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2021年10月31日から11月13日にかけて、英国のグラスゴーで、「COP」という通称で知られる「気候変動枠組条約締約国会議」の第26回目、「COP26」が開催されました。コロナ禍という難しい状況ではありましたが、気候変動という重要な課題を議論するため、COP史上最大の約4万人が参加。中でも首脳級会合「世界リーダーズ・サミット」には、日本の岸田首相を含む約130か国以上の首脳が集まりました。会議の様子はニュースなどで目にした方も多いかと思いますが、14日間にわたって開催された会議では、いったい何が決まったのでしょう?詳しくお伝えしましょう。
みなさんは、「COP」とはどういう会議なのか、どんな国がどんなことを議論するために集まっているのか詳しくご存じでしょうか?COP26の成果を振り返る前に、COPとは何か、ここであらためて整理しておきましょう。COPとは「Conference of the Parties」の略で、日本語では「締約国会議」と訳されます。つまり「条約を結んだ国々による会議」という意味で、さまざまな「締約国会議」が存在しています。その中でもよく「COP」として報道されているのが、今回開催された気候変動に関する会議です。その始まりには、1992年に採択され1994年に発効した「国連気候変動枠組条約(UNFCCC)」が関わっています。これは気候変動問題に関する条約で、気候変動問題を解決すべく、197か国・地域が締結・参加しています。2020年までの枠組みをさだめた「京都議定書」や2020年以降の枠組みをさだめた「パリ協定」は、国連気候変動枠組条約の目的を達成するための具体的な枠組みとしてさだめられたものです。
国連気候変動枠組条約(UNFCCC)とパリ協定の関係
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気候変動に関するCOPには、この条約に賛同した国々が参加しています。気候変動問題はグローバルな問題であり、各国が共通して取り組む事項として、協力して取り組んでいます。ただ、その具体的なルールになると、エネルギーや経済の状況などの事情は、国によって大きく異なります。そのため、気候変動対策をおこなうといっても、環境と経済のバランスをどうやって取るか、先進国と途上国の責任をどのように考えるか、市場メカニズムをどの程度活用するか、途上国の取り組みに対する支援はどうするか…といったさまざまな点で、各国の主張や方法論は異なってきます。国の事情が異なる中、全会一致で合意できるような具体的なルールをまとめることはむずかしい挑戦です。こうしたことから、気候変動の交渉においては、異なる立場をとるさまざまなグループが存在し、交渉グループを活用して、交渉を進めています。そもそも、COPでは、「共通だが、差異のある責任」という条約の原則のもと、GHG削減政策の実施義務などが課せられている「附属書締約国」と呼ばれる国々があります。附属書Ⅰ国の多くは先進国ですが、「市場経済移行国」と呼ばれる国々も含まれています。一方、いわゆる発展途上国は「非附属書締約国」と呼ばれ、附属書締約国の約4倍ほど存在しています。
この附属書締約国/非附属書締約国の中で、あるいはその2つを横断するかたちで、立場や主張の傾向が少しずつ異なる交渉グループが形成されています。日本は、環境と成長のバランスを重視しようとするアンブレラ・グループに属しており、同グループ内には米国やカナダ、オーストラリア、ロシア、ノルウェーなどがいて、ゆるやかな連帯を維持しています。一方、日本でもよく話題になるEUは、環境を第一に考える傾向があります。
さらに、気候変動の影響をおおきく受ける恐れのあるモルディブやマーシャル諸島などの「AOSIS(小島嶼国連合)」、南アフリカやジンバブエが属する「アフリカ交渉グループ(AGN)」など、国の状況などが共通する国々による交渉グループもあります。これらの交渉グループは、グループごとに主張をまとめて発言する傾向があります。特に先進国から途上国への支援を主張する傾向にあります。
こうしたさまざまな立場があることをふまえて各国の主張を見てみるとおもしろいでしょう。
では、COP26では何がおこなわれ、どのようなことが決まったのでしょうか。COP26では、政府関係者がパリ協定の実施に向けた具体的なルールを交渉しました。また、交渉とは別に、議長国は気候変動に関するさまざまなテーマを日ごとに設定し、幅広いテーマについて議論やイベントがおこなわれました。日本で話題の中心となるのはもっぱら「エネルギー」に関する議論ですが、気候変動問題はエネルギーに関するものだけではなく、多様なテーマの日が設けられているのです。
COP26の主要スケジュール
今回全体的なメッセージとして決定したのは、パリ協定でさだめられた「1.5℃努力目標」(「今さら聞けない『パリ協定』~何が決まったのか?私たちは何をすべきか?~」参照)に向け、締約国に対し、今世紀半ばの「カーボンニュートラル」(「『カーボンニュートラル』って何ですか?(前編)~いつ、誰が実現するの?」参照)と、その経過点である2030年に向けた野心的な気候変動対策を求めるということです。また、すべての国に対し、排出削減対策がおこなわれていない石炭火力発電のフェーズ・ダウンや非効率な化石燃料補助金からのフェーズ・アウトを含む努力を加速することなども決定文書に盛り込まれました。
COP26決定文書採択の瞬間
(出典)UNFCCC事務局Webサイト
「パリ協定」に関連した点でも、大きな動きがありました。「1.5℃努力目標」の達成に向けて、どのような方法や基準の下で各国が取り組みを進めていくかという議論を進めてきた中、最後まで残っていた重要な論点が、パリ協定の第6条に基づく「市場メカニズム」の実施指針です。市場メカニズムとは、GHGの排出削減をおこなった量を、「クレジット」として国際的に移転するしくみです。クレジットを国際的に移転し、取引をおこなう場合には、統一されたルールの設定が必要となります。そこには、どのような条件のもとで取引が可能になるのか、どのように各国の温室効果ガス削減目標に活用できるのかといった調整も絡みます。ルールを策定するためには、全会一致の原則ですべてが賛同することが必要ですので、こうしたそれぞれの国の事情により、これまで合意が得られていませんでした。しかし、今回、ついに実施指針が合意に至り、パリ協定のルールブックがようやく完成したのです。この合意には、日本が打開策のひとつとして提案していた「政府承認に基づく二重計上防止策」がルールとして盛り込まれました。後編では、日本が今回のCOP26で果たした役割とともに、COP26で決められたことをもう少し詳しくお伝えしましょう。
経済産業省 産業技術環境局 地球環境対策室経済産業省 産業技術環境局 地球環境連携室
長官官房 総務課 調査広報室
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