「COP28」で発信!日本の最先端の環境技術

COP28の期間中、ジャパン・パビリオンで開催された「Tech for Transition」の集合写真です。

ジャパン・パビリオンで開催された「Tech for Transition」の集合写真

2023年11月30日から2週間にわたり、アラブ首長国連邦(UAE)のドバイで開催された「COP28」。世界の国々が気候変動の問題を話し合うこの会議では、国際交渉のほかにも、各国や国際機関が展示やセミナーのためのパビリオンを設けて、技術の紹介や意見交換をおこなうサイドイベントが開催されました。日本も会場内のジャパン・パビリオンで、脱炭素化を支える最先端の製品やサービスを発信しました。気候変動対策を経済成長と両立するために、どのようなソリューションが提案されたのか、ご紹介します。

ジャパン・パビリオンでは日本の環境技術や取り組みを紹介

COP28の会場内に設けられたジャパン・パビリオンでは、会議の期間を通じて、世界の脱炭素化や気候変動適応に貢献する日本の環境技術の展示や気候変動の取り組みに関するセミナーが実施されました。

12月2日には、日本・UAEの企業代表者が参加して、ジャパン・パビリオンで「Action to Zero led by Japan and UAE」のイベントが開催され、岸田首相がスピーチをおこないました。

ジャパン・パビリオンで開催された「Action to Zero led by Japan and UAE」で、岸田首相がスピーチしている写真です。

(出典)内閣広報室

スピーチでは、中東地域をクリーンエネルギー・脱炭素のグローバルなハブとする「グローバル・グリーン・エネルギー・ハブ構想」や、先端技術分野での協力枠組みである「日・UAE先端技術調整スキーム(JU-CAT)」が紹介されました。さらに、産業の脱炭素化の実現、アジア・ゼロエミッション共同体(AZEC)構想を通じてアジアの脱炭素化に具体的な形で貢献していくことも宣言。世界全体でのネット・ゼロの実現に向けて、日本の金融力や技術力を総動員し、アジアや中東と協力しながら、脱炭素と経済成長を実現していくことを発信しました。

COP28の期間中、ジャパン・パビリオンでは、全部で40コマにわたるセミナーが開催されました。以下は経済産業省が主催したセミナーです。

ネット・ゼロ社会に向けた削減貢献量の適切な評価

WBCSD(持続可能な開発のための経済人会議)との共催イベント「ネット・ゼロ社会に向けた削減貢献量の適切な評価」を開催しました。SCOPE 1-3の排出量だけでは十分に評価できない、企業の脱炭素ソリューションによる貢献を可視化することの重要性や、「GXリーグ」(カーボンニュートラル実現に向けた挑戦をおこない、国際ビジネスで勝てる企業群がグリーントランスフォーメーション[GX]を牽引する枠組み)による金融機関における企業評価への削減貢献量の活用事例集などを発信しました。

その後のパネルディスカッションでは、Schneider electric、Veolia、Weir Minerals、日立製作所、パナソニックといったグローバル企業や、BlackRock、GFANZ、野村アセットマネジメントといった金融機関を交えて削減貢献量のルール整備に向けて議論をおこないました。

ジャパン・パビリオンでおこなわれた「ネット・ゼロ社会に向けた削減貢献量の適切な評価」のセミナーでの集合写真です。

セミナー集合写真

Taking Action together with ASEAN

経済産業省主体で、アジア・ゼロエミッション共同体(AZEC)構想のイベント、「Taking Action together with ASEAN」を開催しました。AZECとは、アジア各国が脱炭素化とエネルギートランジションに協力することを目的に打ち出された構想です。冒頭で吉田経済産業大臣政務官が挨拶をおこない、ネット・ゼロという「共通のゴール」に向けて、「多様な道筋」による移行の重要性とともに、AZEC、CEFIA(Cleaner Energy Future Initiative for ASEAN=脱炭素技術の普及と政策・制度構築を民間企業主導で進めることを目的に日本政府が提案したイニシアティブ)など、アジア地域のエネルギートランジションを支援するための日本の取り組みについて発信しました。

ASEANからは、インドネシアのアリフィン・エネルギー鉱物資源大臣、ERIA 渡辺事務総長が出席し挨拶したほか、ベトナム、インドネシア、マレーシアの政府高官が脱炭素に向けた取り組みを紹介しました。

AZECのイベント「Taking Action together with ASEAN」での集合写真です。

ジャパン・パビリオンにて、AZEC集合写真

また、日本企業からは、王子ホールディングスが森林保全、積水化学工業 がペロブスカイト太陽電池、IHIがアンモニア、三菱UFJ銀行がトランジション・ファイナンスについて、取り組みを紹介しました。

GX 投資拡大における国債の役割

今年度から世界初の国としてのトランジションボンド(脱炭素戦略にのっとった事業の資金用途にあてるための債券)として発行される「GX 経済移行債」について、経済産業省・財務省・環境省主催でセミナーを開催し、日本のGX政策や具体的な取り組みを紹介しました。

セミナー「GX 投資拡大における国債の役割」でのパネルディスカッションの写真です。

パネルディスカッションの様子

パネルディスカッションでは、野村証券、トランジション ・ボンド発行経験のある欧州復興開発銀行、アクサ・インベストメント・マネージャーズが議論をおこない、GX 経済移行債への高い期待が示されました。

Tech for Transition

技術を通じたネット・ゼロ社会への移行に焦点を当てたイベントです。吉田政務官が冒頭挨拶をおこない、日本はネット・ゼロに向けてオントラック(軌道に乗っている)であることや、排出削減、経済成長、エネルギー安定供給の同時実現、ネット・ゼロという共通のゴールに向けた多様な道筋の重要性について発信しました。

また、日本企業からのプレゼンおよびパネルティスカッションでは、住友林業、パナソニック、JEPLANが、技術による気候変動の緩和(GHG排出を抑えること)・適応(すでに起きている気候変動の影響を防止し軽減する備えと、新しい気候条件を利用するための対策への貢献)の可視化とルール整備の重要性について議論しました。

イベント「Tech for Transition」でのパネルディスカッションの写真です。

パネルディスカッションの様子

さらに、日本とUAE のスタートアップ企業によるMOU(覚書)の披露、COP28 事務局(UAE政府)からの挨拶がおこなわれ、日UAE 間の脱炭素技術の協力について紹介されました。

企業による最先端の製品やサービスも展示

ジャパン・パビリオンでは、企業による15件の実地展示もおこなわれ、説明員が模型などの展示物を使って解説しました。

AZECプロジェクトでもある水素タービンの説明を聞く岸田首相の写真です。

AZECプロジェクトでもある水素タービンの説明を聞く岸田首相

展示では、気候変動対策を経済成長と両立するためのソリューションを提供するため、エネルギー供給、住居、モビリティ、産業、エネルギー、適応などの分野において、日本企業の最先端の製品・サービスが紹介されました。

ジャパン・パビリオンにおける展示製品・サービス
ジャパン・パビリオンにおける展示製品・サービスと事業者名を表で示しています。

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革新的な技術を持つスタートアップも出展

このジャパン・パビリオンとは別に、COP28会場には特別にスタートアップビレッジが設けられました。日本からはスタートアップ10社が出展し、脱炭素や気候変動適応技術などの展示をおこないました。

COP28会場に設けられたスタートアップビレッジの風景写真です。

スタートアップビレッジの様子

スタートアップビレッジを訪れたUAEのジャーベル議長と吉田経済産業大臣政務官が話している写真です。

スタートアップビレッジを訪れたUAEのジャーベル議長と話す吉田経済産業大臣政務官

この出展は、革新的な技術力を持つ日本のスタートアップとUAEの投資家とを結びつけるため、2023年1月に日本-UAE政府間で設立された「日UAE先端技術調整スキーム」の具体的な成果でもあり、今後の日UAE協力の進展が期待されます。

日UAE先端技術調整スキームのスタートアップ展示
日UAE先端技術調整スキームのスタートアップ展示について、企業名と展示された技術の内容を表で示しています。

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COP28では、ジャパン・パビリオンへの出展などを通じて、脱炭素化に貢献する日本の先端技術が世界に向けて発信されました。

グローバル・ストックテイクで採択された決定文書にもある通り、「世界の気温上昇を1.5度に抑える」というパリ協定の目標達成に向けた進捗はオントラック(軌道に乗っている)ではありません。しかし、気候変動への対応は世界にとって共通の目的であり、より一層の行動と支援が必要です。日本は、脱炭素と経済成長を同時に実現できるよう、技術力や金融力を活用し、世界の脱炭素化に貢献していきます。

また、気候変動対策には、政府や企業だけでなく、国民も含めたさまざまなレベルでの取り組みが必要となります。COP28を振り返りつつ、私たち一人ひとりが、何ができるかを考え、行動していきましょう。

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