【インタビュー】「分散型電源の強みを活かして、太陽光発電は次なるステージへ」―平野敦彦 氏(後編)

平野敦彦氏

太陽光発電協会代表理事、平野敦彦氏のインタビュー。前編「“主力電源化”をめざす太陽光発電のコミットメント」に続き、後編では電力系統への接続問題や、2018年10月以降数回にわたっておこなわれている九州での出力制御、そして出力制御を回避する将来の展望などについてうかがいます。

系統接続の短期的課題はクリアに

―前編では、再生可能エネルギー(再エネ)を主力電源化していくためにも解決が必要な課題について、現在協会として進めておられる取り組みや、今後の戦略などをうかがいました。もうひとつ、再エネにおいては、電力系統(送電網)に空き容量がないため、発電した電力を系統に接続できないという問題がありますね。

平野 そうですね。そこで我々協会は、ながらく、「日本版コネクト&マネージ」の導入を申し入れてきました。

「日本版コネクト&マネージ」とは、電力ネットワークの空き容量を柔軟に運用していこうという考えかたです。その一つが、従来、日本の電力ネットワークにおいては、停電のリスクに備えて、ネットワークの半分の容量を原則空けておくというようなルールで運用されていました。しかしこのうちの一部を利用できるようにし、運用容量を拡大したのです。既存の系統を効率的に運用するため、系統を新設する方法と比べると、コスト面においても即効性においても大きなメリットがあります(「送電線『空き容量ゼロ』は本当に『ゼロ』なのか?~再エネ大量導入に向けた取り組み」参照)。

こうした取り組みが政府主導の下進められることで、短期的には系統への接続問題は解決に向かうと考えています。とはいえ、中長期的な見通しについては、今後さらに検討を重ねなければならないでしょう。

需給一体型の早期実現が、出力制御を回避するカギに

―再エネと系統への接続については、容量の問題とは別の課題も指摘されています。太陽光発電や風力発電のような再エネは、気象によって出力の変動があり、コントロールが難しい面があります。そのため、たとえば電力需要が少ない時に太陽光発電から系統へ多くの電気が供給されてしまうようなことが起これば、需要と供給が見合わず、電圧や周波数が乱れて系統全体が不安定化したり、場合によっては大規模な停電を招く恐れもある、という問題です。この点についてはどのような対策をお考えですか?

平野敦彦氏

平野 まずは、気象条件や過去の需給データをもとに、太陽光発電の出力変動や需要の変動に関する予測の精度を向上させることが重要です。翌日の需給状況が高い精度で分かれば、電力会社の送配電部門は、翌日に備えて十分に準備が出来るからです。

たとえば、必要な火力発電や揚水発電をスタンバイさせておく、連系線で隣接する電力エリアに電気を送る準備をしておくなどのことが考えられます。それでも、発電量が需要を上回り、需給バランスが保てない懸念がある場合には、再エネを使った発電施設の出力を制御することで、系統の不安定化を未然に防ぐことができます。九州電力が2018年10月におこなった太陽光発電の出力制御がまさにそれです。

再エネを使った発電施設がFITの認定を受ける際、事業者は「年間30日の出力制御」とった条件に同意して契約しており、今回の出力制御についても、我々太陽光発電事業者はもともと想定していました。九州電力は、事前のルールにしたがった適切な措置をおこなったと考えています(「再エネの発電量を抑える『出力制御』、より多くの再エネを導入するために」参照)。

とはいえ、せっかく発電した電力を使わないのはもったいないこと。出力制御はしないに越したことはありません。これからは系統全体でどうバランスをとっていくのか、しっかりと議論し、必要な投資はおこなっていくべきでしょう。

また、太陽光発電は必ずしも既存の電力系統に依存する必要のない「分散型電源」として利用できるという強みがあります。「“主力電源化”をめざす太陽光発電のコミットメント」でもお話しした通り、工場内の太陽光発電でつくった電力を工場内で使うという「自家消費型モデル」を拡大していくことも、ひとつの効果的な方法です。このあたりのPRも必要だと認識しています。

さらに今後は、限られた地域内で供給予測に合わせて需要側が使うエネルギー量を調整するなどの「需給一体型」再エネ活用モデルを普及させることができれば、太陽光が系統の不安定化を呼ぶ懸念も薄れるものと期待しています。ただし需給一体型となると、蓄電池の技術向上とコスト低減が大きなテーマになってきます。今までは「グリッドパリティ」、つまり太陽光の発電コストを既存の電力コストと同等かそれ以下にすることをめざしてきましたが、これからは発電と蓄電を合わせたコストを既存電力並みに下げることが必要です。そのためにも、コスト低減につながるよう、発電+蓄電池の大規模な需要を喚起しなければなりません。

平野敦彦氏

需要喚起の新たな提案をする企業連携も始まっています。屋根とカーポートに設置した太陽光発電でつくった電力を、電動車のバッテリーに蓄電し、必要な時に住宅へ供給するという「スマートハウス」はその一例。ハウスメーカー、自動車メーカー、住宅建材メーカー、太陽光パネルメーカーの連携により実現可能となったしくみです。太陽光発電設備など一連のシステムは顧客にリースで提供することが考えられているため、ホームオーナーは初期費用ゼロでグリーンエネルギーを導入でき、災害時には非常用電源としても使うことができます。ホームオーナーが得られるメリットが大きく、導入のハードルも低いため、一気に普及させたいと考えています。

先日、経済産業省が「『需給一体型』再エネ活用モデルの環境整備」を明確に打ち出したこともあり、民間やアカデミアの取り組みも加速するでしょう。「需給一体型」再エネ活用モデルは、政府の思惑より早く実現できるものと予想しています(「総合資源エネルギー調査会 再生可能エネルギー大量導入・次世代電力ネットワーク小委員会‐中間整理(第2次)」参照)。

安心安全と脱炭素化、ダブルの価値を世に問いたい

―太陽光発電の災害時の非常用電源としての強みは、先の北海道胆振東部地震の際にも話題になりましたね。

平野 太陽光発電が再エネの中でもとりわけ特徴的なのは、分散型の発電システムであり、発電の最小単位が各戸単位であること。つまり震災や停電の際に、各家庭は既存の電力系統に頼ることなく、自身で電源を得られるのです。住宅の太陽光発電の場合、コンセントひとつ分の電気を供給できます。北海道胆振東部地震の後に協会が実施した緊急アンケートでは、太陽光パネル設置世帯の実に8割以上が「自立運転モード」に切り替え、ライフラインともいえる携帯電話の充電に使ったと答えています。冷蔵庫を冷やし、庫内の食品を腐らせずに済んだという声もありました(太陽光発電協会「災害時における太陽光発電の自立運転についての実態調査結果」参照)。

また、持ち運べばすぐに電源として活用できるという簡便性も利点です。東日本大震災の際には、各太陽光パネルメーカーが避難所に緊急対応で太陽光モジュールを設置し、電源の提供に努めました。今後は、平時のうちに自治体が避難所指定場所に太陽光発電設備を整えておき、日常的に活用しつつ、災害時には非常用電源として活用するという方向が望ましいと考えています。

緊急時にも安心安全であり、CO2の排出がないというダブルの価値は、他の電源にはない特徴と言えます。我々もハウスメーカーなどと協力し、この価値を消費者にしっかりとアピールしていきたいと思っています。

平野敦彦氏

―課題をひとつひとつクリアしつつ、太陽光発電ならではの強みを活かし、主力電源化のありかたを模索しておられることがよくわかりました。ありがとうございました。

プロフィール
平野 敦彦(ひらの あつひこ)
1985年、昭和シェル石油株式会社入社。2009年、昭和シェルソーラー株式会社(現:ソーラーフロンティア株式会社)取締役就任、2014年より代表取締役社長。2017年6月、一般社団法人太陽光発電協会(JPEA)代表理事に就任。

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