2018—日本が抱えているエネルギー問題

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(2019/08/13 追記)2019年の記事も公開しています。ぜひご覧ください。
2019—日本が抱えているエネルギー問題(前編)

1.日本のエネルギー事情

現代の生活は電気やガス、ガソリンなどのエネルギーなくしては成り立ちません。最近流行している便利なAIやIoTなどのデジタル製品も、エネルギーがあってこそ利用できるものです。毎日の生活では意識せずに使っているエネルギーですが、石油や天然ガスなどのエネルギー資源に乏しい日本では、エネルギーの安定供給を図るため、さまざまな政策が進められ、また省エネなどの工夫が重ねられてきました。まずは、日本のエネルギー事情が現在どうなっているかについてご紹介しましょう。

日本は、エネルギー資源の多くを輸入に頼っています。2016年の日本のエネルギー自給率は8.3%で、過去最低だった2014年度の6.0%と比較すれば若干上向いてはいるものの、他のOECD諸国と比較すると、かなり低い水準になっています。このように資源を他国に依存する日本のエネルギー事情は、どうしても国際情勢の影響を受けやすいという課題を抱えています。

一次エネルギー国内供給構成および自給率の推移
日本の一次エネルギー国内供給構成と自給率の推移を示したグラフです。

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(注1)IEAは原子力を国産エネルギーとしている。
(注2)エネルギー自給率(%)=国内産出/一次エネルギー供給×100。
(出典)1989年度以前はIEA「World Energy Balances 2017 Edition」、1990年度以降は資源エネルギー庁「総合エネルギー統計」を基に作成

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エネルギー白書2018「第2部/第1章/第1節/4.エネルギー自給率の動向」

主要国の一次エネルギー自給率比較(2015年)
主要国の一次エネルギー自給率を比較したグラフです。

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(注)表内の順位はOECD35カ国中の順位(IEA公表値に基づく)。日本は総合エネルギー統計を基に作成。
(出典)IEA 「Energy Balance of OECD Countries 2017」を基に作成。

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日本のエネルギー2017(P.3)「Q1 日本は、国内の資源でどのくらいエネルギーを自給できていますか?」(PDF形式:3.69MB)

中でも大きく依存しているのが、海外から輸入される石油・石炭・天然ガス(LNG)などの化石燃料です。1973年の第一次オイルショックをはじめとするエネルギー危機を経験した日本では、それ以降、化石燃料に頼りすぎない社会をつくろうと、エネルギー源の分散を進めてきました。しかし、2011年の東日本大震災後にすべての原子力発電所が停止した影響もあり、火力発電所の稼働が増えたことで、2016年度には化石燃料への依存度が89%となっています。

日本の一次エネルギー国内供給構成の推移
1973年度、2010年度、2016年度の一次エネルギー国内供給の構成について示した円グラフです。

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(注)当資料で扱うパーセンテージ表示については、四捨五入の関係上、合計が100%にならない場合があります
(出典)総合エネルギー統計

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日本のエネルギー2017(P.4)「Q2 日本はどのような資源に依存していますか?」(PDF形式:3.69MB)

地球温暖化対策のための温室効果ガス削減は世界的な課題ですが、こうした化石燃料の使用は多くの温室効果ガスを排出することから、環境問題に密接に関係します。東日本大震災以降の日本では、化石燃料の利用が増えることによって、温室効果ガスの排出量が増加しています。

化石燃料の中では比較的クリーンな天然ガス(LNG)利用の増加、火力発電の高効率化による温室効果ガス低減などの努力が進められており、排出量は2013年度に過去最高を記録した後は減少に転じていますが、まだまだ削減に向けた努力が必要です。

日本の温室効果ガス排出量
2010年度から2016年度までの日本の温室効果ガス排出量を示したグラフです。

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(出典)総合エネルギー統計、環境行動計画(電気事業連合会)、日本の温室効果ガス排出量の算定結果(環境省)を基に作成

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日本のエネルギー2017(P.7)「Q7 日本は温室効果ガスをどれくらい排出していますか?」(PDF形式:3.69MB)

エネルギーの多くを輸入に頼る日本が、資源の安定的な供給を確保するには、エネルギーの上流開発(油田やガス田などを開発すること)に積極的に投資することによって海外資源の権益を獲得したり、国内における資源開発を進めていく必要があります。また、原油輸入の約9割、天然ガス輸入の約2割を中東に依存していることをふまえて、供給源の多角化をはかったり、中東の産油国をはじめとする資源供給国との良好な関係を深めていくことが重要です。

2.課題を解決するための取り組み

①徹底的な省エネを進める

化石資源に乏しい日本は、貴重なエネルギーを大切に使うため、エネルギー消費効率の向上に努めてきました。実質GDP当たりのエネルギー消費を他国と比べると、日本は世界でトップクラスの省エネ水準であり、経済成長と省エネの両立を進めてきたと言えます。

実質GDPとエネルギー効率(一次エネルギー供給量/実質GDP)の推移
実質GDPとエネルギー効率について、1973年度から2016年度までの推移を示したグラフです。

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(注1)「総合エネルギー統計」は、1990年度以降の数値について算出方法が変更されている
(注2)1993年度以前のGDPは日本エネルギー経済研究所推計
(出典)資源エネルギー庁「総合エネルギー統計」、内閣府「国民経済計算」を基に作成

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エネルギー白書2018「第2部/第1章/第1節/1.エネルギー消費の動向」

実質GDP当たりのエネルギー消費の主要国・地域比較(2015年)
実質GDPあたりのエネルギー消費について、主要国や地域を比べた棒グラフです。

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(注)一次エネルギー消費量(石油換算トン)/実質GDP(米ドル、2010年基準)を日本=1として換算
(出典)IEA「World Energy Balances 2017 Edition」、World Bank「World Development Indicators 2017」を基に作成

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エネルギー白書2018「第2部/第1章/第1節/2.海外との比較」

一方で、国は、2030年までの約20年間でエネルギー消費効率を35%改善することとしていますが、これは、オイルショック後の20年間と同程度の改善率です。省エネのポテンシャルが多くあった時代と比べて、すでに省エネが相当程度進展している現状においては、達成は容易ではなく、今まで以上に工夫された省エネの取り組みが求められます。

エネルギー消費効率の改善
エネルギーの消費効率の改善について、1970年~1990年、1990年~2010年の実績と、2012年~2030年の目標を比べたグラフです。

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(注)エネルギー消費効率=最終エネルギー消費量/実質GDP

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日本のエネルギー2017(P.9)「Q9 日本の省エネの取組はどこまで進んでいますか?」(PDF形式:3.69MB)

②再エネ導入増によるエネルギー自給率UPと温室効果ガス削減

再生可能エネルギー(再エネ)は、発電時にCO2を発生しないため温室効果ガスの削減に役立ち、またエネルギー自給率にも貢献することから、日本にとって重要なエネルギー源と考えられています。

日本の発電電力量に占める再エネ比率は、2016年時点で14.5%(水力をのぞくと6.9%)で、世界の主要国と比較すると低い傾向にあり、まだまだ導入の拡大が必要と考えられています。

発電電力量に占める再生可能エネルギー比率の比較
各国における発電電力量に占める再生可能エネルギー比率を比較したグラフです。

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(注)再エネ=水力を除く
(出典)【日本以外】2015年値データ、IEA Energy Balance of OECD Countries (2017 edition)、【日本】総合エネルギー統計2016年度確報値

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日本のエネルギー2017(P.10)「Q10 日本では、再エネの導入は進んでいますか?」(PDF形式:3.69MB)

しかし同時に経済性の観点から考えなければいけないのが、価格の問題です。いくら再エネを大量に導入して自給率を向上させても、コストが高くなってしまっては困ります。

再エネで発電した電気を一定価格で買い取ることを電力会社に義務づけた「固定価格買取制度(FIT)」の導入(2012年)で、再エネの設備容量は急速に伸びてきました。

再生可能エネルギー設備容量の推移
2003年度から2016年度にかけての再生可能エネルギーの設備容量を示したグラフです。

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(出典)資源エネルギー庁(JPEA出荷統計、NEDOの風力発電設備実績統計、包蔵水力調査、地熱発電の現状と動向、PRS制度・固定価格買取制度認定実績等より資源エネルギー庁作成)

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エネルギー白書2018「第1部/第3章/第1節/3.再生可能エネルギーの大量導入に向けて」

しかし、その買取費用は「賦課金」という形で国民が負担しています。今後、再エネの導入を増やしていくにあたっては、世界と比べて高止まりしている再エネの発電コストを低減させ、国民負担の増加を抑制していく必要があります。改正されたFIT法では、再エネの導入と負担抑制を両立するための仕組みが盛り込まれています(「FIT法改正で私たちの生活はどうなる?」参照)。

なお、原子力発電の停止により火力発電が増加したことは前述したとおりですが、その火力発電に必要となるエネルギー燃料の高止まりなどが影響して、日本の電気料金は、2014年には家庭向け・産業向けともに大きく上昇しました。その後の原油価格下落などにより、2014年度以降は低下傾向にありますが、まだ震災前よりも高い水準にあり、電気料金の抑制が求められています。

電気料金の推移(円 /kWh)
家庭向けおよび産業向け電気料金の推移を示した折れ線グラフです。

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(出典)電力需要実績確報(電気事業連合会)、各電力会社決算資料等を基に作成。

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日本のエネルギー2017(P.6)「Q4 電力コストはどのように変化していますか?」(PDF形式:3.69MB)

このほかにも、米国からのシェールガス輸入(「2018年5月、『シェール革命』が産んだ天然ガスが日本にも到来」参照)や、ロシアにおける日本企業の資源開発(「石油から再エネまで、あまり知らないロシアと日本のエネルギー協力」参照)などによる輸入先の多様化、また重要なエネルギー輸入元である中東各国との関係強化(「日本のエネルギーと中東諸国~安定供給に向けた国際的な取り組み」参照)などの取り組みも進められています。

3.エネルギー選択の大きな流れ

世界のエネルギー事情は、今大きな転換期にあります。日本もその大きな流れと無縁ではいられません。

日本は現在までに4つの大きなエネルギー転換期を迎え、現在は5つめの岐路に直面しているといえます。エネルギー需要が大幅に増加して自給率が低下した60年代、2度の石油危機を経験して省エネが進んだ70年代、京都議定書の採択を機に世界的に温暖化が問題視された90年代、東日本大震災と原発事故で改めてエネルギー改革が問われた2011年以降。そして現在、2016年に発効した「パリ協定」の実現に向け、2030年以降のエネルギーの将来像をしっかりと考える段階にきています(「2050年のエネルギーの姿はどうなる?~エネルギー情勢懇談会が示す方向性」参照)。

エネルギー選択の大きな流れ
日本がこれまで直面してきた各時代のエネルギー選択についてまとめた図です。

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(出典)資源エネルギー庁エネルギー情勢懇談会資料

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エネルギー白書2018「第1部/第3章/第2節/1.エネルギー政策のメガトレンド」

長期的なエネルギー政策を考える際には、今後起こるであろうさまざまな世界情勢やエネルギー情勢の変化を考慮する必要があります。たとえば、以下のようなポイントには注意をはらっておくべきでしょう。

リストアイコン 再エネ価格の引き下げ
再エネのコストを考える
リストアイコン エネルギー需要の構造を大きく変える可能性のある自動車産業のEV化
電気自動車(EV)は次世代のエネルギー構造を変える?!

これからのエネルギー問題は、エネルギー安全保障や地球温暖化問題への対応、各国の経済動向などもふまえた上で、将来へ向けてあるべき姿を模索していく必要があるのです。

2017年の過去記事もあります。こちらをご覧ください。
日本が抱えているエネルギー問題

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