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2012年7月、再生可能エネルギー(再エネ)の導入を目的に固定価格買取制度(FIT)が制度化され、再エネを取り巻く状況や技術は大きく変化しました。しかし、課題も生まれてきています。そのひとつが、FITの認定を取得した太陽光発電に多くの未稼働案件があることです。2017年4月、この問題への対策も盛り込んだ「改正FIT法」が施行されましたが(「FIT法改正で私たちの生活はどうなる?」参照)、未稼働案件の解消にいたっていません。その対策として、2018年12月に決定した、新たな対応についてご紹介します。
FIT制度が開始されてから、太陽光発電は急速に普及してきました。それにつれて、当初は高額だった太陽光パネルなどのコストも、だんだんと低減しています。FIT認定を受けた事業用太陽光発電がつくる電気の「買取価格」(FIT制度では「調達価格」といいます)は、太陽光パネルの価格などをもとに設定されるため、太陽光発電コストが低減すれば、FITの調達価格も下落していきます。現在の調達価格は、FIT制度創設当初の半額以下となっています(2012年度40円/kWh→2018年度18円/kWh)。ここで注意していただきたいのは、FITの調達価格は、各発電所が認定を受けた時点で決定し、発電を開始した時に決定するのではないということです。このため、FIT認定時の高い価格で電気を買い取ってもらう権利をキープし、太陽光パネルなどの発電コストが低減した後に発電所が運転を始めることで、過剰な利益を得られてしまうことになるのです。運転開始が遅れる理由はさまざまですが、どんな理由であれ、認定時点の太陽光パネルの価格などをもとに算定された調達価格が、認定から何年も経過してから運転を始める発電所に適用されることは、FIT制度の趣旨に反していると言えます。このような問題に加えて、未稼働案件の存在は、再エネのさらなる導入を進める観点からも大きな問題となっています。FITの調達価格は、電気を買い取る各電力会社を通じて、最終的には国民が負担することになっています(再エネ賦課金)。すでに発電コストが安くなっている中で高い調達価格が維持されるということは、国民の負担が必要以上に大きくなるということです【問題①】。また、事業者による新規開発やコストダウンの取り組みが進まない【問題②】、先に認定を受けた未稼働発電所が発電所と電力系統をつなぐ権利をおさえたままでいるため、新しい発電所を電力系統につなごうとしても容量の空きがない【問題③】…などの問題もあります。そこで2017年4月に改正FIT法が施行され、認定日から3年以内の運転開始期限を設けるなど、新ルールを追加したのです。
改正FIT法では、
ことなどをさだめました。改正FIT法の施行によって、これまで未稼働だった約1,700万kWの案件が失効するなど一定の成果はありました。しかし、それでも大量の案件が稼働しないままです。2012~2014年度に認定を受けた案件だけ見ても、接続契約は結んだものの、なお約2,352万kWもの案件が稼働していません。さらに、2016年8月より前に接続契約をしたものは、早期に事業化にいたることが期待されていたことから運転開始期限が設定されませんでしたが、結果として何の規制もないまま未稼働となっている案件が多数存在しています。
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このままの状態では、さまざまな課題がさらに拡大することが考えられます。たとえば、問題①としてご紹介した「国民負担の増大」について考えてみましょう。2018年度の買取費用総額は3.1兆円、国民が負担する賦課金は総額2.4兆円です。再エネ発電コストが低減していけば、この負担も軽減していくと予想されています。しかし、今後、認定当時の高い調達価格の権利を持つ太陽光発電案件が稼働し始めれば、そこから20年間という長期にわたって高い価格での買取りがおこなわれることとなり、実際の発電コストは下がっているにもかかわらず、国民負担を抑えていくことができなくなります。そこで、有識者による審議や意見公募を経て、2018年12月、未稼働案件への新たな対応が発表されました。
今回発表された新しい対応の具体的なポイントは、以下の5つです。
先ほど述べたように、改正FIT法では「認定日から3年」という運転開始期限がもうけられましたが、その対象となったのは「2016年8月1日以降に電力会社との接続契約を締結した案件」でした。つまり、それ以前に接続契約をすでにおこなっていた案件については、早期の運転開始が見込まれるとして、運転開始期限が設定されなかったのです。そこで、2012年度~2014年度にFIT認定を受けた事業用太陽光発電(10kW以上)のうち、2016年7月31日までに接続契約を締結した未稼働案件についても、運転開始期限の設定と、運転開始のタイミングをふまえた適切な調達価格の適用がおこなわれることとなりました。ただし、開発工事に本格的に着手済みであることが、公的な手続きによって確認できる大規模事業(2MW以上)に限っては、今回の措置の対象にならないこととされました。
では、この措置をある太陽光発電案件に適用するかどうか、判断するタイミングはいつになるのでしょうか。調達価格を、実際のコストを的確に反映したものにしていくためには、発電所の「運転開始時」を基準として、今回の措置を適用するかどうかを判断することが妥当です。しかし今回は、発電所側でなく電力系統側に要因があって運転を開始できない場合(系統の容量が不足しているなど)もあるだろうことを踏まえて、以下のように設定されました。
具体的には、「系統連系工事の着工申込みを送配電事業者が受領した日」になります。また、着工申込みにあたっては、土地の使用の許可がとれていることなどの要件をつけました。
また、どの時点の調達価格を適用するかについても見直しがはかられました。前述したとおり、改正FIT法施行後に認定された案件には「認定日から3年以内」で稼動することが義務づけられているため、実質的には「運転開始から3年前の年度の調達価格」が適用されているということになります。そのバランスを配慮して、この措置の施行日より後に着工申込みが受領された場合には、その受領日から2年前の年度の調達価格を適用することとしました(例:2019年度に着工申込みが受領された場合は、2017年度の調達価格21円/kWhを適用)。
措置の施行日は、原則として2019年4月1日と決められました。2019年3月31日までに着工申込みが受領される案件については、これまでどおりの調達価格を適用されますが、2019年4月1日の施行日以降に着工申込みが受領されるものは、上記の措置が適用され、2年前の年度の調達価格が適用されます(ただし、2MW以上の大規模事業や自治体の条例にもとづく環境アセスメントの対象事業には、一定期間の猶予がもうけられました)。また、今回の措置の対象は2012年度~2014年度に認定を受けたものでしたが、有識者による議論では、毎年4月1日を施行日として、対象年度を拡大していくことも取りまとめられました。
今回の措置の特徴は、上で述べたような「調達価格の適正化」に加えて、運転の開始についても期限が設けられたことです。
この運転開始期限を超過した場合の取り扱いについては、調達価格等算定委員会において、超過期間分だけ買取期間を月単位で短縮することが取りまとめられています。今回の新しい対策によって太陽光発電の未稼働案件が解消され、再エネ由来の電力量がさらに拡大し、主力電源となっていくことが期待されます。
省エネルギー・新エネルギー部 新エネルギー課
長官官房 総務課 調査広報室
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