成長志向の資源循環経済システム「サーキュラーエコノミー」(後編)動きだす産官学パートナーシップ
SAFの導入拡大をめざして、官民で取り組む開発と制度づくり
なぜ、日本は石炭火力発電の活用をつづけているのか?~2030年度のエネルギーミックスとCO2削減を達成するための取り組み
成長志向の資源循環経済システム「サーキュラーエコノミー」(前編)どんな課題を解決するの?
資源を効率的に循環させ、持続可能な社会をつくるとともに経済的な成長もめざす経済システム「サーキュラーエコノミー」。前編(「成長志向の資源循環経済システム「サーキュラーエコノミー」(前編)どんな課題を解決するの?」 参照)では、サーキュラーエコノミーとは何か、その背景にどのような世界的事情があるのか、基本的なことを解説しました。今回は、サーキュラーエコノミーの実現に重要なルールづくりや政策支援、産官学のパートナーシップなどについて紹介します。すでに動きだしている産官学パートナーシップでは、さまざまな取り組みが進んでいます。
サーキュラーエコノミーを推進し、成長志向の資源循環社会を確立するにあたっては、市場化を進め、国際競争力を獲得していくことが重要です。そのためには、
が必要です。そこで、これらに関する政策措置をパッケージ化し、「成長志向型の資源自律経済戦略」が2023年に策定されました。具体的な取り組みとしては、大きく以下の3つがあげられます。
資源循環が個別の取り組みに終わってしまうと、経済合理性に欠け、サーキュラーエコノミーの実現につながりません。そこで、国・自治体・大学・企業や業界団体・関係機関などが参画するパートナーシップを立ち上げ、産官学が連携して目的意識を共有しながら、さまざまな領域の課題解決に取り組んでいく必要があります。経済産業省では、サーキュラーエコノミーに関する産官学パートナーシップとして「サーキュラーパートナーズ(CPs)」を2023年に立ち上げ、2024年10月現在、520を超える会員とさまざまな課題の検討に入っています。
サーキュラーエコノミーの拡大によって、国内の再生材の供給不足が見込まれることから、研究開発から実証・実装までを面的にサポートする投資支援をおこないます。GX先行投資支援などを活用し、研究開発から実証・実装までを一貫し、資源循環分野において今後10年で2兆円を超える規模の投資の実現をめざし、今年度から3年間で100億円の支援をおこないます。
廃棄物を資源に転換するためには、設計、製造、販売、利用している「動脈産業」と、廃棄物を回収し再生・再利用する「静脈産業」の連携が欠かせません。再生材の供給量を増やすために、静脈産業で効率的な回収を強化するとともに、動脈産業で再生材をより多く活用することにつながる制度づくりやルールの見直しをおこなうべく、経済産業省では、産業構造審議会の下に「資源循環経済小委員会」を2023年に設置し、循環資源の流通を促進する方策やルール化、また資源節約のための取り組みなどについて検討しています。
ライフサイクル全体での動静脈産業の連携の理想像(イメージ)
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2023年9月に、産官学連携パートナーシップである「サーキュラーパートナーズ」が発足しました。サーキュラーエコノミーに野心的・先駆的に取り組む関係者が集まり、有機的に連携することで、サーキュラーエコノミーの実現を推進していく組織です。現在は、企業・業界団体・自治体・関係機関など520者を超える会員が参加しています(2024年10月末時点)。運営方針や検討が必要なテーマの決定をする総会のもとに、3つのワーキンググループが設置され、議論をおこなっています。
サーキュラーエコノミーに関する産官学のパートナーシップについて
今後の日本のサーキュラーエコノミーに関する方向性を定めるため、2030年、2050年を見すえた日本全体のサーキュラーエコノミーの実現に向けたビジョンや、中長期のロードマップを策定します。また、各製品・各素材別のビジョンや中長期ロードマップの策定もおこないます。
資源循環の取り組みが適正かつ効率的におこなわれるためには、循環に必要となる製品・素材の情報や循環の実態を可視化することが必要です。それらを実現するために、「CE(サーキュラーエコノミー)情報流通プラットフォーム」を、2025年を目途に立ち上げます。
自治体におけるサーキュラーエコノミーの取り組みを加速し、地域の経済圏の特性に応じた「地域循環モデル」をつくることをめざします。これにより、地方の活性化にも貢献します。サーキュラーパートナーズの参画者を中心にサーキュラーエコノミーへの移行に向けた支援策を強化し、必要十分な規模・期間の政府支援をおこなう計画です。資源循環の取り組みを含めたGXへの投資では、今後10年間の政府支援額は約20兆円規模で、官民投資額全体では約150兆円を超えると予測されています。
サーキュラーエコノミーは社会全体で実現することが重要です。そのために、関係者同士が連携し、あらゆる分野で協調する領域を広げていくために、今後も取り組みを進めていきます。
経済産業省 GXグループ 資源循環経済課
長官官房 総務課 調査広報室
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