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日本ガス協会会長、広瀬道明氏のインタビュー。前編「LNGは環境性・供給安定性・経済合理性のバランスのとれたエネルギー」に続き、後編では、地球温暖化問題、米国のシェールガス、ガス自由化など、ガス業界を取り巻く環境変化への対応と今後の見通しについてうかがいます。
―地球温暖化問題で再生可能エネルギー(再エネ)に対する期待が高まる一方、石炭や石油に対しては逆風が強くなっています。そんな中でLNG(液化天然ガス)はどのような立ち位置にあるのでしょう?広瀬 2005年に発効した京都議定書を契機に、ここ20年ほど、エネルギー産業は環境に対する貢献を求められるようになりました。2018年閣議決定された「第5次エネルギー基本計画」では、2050年の主要電源(電気をつくる方法)に再エネが位置づけられています(「新しくなった『エネルギー基本計画』、2050年に向けたエネルギー政策とは?」参照)。このトレンドは、俯瞰して見れば当然の方向だととらえています。ただ、太陽光発電や風力発電は天候によって発電量が左右されるため、その変動をカバーして需給バランスを調整しないと、停電の恐れがあります。まだ蓄電池が技術開発途上にある中において、当面は、再エネを補完する別の電源が必要です。需給バランスを調整するための電源(調整電源)としては、出力をコントロールしやすい火力発電が適切ですが、そこで求められるのは、できるだけクリーンな燃料であること。燃焼時に排出されるCO2などが石炭や石油に比べて少ない天然ガスは、再エネ普及を支え次世代の環境に貢献するエネルギーであり、この両者は互いになくてはならない“恋人関係”であると考えています。また、将来的に再エネが主力電源になるのは当然としても、再エネ一辺倒で良いかというと、それは違うと思っています。エネルギーには、それぞれ一長一短があり、「脱」や「ALL」で語られるものではないと考えています。エネルギーを安定的に供給するためには、エネルギー源の選択肢を多く持ち、「エネルギーミックス」のポートフォリオに多様性をもたせておくことが肝要です。
―アメリカはシェールガス革命によって、産ガス国の仲間入りをしました(「2018年5月、『シェール革命』が産んだ天然ガスが日本にも到来」参照)。また東南アジアをはじめ、アジアではエネルギー消費がまだまだ拡大し、クリーンエネルギーである天然ガスのニーズも高まっています。供給源や供給先の多様化により、日本のガス業界の立場にも変化がありますか?広瀬 日本のガス業界は、今まさに大きなうねりの中にいるといえます。国内消費の頭打ちが見込まれる中、ガス小売全面自由化がきっかけで、新たなチャレンジが生まれているのです(「実施から1年、何が変わった?ガス改革の要点と見えてきた変化」参照)。たとえば、地方ガス事業者は、活路を“ローカル化”に見出しています。地場の有力企業として地域活性化事業にも乗り出し、地方創生の中心的な役割を果たそうとしているのです。一方、大手ガス事業者は“グローバル化”に活路を見出し、とりわけ東南アジアでの事業を加速させています。東南アジアは人口増加と経済発展が著しく、エネルギーの需要に供給が追い付いていない。そこで、50年間にわたり蓄積した世界最大のLNG消費国としての日本の知見を導入し、東南アジアの経済発展に貢献しようというのです。
これまで、日本は“消費国”として、産ガス国からLNGを調達する立場でした。しかし、これから東南アジアでは新たなビジネススキームを展開していきます。シェールガスの輸出先を開拓したいアメリカと、需要が拡大する東南アジアの両者を、LNG受入基地などのインフラ整備やその運営における技術・ノウハウを持つ日本が仲介するのです。このトライアングルの関係は、三者三様にメリットがあり、うまく機能していくことが期待されていますし、東南アジア・ロシア・日本という別のトライアングルができる可能性も秘めています。もちろん、このスキームは自国に8000万トンという実際の需要がある日本だからこそ可能だという側面もあります。これからの世界のLNG市場取引を日本がリードしていく、という政府の戦略についても、頼もしく感じています。市場の望ましい姿を議論するために2012年から経済産業省が主催している「LNG産消会議」は、産ガス国・消費国の両者が一堂に会する国際会議であり、われわれ事業者にとっても、情報交換や人的ネットワークづくりをするうえで大変有意義な場となっています。2017年の会議では、世耕経済産業大臣がアジア向けに100億ドルの金融支援と500人の人材育成支援を表明され、LNG産業の発展における日本の強いコミットメントが国内外に広く認識されました(「LNGを安定的に供給するための取り組み」参照)。おそらく、あと数年でLNG最大消費国の座は日本から中国に移るでしょう。しかし、日本がこれまでに培ってきた技術・人材・文化には一朝一夕では超えられない強みがあり、これらを市場開拓で発揮することが重要です。LNGの課題としては、売買契約において受入先となるLNG基地(仕向地)が指定され、買主の裁量だけではそれ以外へ変更することができないという「仕向地条項」が付いているものが多いため、第三者への転売による需給調整が難しいことや、市場取引の流動性が低いことなどが挙げられます。今後、われわれは産ガス国に対して新たな市場開拓をサポートしたり、新たな技術を提供したりすることで、LNG産業をさらに発展させるための協調を図りながら、健全な発展のために必要不可欠なLNG市場の柔軟性や透明性の向上を追求していきます。日本政府がリーダーシップを取って毎秋に開催されるLNG産消会議は、こうした対話の絶好の機会であり、真のパートナーと相互が認識できる信頼関係を築いていきます(「産出国と消費国がともに議論する、LNGの今とこれから~『LNG産消会議2018』」参照)。
―最後に、将来的な技術革新の展望についてお聞かせください。
広瀬 当面は再エネとの親和性が高い天然ガスシステムの特性を生かしてCO2削減に貢献しつつも、その天然ガスも化石燃料の一つですので、さらなるCO2削減に向けて取り組む必要があります。例えば、CO2と水素から、天然ガスの主成分であるメタンを合成する「メタネーション」技術。低炭素化社会の早期実現のため、海外での先行事例なども参考にしながら、こうした技術革新が進展していくものと考えています。ガス業界は、ほかのエネルギーとの激しい競争や、時代的・社会的な要請をふまえてチャレンジし、革新を産み出してきました。革新とは、一見突拍子もないアイデアを実現させていく努力にほかなりません。私が好きな言葉に「歴史に学び時代を駆ける」というものがあります。ガス業界の歴史は、約150年間にわたる競争と革新の積み重ねであり、技術開発分野も含め、これからもチャレンジを続けていきます。―ありがとうございました。
長官官房 総務課 調査広報室
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2024年2月発行の「日本のエネルギー」パンフレットに基づき、2023年日本が抱えているエネルギー問題について3回にわたりご紹介します。