成長志向の資源循環経済システム「サーキュラーエコノミー」(後編)動きだす産官学パートナーシップ
SAFの導入拡大をめざして、官民で取り組む開発と制度づくり
なぜ、日本は石炭火力発電の活用をつづけているのか?~2030年度のエネルギーミックスとCO2削減を達成するための取り組み
成長志向の資源循環経済システム「サーキュラーエコノミー」(前編)どんな課題を解決するの?
近年増加している、自然災害による電力システムの被災。そこで今、電力インフラ・システムを強靱にすること(電力レジリエンス)が重要となっています。これを法制度の面でも促進しようと、2020年6月に国会で可決・成立したのが、「強靱かつ持続可能な電気供給体制の確立を図るための電気事業法等の一部を改正する法律」、いわゆる「エネルギー供給強靱化法」です。法改正の狙いと、各法制度のポイントを紹介するシリーズとして、第2~4回は電気事業法についてお伝えしました。第6回目は前回に引き続き、再生可能エネルギー(再エネ)に関する法律の改正ポイントについてご紹介しましょう。
今、日本の電力インフラ・システムは、「自然災害の頻発」「再エネの主力電源化に向けた課題」「地政学的リスクの変化」という課題を抱えています。これを解決するために今回おこなわれたのが、3つの法律のパッケージ改正でした。
改正された3つの法律のうちの1つが、法律名も新しくなる「再生可能エネルギー電気の利用の促進に関する特別措置法」です。シリーズの5回目では、改正ポイントの4つのうち、①のFIP制度についてご紹介しました。
今回は残り3つについて見ていきましょう。
再エネは、再エネによりつくられた電気をあらかじめ決められた価格で買い取る「固定価格買取制度(FIT)」がスタートした2012年から、導入の拡大が進んでいます。今後、再エネを主力電源化していくためには、さらに発電量を増やしていくことが必要ですが、その際に課題となるのが「電力系統」の制約です。ちなみに、電源とは電気をつくる方法のことを言います。電力系統とは、発電や送電、あるいは変電や配電のために使う電力設備がつながって構成するシステム全体のことを指します。系統に流すことのできる電力の量、いわゆる容量には上限があるので、再エネ由来の電源が今後大量に入ってくると、現在の電力系統では吸収しきれず、再エネ電源を系統に“つなげない”状態になることが起きかねません。
また、再エネの導入が特に進んだ地域では、再エネでつくった電気の供給が需要を上回り、余ってしまう可能性が生じます。実際に九州ではそうした事態が起こっており、これがほかの地域でも今後起こっていくことが予想されます。
その際に、余った電力をほかのエリアに融通できればいいのですが、日本では、電力需給バランスの管理は、基本的にエリアごとでおこなわれているという現状があります。それぞれのエリアの電力系統は隣のエリアの電力系統とつながってはいるものの、エリアをまたいで流すことのできる電気の量は限られています。これもまた、電力系統の制約のひとつです。そこで、各エリアを結ぶ「地域間連系線」を増強してパイプを太くすることにより、再エネのポテンシャルを全国規模でしっかりと生かすことが求められています。これは、今回パッケージで改正された「電気事業法」にもさだめられた通りです(「『法制度』の観点から考える、電力のレジリエンス ③被災に強く再エネ導入にも役立つ送配電網の整備推進」参照)ただ、こうした送電網の増強には、多額の費用がかかります。そこで今回の法改正では、その費用負担について、新たに「賦課金方式」が導入されました。これは、送電網を増強することによって再エネの利用が促進され、「電力価格の低下」と「CO2の排出削減」の効果がもたらされる場合、その便益分に相当する費用については電気料金の一部として全国で均等にささえるしくみです。
地域間連系線などの増強費用の負担の考え方
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再エネを主力電源化していくにあたっては、発電事業者が事業規律をしっかりと守り、地域と共生していく必要があります。そのひとつとして、太陽光パネルなど、太陽光発電設備を適切に廃棄することが課題となっています。
これまでも、「調達価格」つまり再エネの買取価格に廃棄費用が盛り込まれていました。しかし、その廃棄費用の積立ての水準や時期は事業者の判断にゆだねられていたため、さまざまな事業者が取り組んでいて事業実施主体の変更もおこなわれやすい太陽光発電については、廃棄するまでにその費用が確保されるかどうか、再エネ施設のある地域からも懸念の声があがっていました。そこで、今回の改正では、その費用を源泉徴収のようにあらかじめ徴収して、外部に積み立てることを原則とすることが定められました。これによって、たとえば転売によって事業者が変わったとしても、廃棄時まで費用が保全されることとなります。また、適切な廃棄がはかられることで地域の懸念も払しょくされるため、再エネ事業が地域と共生し、社会に安定的に定着することにもつながるでしょう。
廃棄などにかかる費用の確保
今回の法改正では、再エネを促進するために系統整備を進めるとともに、今ある系統についても、より効率的な活用をはかっていくような施策が強化されています。たとえば、スペシャルコンテンツでも何度かご紹介してきましたが、FITの認定をすでに受けているにもかかわらず、長年未稼働となっている再エネ電源があることが、近年問題となっていました。電力系統への接続は申し込み順で決まるのですが、未稼働案件に電力系統の接続権がおさえられていると、実際には、系統の容量自体に空きがあるにもかかわらず、新規事業者が系統を利用できないということが起こり、既存系統の効率的な利用が実現できません。
これまでも、未稼働案件に対する制度的な措置は講じられてきましたが、今回の改正ではこれをさらに進め、認定を受けてから一定期間運転を開始しない場合には、認定を失効するという措置がとられることとなりました。失効した案件が押さえていた系統容量が適切に開放されれば、これによって新たな事業者が活用することができるようになります。
これまで6回にわたって、「エネルギー供給強靱化法」の内容について、シリーズでお伝えしてきました。今後は災害時の迅速な復旧や送配電網へのスムーズな投資、再エネの導入拡大のための措置などを通じて、さらに強力で持続的な電気の供給体制を確保していきます。
省エネルギー・新エネルギー部 新エネルギー課電力・ガス事業部 電力基盤整備課
長官官房 総務課 調査広報室
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