はじめに 1-1

日本のエネルギー政策全体の大きな転換点となった東日本大震災と東京電力福島第一原子力発電所の事故の発生から13年が経過しました。「ALPS処理水1」の海洋放出の開始や、「特定復興再生拠点区域2」の全域における避難指示解除の完了、「特定帰還居住区域3」制度の創設等、福島の復興・再生は、一歩一歩着実に進展していますが、福島の復興には中長期的な対応が必要です。政府としては、引き続き、被災地の実態を十分に踏まえ、地元との対話を重視しつつ、施策の具体化を進め、復興に向けた道筋をこれまで以上に明確にしていきます。

本章では、第1節で、東京電力福島第一原子力発電所の廃炉・汚染水・処理水対策について、予防的かつ重層的な汚染水対策に関する取組や、2023年8月から海洋放出を開始したALPS処理水に関する取組、調査ロボットの投入等により徐々に進展しつつある炉内調査をはじめとする廃炉に向けた取組等の状況について記載しています。第2節では、原子力被災者への支援について、避難指示解除の状況や、特定復興再生拠点区域・特定帰還居住区域の整備、除染の実施状況に加え、産業復興の観点から、福島イノベーション・コースト構想(以下「福島イノベ構想」という。)の推進に向けた施策、被災事業者の事業・なりわいの再建支援に関する取組等について記載しています。第3節では、福島を再生可能エネルギー(以下「再エネ」という。)や未来の水素社会を切り拓く「先駆けの地」として、新たなエネルギー社会を先取りするモデルの創出拠点とする「福島新エネ社会構想」について記載しています。第4節では、原子力損害賠償について、この13年間での実績・進展等を記載しています。

1
2021年4月13日の「東京電力ホールディングス株式会社福島第一原子力発電所における多核種除去設備等処理水の処分に関する基本方針」の決定を機に、風評被害の防止を目的に、「ALPS処理水」の定義を変更し、「トリチウム以外の核種について、環境放出の際の規制基準を満たす水」のみを「ALPS処理水」と呼称することとしました。
2
将来にわたって居住を制限するとされてきた「帰還困難区域」内に、避難指示を解除して居住を可能とするものとして定められる区域のこと。
3
特定復興再生拠点区域外において、避難指示解除による住民の帰還及び当該住民の帰還後の生活の再建を目指す区域のこと。