2019—日本が抱えているエネルギー問題(前編)

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日本の自給率と海外依存の問題

電気、ガス、ガソリンなどのエネルギーは、いまや生活に欠かせないものとして社会を支えています。けれども石油やLNG(液化天然ガス)などのエネルギー資源がとぼしい日本では、エネルギーを安定的に供給するためにさまざまな方策が必要です。

2017年の日本のエネルギー自給率は9.6%で、他のOECD諸国と比較すると低い水準です。過去最低だった2014年の6.4%からは上向いていますが、エネルギー自給率が低いと資源を他国に依存しなければならず、国際情勢の影響などを受けてエネルギーを安定して確保することが難しくなります。

主要国の一次エネルギー自給率比較(2017年)
主要国の一次エネルギー自給率のランキングを示しています。1位はノルウェーの792.6%、2位はオーストラリアの306.0%、3位はカナダの173.9%と続き、日本は34位の9.6%となっています。

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(出典)IEA「World Energy Balances 2018」の2017年推計値、日本のみ「総合エネルギー統計」の2017年度確報値。 ※表内の順位は2017年OECD35カ国中の順位です。

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日本のエネルギー2018「Q 日本は、国内の資源でどのくらいエネルギーを自給できていますか?」

我が国のエネルギー自給率
2010年から2017年までの1年ごとの日本のエネルギー自給率を示しています。2010年は20.3%、そこから数値が下がっていき2014年の6.4%を最低値として、その後少しずつ上昇し2017年では9.6%となっています。

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(出典)IEA「World Energy Balances 2018」の2017年推計値、日本のみ「総合エネルギー統計」の2017年度確報値。 ※表内の順位は2017年OECD35カ国中の順位です。

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日本のエネルギー2018「Q 日本は、国内の資源でどのくらいエネルギーを自給できていますか?」

とりわけ日本は、石油・石炭・LNG(液化天然ガス)などの化石燃料に大きく依存しています。2011年に起こった東⽇本⼤震災の前年、化石燃料への依存度は81.2%(⼀次エネルギー供給ベース)でしたが、原⼦⼒発電所の稼働停⽌にともなう電⼒の不⾜を火⼒発電所の焚き増しによっておぎなったことから、2017年の化石燃料への依存度は87.4%まで増加しています。

また、2018年の化石燃料の海外依存度は、石油99.7%、LNG(液化天然ガス)97.5%、石炭99.3%となっており、そのほとんどを海外からの輸入に頼っているのが現状です。

我が国の一次エネルギー国内供給構成の推移
日本の一次エネルギー国内供給構成を年度ごとに3つの円グラフで示しています。1973年度の化石燃料依存度は94.0%、2010年度は81.2%、2017年度は87.4%となっています。

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(出典)総合エネルギー統計
※ 当資料で扱うパーセンテージ表示については、四捨五入の関係上、合計が100%にならない場合があります。
※ 再生可能エネルギー等は水力を除き、未活用エネルギーを含みます。

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日本のエネルギー2018「Q 日本はどのような資源に依存していますか?」

日本の化石燃料の海外依存度
石油、LNG(液化天然ガス)、石炭の海外依存度を表にまとめています。

さらに課題となるのは、資源を輸入している地域です。原油は約88%を中東地域に依存していますが、この地域は政情が安定しているとはいえません。先日も、中東のホルムズ海峡を航行中の日本関係の積み荷を積んだ船が攻撃されるという事件がありました(「世耕経済産業大臣の閣議後記者会見の概要」参照)。中東地域は、世界のエネルギー供給をささえる大切な地域のひとつであり、そこでの航行の安全確保は、日本および国際エネルギー市場にとって、きわめて重要です。

石炭の輸入についても、オーストラリア一国への依存が高くなっています。一方でLNG(液化天然ガス)については、オーストラリアのほか、アジア、ロシア、中東など多様な地域から調達しています。

日本の化石燃料輸入先(2018年)
日本の化石燃料輸入先の割合を種類ごとに円グラフで示しています。原油はサウジアラビアが38.6%、続いてアラブ首長国連邦が25.4%、カタールが7.9%。LNG(液化天然ガス)はオーストラリアが34.6%、続いてマレーシアが13.6%。石炭はオーストラリアが71.5%、続いてインドネシアが11.8%となっています。

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(出典)貿易統計

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日本のエネルギー2018「Q 日本はどのような国から資源を輸入していますか?」

電気料金の変化

2011年の東日本大震災以降、電気料金は値上がりが続きました。原子力発電の停止影響をおぎなうために火力発電を焚き増したことに加え、2014年まで燃料価格も上昇したためです。2017年度には震災前にくらべて、家庭向けで約16%、産業向けでは約21%上昇しています。

電気料金平均単価の推移
家庭向けと産業向けの電気料金平均単価を年ごとの折れ線グラフで示しています。

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(出典)発受電月報、各電力会社決算資料を基に作成。

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日本のエネルギー2018「Q 電気料金はどのように変化していますか?」

電気料金は、使われている電源(電気をつくる方法)の種類に大きく影響されます。石油、LNG(液化天然ガス)などの化石燃料を使う火力発電は、資源を海外からの輸入にたよっていることもあって、エネルギーコストがかかり、国際的な燃料価格の影響をうけやすい電源です。2017年の電源構成における化石燃料への依存度は80.9%におよんでいます。

日本の電源構成の推移(供給)
2010年度から2017年度までの日本の電源構成の推移を積み上げグラフで示しています。2017年度の構成は石炭32.7%、LNG(液化天然ガス)39.5%、石油8.7%で化石燃料依存度が80.9%となっています。

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(出典)資源エネルギー庁「総合エネルギー統計」

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日本のエネルギー2018「Q 電気料金はどのように変化していますか?」

もうひとつ、近年の電気料金に大きな影響をあたえているのが、再生可能エネルギー(再エネ)です。2012年に導入された、再エネをあらかじめ決められた価格で買い取る「固定価格買取制度(FIT)」により、再エネの設備容量は急速に伸びてきました(「FIT法改正で私たちの生活はどうなる?」参照)。将来のために再エネが増えることは大切ですが、一方で、再エネの買い取り費用は3.6兆円に達しています。その一部は「賦課金」として、私たちが払う電気料金に含まれており、賦課金の単価は年々上昇しています。これが、電気料金を押し上げている要因のひとつとなっています。

再生可能エネルギーなどによる設備容量の推移
2010年度から2017年度までの再生可能エネルギー5種の設備容量の推移を積み上げグラフで示しています。2012年度までの年平均伸び率は9%、2012年度の固定価格買取制度導入以降の年平均伸び率は22%となっています。

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(出典)JPEA出荷統計、NEDOの風力発電設備実績統計、包蔵水力調査、地熱発電の現状と動向、RPS制度・固定価格買取制度認定実績などにより資源エネルギー庁作成。

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日本のエネルギー2018「Q 電気料金はどのように変化していますか?」

固定価格買取制度導入後の賦課金の推移
2012年度から2019年度の賦課金と買取費用の推移を積み上げグラフで示しています。2012年度の賦課金は約1,300億円、買取費用は約2,500億円ですが、2019年度の賦課金は約2.4兆円、買取費用は約3.6兆円となっています。

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※ 平均モデル:東京電力EPや関西電力がHPで公表している月間使用電力量260kWhのモデル

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日本のエネルギー2018「Q 電気料金はどのように変化していますか?」

温室効果ガス(GHG)の排出問題

地球温暖化対策のために、温室効果ガス(GHG)の削減は急ぐべき問題となっていますが、石油・石炭・LNG(液化天然ガス)など化石燃料は温室効果ガスを多く排出するため、化石燃料を使う電源が増えると温室効果ガスも増えてしまいます。

東日本大震災以降、日本の温室効果ガス排出量は増加し、2013年度には過去最高となる14億トンもの温室効果ガスを排出しました。その後は減少し、2017年度は東日本大震災前の2010年度の排出量を下回りました。

日本の温室効果ガス排出量の推移
2010年度から2017年度までの日本の温室効果ガス排出量の推移を積み上げグラフで示しています。2010年度の電力分の温室効果ガス排出量に比べ、2017年度の電力分の温室効果ガス排出量は+37百万t-CO2となっていますが、全体での温室効果ガス排出量は2010年度を下回っています。

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(出典)総合エネルギー統計、環境行動計画(電気事業連合会)、日本の温室効果ガス排出量の算定結果(環境省)を基に作成。
外部サイトを別ウィンドウで開く2017年度(平成29年度)の温室効果ガス排出量(確報値)について(国立環境研究所)

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日本のエネルギー2018「Q 日本は温室効果ガスをどれくらい排出していますか?」

とはいえ、安心はできません。「パリ協定」に基づいて定めた温室効果ガスの削減目標を実現するには、さらなる努力が必要だからです。日本は2030年までに、2013年度比で26%の温室効果ガス削減を目標としています。この数値は、他国の削減目標と比べても高いものです(「今さら聞けない『パリ協定』 ~何が決まったのか?私たちは何をすべきか?~」「『パリ協定』のもとで進む、世界の温室効果ガス削減の取り組み② ~日本の目標と進捗は?」参照)。

日本の2030年目標「2013年度比で26%削減」
日本、米国、EU、中国、韓国のそれぞれの削減目標を表にして比べています。2013年比の削減目標を比べた場合、日本が26.0%、米国が18~21%、EUが24%の削減目標となっています。

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(出典)主要国の約束草案(温室効果ガスの排出削減目標)の比較(経済産業省作成)

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日本のエネルギー2018「Q 日本は温室効果ガスをどれくらい排出していますか?」

一方、世界に目を転じてみると、世界のエネルギー起源温室効果ガスは、2016年に321億t-CO2になりました。1990年から2016年のCO2排出量を各国別に見ると、EUでは排出量は下降していますが、中国、インド、アフリカといった新興国での排出量が増加しています。

2018年の温室効果ガス排出量シェアで見ると、中国が26.6%でトップ、インドは4番手の6.7%と、日本のシェア2.7%とくらべても高いシェアを占めています。こうしたことから、新興国でCO2排出量削減の取り組みを進めていくことも重要になってきます。

世界のエネルギー起源温室効果ガス排出量の推移(1990~2016)
1990年から2016年までの世界のエネルギー起源温室効果ガス排出量の推移を折れ線グラフで示しています。2016年時点では、1990年に3位だった中国が1位となり、次に米国、EU28カ国、インドと続いています。

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(出典)CO2 EMISSIONS FROM FUEL COMBUSTION 2018 Highlights(IEA)
エネルギー起源温室効果ガス排出量の多い国・地域のトップ10を抽出、カッコ内の数字は2016年排出量(百万トン)
※ 非エネルギー起源温室効果ガス排出量は含まれていません。

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日本のエネルギー2018「Q 日本は温室効果ガスをどれくらい排出していますか?」

各国別の温室効果ガス排出量シェア(2018年)
2018年の各国別の温室効果ガス排出量シェアを円グラフで示しています。1位は中国の26.6%、2位はアメリカ合衆国の12.9%、3位はEU28カ国の9.0%、4位はインドの6.7%となっています。

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(単位)CO2百万トン換算
(出典)IEA CO2 EMISSIONS FROM FUEL COMBUSTION (2018 Edition)
2015 Greenhouse-gas emissions(2018 Edition)

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日本のエネルギー2018「Q 日本は温室効果ガスをどれくらい排出していますか?」

2030年に向けたエネルギー政策

さまざまな課題に対応するために、日本では将来へ向けたエネルギー政策の基本方針を定めています。「3E+S」と呼ばれるこの方針は、安全性(Safety)を大前提とし、自給率(Energy Security)、経済効率性(Economic Efficiency)、環境適合(Environment)を同時に達成しようという考え方です。

このエネルギー政策の基本方針にもとづき、2030年における日本のエネルギー需給構造のあるべき姿も提示されています(「新しくなった『エネルギー基本計画』、2050年に向けたエネルギー政策とは?」参照)。それは、エネルギー源ごとの強みが最大限に発揮され、弱みが補完されるような、多層的なエネルギー供給構造を実現することが重要だという考え方です。さまざまなエネルギーや電源を組み合わせること必要だという観点から「エネルギーミックス」とも呼ばれています。

今後は2030年に向けて、エネルギーミックスをどう実現させていくかが重要となります。「2019—日本が抱えているエネルギー問題(後編)」では、そのための具体的なエネルギー政策を解説します。

お問合せ先

長官官房 総務課 調査広報室

2019/08/13に公開した記事の一部に誤りがありました。「温室効果ガス(GHG)の排出問題」の項のうち、「日本の温室効果ガス排出量の推移」の図で、2017年度と2010年度の電力直接排出の差を示す吹き出しを「+41百万t-CO2」としておりましたが、正しくは「+37百万t-CO2」です。また、同じ項のうち、日本と主要各国の2030年目標を示した表で、米国の目標を、2005年比で「▲26~28%(2030年までに)」としておりましたが、正しくは「▲26~28%(2025年までに)」です。お詫びして訂正いたします。(2019/08/30 18:00)

※掲載内容は公開日時点のものであり、時間経過などにともなって状況が異なっている場合もございます。あらかじめご了承ください。