第1節 東日本大震災・東京電力福島第一原子力発電所事故への取組

1.廃止措置等に向けた中長期ロードマップ

廃炉・汚染水・処理水対策は、2019年に改訂された「東京電力ホールディングス(株)福島第一原子力発電所廃止措置等に向けた中長期ロードマップ4」(2019年12月27日 廃炉・汚染水対策関係閣僚等会議決定。以下「中長期ロードマップ」という。)に基づいて進められています。この改訂では、リスクの早期低減・安全確保を最優先に進める「復興と廃炉の両立」を改めて大原則として位置づけました。この大原則に基づき、個別の対策についても見直しを行っています(第111-1-1)。

【第111-1-1】中長期ロードマップ(2019年12月改訂)の概要

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【第111-1-1】中長期ロードマップ(2019年12月改訂)の概要(ppt/pptx形式:84KB)

資料:
経済産業省作成

引き続き、国も前面に立って、東京電力福島第一原子力発電所の現場状況や廃炉に関する研究開発成果等を踏まえ、中長期ロードマップに継続的な検証を加えつつ、必要な対応を安全かつ着実に進めていきます。

2.汚染水・処理水対策等

原子炉建屋内には、原子力発電所事故により溶けて固まった燃料である「燃料デブリ」が残っており、水をかけて冷却を続けることで、低温での安定状態を維持していますが、燃料デブリに触れた水は、高い濃度の放射性物質を含んだ「汚染水」になります。この水が建屋に流入した地下水と混ざり合うことで、日々新たな汚染水が発生しています。2013年9月には、原子力災害対策本部において「汚染水問題に関する基本方針」が決定され、①汚染源に水を「近づけない」、②汚染水を「漏らさない」、③汚染源を「取り除く」という3つの基本方針に沿って、予防的・重層的に対策を進めています(第111-2-1、第111-2-2)。

【第111-2-1】汚染水対策の3つの基本方針と対応状況

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資料:
経済産業省作成

【第111-2-2】汚染水対策の進捗

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【第111-2-2】汚染水対策の進捗(ppt/pptx形式:638KB)

資料:
経済産業省作成

汚染源に水を「近づけない」対策は、汚染水発生量の低減を目的としており、建屋への地下水流入を抑制するための多様な対策を組み合わせて進めています。具体的には、建屋の山側で汲み上げた地下水を海洋に排出する地下水バイパスを2014年5月から運用していることに加え、2015年9月からは「サブドレン」(建屋近傍の井戸)によって、建屋のより近傍で地下水を汲み上げ、建屋周辺の地下水位を管理する取組も実施しています。また、2016年3月に凍結を開始した凍土方式の陸側遮水壁(凍土壁)について、2018年3月に各分野の専門家で構成される汚染水処理対策委員会において、遮水効果が現れていると評価されており、2018年9月には全て凍結を完了しています(第111-2-3)。さらに、雨水の土壌浸透を防ぐ広域的な敷地舗装(フェーシング)についても、施工予定箇所の9割以上のエリアで工事を完了しています。これらの対策により、汚染水発生量は、対策実施前(2014年5月)の540㎥/日程度から、2023年度には平均で80㎥/日程度まで低減されました。平年雨量相当であったとしても約90㎥/日程度と評価されたことから、中長期ロードマップに記載されている「2025年内に100㎥/日以下に抑制する」という目標を前倒しで達成しました。今後、さらなる地下水の流入抑制のため、局所的な建屋止水等を進めています。

【第111-2-3】凍土壁

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【第111-2-3】凍土壁(ppt/pptx形式:251KB)

資料:
経済産業省作成

汚染水を「漏らさない」対策は、海洋へ放射性物質が流出するリスクの低減を目的としています。2015年10月には、建屋の海側に、深さ約30m、全長約780mの鋼管製の杭の壁(海側遮水壁)を設置する工事が完了したことで、放射性物質の海洋への流出量が大幅に低減し、港湾内の水質の改善傾向が確認されています。また、多核種除去設備(以下「ALPS5」という。)等により浄化処理した水については、鋼板をボルトで接合するフランジ型タンクに貯水していた水の移送等を進め、2019年3月からは漏えいリスクの低い溶接型タンクで全て保管しています。さらに、万一の漏えいにも備え、タンクから漏えいした水が外部環境に流出しないようにタンク周囲における二重の堰(二重堰)の設置や1日複数回のパトロール等を実施しています。

汚染源を「取り除く」対策としては、ALPSをはじめ、ストロンチウム除去装置等の複数の浄化設備により、汚染水の浄化を行っています。また、原子炉建屋の海側の地下トンネル(海水配管トレンチ)に溜まっていた高濃度汚染水については、万一漏えいした場合にリスクが大きいため、2014年11月からポンプで汚染水を抜き取り、トレンチ内を充塡・閉塞する作業を進めました。2015年12月には高濃度汚染水の除去及びトレンチ内の充塡を全て完了し、これにより、リスクの大幅な低減が図られました。また、建屋からの汚染水の漏えいリスクを完全になくすためには、建屋内滞留水中の放射性物質の量を減らす必要があります。このため、建屋内滞留水の除去や浄化を進め、2020年12月には、1〜3号機原子炉建屋、プロセス主建屋、高温焼却炉建屋を除く建屋内滞留水処理を完了しました。さらに2023年3月には、1〜3号機原子炉建屋の原子炉建屋滞留水を2020年末の半分程度に低減しました。今後はプロセス主建屋、高温焼却炉建屋の建屋内滞留水処理を進めていく予定です。

さらに、大規模自然災害に対する対策にも取り組んでいます。津波対策としては、切迫性が高いとされている千島海溝津波に対する防潮堤の設置(2020年9月工事完了)に加え、2020年4月に内閣府が発表した日本海溝津波に対する防潮堤の設置を2024年3月に完了しました。また、近年国内で相次ぐ大規模な降雨に備え、浸水解析に基づき、排水路を改良しました(2022年8月供用開始)。こうした予防的・重層的な取組により、汚染水対策は大きく進んできています。

今後は、雨水対策として、建屋周辺の舗装や、破損している1号機屋根のカバー等の対策を進めることで、汚染水発生量は2028年度までに約50〜70㎥/日に低減される見通しです。

3.ALPS処理水の海洋放出等

ALPS処理水の取扱いについては、6年以上にわたる有識者の検討等を経た上で、2021年4月の第5回廃炉・汚染水・処理水対策関係閣僚等会議において、「東京電力ホールディングス株式会社福島第一原子力発電所における多核種除去設備等処理水の処分に関する基本方針」(以下「ALPS処理水の処分に関する基本方針」という。)を決定しました。この基本方針では、安全性を確保し政府を挙げて風評対策を徹底することを前提に、ALPS処理水を海洋放出する方針を公表しました。

その後、直ちに、「ALPS処理水の処分に関する基本方針の着実な実行に向けた関係閣僚等会議」を新たに立ち上げ、ALPS処理水の処分に関する基本方針に定める対策について、政府一丸となってスピード感を持って着実に実行していくとともに、風評影響を受けうる方々の声をお聞きし、その懸念を払拭するべくしっかりと受け止め、必要な追加対策を機動的に講じていくこととしています。

ALPS処理水の処分に関する基本方針の決定以降、福島・宮城・茨城等、各地で開催したワーキンググループをはじめ、自治体や農林漁業者、観光事業者等との意見交換を重ね、これらを踏まえて、2021年8月には「東京電力ホールディングス株式会社福島第一原子力発電所におけるALPS処理水の処分に伴う当面の対策の取りまとめ」(2021年8月24日 第2回ALPS処理水の処分に関する基本方針の着実な実行に向けた関係閣僚等会議決定)を策定し、対策を順次実施するとともに、さらに加速させるため、2021年12月には、対策ごとに今後1年の取組や中長期的な方向性を整理する「ALPS処理水の処分に関する基本方針の着実な実行に向けた行動計画」(2021年12月28日 第3回ALPS処理水の処分に関する基本方針の着実な実行に向けた関係閣僚等会議決定。以下「行動計画」という。)を策定し、この方針に沿って、各対策を進めてきました。

2022年8月30日には、第4回ALPS処理水の処分に関する基本方針の着実な実行に向けた関係閣僚等会議を開催し、行動計画を改定するとともに、ALPS処理水の処分に伴う対策の強化・拡充の考え方をとりまとめました。また、2023年1月13日には、第5回ALPS処理水の処分に関する基本方針の着実な実行に向けた関係閣僚等会議において、行動計画を改定するとともに、具体的な海洋放出の時期は、2023年春から夏頃と見込むと示しました。

2023年8月22日には、第6回廃炉・汚染水・処理水対策関係閣僚等会議、第6回ALPS処理水の処分に関する基本方針の着実な実行に向けた関係閣僚等会議(合同開催)において、行動計画を改定するとともに、現時点で準備できる万全の安全確保、風評対策・なりわい継続支援策を講じており、ALPS処理水の処分に伴う風評影響やなりわい継続に対する不安に対処するべく、今後これらの対応に政府としてALPS処理水の処分が完了するまで全責任を持って取り組むことを確認した上で、海洋放出の開始は同年8月24日を見込むと示しました。その後、同年8月24日にALPS処理水の海洋放出が開始されました。

2023年8月24日の海洋放出以降、2023年度中に計4回の海洋放出が実施されましたが、モニタリングの結果からも、計画どおり安全に放出されていることが確認されています。また、こうしたモニタリングの結果については、一目でわかるマーク形式でモニタリングの結果を表示するウェブサイト6や、関係機関による測定結果をまとめたウェブサイト等により、国内外に対して、透明性高く、わかりやすい情報発信を継続しています(第111-3-1、第111-3-2)。

【第111-3-1】経済産業省ホームページ「ALPS処理水に係るモニタリング」 二次元コード

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【第111-3-1】経済産業省ホームページ「ALPS処理水に係るモニタリング」 二次元コード(ppt/pptx形式:39KB)

資料:
経済産業省作成

【第111-3-2】包括的海域モニタリング閲覧システム(ORBS)での海域モニタリング結果の情報発信例

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【第111-3-2】包括的海域モニタリング閲覧システム(ORBS)での海域モニタリング結果の情報発信例(ppt/pptx形式:308KB)

資料:
東京電力「包括的海域モニタリング閲覧システム7

また、ALPS処理水に係る取組については、2021年7月に日本政府と国際原子力機関(以下「IAEA」という。)が署名したALPS処理水の取扱いに係る協力の枠組みに関する付託事項(TOR)に基づき、IAEAが安全性に係るレビューを実施してきました。IAEA職員及び国際専門家が繰り返し来日し、東京電力の計画及び日本政府の対応について、科学的根拠に基づき厳しく確認するとともに、その結果については、国内外に高い透明性を持って発信されています。2023年6月には、包括的レビューが行われ、同年7月には、IAEAの行ったレビューを総括する「包括報告書」が、IAEAのグロッシー事務局長から岸田総理に手交されるとともに、IAEAから公表されました。包括報告書において、ALPS処理水の海洋放出に対する取組や、東京電力、原子力規制委員会及び日本政府による関連の活動は、関連する国際安全基準に合致しており、ALPS処理水の放出による人及び環境に対する放射線影響は無視できるほどであると結論づけられました(第111-3-3)。

【第111-3-3】グロッシーIAEA事務局長から岸田総理への「包括報告書」の手交(2023年7月4日)

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【第111-3-3】グロッシーIAEA事務局長から岸田総理への「包括報告書」の手交(2023年7月4日)(ppt/pptx形式:463KB)

資料:
首相官邸

同年10月には、海洋放出開始後、初めてとなるレビューが実施されました。2024年1月に公表された報告書では、日本の取組について、関連する国際安全基準の要求事項と合致しないいかなる点も確認されなかったと結論づけられています。日本政府は、引き続き、IAEAのレビューを通じて国際的な安全基準に従った対策を講じ続け、安全確保に万全を期していきます。

加えて、原子力規制委員会は、海洋放出設備が使用開始後も必要な機能を有していること及び認可した福島第一原子力発電所特定原子力施設に係る実施計画に基づき設備の運用が適切に行われていることを継続して確認していくとともに、東京電力に対しては、安全に係る法令等の遵守に加え、緊張感を持った対応を求めることとしています。

また、風評影響を抑制する観点からも、こうした安全性の確保等に関する説明や情報発信に継続して取り組んでいるとともに、国内水産物の消費拡大に向けて、様々なイベントやキャンペーン等を通じ、その安全性や魅力の積極的な発信にも継続して取り組んでいます。

2022年12月には、「三陸・常磐もの」の消費拡大を図る官民連携の枠組みとして、「魅力発見!三陸・常磐ものネットワーク」が設立されました。本ネットワークには、2024年3月末時点で、1,100者以上の企業、全国の自治体、政府関係機関等が参加しています。同年1月22日から同年3月24日には、「三陸・常磐ウィークス(第3弾)」と称して、本ネットワーク参加企業等における社食や弁当の購入等を通じて、約147万食の「三陸・常磐もの」が提供されました。

また、三陸常磐エリアの豊潤な海の幸を多くの方に知っていただき、味わっていただくための施策として、「ごひいき!三陸常磐キャンペーン」を2022年10月から実施しています。全国各地のリテーラーと連携し、販促キャンペーンを拡大するとともに、各種イベントを実施しており、その模様については、全国地上波のテレビや地方紙、全国紙等で掲載されています。2023年12月には、大手コンビニエンスストアのセブン‐イレブン、ファミリーマート、ローソンとのコラボキャンペーンを実施し、三陸・常磐の海の幸を使用した各社オリジナルの商品が発売されました。また、2024年1月には、福島県を中心に展開するスーパーマーケット「マルト」において、ピッツァ職人の大坪善久氏とのコラボレーションによる三陸・常磐ものを使用したオリジナルピッツァが販売されました(第111-3-4)。

【第111-3-4】国内水産物の消費拡大に向けた取組例

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【第111-3-4】国内水産物の消費拡大に向けた取組例(ppt/pptx形式:1,425KB)

資料:
経済産業省作成

ALPS処理水の海洋放出については、欧州や米国、アジア、太平洋諸国等、幅広い国・地域において理解が広がっています。例えば米国では、2023年8月25日に国務省報道官が、「米国は日本の安全で透明性が高く、科学的根拠に基づいたプロセスに満足。日本が引き続き透明性を保ち、IAEAだけでなく地域の利害関係者とも関与していることを歓迎する」との声明を発出しています。英国では、同年8月31日に、外務・英連邦・開発省がALPS処理水の海洋放出についての声明を発出し、日本の対応を「全面的に支持する」としています。同年9月にはEUからも、「日本当局が福島第一原発及び処理水の放出状況について、タイムリーかつ透明性のある形で定期的に最新情報を提供していることを評価する」との声明が出ており、さらに同年8月24日には、太平洋諸島フォーラム(PIF)のプナ事務局長が、「日本によるコミットメントを信頼している」との声明を発出しました。

一方で、ALPS処理水の海洋放出開始以降、一部の国・地域で輸入規制が強化されたことを踏まえ、こうした国・地域に対しては、引き続き、あらゆる機会を通じて日本の取組を丁寧に説明し、科学的根拠に基づかない輸入規制措置の即時撤廃を求めています。

また、前述の輸入規制の強化を踏まえ、全国の水産業支援に万全を期すべく、総額1,007億円の「水産業を守る」政策パッケージや、2023年度補正予算の89億円からなる支援を実施しています。まず、国内消費拡大・生産持続対策として、水産物の一時買取・保管や学校給食等を通じた販路拡大等を支援するとともに、持続可能な漁業継続の実現に向けた支援も行っています。また、輸出先の転換対策として、日本貿易振興機構(JETRO)による海外バイヤーとのビジネスマッチングや、視察・商談ミッション派遣等の支援を実施しています。加えて、加工機器の導入や人材活用、地域の加工拠点の整備を通じた国内加工体制の強化にも取り組んでいます。これらの支援策を講じてもなお損害が生じた場合には、東京電力が適切に賠償を行うよう、国は東京電力を指導しています。

COLUMN

ALPS処理水とは

前述のとおり、2023年8月24日に「ALPS処理水」の海洋放出が開始されました。ALPS処理水を処分することは、福島の復興の前提となる廃炉に向けて不可欠な作業です。本コラムでは、このALPS処理水について、その性質や処分の必要性、安全性の確認等について、解説していきます。

なお、経済産業省のホームページでは、ALPS処理水に関する情報をわかりやすくまとめた特設サイト「みんなで知ろう。考えよう。ALPS処理水のこと8」も開設しています。あわせてご覧ください(第111-3-5)。

【第111-3-5】経済産業省ホームページ「みんなで知ろう。考えよう。ALPS処理水のこと」 二次元コード

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【第111-3-5】経済産業省ホームページ「みんなで知ろう。考えよう。ALPS処理水のこと」 二次元コード(ppt/pptx形式:41KB)

資料:
経済産業省作成

(1)ALPS処理水とは何か

ALPS処理水とは、東京電力福島第一原子力発電所の原子炉建屋内にある放射性物質を含む水について、トリチウム以外の放射性物質を、安全基準を満たすまで浄化した水のことを指します。

2011年3月11日に事故が発生した東京電力福島第一原子力発電所の原子炉建屋内には、事故により溶けて固まった燃料である燃料デブリが残っていますが、水をかけて冷却を続けることで、低温での安定状態を維持しています。しかし、燃料デブリに触れた冷却水は、高い濃度の放射性物質(ストロンチウム、セシウム等)を含んだ汚染水となり、さらに、この水が原子炉建屋に流入する雨水や地下水と混ざり合うことで、日々新たな汚染水が発生しています。

こうして発生する汚染水については、多核種除去設備(ALPS)等を使用して、汚染水に含まれるトリチウム以外の放射性物質を、安全基準を満たすレベルまで浄化する作業が行われています。そして、こうして処理された水のことを、「ALPS処理水」といいます(第111-3-6)。

【第111-3-6】多核種除去設備「ALPS」

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【第111-3-6】多核種除去設備「ALPS」(ppt/pptx形式:112KB)

(2)ALPS処理水の処分の必要性

ALPS処理水は、東京電力福島第一原子力発電所の敷地内で、巨大なタンクの中に貯蔵されています。この巨大なタンクの数は、2024年3月時点で1,000基を超えており、これからより本格化する廃炉作業を安全に進めるために必要な施設を建設するためのスペースを圧迫するおそれがあります。また、「災害発生時の漏えいリスク」や「大量のタンクの存在自体が風評の原因となること」を心配するご意見もいただいています。そのため、ALPS処理水を処分し、タンクの数を減らしていくことは、復興の前提となる廃炉に向けて不可欠な作業です(第111-3-7)。

【第111-3-7】巨大なタンクによる敷地のひっ迫

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【第111-3-7】巨大なタンクによる敷地のひっ迫(ppt/pptx形式:409KB)

資料:
経済産業省作成

(3)ALPS処理水の処分方法

ALPS処理水の取扱いについては、風評影響等の社会的な観点も含めて、専門家が6年以上にわたって議論を重ねてきました。その結果、国内外での実績の有無やモニタリングの容易さ等を考慮し、「海洋放出」が最も確実な手段であると評価されました。その後、公開の場での意見聴取や書面意見の募集等を経て、2021年4月に、政府は海洋放出を行う方針を決定しました。この基本方針の決定以降、1,500回以上の説明を実施するとともに、テレビCMやWEB広告、新聞広告等を全国規模で展開しました。また、個別の国・地域や海外の報道機関への情報提供を含め、国内外に向けて、科学的根拠に基づく透明性の高い丁寧な情報発信を実施してきました。

ALPS処理水の海洋放出に当たっては、トリチウム以外の放射性物質について、安全基準を確実に下回るまで浄化されていることを確認し、取り除くことが困難なトリチウムの濃度についても、安全基準を十分に満たす濃度(1,500ベクレル/L未満9)まで海水で大幅に希釈した上で、処分を行います(第111-3-8、第111-3-9)。

【第111-3-8】ALPS処理のプロセス

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【第111-3-8】ALPS処理のプロセス(ppt/pptx形式:1,747KB)

資料:
経済産業省作成

【第111-3-9】トリチウム濃度の比較

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【第111-3-9】トリチウム濃度の比較(ppt/pptx形式:1,537KB)

資料:
経済産業省作成

また、安全基準を満たしていることについては、東京電力のみならず、客観性・透明性を確保するために、第三者機関である日本原子力研究開発機構(以下「JAEA」という。)も分析を実施し、確認しています。

(4)トリチウムとは何か

ALPSで取り除くことが困難なトリチウムは、水素の仲間(三重水素)であり、自然界にも広く存在する放射性物質です。例えば、私たちの身体の中や、雨水、海水、水道水等にも含まれています。

また、トリチウムが出す放射線のエネルギーは非常に弱く、1枚の紙で遮ることができます。そのため、身体の外にある放射性物質から人が影響を受ける外部被ばくは考えられません。さらに、トリチウムを含んだ水を身体の中に取り込んだ場合も、水と一緒に速やかに体外に排出(10日程度で半分が排出)され、特定の臓器に蓄積することもありません。そのため、身体の中にある放射性物質から人が影響を受ける内部被ばくについても、他の放射性物質と比較し小さいもの(例:トリチウム水の影響はセシウム137の約700分の1)となっています(第111-3-10)。

【第111-3-10】トリチウムの特徴

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【第111-3-10】トリチウムの特徴(ppt/pptx形式:1,984KB)

資料:
経済産業省作成

なお、トリチウムは、世界中の多くの原子力関連施設から、安全基準を守った上で、海に放出されています。これらの施設周辺からは、放出したトリチウムが原因とされる影響は見つかっていません。また、ALPS処理水の処分時のトリチウムの総量の水準(年間22兆ベクレル未満)は、国内外の多くの原子力関連施設からの年間放出量よりも低い水準となっています(第111-3-11)。

【第111-3-11】世界の原子力関連施設のトリチウム年間処分量

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【第111-3-11】世界の原子力関連施設のトリチウム年間処分量(ppt/pptx形式:152KB)

資料:
経済産業省作成

(5)ALPS処理水の海洋放出における安全性の確認

前述のとおり、ALPS処理水とは、トリチウム以外の放射性物質を、安全基準を満たすまで浄化した水のことです。トリチウムについても、安全基準を十分に満たすよう、処分する前に海水で大幅に希釈しています。ALPS処理水の海洋放出は、安全基準を満たしていることを確認した上で実施されるため、環境や人体への影響は考えられません。

IAEA(国際原子力機関)も、ALPS処理水の海洋放出は、「国際安全基準に合致」し、「人及び環境に対する放射線影響は無視できるほどである」と、包括報告書で結論づけています。IAEAによるチェックについては、放出前だけでなく、放出中、放出後まで長期にわたって実施されます。

また、ALPS処理水の海洋放出による人体への放射線影響について、国際的な方法に基づき評価を行ったところ、日常生活で受けている放射線(自然放射線)からの影響と比べても、極めて小さい(約100万分の1から7万分の1)ことが確認されており、安全上の問題はありません(第111-3-12)。

【第111-3-12】ALPS処理水の海洋放出に伴う放射線影響

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【第111-3-12】ALPS処理水の海洋放出に伴う放射線影響(ppt/pptx形式:141KB)

資料:
経済産業省作成

さらに、ALPS処理水の海洋放出の前後で、東京電力に加え、水産庁や環境省、原子力規制委員会、福島県等が定期的にモニタリングを実施し、海水や魚類等の放射性物質濃度に大きな変化が発生していないか確認しています。こうしたモニタリングの結果から、2023年8月の海洋放出の開始以降、これまで計画どおり、安全に放出が行われていることが確認されています。

4.使用済燃料プールからの燃料取り出し

2011年に決定された「東京電力ホールディングス(株)福島第一原子力発電所1〜4号機の廃止措置等に向けた中長期ロードマップ」において、当面の最優先課題とされていた4号機使用済燃料プールからの燃料取り出しについては、2014年12月に、燃料1,535体全てを共用プール等へ移送しました。3号機については、2019年4月から燃料の取り出しを開始し、2021年2月に燃料566体全ての取り出しを完了しました。1号機については、2021年6月から原子炉建屋を覆う大型カバーの設置に向けた作業を実施しています(第111-4-1)。2号機については、2021年8月からオペレーティングフロアの線量低減作業を実施するとともに、2022年6月に燃料取り出し用構台の設置に向けた工事を開始しました。

【第111-4-1】1号機大型カバーの設置

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【第111-4-1】1号機大型カバーの設置(ppt/pptx形式:225KB)

資料:
東京電力の図を基に経済産業省作成

引き続き、2031年内に全号機で取り出し完了することを目標に、安全を最優先に、燃料取り出しに向けた準備作業を進めていきます(第111-4-2)。

【第111-4-2】東京電力福島第一原子力発電所1〜4号機の状況

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【第111-4-2】東京電力福島第一原子力発電所1〜4号機の状況(ppt/pptx形式:200KB)

資料:
経済産業省作成

5.燃料デブリの取り出し

(1)燃料デブリの取り出しに向けた原子炉格納容器内の調査

溶けて固まった燃料である「燃料デブリ」のある1〜3号機の原子炉建屋内は放射線量が高く、容易に人が近づける環境ではないため、遠隔操作機器・装置等による除染や原子炉内の調査を進めています(第111-5-1)。

【第111-5-1】原子力発電所の構造

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【第111-5-1】原子力発電所の構造(ppt/pptx形式:369KB)

資料:
国際廃炉研究開発機構の図を基に経済産業省作成

2019年12月に改訂された中長期ロードマップでは、初号機の燃料デブリの取り出し方法を確定し、2021年内に2号機で試験的取り出しに着手し、その後、段階的に取り出し規模を拡大していくことを示しました。

1号機では、2017年3月に、線量計と水中カメラを搭載したロボットをペデスタル(原子炉圧力容器を支える台座)の外側に投入して、調査を実施しました。調査の結果、1階足場や原子炉格納容器底部において、放射線量や画像データを取得することができ、原子炉格納容器内部の損傷状況や、原子炉格納容器底部の堆積物を確認できました。その後、2022年2月から2023年3月にかけて、前回の調査で確認できた原子炉格納容器底部の堆積物の分布等を把握するため、水中ロボットを投入し、内部調査を実施しました。これまでに、ペデスタル内外に堆積物を、またペデスタル開口部及びペデスタル内の壁面下部ほぼ全周のコンクリート損傷、鉄筋の露出を確認しました(第111-5-2)。

【第111-5-2】原子炉格納容器内部調査装置(水中ロボット)及び調査画像

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【第111-5-2】原子炉格納容器内部調査装置(水中ロボット)及び調査画像(ppt/pptx形式:2,388KB)

資料:
東京電力ホールディングス株式会社

その後、東京電力は、原子力規制委員会の指示を受け、仮にペデスタルが支持機能を喪失し、原子炉圧力容器が沈下した場合の周辺への影響評価、構造上の影響評価を実施しました。その結果、著しい放射線被ばくのリスクを与えることはなく、また、大規模な損壊には至らず原子炉建屋にも影響を及ぼさないと評価しています。

2号機では、2019年2月に、過去の調査装置を改良した伸縮式パイプ型調査装置を原子炉格納容器内に挿入し、堆積物に接触させることで、硬さ等の情報を取得するとともに、小石状の堆積物を掴んで動かせること等を確認しました。現在、数グラムの燃料デブリを採取する「試験的取り出し」に向け、日英の企業が取り出し用のロボットアームの共同開発を進めています。2021年7月には、英国で開発していたロボットアームが日本に到着し、2022年2月より、JAEAの楢葉遠隔技術開発センターにおいて、ロボットアームのモックアップ試験を実施しており、原子炉格納容器内のアクセスルート構築に時間を要することが確認されました。今後は、信頼性確認のための試験を予定しています(第111-5-3)。

【第111-5-3】ロボットアームのモックアップ試験の様子

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【第111-5-3】ロボットアームのモックアップ試験の様子(ppt/pptx形式:693KB)

資料:
東京電力ホールディングス株式会社

現場では、2023年10月に、原子炉格納容器内につながる貫通孔のハッチを開放し、2024年1月からは貫通孔内の堆積物の除去作業を開始しました。低圧水での除去作業の結果、貫通孔下部の堆積物とケーブル類が動いていない状況でしたが、高圧水により、泥状の堆積物についてはほぼ除去できています。引き続き、アブレイシブウォータージェットでの除去作業を実施しています(第111-5-4)。

【第111-5-4】2号機原子炉格納容器内部につながる貫通孔内の堆積物除去の状況(2024年1月31日)

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【第111-5-4】2号機原子炉格納容器内部につながる貫通孔内の堆積物除去の状況(2024年1月31日)(ppt/pptx形式:561KB)

資料:
経済産業省作成

こうした状況を踏まえ、早期かつ確実に燃料デブリの性状把握を行うべく、まず、過去に使用実績があり、堆積物が完全に除去しきれていなくても投入可能なテレスコ式の装置を活用し、その後、ロボットアームによる原子炉格納容器内部調査と燃料デブリの採取を実施していく方針です。試験的取り出しの着手時期としては、遅くとも2024年10月頃を見込んでいます。

3号機では、原子炉格納容器内の水位が高く、1階足場及び原子炉格納容器底部が水中下にあるため、2017年7月に、水中遊泳ロボットによる調査を行いました。ペデスタル内側の1階足場及び原子炉格納容器底部を調査した結果、原子炉圧力容器の直下の部品(CRDハウジング支持金具)が複数箇所損傷していることや、ペデスタル内側の原子炉格納容器底部に、落下したと思われる1階足場の金具や炉心部の部品のほか、燃料デブリの可能性がある溶融物等を確認することができました。

2023年3月からは原子力損害賠償・廃炉等支援機構が設置した小委員会において、3号機における将来の大規模な取り出しに向けた工法について、本格的な検討を開始しました。従来から議論されている工法(気中工法、冠水工法)に加え、新たな工法(充塡材で固化・安定化して取り出す工法)についても検討し、2024年3月8日に、当該委員会の報告書を原子力損害賠償・廃炉等支援機構が公表しました。今後、東京電力は報告書の提言に基づき、気中工法と気中工法オプション(充塡固化工法)の組み合わせによる具体的な設計検討を進めていきます。

なお、いずれの調査においても、周辺環境に影響は生じておらず、放射線モニタリングデータに有意な変動は見られていません。

(2)廃炉に向けた研究開発

廃炉に関する技術基盤を確立するための拠点整備も進めており、2016年4月には、楢葉町において、遠隔操作機器・装置の開発・実証施設(モックアップ施設)であるJAEAの「楢葉遠隔技術開発センター」が、本格運用を開始しました(第111-5-5)。

【第111-5-5】モックアップ施設である楢葉遠隔技術開発センターと試験設備

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【第111-5-5】モックアップ施設である楢葉遠隔技術開発センターと試験設備(ppt/pptx形式:777KB)

資料:
国際廃炉研究開発機構

2017年4月からは、富岡町において、国内外の英知を結集し、廃炉に係る基礎的・基盤的な研究開発や人材育成に取り組む拠点として、「廃炉国際共同研究センター(現:廃炉環境国際共同研究センター)国際共同研究棟」を運用しています。

2018年3月には、大熊町において、燃料デブリや放射性廃棄物等の分析手法、性状把握、処理・処分技術の開発等を行うJAEAの「大熊分析・研究センター」の一部施設が運用を開始しました。さらに、同センターを活用した分析実施体制の構築に向けた整備も進めており、2022年6月には、放射性廃棄物等の分析を行う第1棟が竣工しました。現在は、燃料デブリ等の分析を行う第2棟の建設準備を行うとともに、認可に向けて、原子力規制庁の審査を受けています(第111-5-6)。

【第111-5-6】燃料デブリや放射性廃棄物等の処理・処分技術の開発等を行う大熊分析・研究センター

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【第111-5-6】燃料デブリや放射性廃棄物等の処理・処分技術の開発等を行う大熊分析・研究センター(ppt/pptx形式:986KB)

資料:
日本原子力研究開発機構(JAEA)

また、研究開発の実施に当たっては、有望な技術を有する海外企業も参画できるようにする等、国内外の英知を結集するための取組も進めています。2015年度以降は、燃料デブリの取り出しのための基盤技術等の研究開発に、海外企業も参加しています。

6.廃棄物対策

東京電力福島第一原子力発電所の廃炉に伴い発生する固体廃棄物は、物量が膨大かつ多種多様な性状を有しているため、安全かつ合理的な保管・管理を徹底することが求められます。

固体廃棄物の適切な保管・管理を行うため、東京電力は、2016年3月に、今後10年程度の廃棄物の発生量を予測した「東京電力ホールディングス(株)福島第一原子力発電所の固体廃棄物の保管管理計画」(以下「保管管理計画」という。)を策定し、進捗状況等に応じて、毎年度改訂しながら、固体廃棄物貯蔵施設・減容施設の整備や焼却炉による減容処理等、廃炉工程を進める上で増加する廃棄物を適切に保管・管理するための取組を進めています。2023年11月に改訂された保管管理計画においては、国の中長期ロードマップの目標である「2028年度内までに、水処理二次廃棄物及び再利用・再使用対象を除く全ての固体廃棄物(伐採木、ガレキ類、汚染土、使用済保護衣等)の屋外での保管を解消し、作業員の被ばく等のリスク低減を図る」ために必要な取組等が定められています。

また、廃棄物の処理・処分の検討を進めていくためには、廃棄物の核種組成、放射能濃度等を分析することが必要ですが、事故炉である東京電力福島第一原子力発電所は、廃棄物の物量が多く、核種組成も多様であることから、分析試料数の増加に対応しながら、分析を進めていくことが重要です。今後、中長期ロードマップで定める初号機の燃料デブリ取り出し開始以降からの第3期を目前に控え、廃棄物の分析体制の強化は重要な課題の1つです。東京電力は、今後の廃炉を効率的に進めるために必要な分析対象物と分析数を年度ごとに見積もった「東京電力福島第一原子力発電所の廃止措置等に向けた固体廃棄物の分析計画」を、2024年3月に公表しています。この分析計画を着実に実行していくため、政府、東京電力、原子力損害賠償・廃炉等支援機構、JAEA等の関係機関の連携の下、必要となる「分析人材の育成・確保」、「施設の整備」、「分析を着実に実施していくための枠組みの整備」等、分析体制の強化のための取組を進めています。この分析計画及び分析体制整備に必要な対応については、今後の分析作業の進捗や得られたデータに基づく検討を踏まえ、不断に見直しを行っていく予定です。

7.労働環境の改善

長期にわたる東京電力福島第一原子力発電所の廃炉作業を円滑に進めていくためには、作業に従事するあらゆる方々が安心して働くことができる環境を整備することが重要です。

事故の直後には、発電所構内全域において全面マスクと防護服の着用が必要であり、全面マスクについては、装着すると息苦しい、作業時に同僚の声が聞こえづらいといった課題が、防護服については、動きづらい、通気性がなく熱がこもるといった課題がありました。これらは、作業時の大きな負担になるとともに、安全確保に当たっての課題にもなっていました。また、食事については、十分な休憩スペースもなかったことから、冷えたお弁当を床に座って食べるというような環境でした。

そのため、東京電力は、発電所内の労働環境改善に継続的に取り組んできました。例えば、除染・フェーシング作業による環境線量低減対策を行うことで、全面マスクと防護服の着用が不要なエリアは、構内面積全体の96%まで拡大しました。1〜4号機を俯瞰する高台については、マスクなしでの視察が可能となる運用を開始しています。また、ヘリポートを設置して搬送時間を短縮したことで緊急時の医療体制を強化する等、健康管理対策についても充実してきました。さらに、食堂、売店、シャワー室を備え、一度に約1,200人を収容可能な大型休憩所を設置しました。食堂では、発電所が立地する大熊町内の大川原地区に設置した福島給食センターにおいて地元福島県産の食材を用いて調理した、温かくて美味しい食事を提供しています。長期にわたる廃炉作業を着実に進めていくため、今後も引き続き、安全でより良い労働環境の整備に努めていきます(第111-7-1)。

【第111-7-1】構内面積96%まで拡大した一般作業服等エリアと1,200人を収容可能な大型休憩所

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【第111-7-1】構内面積96%まで拡大した一般作業服等エリアと1,200人を収容可能な大型休憩所(ppt/pptx形式:1,027KB)

資料:
経済産業省作成

なお、2023年5月8日に、国内における新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置づけが「2類相当」から「5類」に移行しましたが、発電所内では、マスク着用の継続や時差出勤の奨励等、一部の感染拡大防止対策を引き続き実施してきました。同年10月に入り、職場内での感染状況が減少傾向で推移してきたことから、同月末をもって感染拡大防止対策は廃止し、同年11月1日以降は、個人の判断で対策を行うこととなりました。引き続き、基本的な感染症対策(体調不良時の医療機関受診、換気、3密回避、こまめな手洗い等)を一人一人が適切に実施し、安全最優先で廃炉作業に取り組んでいきます。

なお、東京電力福島第一原子力発電所において、2023年10月に発生した洗浄水飛散に伴う身体汚染の事案や、2024年2月に発生した第二セシウム吸着装置を設置する建屋における水の漏えい事案を踏まえ、経済産業省から東京電力に対し、廃炉作業において安全確保に万全を期すよう、指導しています。

8.国内外への情報発信

長期にわたる廃炉作業は、帰還・復興が進展する周辺地域において、住民の安心・安全に深く関わるものです。また、今もなお、風評被害が根強く残っています。このため、国内外に対して東京電力福島第一原子力発電所の現状についてわかりやすく正確な情報を発信するとともに、地域・社会の不安や疑問に答えていくことが重要です。

地元を中心とする国内への情報発信としては、周辺地域の首長や関係団体等が参加する「廃炉・汚染水・処理水対策福島評議会」を開催し、廃炉・汚染水・処理水対策の進捗をお伝えしているほか、対策の進捗をわかりやすく伝え、様々な不安や疑問にお答えしていく動画・パンフレットの作成等にも取り組んでいます(第111-8-1)。また、情報発信に際しては、双方向のコミュニケーションを意識しており、住民に東京電力福島第一原子力発電所を視察いただき、その中で感じた疑問に直接お答えする視察・座談会の取組や、地元でのイベントへの廃炉関連ブースの出展、コンテンツ制作における地元の方々の意見の事前聴取・内容への反映等の取組を進めています。東京電力も、2018年11月に、「東京電力廃炉資料館」を富岡町において開館し、事故当時の状況や廃炉・汚染水・処理水対策に関する情報発信を行っています。

【第111-8-1】動画やパンフレット等のコンテンツ

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【第111-8-1】動画やパンフレット等のコンテンツ(ppt/pptx形式:714KB)

資料:
経済産業省作成

また、国際社会とのコミュニケーションとしては、オーストリア・ウィーンで開催されるIAEA総会において、サイドイベントを開催しており、直近では、2023年9月に東京電力福島第一原子力発電所の廃炉及び福島の復興に係るサイドイベントを対面形式で開催しました。東京電力福島第一原子力発電所における廃炉や福島の復興の進捗状況等の取組を紹介するプレゼンテーションやQ&Aセッションを通じて、参加者に対し、理解の促進を図りました。

さらに、原子力発電施設を有する国との二国間関係についても、政府や産業界等の各層において協力関係を構築しており、継続的に情報交換を行っています。また、在京外交団等や特に関心を有する国・地域に対して、廃炉・汚染水・処理水対策の現状及びALPS処理水の海洋放出に係る対策の進捗等について、累次にわたって説明する機会を設けているほか、IAEAや様々な国際会議における説明、政府のホームページにおける情報提供等も実施しています。また、国内外の報道関係者に対しても説明を実施しています。

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本ロードマップは、2011年に決定された「東京電力(株)福島第一原子力発電所1〜4号機の廃止措置等に向けた中長期ロードマップ」(2011年12月21日 原子力災害対策本部政府・東京電力中長期対策会議決定)を継続的に見直しているものであり、廃炉措置等に向けた取組の基本方針です。
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ALPS:Advanced Liquid Processing Systemの略。
6
https://www.meti.go.jp/earthquake/nuclear/hairo_osensui/shirou_alps/monitoring/
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https://www.monitororbs.jp/ja/index.html
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https://www.meti.go.jp/earthquake/nuclear/hairo_osensui/shirou_alps.html
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このトリチウムの濃度は、国の安全基準の40分の1、世界保健機関(WHO)の飲料水基準の約7分の1となります。