第3節 一次エネルギーの動向
1.化石エネルギーの動向
(1)石油
①供給の動向
日本における石油供給量は、1970年代の二度のオイルショックを契機とした石油代替政策や省エネ政策の推進により減少しましたが、1980年代後半には、取り組みやすい省エネの一巡や原油価格の下落等に伴い、増加に転じました。その後、1990年代半ば以降は、石油代替エネルギーの拡大や自動車の燃費向上等により、再び減少傾向となりました。なお、日本の原油自給率9は、長らく0.5%未満の水準にあります(第213-1-1、第213-1-2)。
【第213-1-1】石油供給の推移
(注)石油(原油+石油製品)の一次エネルギー国内供給量。
【第213-1-1】石油供給の推移(xls/xlsx形式:24KB)
- 資料:
- 資源エネルギー庁「総合エネルギー統計」を基に作成
【第213-1-2】原油の国産・輸入別供給の推移
(注)「国産原油」は微小であるが、棒グラフ上に表現されている。
【第213-1-2】原油の国産・輸入別供給の推移(xls/xlsx形式:27KB)
- 資料:
- 経済産業省「資源・エネルギー統計」を基に作成
日本は、主にサウジアラビア、アラブ首長国連邦(UAE)、クウェート、カタール等の中東地域から原油を輸入しており、2022年度の原油輸入に占める中東地域の割合(中東依存度)は、95.2%でした。なお、2022年の米国の中東依存度は11.8%、欧州OECDの中東依存度は16.5%であり10、日本の中東依存度は、諸外国と比べても極めて高い水準にあります(第213-1-3)。
【第213-1-3】原油の輸入先(2022年度)
【第213-1-3】原油の輸入先(2022年度)(xls/xlsx形式:20KB)
- 資料:
- 経済産業省「資源・エネルギー統計」を基に作成
日本は、二度のオイルショックの経験から、原油輸入先の多角化を図ってきました。1967年度に91.2%であった中東依存度は、その後、中国やインドネシアからの輸入が増えたことで、1987年度には67.9%まで低下しました。しかしその後、中国や東南アジア諸国での原油需要の増加に伴い、これらの地域からの輸入が減少したことで中東依存度は再び上昇し、2009年度には89.5%に達しました。その後の中東依存度は、ロシアからの輸入増加等により低下傾向にありましたが、近年はロシアからの輸入減少等によって、再び上昇傾向にあります。2022年度の中東依存度は、過去最高となる95.2%でした(第213-1-4)。
【第213-1-4】原油の輸入量と中東依存度の推移
【第213-1-4】原油の輸入量と中東依存度の推移(xls/xlsx形式:39KB)
- 資料:
- 経済産業省「資源・エネルギー統計」を基に作成
また、中国やインドネシア等のアジアの産油国における原油需給の動向を見ると、国内の原油需要が増加したことを受け、これまで輸出していた原油を国内向けに供給し、輸出の割合が減少していることがわかります(第213-1-5)。
【第213-1-5】原油生産に占める国内向け原油・輸出向け原油の割合の推移
【第213-1-5】原油生産に占める国内向け原油・輸出向け原油の割合の推移(xls/xlsx形式:21KB)
- 資料:
- IEA「World Energy Balances 2023 Edition」を基に作成
なお、国際エネルギー機関(以下「IEA」という。)は、各加盟国に対して、石油純輸入量の90日分以上の緊急時備蓄を維持するよう勧告しています。日本は2023年8月時点で、198日分の石油備蓄を保有しています(第213-1-6)。
【第213-1-6】日本及びIEA加盟国の石油備蓄日数(2023年8月時点)
(注)備蓄義務を負う石油純輸入国28か国のうち、産油量があり純輸入量が少ないため備蓄日数が多く算出されるデンマーク、エストニア、米国、オランダを除く24か国を比較している。
【第213-1-6】日本及びIEA加盟国の石油備蓄日数(2023年8月時点)(xls/xlsx形式:19KB)
- 資料:
- IEA「Oil Stocks of IEA Countries」を基に作成
②消費の動向
日本では、原油の殆どが蒸留・精製によってガソリンや軽油、灯油、重油等の石油製品に転換され、国内で販売又は海外へ輸出されています。これに加え、石油製品の輸入も行っています。石油製品の販売量の推移を見ると、2000年代以降は減少傾向となっています。油種別の販売構成を見ると、1971年度までは、B・C重油11 の販売量が半分以上を占めていましたが、その後はガソリン・ナフサ・軽油等の軽質な石油製品の割合が増加しています(第214-4-1参照)。
③価格の動向
ここでは、世界金融危機が発生した2008年以降の原油輸入CIF価格12の推移を見ていきます。原油の円建て輸入CIF価格は、2008年8月に約9.2万円/klにまで上昇した後、2009年1月には約2.5万円/klにまで急落しました。その後は、各国による景気刺激策等の影響を受け、2014年にかけて上昇傾向が継続しました。
しかしその後、様相が大きく変化しました。当時、高い原油価格を背景に、米国のシェールオイルが増産され続ける一方、欧州や中国の景気は減速傾向にあったため、市場には供給過剰感が生じていました。こうした中、OPECが、2014年11月の総会において減産を見送ったことから、原油価格は下落に転じ、2016年初頭の原油輸入CIF価格は、約2.2万円/klまで低下しました。その後は、世界経済の回復に加え、同年9月のOPEC総会において8年ぶりの減産の方向性が打ち出され、ロシア等の非OPEC産油国も減産に協力をしたこと等もあり、原油価格は再び上昇に転じました。その後の原油価格は、OPEC及び非OPEC産油国からなる「OPECプラス」による着実な減産等の影響で、2018年秋頃まで上昇傾向が続き、以降の原油輸入CIF価格は5万円/kl前後の水準を維持していました。
そうした中で起こったのが、新型コロナ禍です。世界経済が減速し、石油需要が短期間のうちに急減しました。この状況に対処すべく、2020年3月に、OPECは非OPEC産油国に対して追加減産を提案しましたが、ロシアがこれを拒否したことで、協調減産が決裂しました。この結果を受け、これまで協調減産をリードしてきたサウジアラビアは増産に踏み切ることを表明しましたが、その結果、原油価格は急落しました。これを受け、同年4月にOPECプラスは再び協調減産に合意しましたが、世界中で都市封鎖(ロックダウン)が行われる等、世界の石油需要は急減しており、また原油の貯蔵能力の限界を超えるとの見方もあって、米国の指標原油であるWTI原油が一時「マイナス価格13」を記録するという前代未聞の状況となりました。その後は、OPECプラスが合意した過去に例のない規模での協調減産の効果や、新型コロナ禍からの経済回復等により、原油価格は上昇しました。
その後、2022年2月に始まったロシアによるウクライナ侵略の影響で原油価格は高騰し、原油輸入CIF価格も、同年7月には約10万円/klへと急騰しました。その後の原油輸入CIF価格は、世界経済の減速への懸念等により下落しましたが、2023年は、OPECプラスの減産やイスラエル・パレスチナ情勢の悪化、円安方向への為替の変動等の影響により、再度上昇しました(第213-1-7)。
【第213-1-7】原油の円建て輸入CIF価格とドル建て輸入CIF価格の推移
【第213-1-7】原油の円建て輸入CIF価格とドル建て輸入CIF価格の推移(xls/xlsx形式:38KB)
- 資料:
- 財務省「日本貿易統計」を基に作成
原油の輸入金額は、かつて日本にとって無視できない負担となっており、第二次オイルショック後には、日本の総輸入金額に占める原油輸入金額14の割合が35%を超えていました。しかし、1980年代半ば以降は、概ね10%〜15%程度の水準となっています。その背景には、原油価格の動向に加え、オイルショック後の石油代替政策や省エネ政策等が功を奏したことがあります。オイルショック時と比べると、総輸入金額に占める原油の割合が低下したことで、原油価格の高騰が日本経済に与える影響は小さくなったと考えられます。2020年度には、新型コロナ禍の影響で原油の輸入が減少し、また原油輸入CIF価格も低下したため、原油輸入金額の占める割合は、5.9%まで下がりました。その後は、新型コロナ禍からの経済回復による原油の輸入増加や、原油輸入CIF価格の高騰によって、原油輸入金額の占める割合も上昇しており、2022年度の割合は11.4%でした(第213-1-8)。
【第213-1-8】原油の輸入価格と原油輸入額が輸入全体に占める割合の推移
【第213-1-8】原油の輸入価格と原油輸入額が輸入全体に占める割合の推移(xls/xlsx形式:24KB)
- 資料:
- 財務省「日本貿易統計」を基に作成
(2)ガス体エネルギー
ガス体エネルギーには、主に天然ガスとLPガスがあります。天然ガスは、油田の随伴ガスや単独のガス田から生産され、メタンを主成分としています。常温・常圧では気体であるため、輸送に当たっては、気体のままパイプラインで輸送する方法、あるいは、マイナス162℃まで冷却して液体にし、液化天然ガス(LNG15)としてタンカー等で輸送する方法のいずれかの方法が採られています。天然ガスは、化石エネルギーの中では燃焼時のCO2排出量が最も少なく、相対的にクリーンであるため、利用が増えました。
LPガスは、液化石油ガス(LPG16)のことで、油田や天然ガス田の随伴ガス、石油精製設備等の副生ガスから取り出したプロパン・ブタンを主成分としています。LPガスは、簡単な圧縮装置を使って常温で液化できる気体燃料であるとともに、主成分であるプロパンはマイナス42℃、ブタンはマイナス0.5℃まで冷却されると液化するため、通常は、圧縮又は冷却にて液体にされた状態で輸送・貯蔵・配送が行われています。
①天然ガス
(ア)供給の動向
日本では、1969年に初のLNGが輸入されましたが、それ以前の天然ガス利用は国産天然ガスに限られており、1968年度の日本の一次エネルギー供給に占める天然ガスの割合は、1.1%に過ぎませんでした。しかし、1969年に米国・アラスカから初のLNGが輸入されたことを皮切りに、東南アジアや中東等からもLNGの輸入が開始されたことで、日本における天然ガスの利用が大きく進み、一次エネルギー供給に占める天然ガスの割合は、2014年度に24.5%まで達しました。2022年度の割合は、21.5%でした(第211-3-1参照)。
2022年度における天然ガスの輸入割合は、石油と同様に極めて高い97.9%であり、輸入分は全量がLNGとして輸入されました。一方、主に新潟県や千葉県、北海道等で産出されている国産天然ガスの割合は2.1%で、2022年度の生産は約21.1億㎥(LNG換算で約152万トン)でした(第213-1-9)。
【第213-1-9】天然ガスの国産・輸入別供給の推移
【第213-1-9】天然ガスの国産・輸入別供給の推移(xls/xlsx形式:27KB)
- 資料:
- 資源エネルギー庁「電力調査統計」、「ガス事業生産動態統計」、経済産業省「エネルギー生産・需給統計」、「資源・エネルギー統計」、財務省「日本貿易統計」を基に作成
2022年度の日本のLNG輸入を見ると、豪州やマレーシアからの輸入が多くなっています。中東依存度は9.0%であり、石油に比べて低く、地政学的リスクは相対的に低いといえます。2012年度から最大のLNG輸入先となっている豪州については、新規のLNG生産プロジェクトからの輸入が順次開始されており、豪州が占める割合は、2012年度の19.6%からさらに拡大し、2022年度には42.9%となっています。一方、インドネシアについては1980年代半ば、マレーシアについては2000年代半ばをピークに、年々割合を減らしています。また、2014年度にはパプアニューギニアから、2016年度にはシェールガスの生産が急増した米国本土からのLNG輸入が開始される等、供給源の多様化が進んでいます(第213-1-10、第213-1-11)。
【第213-1-10】LNGの輸入先(2022年度)
【第213-1-10】LNGの輸入先(2022年度)(xls/xlsx形式:27KB)
- 資料:
- 財務省「日本貿易統計」を基に作成
【第213-1-11】LNG輸入量の推移(国別)
【第213-1-11】LNG輸入量の推移(国別)(xls/xlsx形式:30KB)
- 資料:
- 財務省「日本貿易統計」を基に作成
なお、2022年に世界で貿易されたLNGのうち、18.1%を日本が輸入しており、前年に中国へと譲っていた世界第1位のLNG輸入国に復帰しました(第222-1-22参照)。
(イ)消費の動向
2022年度の日本の天然ガスの消費動向を見ると、54.3%が電力用として、35.4%が都市ガス用として使われていることがわかります。天然ガスは、エネルギー源の多様化に向けた政策の一環として、その利用が拡大してきました。2011年の東日本大震災以降は、原子力発電所の稼働停止を受け、発電用を中心に消費が増加しました。2014年度に消費が過去最高となった後は、再エネの普及拡大や原子力発電所の再稼働等によって発電用需要が減少しており、天然ガスの消費も減少傾向にあります(第213-1-12)。
【第213-1-12】天然ガス消費の推移(用途別)
【第213-1-12】天然ガス消費の推移(用途別)(xls/xlsx形式:29KB)
- 資料:
- 資源エネルギー庁「電力調査統計」、「ガス事業生産動態統計」、経済産業省「エネルギー生産・需給統計」、「資源・エネルギー統計」、財務省「日本貿易統計」を基に作成
なお、都市ガスの販売量を用途別に見ると、かつては家庭用が最大のシェアを占めていましたが、近年は工業用が最大のシェアを占めていることがわかります(第214-2-2参照)。
(ウ)価格の動向
日本のLNG輸入価格は、基本的に原油価格の動向に連動しています。日本は、LNGの大半を長期契約で調達しており、その長期契約における価格の多くが、日本向け原油の輸入平均CIF価格に連動しているためです。ただし、その連動率は概ね65%〜90%であり、さらに、一部のLNG輸入価格については、原油価格の変動の影響を緩和するために、Sカーブと呼ばれる調整システムを織り込んだ価格フォーミュラによって決定されています。その結果、原油価格が高騰する状況下でも、LNG輸入価格の変化は、原油価格の変化に比べると緩やかになっています。なお、2016年度には米国本土からのLNG輸入が開始されましたが、米国からのLNGは、米国内のガス市場価格(ヘンリーハブ価格)に連動するものが多くなっており、価格決定方式の多様化につながっています。さらに、2010年代以降に増加しているスポット調達では、原油価格や他のガス価格等の動向を参照しながらも、相対交渉により独自の価格設定がなされるようになっています。2022年度は、ロシアによるウクライナ侵略等の影響による原油価格及びスポットLNG価格の高騰に伴い、LNG輸入価格も大きく上昇しました(第213-1-13)。
【第213-1-13】LNG輸入CIF価格の推移
【第213-1-13】LNG輸入CIF価格の推移(xls/xlsx形式:25KB)
- 資料:
- 財務省「日本貿易統計」を基に作成
日本の総輸入金額に占めるLNG輸入金額の割合を見ると、1980年代後半からはLNG輸入価格の低下に伴い、4%を下回る水準で推移してきたことがわかります。しかし、2000年代半ばからは、原油価格の上昇に伴ってLNG輸入価格が上昇し、さらに2011年の東日本大震災以降は、原子力発電所の稼働停止に伴って、発電用途のLNG輸入量も増加したことにより、LNG輸入金額の割合は上昇傾向で推移し、2014年度には過去最高となる9.3%となりました。その後は、LNG輸入価格の低下等に伴い、LNG輸入金額の割合も低下していましたが、2022年度はLNG輸入価格の高騰に伴い、LNG輸入金額の割合も7.5%まで上昇しました(第213-1-14)。
【第213-1-14】LNGの輸入価格とLNG輸入額が輸入全体に占める割合の推移
【第213-1-14】LNGの輸入価格とLNG輸入額が輸入全体に占める割合の推移(xls/xlsx形式:23KB)
- 資料:
- 財務省「日本貿易統計」を基に作成
②LPガス
(ア)供給の動向
LPガスは、油田や天然ガス田からの随伴ガス、あるいは、石油精製過程等からの分離ガスとして生産されています。日本のLPガスの供給は、1960年代まで国内での石油精製からの分離ガスが中心でしたが、その後、1980年代にかけて輸入の割合が高まり、以降は現在に至るまで70%〜80%程度の水準となっています(第213-1-15)。
【第213-1-15】LPガスの国産・輸入別供給の推移
(注)「国産LPガス」は、製油所の数値。
【第213-1-15】LPガスの国産・輸入別供給の推移(xls/xlsx形式:287KB)
- 資料:
- 経済産業省「資源・エネルギー統計」、財務省「日本貿易統計」を基に作成
2022年度の日本のLPガス輸入を見ると、米国からの輸入が多くを占めていることがわかります。シェールオイル・シェールガス開発に随伴して生産される米国のLPガスを、日本は2013年から輸入し始めましたが、2015年度には早くも米国からの輸入が最大となり、2022年度においても64.6%という高いシェアを占めています。シェール革命に加え、2016年6月にパナマ運河の拡張が完了し、大型LPG船の通航が可能になったことも、米国のシェア拡大の要因となっています。その結果、LPガス輸入の中東依存度は、2011年度の86.6%から2022年度には8.0%へと低下し、逆に米国への一極集中が進んでいます(第213-1-16)。
【第213-1-16】LPガスの輸入先(2022年度)
【第213-1-16】LPガスの輸入先(2022年度)(xls/xlsx形式:23KB)
- 資料:
- 財務省「日本貿易統計」を基に作成
(イ)消費の動向
LPガスの消費は、1996年度にピークを迎えた後、燃料転換等により減少傾向に転じました。2022年度のLPガスの消費を1996年度の消費と比較すると、35%減少しており、1978年度並みの水準になっています。また、2022年度のLPガスの消費を用途別に見ると、家庭業務用の消費が全体の半分近くを占めました。次いで一般工業用が19.7%、化学原料用が15.9%のシェアとなりました(第213-1-17)。
【第213-1-17】LPガス消費の推移(用途別)
【第213-1-17】LPガス消費の推移(用途別)(xls/xlsx形式:28KB)
- 資料:
- 日本LPガス協会「需給推移年報」を基に作成
(ウ)価格の動向
かつて日本のLPガス輸入価格は、サウジアラビアのサウジアラムコ社が決定する通告価格17に大きく左右される構造となっていましたが、近年では、価格指標の多様化を目的に、米国のプロパンガス取引価格18を価格指標とするLPガスの輸入も活発化しています。
日本のLPガス輸入価格は、2010年代前半の原油価格の高騰に伴って上昇し、2013年度には当時の最高額となる約9.3万円/トンとなりました。その後は原油価格の下落や、相対的に低価格である米国及びカナダ産LPガスの輸入シェアの拡大により、日本のLPガス輸入価格は低下し、2020年度には約4.7万円/トンとなりました。2022年度は、原油価格の高騰に伴い、過去最高となる約9.8万円/トンにまで上昇しました(第213-1-18)。
【第213-1-18】LPガス輸入CIF価格の推移
【第213-1-18】LPガス輸入CIF価格の推移(xls/xlsx形式:23KB)
- 資料:
- 財務省「日本貿易統計」を基に作成
日本の総輸入金額に占めるLPガスの輸入金額の割合を見ると、二度のオイルショックを契機に、1980年代には2%を上回る水準にまで上昇したことがわかります。その後は、LPガス輸入価格の下落に伴って低下しました。近年では、LPガス輸入量の減少等もあり、1%を下回る水準が続いており、2022年度の割合は0.9%でした(第213-1-19)。
【第213-1-19】LPガスの輸入価格とLPガス輸入額が輸入全体に占める割合の推移
【第213-1-19】LPガスの輸入価格とLPガス輸入額が輸入全体に占める割合の推移(xls/xlsx形式:24KB)
- 資料:
- 財務省「日本貿易統計」、日本エネルギー経済研究所「エネルギー・経済統計要覧」を基に作成
(3)石炭
①供給の動向
2000年代以降、日本は石炭供給のほぼ全量を海外からの輸入に依存しています。国内での石炭生産は、1960年代に石油への転換で減少し、1980年代以降は割安な輸入炭の影響を受けてさらに減少しました。国内原料炭19は、1990年度に生産がなくなり、国内一般炭20についても、2022年度の生産はわずか68万トンでした。一方、海外炭の輸入は、1970年度に国内炭の生産を上回り、1988年度には1億トンを超えました。その後も一般炭を中心に増加し、近年では1.8億トン前後の水準が続いています(第213-1-20)。
【第213-1-20】国内炭・輸入炭の供給の推移
(注)「国内一般炭」には国内無煙炭を、「輸入一般炭」には輸入無煙炭をそれぞれ含む。
【第213-1-20】国内炭・輸入炭の供給の推移(xls/xlsx形式:42KB)
- 資料:
- 2000年度以前のデータは経済産業省「エネルギー生産・需給統計」、2001年度以降のデータは財務省「日本貿易統計」、カーボンフロンティア機構「コールデータバンク」を基に作成
2022年度は、一般炭の輸入が約1.1億トン、原料炭の輸入が約0.6億トンとなり、無煙炭21をあわせた石炭輸入の合計は約1.8億トンとなりました。一般炭の輸入先は、豪州が72%と大きなシェアを占めており、次いで、インドネシア、ロシア、カナダ、米国となりました。原料炭の輸入先は、同じく豪州が55%と大きなシェアを占めており、次いでインドネシア、米国、カナダ、コロンビアとなりました(第213-1-21)。
【第213-1-21】石炭の輸入先(2022年度)
【第213-1-21】石炭の輸入先(2022年度)(xls/xlsx形式:24KB)
- 資料:
- 財務省「日本貿易統計」を基に作成
②消費の動向
2022年度における日本の石炭消費を用途別に見ると、電気業における消費が約1.1億トンと最も多く22、次いで鉄鋼業における消費が約5,500万トンとなっています。
電気業における石炭消費は、1960年代後半には2,000万トンを上回っていましたが、石炭火力発電から他の電源への転換が進んだことから、1979年度には約700万トンにまで減少しました。しかし、オイルショック後の石油代替政策の一環として、石炭火力発電所の新設及び増設が進んだことに伴い、石炭消費は増加に転じ、2003年度からは電気業が最大の石炭消費部門となりました。2016年度から対象事業者が変更となっていることに注意が必要ですが、近年の石炭消費は1.1億トン前後で推移しています。
鉄鋼業における石炭消費は、1970年代前半にかけて大きく増加し、その後は長らく6,000万〜7,000万トン前後の水準で推移しました。しかし、近年はやや減少傾向にあります(第213-1-22)。
【第213-1-22】石炭消費の推移(用途別)
(注)2016年度以降の「電気業」は、電力小売全面自由化に伴う電気事業類型の見直しにより、対象事業者が変更されている。
【第213-1-22】石炭消費の推移(用途別)(xls/xlsx形式:25KB)
- 資料:
- 2000年度以前のデータは経済産業省「エネルギー生産・需給統計」、2001年度以降のデータは資源エネルギー庁「電力調査統計」、経済産業省「石油等消費動態統計」を基に作成
③価格の動向
日本の石炭輸入CIF価格は、2000年代半ばから大きく変動しています。2000年代半ばからの原油価格の上昇に伴い、石炭の採炭・輸送コストが上昇し、これに世界的な石炭需要の増加も重なったことで、石炭輸入価格は上昇しました。しかし、世界的な金融危機の影響を受けて、2008年末頃から急落しました。その後、中国等における需要増加に伴い、2011年にかけて石炭輸入価格が再び上昇しましたが、その後は、欧米における脱石炭の進展や中国での需要低迷等に伴い、2016年まで低下傾向が続きました。2016年後半以降は、中国における需給のひっ迫等により、石炭輸入価格が上昇しました。
その後、2020年に発生した新型コロナ禍による経済活動の低迷等により、石炭輸入価格は一時下落しましたが、鉄鋼需要の回復や中国での需給ひっ迫等もあり、2021年末には原料炭が28,000円/トン、一般炭が22,000円/トン付近まで上昇しました。そうした中、2022年2月にロシアによるウクライナ侵略が発生し、同年4月にはEUと日本によるロシア炭の輸入禁止表明等もあったことで、石炭輸入価格は急騰することとなり、原料炭は同年7月に約53,000円/トン、一般炭は同年11月に約59,000円/トンとなりました。その後、石炭輸入価格は下落しました(第213-1-23)。
【第213-1-23】国内炭価格・輸入炭価格(CIF)の推移
(注1)輸入炭については月次平均価格、国内炭については年度平均価格(グラフの横軸の単位は年度)。
(注2)「国内原料炭」は1990年度で生産が終了している。「国内一般炭」は2002年度以降、価格が公表されていない。
【第213-1-23】国内炭価格・輸入炭価格(CIF)の推移(xls/xlsx形式:66KB)
- 資料:
- 輸入炭のデータは財務省「日本貿易統計」、国内炭のデータは資源エネルギー庁「コール・ノート2003年版」を基に作成
また、日本の総輸入金額に占める石炭の輸入金額の割合は、1970年度に7%を超えていましたが、1980年代後半からは長らく3%を下回る水準で推移してきました。2008年度は石炭輸入価格の上昇に伴って4%を上回りましたが、その後は3%前後の水準で推移しました。しかし、ロシアによるウクライナ侵略後の石炭価格の高騰等の影響により、2022年度の石炭輸入金額の割合は、6.9%にまで急上昇しました(第213-1-24)。
【第213-1-24】石炭の輸入額と石炭輸入額が輸入全体に占める割合の推移
【第213-1-24】石炭の輸入額と石炭輸入額が輸入全体に占める割合の推移(xls/xlsx形式:24KB)
- 資料:
- 財務省「日本貿易統計」を基に作成
2.非化石エネルギーの動向
(1)原子力
①原子力発電の現状
原子力は、エネルギー資源に乏しい日本にとって、技術で獲得できる事実上の国産エネルギーとして、1954年5月の内閣諮問機関「原子力利用準備調査会」の発足以降、電気事業者による原子力発電所の建設が相次いで行われました。2011年2月末時点では、日本国内で計54基の商業用原子力発電所が運転されていました。
しかし、同年3月に発生した東日本大震災による東京電力福島第一原子力発電所事故後の同発電所1〜6号機の廃止に伴い、原子力発電所数は48基となりました。2015年4月には、民間事業者が適切かつ円滑な廃炉判断を行うことができるよう、政府が財務・会計上の措置を講じたことを踏まえ、日本原子力発電敦賀発電所1号機、関西電力美浜発電所1、2号機、中国電力島根原子力発電所1号機、九州電力玄海原子力発電所1号機について、さらに2016年5月には、四国電力伊方発電所1号機について、各事業者が廃炉の判断を行い、運転を終了しました。また、2018年3月には関西電力大飯発電所1、2号機が、同年5月には四国電力伊方発電所2号機が、同年12月には東北電力女川原子力発電所1号機が、2019年4月には九州電力玄海原子力発電所2号機が、同年9月には東京電力福島第二原子力発電所1〜4号機が、それぞれ運転を終了しました。
世界的に見ると、2023年1月時点で、日本は米国、フランス、中国に次ぐ、世界で4番目の原子力発電設備容量を有しています(第213-2-1)。
【第213-2-1】世界の原子力発電設備容量(2023年1月現在)
【第213-2-1】世界の原子力発電設備容量(2023年1月現在)(xls/xlsx形式:21KB)
- 資料:
- 日本原子力産業協会「世界の原子力発電開発の動向2023年版」を基に作成
日本の発電電力量に占める原子力発電のシェアは、2010年度に25.1%を占めていましたが、2011年度に9.3%、2012年度に1.5%、2013年度に0.9%となり、2014年度には原子力発電所の稼働基数がゼロになったことから0%となりました。その後は再稼働の進展に伴って上昇傾向にあり、2022年度のシェアは5.5%でした(第214-1-6参照)。
また、原子力発電所の設備利用率23については、2010年度に67.3%となっていましたが、2014年度には0%となりました。その後は再稼働の進展に伴って上昇しており、2022年度の設備利用率は19.4%でした(第213-2-2)。
【第213-2-2】日本の原子力発電設備利用率の推移
【第213-2-2】日本の原子力発電設備利用率の推移(xls/xlsx形式:20KB)
- 資料:
- 資源エネルギー庁「電力調査統計」、「総合エネルギー統計補足調査」、原子力安全基盤機構「原子力施設運転管理年報」、原子力規制庁「実用発電用原子炉施設、研究開発段階発電用原子炉施設、加工施設、再処理施設、廃棄物埋設施設、廃棄物管理施設における放射性廃棄物の管理状況及び放射線業務従事者の線量管理状況について」を基に作成
日本で主として採用されている原子炉は、「軽水炉」と呼ばれるものであり、軽水24を減速材・冷却材25に兼用し、燃料には低濃縮ウランを用います。軽水炉は、世界の原子力発電の中心となっており、沸騰水型(BWR)と加圧水型(PWR)の2種類に分類されます。BWRは原子炉の中で蒸気を発生させ、それにより直接タービンを回す方式であり、PWRは原子炉で発生した高温高圧の水を蒸気発生器に送り、そこで蒸気を作ってタービンを回す方式です(第213-2-3)。
【第213-2-3】BWRとPWR
【第213-2-3】BWRとPWR(ppt/pptx形式:183KB)
- 資料:
- 日本原子力文化財団「原子力・エネルギー図面集」を基に作成
②核燃料サイクル
核燃料サイクルは、原子力発電所から出る使用済燃料を再処理し、未使用のウランや新たに生まれたプルトニウム等の有用資源を回収して、再び燃料として利用するものです。具体的には、再処理工場で回収されたプルトニウムを既存の原子力発電所(軽水炉)で利用する「プルサーマル」が挙げられます。回収されたプルトニウムをウランと混ぜて加工される混合酸化物燃料(MOX燃料)が、プルサーマルに使用されています。日本は、資源の有効利用や、高レベル放射性廃棄物の減容化・有害度低減等の観点から、使用済燃料を再処理し、回収されるプルトニウム等を有効利用する核燃料サイクルの推進を基本的方針としています(第213-2-4)。
【第213-2-4】核燃料サイクル
【第213-2-4】核燃料サイクル(ppt/pptx形式:550KB)
- 資料:
- 日本原子力文化財団「原子力・エネルギー図面集」
(ア)使用済燃料問題の解決に向けた取組
日本では、原子力利用に伴い確実に発生する使用済燃料について、将来世代に負担を先送りしないよう、対策を総合的に推進しており、高レベル放射性廃棄物についても、国が前面に立って、最終処分に向けた取組を進めています。使用済燃料については、再処理工場への搬出を前提とし、その搬出までの間、各原子力発電所等において安全を確保しながら計画的に貯蔵するための対策を進めており、引き続き、発電所の敷地内外を問わず、中間貯蔵施設や乾式貯蔵施設等の建設・活用を進める等、使用済燃料の貯蔵能力の拡大に向けた取組を進めています。あわせて、将来の幅広い選択肢を確保するため、放射性廃棄物の減容化・有害度低減等に向けた技術開発も進めています。
(ⅰ)放射性廃棄物の処分
原子力発電所で発生した低レベル放射性廃棄物の処分については、発生者責任に基づき、原子力事業者等が処分に向けた取組を進めることとしています。放射能レベルに応じて、処分する深さや放射性物質の漏出を抑制するためのバリアの違いにより、人工構造物を設けない浅地中埋設処分(浅地中トレンチ処分)、コンクリートピットを設けた浅地中への処分(浅地中ピット処分)、一般的な地下利用に対して十分な余裕を持った深度(地下70m以上)への処分(中深度処分)、地下300m以上深い地層中への処分(地層処分)のいずれかの方法により処分することとしています(第213-2-5)。
【第213-2-5】放射性廃棄物の種類と概要
【第213-2-5】放射性廃棄物の種類と概要(ppt/pptx形式:414KB)
- 資料:
- 経済産業省作成
各原子力施設の運転及び解体に伴い発生する低レベル放射性廃棄物の2023年3月末時点の保管量は、全国の原子力施設(原子炉施設、加工施設、再処理施設、廃棄物埋設・管理施設、核燃料物質使用施設)において、容量200Lのドラム缶換算で約119万本分となりました。また、使用済燃料プール、サイトバンカ、タンク等には、使用済制御棒、チャンネルボックス、使用済樹脂、シュラウド取替により発生した放射性廃棄物の一部等が保管されています。日本原燃は、1992年12月に、青森県六ヶ所村において、低レベル放射性廃棄物埋設施設の操業を開始し、2024年3月末時点で、約36万本のドラム缶を埋設処分しています。加えて、日本原子力研究所(現在の日本原子力研究開発機構。以下「JAEA」という。)の動力試験炉(JPDR)の解体に伴い発生したものについては、茨城県東海村のJAEA敷地内の廃棄物埋設実地試験施設において、約1,670トンの浅地中トレンチ処分が行われています。
一方、発電によって発生した使用済燃料は再処理され、高レベル放射性廃液はガラス固化した上で、冷却のために30年〜50年程度貯蔵した後、地下300m以上深い地層に処分されます。国内ではJAEAの核燃料サイクル工学研究所の再処理施設において、国外ではフランス・英国の再処理施設において、使用済燃料の再処理が行われてきました。再処理に伴って発生する高レベル放射性廃棄物は、2024年3月末時点で、国内で処理されたものと海外から返還されたものをあわせて、計2,530本がガラス固化体として国内(青森県六ヶ所村、茨城県東海村)で貯蔵されています。なお、同月末までに原子力発電の運転により生じた使用済燃料を、全て再処理しガラス固化体にした本数に換算すると、約27,000本相当となります。
この高レベル放射性廃棄物及び一部のTRU廃棄物26については、「特定放射性廃棄物の最終処分に関する法律(平成12年法律第117号)」に基づき、地層処分を行うべく、原子力発電環境整備機構(以下「NUMO」という。)が、2002年から文献調査の受入自治体の公募を開始しました。2015年5月には、この法律に基づく基本方針を改定(閣議決定)し、科学的に適性が高いと考えられる地域を国から提示する等、国が前面に立って取組を進め、2017年7月の最終処分関係閣僚会議を経て、火山や断層等といった、処分地の選定で考慮すべき科学的特性を全国地図の形で示した「科学的特性マップ」を公表しました。マップ公表後は、地層処分という処分方法の仕組みや日本の地下環境等に関する国民の皆さまの理解を深めていただくため、マップを活用した説明会を全国各地で実施する等、全国的な対話活動に取り組んでいます。また、2019年にとりまとめた「複数地域での文献調査に向けた当面の取組方針」等に沿って対話活動を進めていく中で、地層処分事業についてより深く知りたいと考える経済団体、大学・教育関係者、NPO等のグループが、全国で約180団体(2023年12月末時点)に増えており、勉強会や情報発信等の多様な取組が活発に行われてきています。
その中で、2020年10月に立地選定の第1段階である文献調査に応募した北海道寿都町と、国からの文献調査の申入れを受託した北海道神恵内村の2町村においては、同年11月より文献調査が開始されました。その後、2023年11月に資源エネルギー庁が「文献調査段階の評価の考え方」をとりまとめ、2024年2月には、総合資源エネルギー調査会電力・ガス事業分科会特定放射性廃棄物小委員会地層処分技術ワーキンググループにおいて、NUMOが作成した北海道寿都町、神恵内村の文献調査報告書の原案が公表されました。この文献調査報告書の原案が、「文献調査段階の評価の考え方」に基づき適切に作成されているかについて、議論が進められています。
また、同年4月には、佐賀県玄海町において、町内の団体から提出された文献調査への応募に関する請願が町議会で審議され、採択されました。そして、同年5月には、経済産業省からの文献調査実施の申入れについて、町長が受諾することを表明しています。引き続き、1つでも多くの地域に最終処分事業へ関心を持っていただけるよう、政府一丸となって、かつ、政府の責任で取り組んでいきます。
(ⅱ)使用済燃料の中間貯蔵
使用済燃料の中間貯蔵とは、使用済燃料が再処理されるまでの間、一時的に貯蔵・管理することをいいます。日本では、青森県むつ市において、使用済燃料を貯蔵・管理する法人であるリサイクル燃料貯蔵が、中間貯蔵施設1棟目に関して、2010年8月に貯蔵建屋の建設工事に着手し、2013年8月に完成させました。2014年1月に、リサイクル燃料貯蔵は、新規制基準(2013年12月施行)への適合性審査を原子力規制委員会に申請し、2020年11月に許可されました。安全審査の進捗を踏まえて、追加工事の工程見直しが行われ、2024年1月時点では、2024年度上期の事業開始を念頭に、準備が進められています。
(ⅲ)放射性廃棄物の減容化・有害度低減に向けた取組
原子力利用に伴い発生する放射性廃棄物の問題は、世界共通の課題であり、将来世代に負担を先送りしないよう、その対策を着実に進めていくことが不可欠です。高速炉は、マイナーアクチノイド等の長寿命核種を燃焼させることができる等、放射性廃棄物の減容化・有害度の低減を可能とする有用な技術であり、フランスや米国、ロシア、中国等でも開発が進められています。
こうした中、日本はフランス及び米国と、二国間の国際協力を実施しています。フランスとは、2014年5月に安倍総理が訪仏した際に、日本側の経済産業省と文部科学省、フランス側の原子力・代替エネルギー庁(CEA)が、フランスのナトリウム冷却高速炉の実証炉開発計画である第4世代ナトリウム冷却高速炉実証炉(ASTRID)計画及びナトリウム冷却炉の開発に関する一般取決めに署名し、日仏間の研究開発協力を開始しました。その後、2019年6月には、2020年から2024年までの研究開発協力の枠組みについて定めた新たな取決めを締結し、2020年1月からは、この取決めの下で、シミュレーションや実験に基づく協力を実施しています。米国とは、2019年6月に、米国が建設を検討するVTR(多目的試験炉)計画への研究協力に関する覚書に署名し、安全に関する研究開発等を開始しました。
また、多国間協力としては、高い安全性の実現を狙いとして、国際的な枠組みである第4世代原子力システムに関する国際フォーラム(GIF)において、ナトリウム冷却高速炉に関する安全設計の基準の構築を進めると同時に、その基準を国際的な標準とするべく、専門家間での議論を実施しています。
(イ)核燃料サイクルの工程(プルサーマルの場合)
原子力発電の燃料となるウランは、ウラン鉱石の形で鉱山から採掘されます。ウランは、様々な工程(製錬→転換→濃縮→再転換→成型加工)を経て燃料集合体に加工された後、原子炉に装荷され、発電を行います。発電後には、使用済燃料を再処理することにより、有用資源であるプルトニウム等を回収します。
(ⅰ)製錬
鉱山からウラン鉱石を採掘し、ウラン鉱石を化学処理してウラン(イエローケーキ、U3O8)を取り出す工程です。日本では、ウラン鉱石をカナダ、豪州、カザフスタン等から調達してきました。現在、この工程は日本国内で行われていません。
(ⅱ)転換
イエローケーキを、次の濃縮工程のためにガス状(UF6)にする工程です。日本では、この工程を海外にある転換会社に委託してきました。
(ⅲ)濃縮
ウラン濃縮とは、核分裂性物質であるウラン235の濃縮度を、天然の状態の約0.7%から、軽水炉による原子力発電に適した3%〜5%に高めることを意味します。
日本では、日本原燃が、青森県六ヶ所村のウラン濃縮施設において、遠心分離法という濃縮技術を採用しました。日本原燃は、1992年3月から年間150トンSWU27の規模で操業を開始し、1998年末には年間1,050トンSWU規模に到達しました。その後、遠心分離機を順次新型機へと更新するため、2010年3月から、導入初期分である年間75トンSWUの更新工事を行いました。2014年1月、日本原燃は、ウラン濃縮工場の新規制基準(2013年12月施行)への適合性審査を原子力規制委員会に申請しました。2017年5月に審査が完了し、事業変更許可を得ました。その後、同年9月に、安全性向上工事等のために自主的に生産活動を停止しましたが、2023年8月に生産活動を再開しました。なお、現在許可されている施設規模は年間450トンSWUとなっていますが、今後は段階的に新型遠心分離機への更新工事等を行い、最終的には年間1,500トンSWU規模を達成する計画です。
(ⅳ)再転換
次の成型加工工程のために、UF6をパウダー状のUO2にする工程です。日本では、三菱原子燃料(茨城県東海村)のみが再転換事業を行っており、それ以外については、海外の再転換工場に委託してきました。
(ⅴ)成型加工
パウダー状のUO2を焼き固めたペレットにした後、燃料集合体に加工する工程です。日本では、この工程の大半を国内の成型加工工場で行ってきました。
(ⅵ)再処理
使用済燃料の再処理とは、原子力発電所で発生した使用済燃料から、まだ燃料として使うことのできるウランと新たに生成されたプルトニウムを取り出すことをいいます。
青森県六ヶ所村に建設中の日本原燃再処理事業所再処理施設(年間最大処理能力:800トン)では、2006年3月から実際の使用済燃料を用いた最終試験であるアクティブ試験を実施してきました。使用済燃料からプルトニウム・ウランを抽出する工程等の試験が完了した後も、高レベル放射性廃液をガラス固化する工程の確立に時間を要していましたが、安定運転に向けた最終段階の試験を実施し、最大処理能力での性能確認等を行い、2013年5月に使用前事業者検査を除く全ての試験を終了しました。その後、2014年1月に日本原燃は、六ヶ所再処理工場の新規制基準(2013年12月施行)への適合性審査を原子力規制委員会に申請し、2020年7月に許可されました。2022年12月には、第1回の設計及び工事計画の認可(以下「設工認」という。)を取得し、同月に第2回の設工認申請を行いました。2023年12月末時点では、2024年度上期のできるだけ早期の竣工に向けて、地盤及び安全機能や機器設備の性能に係る設工認の審査を進めています。
(ⅶ)MOX燃料加工
MOX燃料加工は、再処理工場で回収されたプルトニウムをウランと混ぜて、プルサーマルに使用される「MOX燃料」に加工することをいいます。
日本では、2010年10月に、日本原燃が青森県六ヶ所村において、MOX燃料工場の建設に着手しました。その後、2014年1月に日本原燃は、MOX燃料工場の新規制基準(2013年12月施行)への適合性審査を原子力規制委員会に申請し、2020年12月に許可されました。2022年9月には第1回の設工認を取得し、2023年2月に第2回の設工認申請を行いました。2023年12月末時点では、2024年度上期の竣工を目指して建設工事を進めるとともに、地盤及び安全機能や機器設備の性能に係る設工認の審査も進めています。
(ⅷ)プルトニウムの適切な管理と利用
日本は、プルトニウム利用の透明性向上のため、1994年から毎年「我が国のプルトニウム管理状況」を公表しています。また、1998年からは、プルトニウム管理に関する指針に基づき、国際原子力機関(以下「IAEA」という。)を通じて、日本のプルトニウム保有量を公表しています。その上で、「利用目的のないプルトニウムは持たない」との原則を引き続き堅持し、プルトニウム保有量の削減に取り組む方針としており、再処理によって回収されたプルトニウムを既存の原子力発電所(軽水炉)で利用するプルサーマルに取り組んでいます。
電気事業連合会は、2020年12月に、基本的なプルサーマル導入の方針を示す「新たなプルサーマル計画」を公表し、地元理解を前提に、稼働する全ての原子炉を対象に1基でも多くプルサーマル導入を検討するとともに、当面の目標として、2030年度までに少なくとも12基でのプルサーマルの実施を目指す旨を表明しました。また、電気事業連合会は、2024年2月に、より具体的なプルトニウムの利用見通しを示す「プルトニウム利用計画」も公表しました。さらに、同じく同年2月には、日本原燃が六ヶ所再処理施設及びMOX燃料加工施設の「暫定操業計画」を公表しました。これらの2つの計画を踏まえ、再処理事業の実施主体である使用済燃料再処理機構28が、具体的な再処理量等を「使用済燃料再処理等実施中期計画」に記載し、経済産業大臣に対して計画の変更の認可申請を行いました。同年3月に、経済産業省が原子力委員会の意見も聴取した上でこれを認可し、プルトニウムバランスの確保に向けた具体的な取組方針が示されました。
また、プルトニウム利用に関する日米の取組として、2014年3月、日米両国は、JAEAの高速炉臨界実験装置(以下「FCA」という。)から高濃縮ウランと分離プルトニウムを全量撤去し処分することで合意しました。両国の声明では、「この取組は、数百キロの核物質の撤廃を含んでおり、世界規模で高濃縮ウラン及び分離プルトニウムの保有量を最小化するという共通の目標を推し進めるものであり、これはそのような核物質を権限のない者や犯罪者、テロリストらが入手することを防ぐのに役立つ」と説明しました。また、同月にオランダ・ハーグで開催された第3回核セキュリティ・サミットにおいては、安倍総理が「利用目的のないプルトニウムは持たない」との原則を引き続き堅持する旨を表明するとともに、プルトニウムの回収と利用のバランスを十分に考慮すること、プルトニウムの適切な管理を引き続き徹底することを表明しました。また、日米首脳間の共同声明では、JAEAのFCAから高濃縮ウランとプルトニウムを全量撤去することを表明しました。2016年4月には、米国・ワシントンD.C.で開催された第4回核セキュリティ・サミットにおいて、安倍総理は、FCAからの燃料撤去を大幅に前倒しして完了させたこと、高濃縮ウラン燃料を利用している京都大学臨界集合体実験装置(KUCA)を低濃縮ウラン燃料利用の原子炉に転換し、全ての高濃縮ウラン燃料を米国に移送すること等を発表しました。これについては、2022年8月に完了しました。
③原子力施設の廃止措置
廃止が決定された原子力発電所の廃止措置は、事業者が作成し、原子力規制委員会の認可を受けた廃止措置計画に基づき実施されます。廃止措置の主な手順としては、原子炉の解体を中心として4つのステップがあります(第213-2-6)。
【第213-2-6】原子力発電所廃止措置の流れ
【第213-2-6】原子力発電所廃止措置の流れ(ppt/pptx形式:232KB)
- 資料:
- 経済産業省作成
使用済燃料の搬出に加え、放射性物質を多く含むものについては、放射線を出す能力が徐々に減る性質を利用して、時間を置いてその量を減らしたり(安全貯蔵)、一部の放射性物質を先に取り除いたり(汚染の除去)して、規制に基づき解体を進め、丁寧に放射性物質を取り除いていきます。
日本の原子力利用の開始から既に半世紀以上が経過し、一部の原子力施設では施設の廃止や解体が行われ、安全確保の実績も積み上げられてきました。一方、これらの経験を踏まえ、安全確保のための制度上の手続面の明確化や、原子力施設の廃止や解体に伴って発生する様々な種類の廃棄物等から、放射性物質として管理する必要のあるものと、汚染レベルが自然界における放射性物質の放射線レベルと比べても極めて低く、管理すべき放射性物質として扱う必要のないものを区分するための制度(クリアランス制度)の創設が必要とされていました。こうした状況を踏まえ、2005年5月に「核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律(昭和32年法律第166号)」を改正して、廃止措置及びクリアランス制度等の導入が行われました。
原子力発電所の廃止措置に伴い発生する廃棄物の総量は、110万kW級の軽水炉の場合、約50万トンとなり、これらの廃棄物を適正に処分していくことが重要です。運転中・解体中に発生する廃棄物の中には、安全上「放射性物質として扱う必要のないもの」も含まれています。これらは、放射能を測定して安全であることを確認し、国のチェックを受けた後、再利用できるものはリサイクルし、できないものは産業廃棄物として処分することとしています。各電力会社が2024年3月時点で公表している「廃止措置実施方針」によると、国によるチェックの後、放射性廃棄物として適切に処理処分する必要がある低レベル放射性廃棄物の量は、51プラント合計で約45万トン(総廃棄物重量の約2%)と試算されています。このうち、炉内構造物等の「放射能レベルの比較的高いもの」が約0.8万トン(総廃棄物重量の約0.03%)、コンクリートピットを設けた浅地中への処分が可能な「放射能レベルの比較的低いもの」が約7万トン(総廃棄物重量の約0.3%)、堀削した土壌中への埋設処分(浅地中トレンチ処分)が可能な「放射能レベルの極めて低いもの」が約37万トン(総廃棄物重量の約1.7%)とされています。
日本では、1998年に日本原子力発電東海発電所が営業運転を停止し、廃止措置段階に入っており、試験研究炉では、日本原子力研究所(現在のJAEA)の動力試験炉(JPDR)の解体撤去が、1996年3月に計画どおり完了し、2002年10月に廃止届が届けられました。研究開発段階にある発電用原子炉では、2003年に運転を終了したJAEAの新型転換炉ふげん発電所の廃止措置計画の認可が、2008年2月に行われました。同発電所は、原子炉廃止措置研究開発センターに改組され、廃止措置のための技術開発が進められてきました。
また、2009年1月に、中部電力は浜岡原子力発電所1、2号機を廃止し、同年11月に廃止措置計画が認可されました。2011年3月に発生した東日本大震災による東京電力福島第一原子力発電所事故後は、同発電所1〜6号機が廃止となる等、2024年3月時点で、各事業者の判断により24基の商業用原子力発電所の廃炉が決定されています。
(2)再生可能エネルギー
①全般
再エネは、化石エネルギー以外のエネルギー源のうち、永続的に利用できるものを用いたエネルギーであり、太陽光、風力、水力、地熱、バイオマス等が挙げられます。
日本の再エネの導入拡大に向けた取組は、「石油代替エネルギーの開発及び導入の促進に関する法律(昭和55年法律第71号)」に基づく石油代替政策に端を発しています。1970年代の二度のオイルショックを契機に、日本は石油から石炭、天然ガス、原子力、再エネ等の石油代替エネルギーへのシフトを進めました。
石油代替エネルギーの技術開発として、1974年に、通商産業省工業技術院(現在の産業技術総合研究所(AIST))が、「サンシャイン計画」を開始しました。この計画は、将来的にエネルギー需要の相当部分を賄いうるエネルギーの供給を目標に、太陽、地熱、石炭、水素エネルギーの4つの技術について、重点的に研究開発を進めるものでした。また、1980年に設立された新エネルギー総合開発機構(現在の新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO))においても、石炭液化技術、地熱開発のための探査・掘削技術、太陽光発電技術等の開発が推進されました。その後、1993年に「サンシャイン計画」は、「ムーンライト計画」と統合され、「ニューサンシャイン計画29」として再スタートすることとなりました。
さらに、石油代替エネルギーのうち、経済性における制約から普及が十分でない新エネルギーの普及促進を目的として、1997年に「新エネルギー利用等の促進に関する特別措置法(平成9年法律第37号)」が制定されました。この法律は、国や地方公共団体、事業者、国民等の各主体の役割を明確化する基本方針の策定や、新エネルギー利用等を行う事業者に対する財政面の支援措置等を定めたものです。
これらの取組の結果、日本の一次エネルギー供給に占める石油の割合は、1973年度の75.5%から大きく低下し、近年では40%以下の水準となっています。しかし、天然ガス・石炭も含めた化石エネルギー全体としての割合は、依然として80%以上を占めています。
こうした中、世界のエネルギー需要の急増等を背景に、今後は従来どおりの質・量の化石エネルギーを安定的に確保していくことが困難になることが懸念されています。2009年7月には、このような事態への対応力を強化するとともに、気候変動対策を進めていく観点から、「石油依存からの脱却を図る」というこれまでの石油代替政策について、抜本的な見直しが行われました。この結果、研究開発や導入を促進する対象を「石油代替エネルギー」から、再エネや原子力等の「非化石エネルギー」とすることを骨子とした「石油代替エネルギーの開発及び導入の促進に関する法律」の改正が行われ、法律の名称も「非化石エネルギーの開発及び導入の促進に関する法律」に改められました。あわせて「エネルギー供給事業者による非化石エネルギー源の利用及び化石エネルギー原料の有効な利用の促進に関する法律(平成21年法律第72号)」(以下「高度化法」という。)も制定され、エネルギー供給事業者に対して、再エネ等の非化石エネルギーの利用を一層促進する枠組みが構築されました。
2003年からは、「電気事業者による新エネルギー電気等の利用に関する特別措置法(平成14年法律第62号)」に基づき、RPS制度30を開始し、電気分野における再エネの導入拡大を進めました。2012年7月からは、RPS制度に代えて、固定価格買取制度(以下「FIT制度31」という。)を導入しました。これにより、再エネに対する投資回収の見込みが安定したこともあり、FIT制度の開始から2021年度末までに運転を開始した再エネ発電設備は、制度開始前と比較して、約3.3倍に増加しました。その後も、2022年4月からは、事業者の投資予見可能性を確保しつつ、市場を意識した行動を促す目的で、FIT制度に加えて、FIP制度32が新たに導入される等、再エネの最大限の導入に向けた取組が進んでいます。
②太陽光発電
太陽光発電は、シリコン半導体等に光が当たると電気が発生する現象を利用し、太陽の光エネルギーを太陽電池(半導体素子)により電気に変換する発電方法です。日本では着実に導入量が伸びており、2022年度末の導入量は、7,394万kWに達しました。企業による技術開発や導入量の増加により、設備コストも年々低下しています(第213-2-7)。
【第213-2-7】太陽光発電の国内導入量とシステム価格の推移
(注)「1kW当たりのシステム価格」は住宅用(10kW未満)の平均値(設置年別の推移)。
【第213-2-7】太陽光発電の国内導入量とシステム価格の推移(xls/xlsx形式:24KB)
- 資料:
- システム価格は資源エネルギー庁「調達価格等算定委員会」、導入量の2014年度以前のデータは太陽光発電普及拡大センター「交付決定件数・設置容量データ」、2015年度以降のデータは資源エネルギー庁「固定価格買取制度情報公開用ウェブサイト」を基に作成
太陽電池の国内出荷量は、住宅用太陽光発電設備に対する政府の補助制度が一時打ち切られた2005年度をピークに横ばいが続いていましたが、2009年1月に補助制度が再度導入されて設置費用が低減したことや、2009年11月に太陽光発電の余剰電力買取制度が開始されたこと等を受けて、2009年度から増加しました。さらに、2012年に開始したFIT制度の効果により、非住宅分野での導入が急拡大し、2014年度の太陽電池の国内出荷量は過去最高を記録しました。その後は、太陽光発電の買取価格の低下等により、出荷量は減少傾向にあります(第213-2-8)。
【第213-2-8】太陽電池の国内出荷量の推移
(注)2023年度は4月から9月まで。
【第213-2-8】太陽電池の国内出荷量の推移(xls/xlsx形式:20KB)
- 資料:
- 太陽光発電協会「日本における太陽電池の出荷量」を基に作成
世界的に見ると、日本の太陽光発電の累計導入量は、2003年まで世界第1位でしたが、ドイツの導入量が急増した結果、2004年にはドイツに次ぐ世界第2位となりました。その後、日本はドイツを再び上回ったものの、近年では中国や米国の導入量が急速に増加しており、2022年時点では、中国と米国に次ぐ世界第3位となっています(第213-2-9)。
【第213-2-9】世界の太陽光発電導入量(2022年)
【第213-2-9】世界の太陽光発電導入量(2022年)(xls/xlsx形式:20KB)
- 資料:
- IEA Photovoltaic Power Systems Programme(PVPS)「Trends in Photovoltaic Applications 2023」、「2023 Snapshot of Global PV Markets」を基に作成
日本は、太陽電池の生産量においても、2007年まで世界第1位でした。しかし、2013年をピークに減少傾向となり、中国等のアジアの企業が生産を拡大させた結果、2022年の世界の太陽電池(モジュール)生産量に占める日本の割合は、わずか0.1%まで落ち込み、その一方で中国の寡占化が進みました。太陽電池の国内出荷量に占める国内生産品の割合の推移を見ても、同様の傾向が見られます。2008年度までは、国内生産品の割合がほぼ100%を占めていましたが、国内出荷量が大幅に増加した2009年度から低下し、2022年度には10%になりました(第213-2-10、第213-2-11)。
【第213-2-10】世界の太陽電池(モジュール)生産量(2022年)
【第213-2-10】世界の太陽電池(モジュール)生産量(2022年)(xls/xlsx形式:21KB)
- 資料:
- IEA Photovoltaic Power Systems Programme(PVPS)「Trends in Photovoltaic Applications 2023」を基に作成
【第213-2-11】国内出荷された太陽電池の生産地構成の推移
(注)2023年度は4月から9月まで。
【第213-2-11】国内出荷された太陽電池の生産地構成の推移(xls/xlsx形式:21KB)
- 資料:
- 太陽光発電協会「日本における太陽電池出荷量」を基に作成
なお、太陽光発電には、天候や日照条件等によって出力が変動するという課題が残されています(第213-2-12)。太陽光発電は、特に九州エリアにおいて、需要に比して大規模な導入が進んでおり(第213-1-13)、近年では、太陽光発電の出力ピーク時には、エリア内電力需要(1時間値)の8割以上を太陽光発電が占めることもあります。太陽光発電の導入が進む地域においては、午前の残余需要33の減少及び夕方の残余需要の増加の程度が以前より急激になっており、系統運用上の課題となっています。2018年10月には、九州エリアにおいて、太陽光発電の出力変動に対して、火力発電や揚水発電等だけでは調整が困難になったことから、離島を除くと国内で初めてとなる太陽光発電の「出力抑制」を実施しました。近年、出力抑制は九州エリア以外でも行われており、2022年度には北海道・東北・中国・四国エリアで、2023年度には関西、中部エリアで、それぞれ初めて出力抑制が行われました。太陽光発電の導入拡大のためには、コスト低減に向けた技術開発等とともに、こうした出力変動への対応を進めることが重要となっています。なお、太陽光発電は、高温になると発電効率が低下するため、基本的には特に春頃の発電量が多くなりますが、その一方で、春頃は冷暖房等の需要が比較的少ない時期でもあるため、こうした時期に出力抑制が生じやすい傾向にあります34(第213-2-14)。
【第213-2-12】太陽光発電の天候別発電電力量の推移
【第213-2-12】太陽光発電の天候別発電電力量の推移(ppt/pptx形式:97KB)
- 資料:
- 資源エネルギー庁調べ
【第213-2-13】FIT制度による太陽光発電の認定量・導入量(2022年度末)
(注)「認定量」は、「導入量」と既認定未稼働設備容量(「認定量(運転開始前)」)の合計。
【第213-2-13】FIT制度による太陽光発電の認定量・導入量(2022年度末)(xls/xlsx形式:22KB)
- 資料:
- 資源エネルギー庁「固定価格買取制度 情報公開用ウェブサイト」を基に作成
【第213-2-14】九州エリアの電力需給実績と出力抑制の状況(2023年5月3日)
(注)太陽光発電の自家消費分は、「太陽光」には含まれず、「電力需要」の減少分として表れている。
【第213-2-14】九州エリアの電力需給実績と出力抑制の状況(2023年5月3日)(xls/xlsx形式:26KB)
- 資料:
- 九州電力送配電Webサイトを基に作成
③太陽熱利用
太陽エネルギーによる熱利用は、古くは太陽光を室内に取り入れることから始まっていますが、積極的に利用され始めたのは、太陽熱を集めて温水を作る温水器の登場からです。太陽熱利用機器はエネルギー変換効率が高く、新エネルギーの中でも設備費用が比較的安価であることから、費用対効果の面でも有効です。これまでの技術開発により、給湯だけでなく、暖房や冷房にまで用途を広げた高性能なソーラーシステムが開発されました。太陽熱利用機器の普及は、1970年代の二度のオイルショックを経て、1980年代前半にピークを迎えましたが、その後は競合製品の台頭等により減少傾向にあります(第213-2-15)。
【第213-2-15】太陽熱温水器(ソーラーシステムを含む)の新規設置台数の推移
【第213-2-15】太陽熱温水器(ソーラーシステムを含む)の新規設置台数の推移(xls/xlsx形式:22KB)
- 資料:
- 経済産業省「生産動態統計年報」、ソーラーシステム振興協会「システム及び構成機器販売・施工実績」を基に作成
④風力発電
風力発電は、風の力で風車を回し、その回転運動を発電機に伝えることで、電気を起こす発電方法です。
1997年度に開始された設備導入支援や、1998年度に行われた電力品質確保に係る系統連系技術要件ガイドラインの整備に加え、RPS制度やFIT制度の導入等により、風力発電の導入が進められてきました。2022年末における風力発電の累計導入量は、480万kWでした(第213-2-16)。
【第213-2-16】風力発電導入量の推移
(注)2016以前のデータは各年度末時点の累計導入実績。2017以降のデータは各年末時点の累計導入実績。
【第213-2-16】風力発電導入量の推移(xls/xlsx形式:22KB)
- 資料:
- 日本風力発電協会(JWPA)「2022年末日本の風力発電の累積導入量」を基に作成
なお、未稼働分を含めたFIT制度による認定量は、2022年度末時点で1,654万kWとなっています。今後、未稼働となっている案件が順次稼働することで、太陽光発電と同様に出力変動の問題がより大きくなるため、電力系統への影響緩和のため、出力変動に応じた調整力の確保や系統の強化等が課題となります(第213-2-17)。
【第213-2-17】FIT制度による風力発電の認定量・導入量(2022年度末)
(注)「認定量」は「導入量」と既認定未稼働設備容量(「認定量(運転開始前)」)の合計。
【第213-2-17】FIT制度による風力発電の認定量・導入量(2022年度末)(xls/xlsx形式:22KB)
- 資料:
- 資源エネルギー庁「固定価格買取制度 情報公開用ウェブサイト」を基に作成
世界的に見ると、2022年末時点の日本の風力発電の導入量は、世界全体の1%未満となっています。これには、日本が諸外国よりも平地が少なく地形も複雑であること、電力系統に余裕がない場合があること等、風力発電の設置が比較的進みにくいといった事情があります(第213-2-18)。
【第213-2-18】世界の風力発電導入量(2022年末)
【第213-2-18】世界の風力発電導入量(2022年末)(xls/xlsx形式:24KB)
- 資料:
- IRENA「Renewable Capacity Statistics 2023」を基に作成
こうした課題に直面しつつも、風力発電の導入を推進するため、電力会社の系統受入容量の拡大や、広域的な運用による調整力の確保等に向けた対策が行われています。また、風力発電の開発期間の短縮のため、通常は3年〜4年程度を要するとされる環境アセスメントの手続期間を短くしていくための取組等も行われています。
⑤バイオマスエネルギー
バイオマス(生物起源)エネルギーとは、化石エネルギーを除く、動植物に由来する有機物で、エネルギー源として利用可能なものを指します。特に植物由来のバイオマスは、その生育過程において大気中のCO2を吸収しているため、これらを燃焼させたとしても追加的なCO2が排出されないことから、カーボンニュートラルなエネルギーとされています。バイオマスエネルギーは、原料の性状や取扱形態等から、廃棄物系と未利用系に大別されます。利用方法については、直接燃焼以外にも、エタノール発酵等の生物化学的変換、炭化等の熱化学的変換による燃料化等があります。
日本で利用されているバイオマスエネルギーは、廃棄物の焼却によるものが主であり、製紙業等のパルプ化工程で排出される黒液や、製材工程から排出される木質廃材、農林・畜産業で排出される木くずや農作物残さ、家庭等から排出されるゴミ等を燃焼させることによって得られる電力・熱を利用するもの等があります。特に、黒液や廃材等を直接燃焼させる形態を中心に、導入が進展してきました。また、生物化学的変換のうち、メタン発酵については、家畜排せつ物や食品廃棄物等からメタンガスを生成する技術は確立されているものの、原料の収集・輸送やメタン発酵後の残さ処理等が普及に向けた課題となっています。下水汚泥については、下水処理場における収集が容易なことから、大規模な下水処理場を中心にメタン生成を行い、エネルギーとして利用を進めてきました(第213-2-19)。
【第213-2-19】バイオマスの分類及び主要なエネルギー利用形態
(注)RDF:Refuse Derived Fuelの略で、廃棄物(ごみ)から生成された固形燃料のこと。
【第213-2-19】バイオマスの分類及び主要なエネルギー利用形態(xls/xlsx形式:132KB)
- 資料:
- 資源エネルギー庁「新エネルギー導入ガイド企業のためのAtoZ バイオマス導入」
バイオマス発電については、2012年に開始したFIT制度により、導入が進んでいます。2015年度からは、新たに2,000kW未満の未利用木質バイオマス発電の買取区分が設けられ、小さい事業規模でも木質バイオマス発電に取り組めるようになりました。2022年度末における、FIT制度によるバイオマス発電の導入設備容量は、RPS制度からの移行導入量を含めて597万kWに達しました(第213-2-20)。
【第213-2-20】FIT制度によるバイオマス発電導入設備容量の推移
(注)「RPS制度からの移行導入量」は2014年度以降の数値のみ掲載している。
【第213-2-20】FIT制度によるバイオマス発電導入設備容量の推移(xls/xlsx形式:22KB)
- 資料:
- 資源エネルギー庁「固定価格買取制度 情報公開用ウェブサイト」を基に作成
いずれの類型・原料種についても、原料バイオマスの長期的かつ安定的な確保が共通の課題となっています。また、持続可能な形で生産された燃料であることも重要な要素です。輸送用燃料であるバイオエタノールやバイオディーゼルは、その大部分が生物化学的変換で製造されています。バイオエタノールについては、これまで一般的にサトウキビ等の糖質やトウモロコシ等のでん粉質等で製造されてきましたが、日本では食料競合を避けるため、稲わらや木材等のセルロース系バイオマスを原料として商業的に生産できるよう、研究開発を推進しています。利用方式としては、ガソリンに直接混合する方式と、添加剤(ETBE35)として利用する方式があります。バイオディーゼルについては、ナタネやパーム等の植物油をメチルエステル化し、そのまま又は軽油に混合した状態でディーゼル車の燃料として利用されています。欧米等では、大規模な原料栽培から商業的に取り組まれていますが、日本では、廃食用油等の使用済植物油を回収・再利用する形での製造が主流です。
近年では、新たなバイオ燃料の製造技術として、ATJ技術36や、木材や廃棄物のガス化・液化技術37、炭化水素等を生産する微細藻類を活用したジェット燃料等の製造技術等の開発が活発に行われており、軽油やジェット燃料代替の製造技術として実用化が期待されています。また、航空分野における脱炭素化の推進のため、「持続可能な航空燃料」(以下「SAF」という。)への注目度も高まっており、技術開発も活発に進められています。日本は、2030年までに国内航空会社の燃料使用量の10%をSAFに置き換えることを目標としています。
⑥水力
水力発電は、高いところにある河川等の水を低いところに落とすことで、水の持つ位置エネルギーを利用して水車を回し、発電を行うものです。水力発電は、流れ込み式(水路式)、調整池式、貯水池式、揚水式に分けられ、このうち揚水式以外を特に「一般水力」と呼んでいます。揚水式とは、電力需要が供給より小さい時間帯に、下部にある水を上部に汲み上げておき、電力が必要となった際に上部から下部に水を放流して発電する方式であり、蓄電池のような性質を有する発電方式です。2022年度末の日本の水力発電の設備容量(揚水を含む)は5,001万kWであり、年間発電電力量は851億kWhでした。世界的に見ると、世界の水力発電設備容量における日本のシェアは、2022年末時点で3.6%となっています(第213-2-21、第213-2-22)。
【第213-2-21】水力発電設備容量及び発電電力量の推移
【第213-2-21】水力発電設備容量及び発電電力量の推移(xls/xlsx形式:24KB)
- 資料:
- 2015年度以前のデータは電気事業連合会「電気事業便覧」、2016年度以降のデータは資源エネルギー庁「電力調査統計」を基に作成
【第213-2-22】世界の水力発電導入量(2022年末)
【第213-2-22】世界の水力発電導入量(2022年末)(xls/xlsx形式:20KB)
- 資料:
- IRENA「Renewable Capacity Statistics 2023」を基に作成
水力発電の新規開発に当たっては、開発地点の小規模化と奥地化が進んでいることから、発電コストが他の電源と比べて高くなる傾向にあり、新規開発の大きな阻害要因となっています。そうした中、今後は農業用水等を活用した小水力発電のポテンシャルを活かしていくことが重要です。小水力発電は、エネルギーの地産地消の推進にもつながります。2012年に開始したFIT制度の効果により、2023年3月時点で計111万kWの中小水力発電が新たに運転を開始しており、今後も開発が進むことが期待されています。
⑦地熱
地熱発電は、地下深部に浸透した雨水等が地熱によって加熱され、高温の熱水として蓄えられている地熱貯留層から、坑井によって熱水・蒸気を地上に取り出し、タービンを回して電気を起こす発電方式です。CO2の排出量がほぼゼロであり、長期間にわたって安定的な発電が可能なベースロード電源である地熱発電は、日本が世界第3位の資源量を有する電源として注目されています(第213-2-23)。
【第213-2-23】主要国における地熱資源量及び地熱発電設備容量
【第213-2-23】主要国における地熱資源量及び地熱発電設備容量(xls/xlsx形式:13KB)
- 資料:
- 地熱資源量は資源エネルギー庁「第18回総合資源エネルギー調査会資源・燃料分科会 資料2:地熱資源開発の現状と課題について」、地熱発電設備容量はIRENA「Renewable Capacity Statistics 2023」を基に作成
一方、地熱発電の導入には、地下の開発に係る高いリスクやコスト、地域の方々等からの理解、開発開始から発電所の稼働までに要する10年超のリードタイム等、様々な課題が存在しています。こうした課題を解決するために、様々な支援措置が講じられています。例えば、開発リスクが特に高い初期調査段階におけるコストを低減するため、2023年度においては、エネルギー・金属鉱物資源機構(JOGMEC)を通じて、資源量の把握に向けた地表調査や掘削調査等に対する支援を、国内で15件実施しています。その他にも、JOGMECでは、地熱資源の8割が存在する国立・国定公園を中心に、新規開発地点を開拓するための先導的資源量調査等を実施しています。また、開発リードタイムを短縮するため、高性能な探査技術の開発や、通常は3年〜4年程度を要するとされる環境アセスメントの手続期間の短縮に向けた取組等も進められています(第213-2-24)。
【第213-2-24】地熱発電の開発プロセス
【第213-2-24】地熱発電の開発プロセス(ppt/pptx形式:445KB)
- 資料:
- 経済産業省作成
なお、2022年末時点において、世界の地熱発電設備容量に占める日本のシェアは3.0%で、世界第10位の規模となっています(第213-2-25)。
【第213-2-25】世界の地熱発電導入量(2022年末)
【第213-2-25】世界の地熱発電導入量(2022年末)(xls/xlsx形式:21KB)
- 資料:
- IRENA「Renewable Capacity Statistics 2023」を基に作成
⑧未利用エネルギー
未利用エネルギーとは、夏は大気よりも冷たく、冬は大気よりも温かい河川水・下水等の温度差エネルギーや、工場等の排熱、雪氷熱等といった、今まで利用されていなかったエネルギーのことを意味します。
特に雪氷熱利用については、古くから北海道や東北地方等の降雪量の多い地域において、雪氷を夏季まで保存することで、農産物等の冷蔵等に利用してきました。近年では、地方自治体等が中心となった雪氷熱利用の取組が活発化しており、農作物保存用の低温貯蔵施設や病院、公共施設、集合住宅等での冷房用冷熱源等として利用されています。
また、清掃工場の排熱や下水・河川水・海水等の温度差エネルギーの利用については、利用可能量が非常に多く、また比較的消費地に近いところにあること等の理由から、今後より一層の活用が期待されています。エネルギー供給システムとして、環境政策やエネルギー政策、都市政策への貢献が期待されている地域熱供給をはじめとしたエネルギーの面的利用とあわせて、さらに導入効果が発揮できるエネルギーです(第213-2-26)。
【第213-2-26】未利用エネルギーの活用概念
【第213-2-26】未利用エネルギーの活用概念(ppt/pptx形式:128KB)
- 資料:
- 経済産業省作成
3.エネルギーの高度利用
(1)次世代自動車
次世代自動車には、燃料電池自動車(FCV)、電気自動車(EV)、ハイブリッド自動車(HV)等があります。2021年1月に菅総理は、脱炭素社会の実現に向け、2035年までに新車販売における電動車38100%の実現を表明しました。日本の運輸部門におけるエネルギー消費の大半は、ガソリンや軽油の使用を前提とする自動車によるものであり、これらの燃料の消費を抑制する次世代自動車の導入は、気候変動対策等の観点から非常に重要です。次世代自動車の導入に当たっては、価格面を中心に様々な課題がありますが、いわゆるエコカー補助金・減税等の効果もあり、ハイブリッド自動車を中心に普及が拡大しています。
2022年度末時点の日本における次世代自動車の保有台数は、ハイブリッド自動車(プラグインハイブリッド自動車を含まない)が1,175.7万台、プラグインハイブリッド自動車が20.8万台、電気自動車が16.5万台となりました(第213-3-1)。
【第213-3-1】次世代自動車の保有台数の推移
(注)「ハイブリッド自動車」には、プラグインハイブリッド自動車を含まない。
【第213-3-1】次世代自動車の保有台数の推移(xls/xlsx形式:20KB)
- 資料:
- 自動車検査登録情報協会「自動車保有台数」を基に作成
(2)燃料電池
燃料電池は、水素と酸素を化学的に反応させて電気を発生させる装置です。燃料となる水素は多様なエネルギー源から様々な方法で製造可能なこと、発電効率が30%〜60%39と高いこと、発電過程においてCO2や窒素酸化物、硫黄酸化物を排出せず、環境性に優れること等から、エネルギー安定供給の確保の観点のみならず、気候変動対策の観点からも重要なエネルギーシステムであると考えられます(第213-3-2)。
【第213-3-2】燃料電池の原理
【第213-3-2】燃料電池の原理(ppt/pptx形式:51KB)
- 資料:
- 経済産業省作成
日本では、世界に先駆けて2009年から一般消費者向けの家庭用燃料電池の本格的な販売が行われており、2022年度末までに44.0万台が導入されています(第213-3-3)。
【第213-3-3】家庭用燃料電池の累計導入台数の推移
【第213-3-3】家庭用燃料電池の累計導入台数の推移(xls/xlsx形式:19KB)
- 資料:
- コージェネレーション・エネルギー高度利用センター「コージェネ導入実績報告」を基に作成
(3)ヒートポンプ
ヒートポンプは、冷媒を強制的に膨張・蒸発、圧縮・凝縮させながら循環させ、熱交換を行うことにより、水や空気等の低温の物体から熱を吸収し、高温部へ汲み上げるシステムです。エネルギー利用効率が非常に高く、主に民生部門でのCO2排出削減に大きく貢献することが期待されています40(第213-3-4)。
【第213-3-4】ヒートポンプ(CO2冷媒)の原理
【第213-3-4】ヒートポンプ(CO2冷媒)の原理(ppt/pptx形式:433KB)
- 資料:
- 日本原子力文化財団「原子力・エネルギー図面集」
日本において、ヒートポンプは、家庭用エアコンに多く導入されていますが、給湯機器や冷蔵・冷凍庫等にも使用されています。また、高効率で大規模施設にも対応できるヒートポンプは、オフィスビルの空調や病院・ホテルの給湯等に利用されており、今後は工場や農場等での普及拡大が期待されています。
(4)コージェネレーション
コージェネレーションは、熱と電気(又は動力)を同時に供給するエネルギーシステムです。消費地に近い場所に発電施設を設置するため、送電ロスが少なく、発電に伴う排熱も回収して利用できるため、エネルギーの有効利用が可能です。排熱を有効利用した場合には、エネルギーの総合効率が最大で90%以上に達し、省エネやCO2の排出削減等に貢献できます。日本におけるコージェネレーションの設備容量は、産業用を中心に増加してきました。産業用では、化学や食品等の熱需要の多い業種を中心に、民生用では、病院やホテル等の熱・電力需要の多い業種を中心に導入が拡大してきました(第213-3-5)。
【第213-3-5】コージェネレーション設備容量の推移
(注)「民生」には、戸別設置型の家庭用燃料電池やガスエンジン等を含まない。
【第213-3-5】コージェネレーション設備容量の推移(xls/xlsx形式:22KB)
- 資料:
- コージェネレーション・エネルギー高度利用センター「コージェネ導入実績報告」を基に作成
(5)廃棄物エネルギー
廃棄物エネルギーとは、再利用や再生利用がされない廃棄物を、廃棄物発電等の熱回収により有効利用したり、木質チップの製造等廃棄物から燃料を製造したりすることができるものです。バイオマス系の廃棄物エネルギーだけでなく、化石エネルギーに由来する廃棄物エネルギーについても有効活用を行う意義があります。
廃棄物エネルギーの利用方法としては、廃棄物発電、廃棄物熱供給、廃棄物燃料製造が挙げられます。2021年度末における日本の廃棄物発電(一般廃棄物に限る)の施設数は396で、その発電設備容量は合計で214.9万kWでした41。
- 9
- ここでの「原油自給率」とは、日本の原油供給のうち国内で産出された原油の割合を指しており、日本の海外における自主開発原油は含まれません。
- 10
- 米国及び欧州OECDの中東依存度については、天然ガス液(Natural gas liquids)を含まない原油(Crude oil)のみの数値を示しています(IEA「Oil Information 2023」より)。
- 11
- 重油は、動粘度の違いにより、A重油・B重油・C重油に分類されています。さらに、同じ種類の中でも、硫黄分によって品質が分類されています。A重油は、重油の中では最も動粘度が低く、茶褐色の製品で、小型ボイラ類をはじめ、ビル暖房、農耕用ハウス加温器、陶器窯焼き、漁船等の船舶用燃料等として使われています。C重油は、A重油に比べて粘度が高く、黒褐色の製品で、火力発電や工場の大型ボイラ、大型船舶のディーゼルエンジン用の燃料等として使われています。B重油はA重油とC重油の中間の動粘度の製品ですが、現在は殆ど生産されていません。
- 12
- CIF:Cost, Insurance and Freightの略で、引渡し地までの保険料、運送料を含む価格のこと。
- 13
- WTI:West Texas Intermediateの略で、WTI原油は米国の代表的な指標原油となっています。また「マイナス価格」とは、売主がお金を支払い、買主はお金を受取ることを意味しています。
- 14
- 原油輸入金額は、「原油」の輸入額の合計を示しています。
- 15
- LNG:Liquefied Natural Gasの略。
- 16
- LPG:Liquefied Petroleum Gasの略。
- 17
- サウジアラムコ社の通告価格は、コントラクトプライス(CP)と呼ばれており、サウジアラムコ社が、原油価格やマーケット情報を参考にしながら総合的に判断し、決定しています。日本を含めた極東地域へ輸出されるLPガスの多くは、このコントラクトプライスにリンクしています。
- 18
- 米国・テキサス州のモント・ベルビューにあるプロパンガス基地における取引価格はMB(Mont Bellevue)と呼ばれており、世界の3大取引価格の1つとされています。
- 19
- 原料炭は、主に高炉製鉄用コークス製造のための原料として用いられています。
- 20
- 一般炭は、主に発電用及び産業用のボイラ燃料として用いられています。
- 21
- 無煙炭は、石炭の中で最も石炭化が進んだ石炭であり、燃焼時に殆ど煙を出さず、火力が強いという特徴があります。
- 22
- 電力小売全面自由化に伴う電気事業類型の見直しにより、2016年度以降は電気業以外の消費との重複を一部含みます。
- 23
- 東京電力福島第一原子力発電所の事故後に運転を停止し、その後再稼働に至っておらず停止が続いている発電所も含め、運転を終了した炉を除く全ての発電所を対象に算出しています。
- 24
- 「軽水」とは、普通の水のことを指し、軽水炉の減速材、冷却材等に用いられます。これに対し、重水素(水素原子に中性子が加わったもの)に酸素が結合したものを「重水」といい、重水炉に用いられます。
- 25
- 核分裂によって新しく発生する中性子は非常に高速であり、これを高速中性子と呼びます。このままでも核分裂を引き起こすことは可能ですが、この速度を遅くすることで、次の核分裂を引き起こしやすくなります。速度の遅い中性子を熱中性子と呼び、高速中性子を減速させて熱中性子にするものを「減速材」と呼びます。軽水炉では、熱中性子で核分裂連鎖反応を維持するために、減速能力の高い軽水(水)を減速材として用います。また、核分裂によって発生した熱を炉心から外部に取り出すものを「冷却材」と呼びます。軽水炉では、水を冷却材として用いるので、冷却材が減速材を兼ねています。
- 26
- 使用済燃料の再処理工場やMOX燃料加工工場の操業・解体に伴う低レベル放射性廃棄物のうち、ウランより原子番号が大きい放射性核種(TRU核種:Trans-uranium)を含み、発熱量が小さく長寿命の放射性廃棄物のこと。
- 27
- SWU(Separative Work Unit=分離作業量)は、ウランを濃縮する際に必要となる仕事量を表す単位です。例えば、濃度約0.7%の天然ウランから約3%に濃縮されたウランを1kg生成するためには、約4.3kgSWUの分離作業量が必要です。
- 28
- 使用済燃料再処理機構は、2024年4月に「使用済燃料再処理・廃炉推進機構」へと名称を変更しています。
- 29
- 「ニューサンシャイン計画」は、従来独立して推進されていた新エネルギー、省エネ及び地球環境の3分野に関する技術開発を総合的に推進するものでしたが、その後、2001年の中央省庁再編に伴い、「ニューサンシャイン計画」の研究開発テーマは、以降「研究開発プログラム方式」によって実施されることとなりました。
- 30
- RPS:Renewables Portfolio Standardの略で、電気事業者に毎年度、一定量以上の再エネの発電や調達を義務づける制度。
- 31
- FIT:Feed-in Tariffの略で、再エネで発電した電気を、電力会社が一定価格で一定期間買い取ることを国が約束する制度。
- 32
- FIP:Feed-in Premiumの略で、発電事業者が卸電力取引市場等で売電した時、その売電価格に対して一定のプレミアムを交付する制度。
- 33
- 需要電力(太陽光発電の自家消費分を除いたもの)から、太陽光発電(自家消費分を除く)及び風力発電の出力を除いた需要のこと。
- 34
- 特に、多くの工場が稼働を停止する等、平時よりも電力需要が減少するゴールデンウィークの期間中において、こうした傾向が顕著に見られます。
- 35
- ETBE:Ethyl Tertiary-Butyl Etherの略で、エタノールとイソブテンにより合成され、ガソリンの添加剤として利用されています。
- 36
- ATJ:Alcohol to Jetの略で、触媒によりバイオエタノールからジェット燃料等を製造する技術。
- 37
- 木材や廃棄物をH2とCOのガスに変換し、触媒によりこのガスからジェット燃料等を製造する技術。
- 38
- 電気自動車、プラグインハイブリッド自動車、ハイブリッド自動車、燃料電池自動車のこと。
- 39
- 反応時に生じる熱を活用し、コージェネレーションシステム(熱電併給システム)として利用した場合には、総合効率が90%以上になります。
- 40
- 欧米では、ヒートポンプによる熱利用を再エネとして評価する動きもあります。
- 41
- 環境省「一般廃棄物処理実態調査結果(令和3年度)」より。