電気をつくるには、どんなコストがかかる?

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電気をつくる方法、つまり「電源」にはいくつかの種類がありますが、「安全性」を前提とした上で、「安定供給」「経済効率性」「環境への適合」のバランスをとりながら、複数の電源を組み合わせて使うことが非常に重要です。2021年9月に発表された、各電源の発電コストの検証に関する報告書は、この重要な4つのポイントのひとつ「経済効率性」に焦点をあてたデータで、「安定供給」や「環境への適合」に関するデータと合わせてバランスのよいエネルギー政策を考える際に役立ちます。今回は発電コスト検証の手法と、検証からわかる各電源のコストの特徴、将来のコスト見通しなどを紹介しましょう。

電源にかかるさまざまな費用を組み込んで発電コストを試算

発電コストの検証をおこなったのは、資源エネルギー庁にもうけられている、総合資源エネルギー調査会の「2021年発電コスト検証ワーキンググループ 」です。日本における各電源のコスト面の特徴をあきらかにし、どの電源に政策の力点を置くかなど2030年にむけたエネルギー政策の議論の参考にすべく実施され、2021年9月に報告書が取りまとめられました。

検証にあたっては、以下のようなさまざまな条件を設けた上で、機械的な算出がおこなわれました。

【条件の一例】
・新たな発電設備を更地に建設・運転した際のkWhあたりのコストを、一定の計算式にもとづいて試算(既存の発電設備の運転コストではない)
・異なる電源技術を比較するため、立地の制約などは考慮にいれない

計算式や考え方は、2015年におこなわれた前回の検証をふまえています。計算方法として採用されているのは、国際的に確立した手法として英国や米国、OECDなどでも使用されている「モデルプラント方式」で、上にあげた「条件の一例」の1点目にあたります。

「モデルプラント方式」では、日本で実際に建設された代表的な発電設備などのデータを基にして 「総費用」を計算し、これを「総発電電力量」で割ることで、1kWhあたりのコスト(LCOE、均等化発電原価)を算出します。火力発電や原子力発電については直近で運用を開始した4つの発電所のデータの平均値を使用して、再生可能エネルギー(再エネ)については発電事業者が定期報告する実績データの中央値など を使って、典型的な発電設備を「モデルプラント」として仮想しています。

「総費用」に含まれるのは、建設費や固定資産税などの「資本費」、人件費や修繕費などの「運転維持費」、化石燃料の価格や核燃料サイクルの費用などの「燃料費」、CO2対策費や事故リスク対応費用 などの「社会的費用」、原子力発電 の立地地域への交付金などの「政策経費」です。

電源によって異なるコストの「中身」

では、検証の結果を見ていきましょう。

なお、前回検証では2014年に新たな発電設備を設置・運転した際のコストと2030年のそれを算出してくらべたことをふまえて、今回は2020年時点(実績値)と2030年時点のコストを試算しています。2030年のコストは、国際機関が発表する将来の燃料費の見通し、設備の稼働年数や設備利用率、太陽光発電の導入量などが、試算の前提となっています。そのため、前提の数値が変われば、結果も変わることに注意が必要です。

まず、2020年の各電源の発電コストはこのような試算結果となりました 。

2020年の電源別発電コスト試算結果①
電源石炭
火力
LNG
火力
原子力石油
火力
陸上
風力
洋上
風力
太陽光
(事業用)
太陽光
(住宅)
発電コスト
(円/kWh)
※()内は
政策経費なしの値
12.5
(12.5)
10.7
(10.7)
11.5~
(10.2~)
26.7
(26.5)
19.8
(14.6)
30.0
(21.1)
12.9
(12.0)
17.7
(17.1)
設備利用率
稼働年数
70%
40年
70%
40年
70%
40年
30%
40年
25.4%
25年
30%
25年
17.2%
25年
13.8%
25年
2020年の電源別発電コスト試算結果②
電源小水力中水力地熱バイオマス
(混焼、5%)
バイオマス
(専焼)
ガス
コジェネ
石油
コジェネ
発電コスト
(円/kWh)
※()内は
政策経費なしの値
25.3
(22.0)
10.9
(8.7)
16.7
(10.9)
13.2
(12.7)
29.8
(28.1)
9.3~10.6
(9.3~10.6)
19.7~24.4
(19.7~24.4)
設備利用率
稼働年数
60%
40年
60%
40年
83%
40年
70%
40年
87%
40年
72.3%
30年
36%
30年

※「コジェネ」:電気と熱を同時に作り出すコージェネレーションシステム


また、2030年の発電コストはこのような試算結果となりました。

2030年の電源別発電コスト試算結果①
電源石炭
火力
LNG
火力
原子力石油
火力
陸上
風力
洋上
風力
太陽光
(事業用)
太陽光
(住宅)
発電コスト(円/kWh)
※( )は政策経費なしの値
13.6~22.4
(13.5~22.3)
10.7~14.3
(10.6~14.2)
11.7~
(10.2~)
24.9~27.6
(24.8~27.5)
9.8~17.2
(8.3~13.6)
25.9
(18.2)
8.2~11.8
(7.8~11.1)
8.7~14.9
(8.5~14.6)
設備利用率
稼働年数
70%
40年
70%
40年
70%
40年
30%
40年
25.4%
25年
33.2%
25年
17.2%
25年
13.8%
25年
2030年の電源別発電コスト試算結果②
電源小水力中水力地熱バイオマス
(混焼、5%)
バイオマス
(専焼)
ガス
コジェネ
石油
コジェネ
発電コスト(円/kWh)
※( )は政策経費なしの値
25.2
(22.0)
10.9
(8.7)
16.7
(10.9 )
14.1~22.6
(13.7~22.2)
29.8
(28.1)
9.5~10.8
(9.4~10.8)
21.5~25.6
(21.5~25.6)
設備利用率
稼働年数
60%
40年
60%
40年
83%
40年
70%
40年
87%
40年
72.3%
30年
36%
30年

※表の値は、今回検証で扱った複数のシナリオに基づく試算値のうち、上限と下限を表示。将来の燃料価格、CO2対策費、太陽光・風力の導入拡大に伴う機器価格低下などをどう見込むかにより、幅を持った試算としている。例えば、太陽光の場合「2030年に、太陽光パネルの世界の価格水準が著しく低下し、かつ、太陽光パネルの国内価格が世界水準に追いつくほど急激に低下するケース」や「太陽光パネルが劣化して発電量が下がるケース」といった野心的な前提を置いた試算値を含む。


さらに、各電源の発電コストを、「資本費」「運転維持費」「燃料費」「社会的費用」「政策経費」で分けると、2020年と2030年の試算はそれぞれ下のような構成となります。

2020年の電源別発電コスト試算結果の構成
2020年の電源別発電コスト試算結果を積み上げグラフであらわしています。

グラフの値は今回検証で扱った複数のシナリオのうち、IEA 「 World Energy Outlook 2020 」の公表済政策シナリオに基づいた試算値を表示。コジェネは、 CIF 価格で計算したコストを使用。

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2030年の電源別発電コスト試算結果の構成
2030年の電源別発電コスト試算結果を積み上げグラフであらわしています。

グラフの値は今回検証で扱った複数のシナリオのうち、IEA 「 World Energy Outlook 2020 」の公表済政策シナリオに基づいた試算値を表示。コジェネは、 CIF 価格で計算したコストを使用。

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構成比で見ると、電源によってかかるコストの中身が大きく異なることがわかります。

一例をとってみてみましょう。再エネ電源のひとつである太陽光発電の発電コストは、事業用では2020年で12.9円/kWhだったものが、2030年では8.2~11.8円/kWh程度と安価になると試算されています。

再生可能エネルギー 太陽光(事業用)発電コストの内訳
太陽光(事業用)発電コストの内訳を2020年と2030年の積み上げグラフでそれぞれあらわしています。

IRR(内部収益率):投資に対して期待される利回り。固定価格買取制度(FIT制度)の調達価格で優遇されることで生まれた利益は、政策経費の一部として「IRR相当政策経費」として取りあつかう

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2030年の試算のコスト幅は、①太陽光パネルなどのコストが世界水準まで下がるかどうか、②導入量の累積の見通しが国際エネルギー機関(IEA)の「World Energy Outlook2020」における「公表済政策シナリオ(STEPS)」(すでに判明している各国の政策をベースにした予測)となるか、「持続可能開発シナリオ(SDS)」(よりグリーンな政策がとられた場合)となるか…などの要素によって生じています。

一方で、同じ再エネでも洋上風力発電は、再エネの主力電源化に向けた鍵として導入拡大が期待されていますが、2030年時点(※)では、まだコストが割高です。

再生可能エネルギー 洋上風力 発電コストの内訳
洋上風力 発電コストの内訳を2020年と2030年の積み上げグラフでそれぞれあらわしています。

2030年に運転開始するモデルプラントを想定したコスト水準を示しています

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石炭・LNG・石油を使った火力発電で発電コストを高くしているのは、燃料費と、CO2対策の社会的費用です。

火力発電 石炭火力 発電コストの内訳
石炭火力 発電コストの内訳を2020年と2030年の積み上げグラフでそれぞれあらわしています。

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原子力発電にかかるコストの特徴では、社会的費用として盛り込まれた「事故リスク対応費用」があります。東京電力福島第一原子力発電所の事故をうけた賠償や除染のための費用に関する最新の見積もりを参考に試算されています。また、各原子力発電所は厳しい新規制基準に適合するよう追加的な安全対策工事を進めていますが、対策を進めている基数が2015年より増えているため、直近の見積もりを反映しています。さらに、「核燃料サイクル費用」も、事業費の見直しなど直近の状況が反映されています。

原子力発電 発電コストの内訳
原子力発電 発電コストの2020年の内訳を積み上げグラフであらわしています。

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今後考えていきたい「電力システム全体に生じるコスト」

ここまで見てきた電源コストには、「電源を電力システムに受け入れるコスト」が含まれていません。

電源の脱炭素化を進めるため、太陽光発電や風力発電などの導入・拡大をする必要がありますが、これらの再エネは自然によって発電量が変動します。そのため、このような電源を大量に導入する場合には、不足分や余剰分を調整する「調整電源」を使って、需要と供給のバランスをとる必要があります。火力発電は不足分をおぎなうために利用されますが、火力発電自体の発電効率は、変動に合わせた起動・停止コストなどで低くなります。逆に電気が余った場合には、揚水発電(ダムの水を使った発電)に水をくみあげることで電気を消費し、くみあげた水を電力不足の際の発電に使うといった活用がおこなわれますが、ここでも蓄電ロスが発生します。こうしたことから、再エネが増えれば火力発電や揚水発電のコストが高まることも考慮する必要があります。

こうしたコストが「電源を電力システムに受け入れるコスト」です。今回、その一部を組み込んだ「統合コストの一部を考慮した発電コスト」が参考資料として試算されました。

下の図は、「統合コストの一部を考慮した発電コスト」について、電源立地(電源を建設する場所)や系統制約(電源を電力系統につないで電気を流す際、発電量が系統容量を超えてしまうことなどによって制約がかかること)を考慮した上で、試算されたものです。「2030年のエネルギー需給の見通し(エネルギーミックス)」が達成された状態から、さらに各電源が少し追加された場合に、電力システム全体に追加で生じるコストを計算しています。青いグラフは統合コストを含まない発電コスト(「2030年の電源別発電コスト試算結果」表と同じ)、黄色の点が統合コストの一部を考慮した発電コストです。

【参考】電源立地や系統制約を考慮した「統合コストの一部を考慮した発電コスト」の分析・試算
電源立地や系統制約を考慮した「統合コストの一部を考慮した発電コスト」の分析・試算を棒グラフであらわしています。

これを見てわかるのは、多くの電源で、追加した際に電力システム全体にコストが生じる、つまり電源単体で試算した発電コストよりもコストが増えるということです。
今後は、こうした統合コストをどのように抑えていくか、誰がどう負担するのかを議論していくことも重要となります。

2021年10月22日に閣議決定された新しい「エネルギー基本計画」と「エネルギー需給の見通し」は、このコスト検証も検討材料のひとつとなって決定されました。検証に使用された計算表や資料は公開されていますので、詳しく知りたい方はぜひご覧ください。

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長官官房 総務課 需給政策室

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