2017年、福島の「今」の姿は
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2011年の東日本大震災から6年。福島では復興・再生に向けた取組が着実な進展を見せています。
福島第一原子力発電所(福島第一原発)では、現在、各号機ともに継続的な注水により原子炉は安定的に冷却され、施設からの放射性物質の放出も大幅に抑制された状態が続いています。また、廃炉・汚染水対策についても、「東京電力(株)福島第一原子力発電所廃止措置等に向けた中長期ロードマップ」に基づいて安全かつ着実に進められております。
この春までに、大熊町・双葉町を除き、全ての避難指示解除準備区域・居住制限区域が解除されました。今後、事業・生業や生活の再建・自立に向けた取組をさらに加速させていかなければなりません。
事故から6年が経過した今、廃炉と復興がどのように進んできているのか、改めて振り返ってみましょう。
1.福島第一原子力発電所の「今」
福島第一原子力発電所は、廃炉に向けて着実に進展
大きなリスク源だった4号機の使用済燃料プールの燃料については、2014年12月22日に1,535本全ての取り出しを完了しています。1、2、3号機についても、使用済燃料の取り出しに向け、ダストの飛散防止対策を徹底しながら、ガレキの撤去などを進めています。3号機では、2017年1月から、燃料取り出し用設備の設置作業を開始しました。
また、原子炉内で溶けて固まった燃料(燃料デブリ)の取り出しに向け、ロボットなどの遠隔操作機器や装置を使い、原子炉格納容器内部の調査を行っています。本年も、ロボットなどを用いた以下のような調査が行われ、内部の損傷状況や放射線量データなどの情報が確認・収集されるなど、着実に内部状況が明らかになりつつあります。
- 2017年の主な調査
-
2017年1月~2月
2号機の原子炉圧力容器直下の近くまでカメラやロボットを投入。作業用足場の脱落や放射線量などを確認。 -
2017年3月
1号機に線量計と水中カメラを搭載したロボットを投入。水中における堆積物の状況や放射線量などを確認。 -
2017月7月
3号機に水中遊泳ロボットを投入。燃料デブリの可能性がある溶解物や構造物の破損状況などを確認。
汚染水対策は「3つの基本方針」のもとに進捗
福島第一原発では、原子炉建屋に地下水が流れ込み、燃料デブリを冷却する水と混ざることで、新たな汚染水が発生しています。このため、以下の3つの基本方針に基づき、さまざまな対策を進めています。
1 汚染源に水を「近づけない」
地下水が原子炉建屋に流れ込む前に建屋周辺の井戸(サブドレン)でくみ上げるとともに、多量の地下水が建屋周辺に流れ込むのを防ぐため、建屋周囲に氷の遮水壁(凍土壁)を設置するなどの対策を実施しています。凍土壁の海側は2016年10月に凍結が完了し、山側も約99%で凍結が進んでいます。未凍結としていた一箇所についても、原子力規制委員会の認可を得て、2017年8月22日に凍結を開始しました。さらに、雨水が土壌に浸透して地下水となることを抑制するため、広域的に敷地の舗装を行っています。
こうした対策により、対策実施前は400㎥/日程度だった建屋への地下水流入量は2017年3月時点で120㎥/日程度となり、着実に減少しています。
2 汚染水を「漏らさない」
海側に鋼管製の杭でできた壁(海側遮水壁)を設置するとともに、護岸エリアの井戸(地下水ドレン)で地下水をくみ上げることで、放射性物質を含む地下水が海洋へ流出するリスクを低減しています。これらの対策によって、港湾内の水質は改善傾向にあることが確認されています。
3 汚染源を「取り除く」
多核種除去設備「ALPS(アルプス)」など、複数の設備を使って汚染水の浄化を行っています。浄化した水は構内のタンクで安全に管理していますが、この処理水の取扱いについては、技術的観点のみならず、風評被害などの社会的観点も含めた総合的な検討を丁寧に進めているところです。
作業員の労働環境は大幅に改善
事故直後は、発電所の全エリアで全面マスクや防護服の着用が必要でしたが、発電所内の除染や地面の舗装(フェーシング)などにより放射線量が低減しています。その結果、現在は約95%のエリアで、一般作業服での作業が可能となっています。
また2015年5月には、大型休憩所がオープンしました。ここでは、2016年3月から、食堂やシャワー室に加え、コンビニの利用が可能となりました。
このように、現在では、一般的な作業現場と同じような環境での作業が可能となっています
2.福島の暮らしの「今」
福島の放射線量
空間線量率については、モニタリングポストを各地域に設置するなどして常時監視しています。また、携帯できる個人線量計を利用して、実際の被ばく線量にもっとも近い値を測定する取組も行われています。南相馬市においては、子どもたちに個人線量計を配布して、日常の暮らしによる測定を行ったところ、空間線量率から推測した値と比べて、平均して3分の1程度の値に留まっていたことが報告されています。
さらに、県立福島高校の学生を中心に、国内外の高校生を対象に行った個人線量の調査の結果からは、福島県内の居住者の被ばく線量率は、日本国内の他県やヨーロッパ(フランスやポーランドなど)の居住者とほとんど差がないということが分かっています。
避難指示の状況について(2017年8月現在)
この春までに、大熊町・双葉町を除き、全ての避難指示解除準備区域・居住制限区域が解除されました。
故郷での暮らしを再開するには、買物する場所や働く場所などの生活環境が整っていることが重要です。しかし、事業者の方々は、顧客や取引先の減少といった課題に直面しています。そうした課題を解決すべく、2015年8月に、国・福島県・民間からなる福島相双復興官民合同チームが創設されました。官民合同チームは、これまで4700を超える事業者を個別に訪問し、個々のニーズを踏まえた事業再開や経営改善に向けた事業計画の策定及び補助金の活用など、きめ細かく支援に取り組んでいます。
また、医療機関や商業施設、特別養護老人ホームなど生活に必要なインフラが順次整備されています。JR常磐線は、2017年4月1日に浪江~小高駅間で運転を再開しました。その結果、不通区間は竜田~浪江駅間(27.7km)を残すのみとなっており、このうち竜田~富岡駅間は2017年10月21日、富岡~浪江駅間は2019年度末までの開通を目指しています。
福島県産の食品は厳しい検査を実施
日本では、食品については科学的根拠により設定された世界で最も厳しいレベルの放射性物質の濃度の基準値が採用されており、福島県の農畜水産物については、この基準値を下回るもののみが流通しています。
食品群 | 日本 | 国際食品規格 |
---|---|---|
一般食品 | 100 | 1000 |
乳児用食品 | 50 | 1000 |
牛乳 | 50 | - |
飲料水 | 10 | - |
また、福島県産の米については、2012年から福島県内で生産された全ての米について検査を実施しています。これまで約5200万袋の検査を行い、2015年以降、基準値を超えるものは出ていません。
さらに、漁獲された水産物についても検査を行っており、国の厳しい基準値(国際規格の1/10)を超えるものは2015年4月以降一件も出ていません。
3.福島の「今」をもっと知るには
福島の復興は、まだまだ取り組む必要のあることは多く残っていますが、福島は未来に向かって、着実にその歩みを進めています。
福島の「今」がもっと知りたい方は、以下のリンクもご覧ください。
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