もあります。この議論について考えるには、日本を取り巻くエネルギー安全保障の問題に目を向ける必要があります。

日本はエネルギー資源に乏しく、エネルギー自給率は2023年で15.3%と先進国の中でも低い水準です。エネルギー資源を海外に依存すると、世界情勢の変化に大きく影響を受けることとなり、エネルギーの安定供給を脅かしかねません。たとえば、ロシアのウクライナ侵略では、国際的なエネルギー市場の混乱が起こり、エネルギー価格の高騰につながるなど、日本も影響を受けました。また、日本は原油の9割以上を軍事的な緊張の高まりがある中東地域に依存しており、「エネルギー安全保障」は、喫緊の課題となっています。

一方、世界では「カーボンニュートラル」の実現が求められています。日本は、社会や産業構造をクリーンエネルギー中心に転換する「GX(グリーントランスフォーメーション)」を掲げ、エネルギーの安定供給と経済成長、そして脱炭素を同時に実現する政策を進めています。それには、CO2を排出しない「脱炭素電源」の確保が重要となります。

これらのさまざまな状況をふまえると、ひとつのエネルギー源に依存するのではなく、バランス良くさまざまなエネルギー源の活用を進めていくことが重要となります。原発は、脱炭素電源であり、将来電力需要の増加が予測される中で、電気を安定的に低コストで発電できる、いまの日本にとって重要なエネルギーの選択肢のひとつなのです。

原発は本当に安全なの?

再稼働にあたっては、原発は本当に安全なのかという議論もよく起こります。そこであらためて考えたいのは、「安全」の追求には果てがないということです。

2011年の原発事故からの反省のひとつは、「安全神話」に陥っていたのではないか、「これで事故は起きない」と考えていたのではないか、ということです。しかし、そう考えた瞬間に、安全を追求する取り組みは終わってしまいます。安全を確保するためには、安全を追求し続け、不断の努力で安全向上に取り組むことが重要なのです。国はいま、そうした強い決意を掲げ、さまざまな取り組みを進めています。

原子力規制委員会が、万が一事故が起きた場合の対策も求めているのは、「安全神話」に二度と陥らないという教訓からです。現在、内閣府が定めた13の原発立地自治体やその周辺地域には、「地域原子力防災協議会」が設置されています。地域原子力防災協議会では、原子力規制委員会が策定した「原子力災害対策指針」などに沿って関係自治体が策定した地域防災計画・避難計画を含めた緊急時対応について、計画を策定する関係自治体に加え、内閣府や国の関係省庁も参加し、とりまとめ、確認をおこなっています。

また、地域住民が参加する大規模な避難訓練(原子力総合防災訓練)もおこなわれています。鹿児島県では、2024年に294機関・約4,820人が参加した訓練がおこなわれました。同年の能登半島地震をふまえ、孤立した地域からどのように避難するかというシナリオも盛り込まれました。

このように、原発に関する安全の追求は、近年起こった災害からの知見も取り入れながら、いまも続けられています。これからも、原子力事業者・国・自治体などさまざまな関係者が一体となって、安全確保を大前提とした再稼働に取り組んでいきます。

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