あらためて知る「燃料電池」~私にもできるカーボンニュートラルへの貢献(前編)

日本企業各社から発売されているエネファームの写真です。

(出典)左:パナソニック株式会社、中央:株式会社アイシン、右:京セラ株式会社

水素は、CO2を排出しない次世代のエネルギーとして期待されています。水素が広く活用される「水素社会」を構築するカギのひとつとなるのが、水素を使って電気や熱をつくることができるシステム「燃料電池」です。今回は、身近にある燃料電池としてすっかりおなじみとなった「エネファーム」などの定置用燃料電池を事例に、燃料電池が電気や熱をつくるしくみをあらためてご紹介するとともに、燃料電池が「カーボンニュートラル」にどのように貢献できるのかを見ていきましょう。

「燃料電池」って何?

「燃料電池」とはそもそも何なのでしょうか?あらためておさらいしてみましょう。

「電池」というと、“電気をためている装置”というイメージがあるかと思いますが、燃料電池は、それらとは大きく違うものです。

燃料となるのは、水素と酸素です。みなさんも、理科の実験で、水に電気を流すことで水素と酸素に分解する「電気分解」を学んだことがあると思いますが、燃料電池はその逆で、水素と酸素を化学反応させて水をつくり、この過程で発生する電気や熱を使います。つまり、“小さな発電所”とも言えます。

エネファーム内で起こる化学反応を化学式で表した図です。

(出典)エネファームパートナーズ

燃料電池開発の歴史

日本では1970年代から、エネルギーに関する国家プロジェクトとして「サンシャイン計画」(1974~1992年)や「ムーンライト計画」(1978~1992年)、「ニューサンシャイン計画」(1993~2002年)が実施され(「【日本のエネルギー、150年の歴史④】2度のオイルショックを経て、エネルギー政策の見直しが進む」参照)、これらのプロジェクトで、燃料電池、大容量の水素製造システムや安全な輸送・貯蔵システムの開発がおこなわれてきました。

燃料電池の用途は大きく2つあります。1つは「燃料電池自動車」、もう1つは「定置用燃料電池」です。定置用燃料電池のうち、家庭用のものは「エネファーム」と呼ばれており、日本においてもっとも普及している燃料電池の1つです。

身近にある燃料電池としておなじみになったエネファーム

実際のエネファームの写真です。

エネファーム(戸建住宅での設置例)
(出典)株式会社アイシン

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実際のエネファームの写真です。

エネファーム(集合住宅での設置例)
(出典)パナソニック株式会社

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ただ、研究開発からすぐにエネファームが製品化できたわけではありません。エネファームはこれまでにない革新的な機器であるため、全国各地の気候や家庭ごとのライフサイクルに合わせて、着実に機能することを確認する必要があったのです。このため、2005年からエネファームの大規模実証がおこなわれました。実証機が首相官邸や全国各地の住宅に導入され、多くのデータが取得されました。この実証を経て、2009年には、世界に先駆けて一般発売がスタートしました。

首相官邸にエネファームが導入された際の記念写真です。

(出典)パナソニック株式会社

スペシャルコンテンツでは、以前の記事で、「コジェネレーションシステム」の例としてエネファームをご紹介しましたが(「知っておきたいエネルギーの基礎用語~『コジェネ』でエネルギーを効率的に使う」参照)、この記事にもある通り、エネファームでは燃料電池ユニットで電気をつくり、次に、発電時に排出される熱を回収して、給湯や暖房などに利用します。

エネファームのしくみ
エネファームの仕組みの概略図です。燃料電池ユニットと貯湯ユニットに分かれています。

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エネファームの出荷台数は、2021年度末で累計43万台以上となっています。販売価格も、販売が始まった2009年は300万円超でしたが、現在では、ものにより100万円を切る水準まで低下しています。またエネファーム本体の大きさが年々小型化するなど、設置性なども向上されています。

普及台数と販売価格の推移
普及台数と販売価格の推移を示したグラフです。販売台数は伸び、価格は徐々に下がっています。

(出典)一般財団法人コージェネレーション・エネルギー高度利用センター(メーカー販売台数)、一般社団法人燃料電池普及促進協会(販売価格)のデータより、資源エネルギー庁作成

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エネファームは、日本のエネルギー政策を示した「エネルギー基本計画」(「2050年カーボンニュートラルを目指す日本の新たな『エネルギー基本計画』」参照)や、日本の水素に関する戦略を示した「水素・燃料電池戦略ロードマップ」(「水素社会の実現に向け、さらに具体的な取り組みを~新『水素・燃料電池戦略ロードマップ』」参照)でも、さらなる導入拡大を進めていくことが言及されており、国では引き続き支援をおこなっていくこととしています。

エネファームでカーボンニュートラルに貢献、災害時の電源・熱源としても

日本が目標としてかかげている「2050年カーボンニュートラル」。その実現のためには、私たち個々人も、エネルギーを効率的に使ったり、CO2排出量をおさえたエネルギーに置き換えたりといった取り組みを進めることが重要です。

エネファームの利用は、そうした個人でできる貢献のひとつです。今はまだ水素を家庭に直接供給するサプライチェーンが確立されておりません。エネファームは家庭に供給される都市ガスやLPガスなどから水素を取り出し、酸素と化学反応させるしくみを内部に持っています。化石燃料であるガスを使うということで、本当にカーボンニュートラルに役立つの?と疑問に思う人もいるかもしれませんが、現在のエネファームの発電効率は40~55%、さらに排熱も使うことで総合エネルギー効率80~97%を誇ります。一方、火力発電所で発電した場合は、各家庭まで電気運ぶ際に発生する送電ロスも含めるとエネルギー効率は41%程度となっています。エネファームの効率の高さは大きな省エネにつながり、カーボンニュートラルにも役立つのです。

このような省エネ性にすぐれたエネファームは、「ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)」でも重要な役割をにないます。ZEHとは、高断熱化と高効率設備によるできる限りの省エネルギーに努め、太陽光発電などによりエネルギーを創ることで、1年間で消費する住宅のエネルギーの量が正味(ネット)ゼロ以下となる住宅」のことです。

下の図は、省エネや再エネ自家消費などをさらに拡大することでZEHを一歩進めた「次世代ZEH+」の構成要素を示したものですが、燃料電池がその一部となっていることがわかります。次世代ZEH+には、令和4年度時点において1戸あたり100万円の補助金が支給されますが、要件を満たしたエネファームを設置した場合は定額2万円が加算されることとなっており、エネファームの利用拡大を後押ししています。

また、最近注目されているのが、災害時のエネファームの活用です。たとえば災害が起こって停電になった時でも、ガスの供給が停止していなければ、エネファームは電気と熱の供給をつづけることが可能なのです。

エネファームの供給する電気があれば、冷蔵庫やテレビ、携帯電話の充電などが利用でき、さらに水道の供給が停止していなければ、温かいシャワーを浴びたり湯船につかることもできます。

エネファームの発電量で使える電気機器の組み合わせ例です。照明・冷蔵庫・テレビ・PC・携帯電話充電など、最大約700Wまで使用することが可能です。

(出典)大阪ガス株式会社

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実際、2018年9月に起こった台風21号による関西エリアの停電や、2019年9月に起こった台風15号による千葉県内の停電でも、エネファームの電気を使うことができて助かったという声がありました。

燃料電池=エネルギーリソースのひとつとして、エネルギー需給調整への活用も

省エネにも災害への備えにも役立つエネファームですが、さらに将来的には、現在検討が進められている「バーチャルパワープラント(VPP)」でも活用することが考えられています。

VPPとは、エネファームや太陽光発電のような、あちこちに分散しているエネルギーリソースをたばねて遠隔でコントロールし、仮想(バーチャル)の発電所のような機能を果たそうとするものです。電力が不足している時には、燃料電池の発電量を増やしたり、逆に電力が余りそうな時には発電量を減らして、電線から供給されている電気を使ったりといった制御をおこないます。これにより、電力の需要と供給のバランス調整に役立てることが考えられています。

VPPのイメージ
アグリゲーションコーディネーターが太陽光発電やコージェネレーションシステムなどから余った電気を集めて提供する「VPP」の概念を示した図です。

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実際、令和2年度(2020年度)に行われたVPP実証実験(「令和2年度 バーチャルパワープラント構築実証事業」)では、家庭のエネファーム約1,600台がエネルギーリソースとして束ねられました。

個人の家庭でエネルギーを効率的に使うことに役立つだけでなく、電力系統全体のバランス調整にも役立つことのできるエネファームは、カーボンニュートラルな未来のエネルギー網に欠かせない機器のひとつであることは間違いありません。

こうしたメリットへの理解を広げ、エネファームの利用をさらに拡大していくことが求められています。後編では、業務・産業用燃料電池の現状や、水素を直接利用する新しいタイプの燃料電池についてご紹介しましょう。

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