「エネルギー基本計画」をもっと読み解く④:安定供給と脱炭素の両立をめざす電力システム改革
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日本のエネルギー政策の基本的な方向性を示す「第7次エネルギー基本計画」が2025年2月に閣議決定されました。世界は今、エネルギー安全保障の問題に直面しています。そのなかで、脱炭素化に向けても取り組むと同時に、今後増えると予想される電力需要に対応する必要にも迫られています。将来的なエネルギー動向が不透明な状態で、日本はどのようなかじ取りをしていくのか、シリーズで解説していきます。今回は、安定的かつ持続可能なエネルギーシステムを構築するための、電力システム改革について取り上げます。
電力システムとは、発電から消費にいたるまでの送配電網などの設備や、その運用などをふくめた大規模なシステムのことです。これまでも、電力をめぐるさまざまな課題に対応すべく、システム改革がなされてきました。改革の重要な目的は「安定供給を確保すること」「電気料金を最大限抑制すること」「需要家の選択肢や事業者の事業機会を拡大すること」です。これらの取り組みによって、電力の広域融通のしくみが構築されたり(「電力システム改革の鍵を握る『広域機関』」参照)、電力の小売自由化が進み、料金メニューが多様化し、需要家の選択肢の拡大が一定程度進んだりなど、さまざまな進捗がありました。しかし今、電力システムを取り巻く環境はますます変化しています。これからの社会はDX(デジタルトランスフォーメーション)やGX(グリーントランスフォーメーション)が進展し、電力需要の増加が見込まれます。国際的にはカーボンニュートラルへの対応が加速し、電力システムにおいても脱炭素を求められるようになってきました。加えて地政学的な要因から起こる燃料価格高騰、物価高による電気料金の上昇などにも対応しなければなりません。
こうした状況を踏まえ、第7次エネルギー基本計画では、これからの電力システムがめざすべき方向性として、「安定的な電力供給を実現する」ことに加え、「電力システムの脱炭素化を進める」「安定供給や脱炭素化、物価上昇等による価格への影響を抑制しつつ、需要家に安定的な価格水準で電気を供給できる環境を整備する」という3点が掲げられました。
電力システム改革のこれまでの評価とこれから目指すべき方向性
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では、これからの電力システムがめざすべき方向性を実現するために、どのような方策が必要になるでしょうか。2025年においては、第7次エネルギー基本計画を踏まえた上で課題を整理し、それぞれどのように対応していくか、具体的な検討を進めてきました。ここでは、検討の結果、12月に審議会で整理された方向性について、概略を紹介します。
安定供給に必要な規模の脱炭素電源(CO2を排出せずに電気をつくる方法)を確保していくためには、大きな投資が必要です。しかし、将来的な電力収入が不確実な状態では、事業者の抱えるリスクが大きくなり、大規模で長期にわたる電源投資をためらうようになります。長期的かつ継続的に必要な電源投資がおこなわれるよう、市場環境の変化による収入や諸費用の変動に対応できるような制度や、市場環境の整備をおこないます。また、今後、電力の需要が増加すると見込まれる中で、中長期的な見通しを立てて、それに見合う電力を供給できるよう、制度の見直しなどを進めていきます。加えて、脱炭素に向けて火力発電の発電量を低減していくことは重要ですが、電力の安定供給のためには、「供給力」としての役割だけでなく、天候によって変動する再生可能エネルギー(再エネ:太陽光、風力など)の出力(発電量)などをおぎなう「調整力」として、火力発電を維持・確保していくことも必要です。燃料価格の変動リスクが高まっている中、安定供給に必要となる燃料の確保に向けた検討を進めていきます。
DXやGXの進展による電力需要の増加に対応し、すみやかに、かつ確実に電力を供給するためには、送配電設備の計画的な整備が重要です。整備の促進にあたっては、電力会社の初期投資の資金を確保することが課題となります。そこで、電力会社が設備の運転開始後に受け取る予定の料金を前倒しして交付するなど、資金調達の円滑化に向けた措置を講じていきます。また、エリア間で電力を融通するための「地域間連系線」だけでなく、各エリアの中で整備・運用される「地内系統」についても、送配電網を管理・運用する電力会社などが計画を策定した上で、国や、電力の需給調整・送配電網の計画策定などをおこなう「電力広域的運営推進機関」(以下、広域機関)(「電力システム改革の鍵を握る『広域機関』」参照)がその内容を確認し、整備にかかる資金を貸し付け対象にするといったしくみを構築していきます。さらに、脱炭素電源の豊富な地域に産業を集積させる「GX産業立地政策」(「脱炭素と経済成長を同時に実現!『GX政策』の今」参照)との連携によって、大規模な電力需要のある施設を送配電網などの観点から望ましい地域に立地誘導するなどの取り組みを進めます。自然条件で出力が変わる再エネの大量導入が進むと、電力需給のバランスを調整することがさらに難しくなります。そのため、需給の状況や実際に送ることのできる電気の量など、さまざまな条件を踏まえながら、電力と調整力を同時に取引する「同時市場」と呼ばれるしくみの導入に向けた検討を進めていきます。
脱炭素電源のニーズが高まる中、小売事業では安定した水準の価格による電力供給が求められます。これまで、燃料価格が高騰するなど市場環境が厳しい局面においては、小売事業者の撤退や電気料金の高騰などによって、市場経済や国民生活に混乱や負担が生じました。このため、小売事業者が安定して事業をおこなうことができるよう、必要な規律や制度の整備を進めていきます。また、小売事業者が価格の高騰に左右されず、中長期で安定的に電力を調達するとともに、発電事業の予見性を高めることなどを目的として、中長期取引市場の整備を進めていきます。
電力需要の増加に対応し、安定供給を大前提に脱炭素化を進めるには、長期にわたり、大規模な脱炭素電源や送配電網への投資が不可欠です。需要家ニーズへの対応を迅速化するとともに、大規模な投資を促進するため、広域機関が財政融資などを活用し、民間金融機関と協調して電気事業者に対し融資をおこなう制度の創設を検討していきます。今後は、この方向性に基づいて、必要な施策を具体化するため、さらに詳細の検討を進めていきます。
電力・ガス事業部 電力産業・市場室電力・ガス事業部 電力基盤整備課
長官官房 総務課 調査広報室
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