目前に迫る水素社会の実現に向けて~「水素社会推進法」が成立 (後編)クリーンな水素の利活用へ
目前に迫る水素社会の実現に向けて~「水素社会推進法」が成立 (前編)サプライチェーンの現状は?
日本でも事業化へ動き出した「CCS」技術(後編)〜「CCS事業法」とは?
日本でも事業化へ動き出した「CCS」技術(前編)〜世界中で加速するCCS事業への取り組み
日本が掲げる、「2035年までに、乗用車新車販売で電動車100%」という目標。「電動車」とは、電気自動車(EV)、燃料電池自動車(FCV)、プラグインハイブリッド自動車(PHEV)、ハイブリッド自動車(HEV)のことを指します。従来のガソリン車(ICE)と比較すると走行時のCO2排出量が少ないという長所があり、さまざまな電動車が登場しています。2023年度の国内乗用車新車販売では、HEVは約50%のシェアを占める一方で、EV、FCV、PHEVは合計でも約3.5%のシェアです。これらの車両についても普及促進を図っていく必要がありますが、「車両価格が高い」というイメージから、新車購入の際、無意識に選択肢から除いてしまっている方もいるかもしれません。そこで利用したいのが、「クリーンエネルギー自動車導入促進補助金(CEV補助金)」です。活用すれば購入価格が抑えられるうえ、カーボンニュートラル実現への貢献につながります。2024年度(令和6年度)からリニューアルした「CEV補助金」についてご紹介しましょう。
自動車部門からのCO2排出は、日本のCO2排出量全体の約16%を占めています。「2050年カーボンニュートラル」実現のためには、「クリーンエネルギー自動車」の普及促進が欠かせません(「『カーボンニュートラル』って何ですか?(前編)〜いつ、誰が実現するの?」参照)。
(出典)国土交通省「運輸部門における二酸化炭素排出量」
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そこで、前述のとおり、国は「2035年までに、乗用車新車販売で電動車100%」という目標を掲げており、クリーンエネルギー自動車の新規購入に対して「CEV補助金」を設け、購入をサポートしてきました。
この「CEV補助金」の考え方は、2024年度(令和6年度)から変更されています。大きな変更点となるのが、補助金額を算定する評価項目です。これまで評価項目となっていたのは、「電費」(1kWhあたりでどれだけ走行できるか)や「一充電走行距離」(搭載した電池で一度に走行できる距離)などの「車両性能」のみでした。この評価項目について、2024年度からは、「自動車分野のGX実現に必要な価値」に基づき、メーカーの取り組みを総合的に評価する方法に変わりました。「GX」とは、グリーントランスフォーメーションの略で、これまでの化石エネルギー(石炭や石油など)中心の産業構造・社会構造から、CO2を排出しないクリーンエネルギー中心に転換することを意味します。
「自動車分野のGX実現に必要な価値」とは、具体的に何を指すのでしょうか。自動車分野のGXを実現するためには、電動車の性能向上はもちろん、充電インフラの整備やアフターサービス体制の確保など、安心・安全に乗り続けられる環境づくりが必要です。また、走行時だけではなく、製造から廃棄までのライフサイクル全体においてCO2排出量低減の取り組みが十分になされていることが重要ですし、災害時には電動車が外部給電できる電源になるといった他分野での貢献が期待されます。こうしたことが、「自動車分野のGX実現に必要な価値」として評価項目に加えられたのです。これにより、「電動車が持続的に活用できる環境を構築する」という面で自動車メーカーの取り組みを加速させ、自動車分野におけるGX市場の創造をめざすという狙いがあります。
自動車分野のGX実現に必要な価値
2024年度(令和6年度)に申請を受け付ける「CEV補助金」の予算総額は1,291億円に拡充されています。補助金額は、上記の価値に基づいて、個別の車種ごとに採点に応じて算定されるようになりました。車両カテゴリーごとの補助額は、電気自動車(EV)が最大85万円、軽の電気自動車(軽EV)が最大55万円、プラグインハイブリッド車(PHEV)が最大55万円、燃料電池自動車(FCV)が最大255万円です。※2024年(令和6年)4月1日以降に新車新規登録(新車新規検査届出)された自動車について、新しい交付要件が適用されています
以下のサイトで、対象車両の補助額や申込方法が具体的に示されていますので、ぜひチェックしてみてください。
世界の主要国・地域における電気自動車(EV)の販売比率を見ると、グラフのように中国が17%、欧州が13%とEVシフトが進んでいるのに対して、日本は2%と低い水準にあります。
各地域におけるEV販売比率の推移
(出典)Marklines, 欧州:英仏独の3か国
日本においては、電気自動車(EV)も増やしつつ、燃料電池自動車(FCV)、プラグインハイブリッド自動車(PHEV)、ハイブリッド自動車(HEV)といったさまざまなタイプの電動車の普及を進める政策をとっていく方向です。現状、各電動車を比較すると、航続距離、充電時間・充てん時間、コスト、CO2排出などの面で一長一短があります。日本の政策は、それぞれの強みと課題を理解した上で、たとえば、主な用途が近距離走行であれば軽の電気自動車(軽EV)、長距離路線バスなら燃料電池自動車(FCV)といったように、適材適所での活用を社会全体で進めていくこととしています。
各電動車の強みと弱み
※ZEV(Zero Emission Vehicle)の定義は、地域によって主張が異なる。 (出典)公表情報を元に経済産業省作成
自動車分野のGXを目指すには、現時点では完全な技術は存在しない中で、各電動車に関する研究開発がまだまだ必要です。たとえば、ハイブリッド自動車(HEV)の脱炭素化のためには、2030年代前半までの商用化を目指して研究が進められている「合成燃料(e-fuel)」の実用化が重要です(「エンジン車でも脱炭素?グリーンな液体燃料『合成燃料』とは 」参照)。また、電気自動車(EV)やプラグインハイブリッド自動車(PHEV)では、次世代電池の開発が進められています。燃料電池自動車(FCV)では、大規模な水素のサプライチェーンを構築することが必要となります。これらのイノベーションは、「グリーンイノベーション基金」などを通じて開発の加速化がはかられています。供給側のイノベーションを促進しながら、需要側では購入補助金で社会への普及・定着をはかっていく。自動車分野のGXを実現するため、さまざまな政策が進められているのです。
製造産業局 自動車課
長官官房 総務課 調査広報室
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