2025年、日本の洋上風力発電~今どうなってる?これからどうなる?~

秋田港洋上風力発電所の写真です

秋田港洋上風力発電所(秋田洋上風力発電株式会社)

日本がかかげる「2050年カーボンニュートラル」実現には、CO2を排出しない再生可能エネルギー(再エネ)の導入拡大が必要です。中でも近年注目されているのが、海上で風力発電をおこなう「洋上風力発電」。洋上風力発電については、「エネこれ」でもこれまでさまざまな記事でご紹介してきましたが、今はどのような状況になっているのでしょう?今回は、日本国内でも設置が進む洋上風力発電について、現状とこれからをご紹介しましょう。

カーボンニュートラル実現のため、風力発電に求められている役割

カーボンニュートラルの実現のためには、温室効果ガス(GHG)排出量の85%を占めているエネルギー起源CO2(エネルギーに関連して排出されているCO2)の排出削減の取り組みが重要です。

CO2を排出しない再エネの導入拡大はその取り組みのひとつです。まずは、「2030年度エネルギーミックス」で示された、電源構成に占める再エネ比率36~38%に向けて全力をつくします。また、その先の「2040年度エネルギーミックス」における電源構成に占める再エネ比率4割~5割に向けて取り組みを進めていきます。このうち風力発電については、4~8%程度とされています。

2040年度におけるエネルギー需給の見通し「2040年度エネルギーミックス」
2040年度におけるエネルギー需給の見通しとして、2023年度の速報値と2040年度の見通しを表形式で比較しています

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2020年12月に取りまとめられた「洋上風力産業ビジョン」では、政府目標として、2030年までに10ギガワット、2040年までに30~45ギガワットの洋上風力プロジェクト(案件)の形成が目標として設定されました。2024年時点では、5.1ギガワット分の案件形成が進んでいます。

洋上風力発電の導入状況
洋上風力発電の導入状況について、2019年度末・2024年12月末・2030年度目標を棒グラフで比較しています。

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なぜ、洋上風力発電が期待されているのか?

ここであらためて、洋上風力発電がなぜ日本にとって重要なのか、過去の記事も交えながら簡単におさらいしておきましょう。

「エネこれ」で、風力発電に関する解説記事を掲載したのは2018年2月のこと。海外では導入が進んでいた一方、日本では導入量がまだ少ないこと、その解決のためにはいくつかの問題の解決が必要であることをお伝えしました。

中でも問題となっていたのが、風力発電に適した条件の土地(適地)です。日本の国土は山がちで、陸上で風力発電に適した土地は多くありません。そこで注目が集まったのが、海域を利用する洋上風力発電です。

洋上風力発電は、

①欧州を中心に世界で導入が拡大しており、四方を海に囲まれた日本でも導入拡大の可能性がある
②先行する欧州では、遠浅の北海を中心に、落札額が10円/kWhを切る事例や補助金ゼロの事例が生じるなど、コスト低減が進展している
③ 部品数が数万点と多く事業規模も大きいことから、関連産業への経済波及効果が期待され、地域活性化にも寄与する

という特徴があります 。

洋上風力発電の特徴
洋上風力発電の特徴について、①導入拡大の可能性②コスト競争力のある電源③経済波及効果を海外の事例を踏まえて説明しています

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ただ、2018年の時点では、港湾区域では2016年7月に「港湾法」が改正されてルールが設けられていたものの、それ以外の一般海域では利用に関する統一ルールが存在しておらず、都道府県条例などに基づく数年間の占用許可しかありませんでした。これでは長期間の占用ができないことから、洋上風力発電の推進のためのルール整備が求められていました。

そこで、2019年4月、「海洋再生可能エネルギー発電設備の整備に係る海域の利用の促進に関する法律(再エネ海域利用法)」が施行されました。この新しい法律により、洋上風力発電の案件形成が促進されることとなったのです。

そのような中、諸外国では昨今のインフレを背景に事業の遅延・撤退が発生しているという不安材料や、大型風車メーカーが国内に存在していないといった課題もあります。洋上風力発電の導入拡大には、こうした課題を解決するべく、エネルギー政策と産業政策の両面から推進していくことが求められています。

全国で進む、洋上風力発電の設置と洋上風力がある街の「将来像」づくり

再エネ海域利用法により、現在、洋上風力発電の区域整理・事業者公募は以下のような流れで進められることとなっています。

現在の、全国における区域指定・整理状況は下の図のようになっています。

ポイントは「再エネ海域利用法に基づく協議会(法定協議会)」の開催です。有望区域の要件として、利害関係者の特定と、協議会の開始について同意を得ていることが求められています。

協議会には、国、都道府県、地元市町村、関係漁業者団体などの利害関係者、学識経験者などが参加し、選定事業者に求めることを議論します。洋上風力発電に取り組むにあたっては、地域・漁業との共生などが不可欠のため、こまやかな調整や合意形成が必須です。協議会における合意事項は、「協議会意見とりまとめ」として文書化され、協議会メンバーやこのあと選定される事業者は、協議の結果を尊重しなくてはなりません。

最近の協議会では、洋上風力発電事業を通じた地域や漁業の将来像についても議論がなされるようになっています。選定された洋上風力発電の事業者は、地元と一緒になって、これらの将来像の実現に向けて取り組むことが求められているのです。

将来像の例については、以下のようなものがあります。

青森県沖日本海(南側)の協議会が描いた「将来像」
リストアイコン 新産業の育成や雇用創出による若年層の回帰・定着、交流人口の増大、継続的な漁業の発展
リストアイコン 選定事業者は、本地域と運命共同体であるとの覚悟をもって、協調・共生策に取り組む
山形県遊佐町沖の協議会が描いた「将来像」
リストアイコン 海面漁業の持続可能な生産基盤と水産業の成長産業化、川の恵みが次世代にも持続し、地域とともに成長・発展する内水面漁業・生産活動を実現
リストアイコン 若者が自発的に地元へ定着し、地域外からも遊佐への移住・定住を選択肢に入れるような、持続可能で魅力あるまちづくり
北海道松前沖の協議会が描いた「将来像」
リストアイコン 人口減少や漁獲量減少など、さまざまな地域課題に立ち向かう礎を築く上で、洋上風力発電を重要な取り組みと位置付ける。漁業の活性化はもとより、新たな雇用環境の創出、観光の魅力の拡大、災害に強いまちづくりなど地域の発展を期待
リストアイコン 風を活かしたリニューアブルタウン『誰もが住み続けたいまち』を目指す

法定協議会の様子は公開されており、これらの将来像が記載された「協議会意見とりまとめ」も公開されていますので、気になるエリアの議論があれば確認することができます。洋上風力発電とともに、どんな地域共生が図られていくのか、要注目です!

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