新法施行後、「洋上風力発電」に向けた動きは今どうなっている?

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2030年のエネルギーミックスでは、1,000万kWの導入(電源構成比率1.7%)が見通されておりこれからの普及が期待される風力発電。2019年4月に新しい法律が施行されたことで、日本でも洋上風力発電の利用拡大に向けた取り組みが進みはじめました(「日本でも、海の上の風力発電を拡大するために」参照)。法施行後、洋上風力発電はどのような状況になっているのかをお伝えしましょう。

新しい法律で、洋上風力発電の整備が進めやすく

日本の電源(電気をつくる方法)構成比率のうち、風力発電の占める割合は0.7%です(2018年度速報値)(「これからの再エネとして期待される風力発電」参照)。ヨーロッパでは、風力発電は広く普及し、有望な電源として期待されていますが、日本では、さまざまな課題があり、太陽光発電にくらべると、それほど広く普及していませんでした。

その理由のひとつとして、日本の国土は山がちで、陸上で発電所を立てられる場所が限られていることが挙げられます。それなら海に風車を設置して発電する「洋上風力発電」はどうかというと、こちらは海域の占用に関するルールの問題や、漁業関係者や船舶運航事業者など、海域を先行的に利用している人々との利害調整の必要などがあり、これが事業実施への課題となっていました。

しかし、「海洋再生可能エネルギー発電設備の整備に係る海域の利用の促進に関する法律(再エネ海域利用法)」が2019年4月から施行されたことで、それらの課題が整理され、今後は事業を適切な調整を経て進めることができるようになると期待されています。では、洋上風力発電の整備に向けたプロセスはどのように進められているのでしょうか。

洋上風力発電の区域選びから整備開始までのフロー

「再エネ海域利用法」に基づく、洋上風力発電設備の整備に向けた手続きは以下のようにおこなわれることになりました。

再エネ海域利用法の概要
洋上風力発電設備の整備に向けた手続きを、手順ごとに図で示しています。

※電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法第9条に基づく経済産業大臣による発電事業計画の認定

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上の図のように、経済産業大臣と国土交通大臣が、洋上風力発電に適した「促進区域」を指定します(年1回程度)。その後、公募によりもっとも適切な事業者を選定し、その事業計画の認定がおこなわれます。最後に、選定された事業者は、その海域を利用するための「占用許可」や、再エネ由来の電力をあらかじめ決まった価格で買い取る「固定価格買取制度(FIT)」の認定の取得に進みます。

「促進地域」に指定されるには、6つの指定基準をクリアする必要があります。たとえば、風の吹き方(風況)や水深といった自然的条件が指定基準のひとつとなっています。

日本全国の海域の風況(NeoWins 高度100m)
日本全国の海域の風況を、地図上で年平均風速ごとに色分けをしてあらわしています。

日本全国の海域における風況をあらわしたマップ(NEDO「NeoWins」上で高度100mとして表示)

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こうした風況や水深といった自然的条件に加え、海域を往来する船舶への影響や、漁業への支障がないか、またある程度の発電量(出力量)が見込まれるかなどによって、総合的に判断されます。

2019年7月、この「促進地域」の指定に向け、一定の準備段階に進んでいる11区域が整理されました。そのうち4つについては、「有望な区域」として協議会の設置などにただちに着手することとしました。

リストアイコン 秋田県能代市、三種町および男鹿市沖
リストアイコン 秋田県由利本荘市沖(北側・南側)
リストアイコン 千葉県銚子市沖
リストアイコン 長崎県五島市沖

関係者による協議の場として「協議会」を設置

これらの区域では、政府によって、⾵況・地質・船舶の航⾏など必要な調査がおこなわれています。また、政府や自治体、海域の先⾏利用者などをメンバーに含めた協議会が開催されています。

洋上風力発電は、海域を利用することによる漁業などへの影響はもちろん、部材の多さや事業規模の大きさから、地元経済にも大きな影響をあたえることが予想されます。こうしたことから、洋上風力発電の実施にあたっては、協議会を通じて、関係者との調整の場を設けることが必要なのです。

各区域では、2019年10月からすでに1~2回ほど協議会が開かれています。10月8日、初めての協議会をおこなった秋田県由利本荘市沖協議会では、経済産業省、国土交通省、農林水産省などの各省庁や、地元の自治体(県・市)、漁業組合、旅客船協会、有識者などの人々が参加しました。協議会では、漁業と共存共栄する洋上風力発電の進展を待ちのぞむ声や賛成の声がきかれる一方で、発電施設から発生する音などの影響に対する地域住民の不安の声が紹介されました。また、洋上に風車があると雷の影響を受けやすくなるのではといった声も出ました。

ほかの区域で開かれた協議会においても、多くの意見が出されています。地元企業の活用や雇用の創出などの地域振興につながるという賛成意見のほか、台風など自然災害による影響、海域の環境や漁業資源への影響などの意見が出されています。

大事なのは、議論を続け、ともに考えていくこと

協議はこれからも引き続きおこなわれ、最終的に利害関係者を含めた合意を得たのちに、区域指定の案について一般の人々に広く周知されます(公告)。公告後、これらの案は、法律に基づく一定の期間中であれば誰もが自由に確認することができる状態におかれ(縦覧)、利害関係者は意見を提出することができます。これらの意見と、さらに関係行政機関や都道府県、協議会の意見を確認して、最終的に促進区域が指定されます。

このように、洋上風力発電の整備にともなう一連のプロセスでは、利害関係者が意見を述べる機会がしっかりと設けられています。また、協議会の資料や議論した内容については、資源エネルギー庁や国土交通省港湾局のホームページでも公開しており、協議会も公開でおこなうとともに、協議会には地元のメディアも取材に入っています。

洋上風力発電を、⽇本でどのように利用していくか。私たちひとりひとりが、こうした情報に触れながら、継続的に考えていくことが必要です。

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