住宅用太陽光発電にせまるFIT買取期間の満了、その後どうする?

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再生可能エネルギー(再エネ)を、電力会社があらかじめ決められた価格で買い取る「固定価格買取制度」(FIT)。FITは、太陽光発電など再エネの拡大に役立ってきましたが(「FIT法改正で私たちの生活はどうなる?」参照)、その先駆けとなる太陽光発電の余剰電力買取制度(2009年11月スタート)では、買取期間が「10年間」と設定されていて、2019年の秋以降、買取期間の満了をむかえる太陽光発電が出始めます。買取期間が満了するとどうなるのか、どのような対応をすればいいのか、あらためて整理してみました。

2019年11月から買取期間が順次満了

固定価格での買取開始から10年間を経過して買取期間が満了する住宅用太陽光発電の数は、2019年の11月・12月だけで約53万件となります。累積では、2023年までに約165万件・670万kWの太陽光発電が、FITを卒業する見込みです。

FITを卒業する住宅用太陽光発電の推移を表したグラフです。

(出典)費用負担調整機関への交付⾦申請情報、設備認定公表データをもとに作成。⼀部推定値を含む

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しかし、一般的に、太陽光パネルは20~30年間、あるいはそれ以上発電ができるものだとされています。たとえ国の制度に基づく10年間の買取期間が満了した後でも、発電自体は続けることができるのです。

太陽光発電には、温室効果ガスを排出しない、国内で生産でき、エネルギー安全保障にも寄与できるなど、さまざまなメリットがあります。そうしたことから、買取りが終了した後も、自立的な電源として発電していくことが期待されています。

買取期間満了後の住宅用太陽光発電、どうする?

では、買取期間が満了した住宅用太陽光発電について、その後どのような使い方が考えられるのでしょうか?それには2つの選択肢があります。

ひとつは、電気自動車や蓄電池などと組み合わせて、自宅などの電力として使う方法、つまり自家消費です。

もうひとつは、それぞれの家庭と小売電気事業者などが、個別に交渉して契約を結び(相対・自由契約)、余った電力を売電する方法です。すでに買取期間満了まで1年を切り、買取期間満了後の買取りをおこなうことを表明する事業者や、さらには具体的な買取メニューを発表する事業者も出始めました。

こうした余った電力の自由売電がスムーズに進めば、FIT制度がなくても継続できる再エネ事業のビジネスモデルの先駆けが構築できるかもしれません。ただ、住宅用太陽光発電の設置者は、電気の供給者であると同時に、一般の消費者でもあります。買取期間満了後にどのような選択肢や対応があるのか、たくさんの情報を集めることは難しく、企業などを相手に交渉する力も持っていません。

また、どの世帯が、いつ買取期間満了をむかえるかという情報は、設置している住宅の住民と、今現在FIT制度で買取りをおこなっている事業者(大手電力会社)以外の、第三者である事業者(今後、自由契約での買取りに乗り出す事業者など)には把握することができません。これでは、競争面において不公平が生まれるという声もあります。こうした課題を解決するために、買取期間満了に向けて、さまざまな対策が進められています。

買取期間満了に向けた対応とスケジュール

買取期間満了に向けては、政府機関や現在大多数のFIT認定電源の買取事業者となっている大手電力会社、FIT卒業後の太陽光発電の余剰電力の買取りを希望する事業者など、それぞれが適切な時期に、必要な対応をおこなっていくこととなっています。

情報提供サイトの設置や広告で情報を広く伝える

資源エネルギー庁では、太陽光発電を設置する各家庭にこのことを知ってもらおうと、2018年10月から本格的な広報活動を展開しています。制度に関する情報提供をおこなう専用サイト「どうする?ソーラー」を設置するとともに、全国の新聞に告知のための広告を掲載しました。今後も、Web広告や各種イベントなどを多面的に実施していく予定です。

詳しく知りたい
どうする?ソーラー

また、制度移行にともなって生じる可能性がある消費者トラブルについては、消費者庁や電力・ガス取引監視等委員会とも連携して対応していきます。

大手電力会社による買取メニューの発表

現在、住宅用太陽光発電の余剰電力は、基本的に大手電力会社(旧一般電気事業者)が買い取っています。太陽光発電を設置している家庭が、買取期間満了後にどのような使い方をしていくか検討するためには、なるべく早めに、新たな「買取メニュー」を提案することが必要です。

じゅうぶんな検討期間をもうけるという観点から、すでに、各大手電力会社は2019年4月~6月末までに、新たな買取メニューを発表することを公表しています。また、公平な競争を促す観点から、大手電力会社による契約締結は、2019年4月以降に新たな買取メニューが発表されてから解禁されることとなり、4月以前に契約することはできません。こうした大手電力会社の動きを見ながら、他の事業者も、自由契約での余剰電力の買取りや蓄電池・電気自動車などの売り込みに向けた、具体的な動きに出てくるものと考えられます。

さらに、買取期間が満了する家庭には、現在余剰電力を買い取っている事業者から、期間満了をむかえる6ヶ月~4ヶ月前に、個別通知が届くことになっています。この通知には、買取期間満了後にさまざまな選択肢があることや、買取期間満了後に何も対応をおこなわない場合はどうなるかなどについてもお知らせすることになっています。

買い取る事業者に公平な競争を促すために

買取期間の満了時には「とりあえずこれまでと同じ買取先にしよう」と考える消費者が一定数いると思われます。また、現在の買取事業者以外は、太陽光発電設備を設置している世帯のうち、どの世帯でFITによる買取期間が満了するのか正確に把握することができないため、現在買取りをおこなっている大手電力会社はほかの事業者より優位な立場にあるといえます。そこで、大手電力会社については、契約の解除を著しく制限するような契約は結ばない(たとえば、少なくとも買取期間満了後に締結する最初の買取契約においては、違約金を設定しない)など、営業活動や契約に一定の制約をもうけることになっています(再生可能エネルギー大量導入・次世代電力ネットワーク小委員会 中間整理(第2次)(P27アクションプラン(3))(PDF形式:2.78MB)参照)。

住宅に設置された太陽光パネルは、改築・解体などで撤去されるまで、設備を維持して発電し続けることができます。エネルギー基本計画に目標として記された、「再エネの主力電源化」の実現に向けて、固定価格での買取期間が満了をむかえた電源を活用した新たなビジネスが生まれる環境を整えることで、より多くの太陽光発電設備が自立的な電源として継続して稼動することが望まれています。そのためにも、それぞれの家庭が太陽光発電の使い方を考え、積極的に選択していただくことが期待されているのです。

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