「COP28」開催直前!知っておくと理解が進む、「COP27」をおさらいしよう

COP27の写真です。

2023年11月30日から、世界の国々が気候変動の問題を話し合う「COP28」が開催されます。開催に先立って、「COP28」をより深く理解するために、近年の「COP」の流れをあらためて整理するとともに、2022年11月に開催された「COP27」では何が議論され、どのようなことが決まったのか振り返ってみましょう。

「パリ協定」が決定した「COP21」から「COP26」までのあゆみ

「COP」とは、国際条約を締結した国々が集まって話し合う「締約国会議」のこと。「気候変動枠組条約」に関するCOPでは、温室効果ガス(GHG)の排出を削減する方法や削減目標が議論されています。

2015年の「COP21」で採択されたのが、「パリ協定」です。「パリ協定」は、「世界の平均気温上昇を産業革命以前に比べて2℃より十分低く保ち、1.5℃に抑える努力をする(1.5℃目標)」「そのため、できるかぎり早く世界の温室効果ガス排出量をピークアウトし、21世紀後半には、GHG排出量と(森林などによる)吸収量のバランスをとる」ことを世界共通の長期目標として掲げ、途上国を含む全ての参加国に、排出削減の努力を求めています。締約国は「国が決定する貢献」(Nationally Determined Contribution、NDC)、つまり自国のGHG削減目標を定め、取り組みを進めています。

その後、COPで「パリ協定」に関する詳細なルールが話し合われてきました。「COP24」では、実施指針が決定(「温暖化対策の国際会議『COP24』で、『パリ協定』を実施するためのルールが決定」参照)。GHG排出削減量を「クレジット」として国際的に移転する「市場メカニズム」に関するルールは、「COP25」では合意に至りませんでしたが、「COP26」で引き続き議論され、詳細が決定(「あらためて振り返る、『COP26』(前編)~『COP』ってそもそもどんな会議?」参照)。これによって、「パリ協定」全体のルールブックが完成したのです。

下のグラフは、「COP25」、「COP26」、そして2022年の「COP27」における、パリ協定などの「ルール交渉」と、その回のCOPを総括・包括するような意見や方向性を議論する「カバー決定交渉」、首脳プロセスを含む「イベント/イニシアティブ」の各要素の割合を表したものです。「ルール交渉」は、年々進捗しているからこそ残っている課題のボリュームは減ってきているイメージであり、「カバー決定交渉」と「イベント/イニシアティブ」は、気候への問題意識がより高いレベルや広い層に拡大した結果、増加してきているイメージです。

近年の「COP」における「ルール交渉」「カバー決定交渉」「イベント/イニシアティブ」の割合の増減イメージ
COP25からCOP27までの、「ルール交渉」「カバー決定交渉」「イベント/イニシアティブ」の割合を示した図です。「COP25」はルール交渉が8割程度を占めていましたが、「COP27」では3-4割程度に減っています。

「パリ協定」ルールブック決定後の「COP27」では“実施”について議論

こうした流れを受け、2022年11月に開催された「COP27」では、「実施のCOP」として、気候変動対策の“実施”にフォーカスがあてられました。米国のバイデン大統領、フランスのマクロン大統領、ドイツのショルツ首相など、約100カ国の首脳が参加。日本からは西村環境大臣が参加しました。

交渉会合における日本の様子を写した写真です。

交渉会合の様子

「COP27」を理解するカギとなるのは、「緩和」と「適応・ロス&ダメージ」という考え方です。「緩和」とは気候変動緩和のためGHG排出を抑えること。「適応」は、すでに起きている気候変動の影響を防止し軽減する備えと、新しい気候条件を利用するための対策で、こちらも重視すべきという潮流が生まれています。

「緩和」と「適応」のバランス
「緩和」と「適応」バランスの変化を示した概念図です。「緩和」が大きく「適応」が小さかったバランスから、今はどちらも同程度が求められています。

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「ロス&ダメージ」は、温暖化にともなって発生する損害や損失のことです。温暖化が進むと、干ばつや洪水、台風といった自然災害に起因する損害、あるいは海面上昇による土地消失といった損失が起こります。そこで、たとえば自然災害に対する防災・減災対策、あるいは健康被害対策などを講じていく必要があります。

「COP27」全体の成果として採択された「シャルム・エル・シェイク実施計画」では、「COP26」を踏襲しつつ、以下が盛り込まれました。

リストアイコン ①「1.5℃目標」の重要性を再確認する
リストアイコン ②各国の2030年目標について、「1.5℃目標」に整合的になるよう強化する
リストアイコン ③気候変動がおよぼす悪影響にともなう、「ロス&ダメージ」に関する基金設置を決定

「緩和」対策となる②の目標強化については、「緩和作業計画」が合意されました。作業計画では、2026年まで毎年最低2回のワークショップを開催し報告書を作成することや、すべてのGHG排出分野や分野横断的事項などを対象とすることが定められています。非政府主体の関与、閣僚級ラウンドテーブルで年次報告書を説明することなども決められました。

また、「市場メカニズム」についても、取引の報告様式や記録システムの仕様、専門家による審査の手続きといった詳細な規則が定められました。

「「適応」対策では、「COP26」で合意されていた2年間の作業計画の進捗を確認、2023年に向けた作業の進め方が話し合われました。

一方、「ロス&ダメージ」対策としての③の基金設置は、今回初めて議題化されたものです。特に気候変動に対してぜい弱な国には、この基金を含め新たな資金面での措置をおこなうことが決定されました。具体的な中身は現時点では定められておらず、「COP28」での決定に向けて議論が進められることとなりました。合わせて、技術支援促進の取り組みに関する組織的・制度的な事項も決定されました。

「イベント/イニシアティブ」にも注目。日本は何を発表したの?

COPでは、このような交渉以外にも注目すべき動きがあります。前述した、首脳プロセスをふくむ「イベント/イニシアティブ」です。

日本は、「COP27」の閣僚級セッションで、西村環境大臣が以下の3つの取り組みを発信しました。

リストアイコン 今後10年間で150兆円超のGX投資の実現
リストアイコン 脱炭素につながる新しい国民運動の開始
リストアイコン 「アジア・ゼロエミッション共同体」構想の実現

このほか、災害対策への技術的支援などを提供する「ロス&ダメージ支援パッケージ」、市場メカニズムのひとつ「二国間クレジット制度(JCM)」を促進する「パリ協定6条実施パートナーシップ」立ち上げを表明しました。

また、米国が主導する「ネットゼロ政府イニシアティブ」、国際再生可能エネルギー機関(IRENA)とデンマークが主導する「国際洋上風力アライアンス」など各国・各機関がリードをとるイニシアティブにも、参加を表明しました。

さらに、ジャパン・パビリオンではセミナーを開催。水素、洋上風力、CO2除去技術、排出削減が困難な産業における脱炭素化の取り組み、脱炭素化への移行をサポートする技術など、日本の技術や取り組みを世界に発信しました。

ジャパン・パビリオンの写真です。

企業の脱炭素への貢献を評価する新たな考え方「削減貢献量」や、「適応」分野における国連との協力や日本企業の貢献も紹介されました。「適応」対策では、国連ハビタット福岡本部と経済産業省で「すばる(SUBARU)・イニシアティブ」を発表。アジア太平洋の都市における、日本企業の適応分野への貢献を拡大することを目指しています。

ジャパン・パビリオンで行われたイベントの写真です。

「COP28」の注目ポイントは?

2023年11月~12月に開催される「COP28」では、こうした「COP27」からの流れを受け、「緩和」や「ロス&ダメージ」対策が議論される予定です。

さらに、2023年は「パリ協定」で定められた「グローバル・ストックテイク」の年でもあります。これは、パリ協定の目的および長期的な目標の達成に向けた全体としての進捗状況の評価のことで、5年に一度実施されることとなっており、2023年が最初の実施年となります。開催国であるアラブ首長国連邦(UAE)は、各国が重要なメッセージを発信することを期待すると述べています。今後のニュースに注目です!

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