ALPS処理水の海洋放出から1年。安全性の確認とモニタリングの状況は?
SAF製造に向けて国内外の企業がいよいよ本格始動
飛行機もクリーンな乗り物に!持続可能なジェット燃料「SAF」とは?
目前に迫る水素社会の実現に向けて~「水素社会推進法」が成立 (後編)クリーンな水素の利活用へ
各国首脳の集合写真(岸田首相は最後列右側)"December 1 - World Climate Action Summit" by UN Climate Change is licensed underCC BY 2.0
2023年11月30日から12月13日まで、世界の国々が気候変動の問題を話し合う「COP28」がUAEのドバイで開催されました。この会議で大きな焦点となったのは、パリ協定で掲げられた目標達成に向けて、世界全体の進捗状況を評価する「グローバル・ストックテイク」が初めて実施されたことです。これを含め、COP28ではどのような成果があったのか、また日本がどのような交渉や発信をおこなったのか、2回にわたってご紹介します。
「COP28」は、温室効果ガス(GHG)の排出削減目標や気候変動への対策について議論される「国連気候変動枠組条約締約国会議」の28回目の会議です。締約国198カ国などが参加し、日本からも岸田首相が首脳級会合に出席したほか、各省庁の閣僚や関係者が多数出席しました。
今回の会議の焦点となったのが、パリ協定で掲げられた目標達成に向けて、世界全体の進捗状況を評価する「グローバル・ストックテイク(GST)」の実施です。2015年のCOP21で採択された「パリ協定」では、「世界の平均気温上昇を産業革命以前に比べて2℃より十分低く保ち、1.5℃に抑える努力をする」という目標が掲げられました。GSTは、この目標達成に向けた世界全体の進捗を評価するしくみで、5年ごとにおこなわれます。今回、パリ協定発効以降、初めてGSTが実施されました。GSTはパリ協定の目標達成状況について世界全体の進捗を評価するとともに、各国のおこなうべき行動に示唆を与えます。
大きい画像で見る
とはいえ、COPの場で、実際に進捗の情報収集や分析がおこなわれるわけではありません。今回のGSTに向けては、2021年11月から情報収集が開始されており、また、計3回におよぶ「技術対話」と呼ばれる会議を通じた技術評価が2022年から実施されてきました。さらに2023年9月には、技術対話の「統合報告書」も公表されています。COPは、こうした情報収集と技術評価の結果を世界各国が検討し、その議論をまとめ、今後必要となる対策に合意する場なのです。各国は5年ごとにおこなわれるGSTの結果を踏まえ、自国の温室効果ガスの排出削減目標(NDC)を更新します。さらに各国は、策定したNDCに向けた施策を実施し、その報告を2年ごとに提出しなければなりません。これはパリ協定第13条で「強化された透明性の枠組」として義務付けられています。この報告は、次回のGSTの情報源ともなります。このように、GSTに基づいて、各国がNDCを策定し、実施の報告をおこない、それが次のGSTに生かされる、というサイクルを繰り返すことで、着実にパリ協定の目標達成に向かうことを目指しています。
パリ協定におけるグローバル・ストックテイクの位置づけ
COP28で初めておこなわれたグローバル・ストックテイクでは、その成果として、決定文書が採択されました。決定では、
が強調されました。また、GHG排出削減を指す「緩和」に関しては、対策強化に向けて、次の内容が盛り込まれました。まず、1.5度目標を達成するために、2025年までにGHG排出をピークアウトさせ、2030年までに43%、2035年までに60%を排出削減する必要性が認識されました。また、パリ協定と各国の異なる状況、道筋、アプローチを認識したうえで、世界全体の取り組みを推し進めることを呼びかける、とされています。具体的には、
などが明記されました。
COP28の期間中に、日本はさまざまな気候変動に関する国際イニシアティブに参加したり、関連会合に出席し、日本の取り組みについて発信しました。以下はその一部です。
COP28会場内でおこなわれたこれらのイニシアティブ関連会合では、日本の政策や貢献について国外に広く発信をおこないました。パリ協定の世界全体での1.5度目標達成に向けては、現在の進捗状況ではまだ隔たりがあることが今回のGSTで明らかとなりました。これを軌道に乗せていくためには、気候変動対策を世界全体の取り組みとして進めていくことが不可欠であり、そのために、まずは各国の事情を踏まえた多様な道筋のもとで自国の削減を着実に進めていくことが大事です。その上で、各国の強みを生かし、世界全体の削減にも貢献していくことが不可欠です。各国が今回のGSTの成果を活かしてどのようなNDCを策定し、気候変動施策を実行していくかが注目されます。次回は、COP28会場に設置されたジャパン・パビリオンなどで発信された日本の取り組みや企業の展示などについてご紹介します。
産業技術環境局 地球環境対策室
長官官房 総務課 調査広報室
※掲載内容は公開日時点のものであり、時間経過などにともなって状況が異なっている場合もございます。あらかじめご了承ください。
従来の太陽電池のデメリットを解決する新たな技術として、「ペロブスカイト太陽電池」が注目されています。これまでの太陽電池との違いやメリットについて、分かりやすくご紹介します。