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将来をになう子どもたちが、エネルギーについて学び、考えていけるようになることは、とても大切です。このため、資源エネルギー庁では、エネルギー教育の充実に向けた環境づくりに取り組んでいます。今回は、その一環として、数あるエネルギーのテーマの中から、「電力需給バランス」について楽しく学べるデジタルコンテンツ「電力バランスゲーム~町に電気をとどけよう~」を、おもに小中学生を対象に制作し、2019年8月6日に公開しました。今回は、このゲームを紹介しながら、電力需給バランスの重要性について見ていきましょう。
私たちの暮らしに欠かせない電気。この電気を安定して供給するには、どんなことが必要なのでしょうか。まず、継続的に電気をつくること、次に電気が必要なところに供給することです。ここで重要なのが、電力の需給バランスは「同時同量」でなければならないという点です。「同時同量」とはつまり、電気をつくる量(供給)と電気の消費量(需要)が、同じ時に同じ量になっているということ。これらの量が常に一致していないと、電気の品質(周波数)が乱れてしまい、電気の供給を正常におこなうことができなくなってしまいます。その結果、安全装置の発動によって発電所が停止してしまい、場合によっては予測不能な大規模停電をまねく可能性があります。2018年9月に発生した北海道全域の停電“ブラックアウト”は、この電力需給バランスの崩壊が原因でした。
電力の需要と供給(電力需給バランスが均等な時)
(出典)電力需給緊急対策本部(平成23年3月25日)の参考資料を元に資源エネルギー庁が作成
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電力の需要と供給(需要>供給となった時)
では、電力会社はどのようにして電力の需給バランスを一定に調整しているのでしょうか。電力会社は、予測される需要(電力消費)に応じて発電計画を決めます。電力需要は、季節や気象状況、時間帯によって大きな差があります。たとえば、1年の中でもっとも電力需要が高い時間帯は、街のあちらこちらで冷房が使われる夏、それも工場なども稼働している昼間です。さらに、晴れ・曇り・雨など天候の違いによっても、電力需要は変動します。電力会社はあらかじめ作成した発電計画をベースにしつつ、刻々と変動する電力需給に合わせて発電量を変え、供給する電力量を需要と常に一致させ続ける必要があるのです。しかし、電気は貯めることができないという性質を持っています。そのため、急な需要の増加にそなえて電気をあらかじめ蓄えて用意しておくことはできません。その日その時に使う電気は毎日生産し、必要になった都度供給しなければならないのです(開発が進んでいる蓄電池でも、大量に蓄えられるほどの容量はまだ実現できていません)。一方、供給側にも、電力需給バランスに急な変動をもたらしてしまうリスク要因が存在しています。たとえば、太陽光や風力など再生可能エネルギーの供給量は、天候などさまざまな条件によって変動するため、それによって需要に対して供給が少なくなったり多くなったりしないようにする必要もあります。あるいは、どこかの発電所や送配電線が急なトラブルで電気を送れなくなり、電力需給バランスを狂わせてしまう場合もあります。そこで、電力会社はさまざまな発電所のさまざまな発電方法を組み合わせて、需要と供給をすみやかに合わせる努力をしているのです。電気が安定供給されるためには、変動する電力需給バランスを正確に調整することが必要不可欠なのです。
このように、電力需給バランスの調整は、私たちの日々の生活に直接影響する重要な仕事ですが、多くの人にとってなじみのあるしくみとは言いがたいでしょう。そこで、資源エネルギー庁は、電力需給バランスのしくみと重要性について、小中学生をはじめとした多くの人に理解してもらうために、パソコンやスマートフォンで遊べる「電力バランスゲーム~町に電気をとどけよう~」を作成しました。このゲームは、街に安定した電力を供給するため、それぞれの発電方法の特徴をふまえて発電量を調整するものです。まず、「太陽光パネルの多い地域」または「太陽光パネルの少ない地域」を選んで設定し、「春」「夏」「秋」「冬」のどの季節にするか選択して、ゲームをスタートします。前日の天気予報を参考にしながら、翌日の電力需要の予想ラインに合わせて、必要な量を発電できるよう、発電方法とその組み合わせを選びます。発電方法は「太陽光」「風力(※)」「水力」「原子力」「火力」の5種類があり、それぞれの特徴を理解した上で発電量を調節することがポイントです。電力は少なすぎても多すぎても停電が起きてしまう可能性があるため、電力需給バランスを考えて「同時同量」を徹底しなければなりません。※風力発電は「むずかしい」モードのみ
ゲームの各発電方法の特徴
ゲームの発電量を調整する画面
《 前日の天気予報を元に各電力の発電量を設定 》
設定が終わったら、画面は「当日」に切り替わります。しかし、前日にしっかりと調整しても、当日になると急な大雨や設備トラブルなど、さまざまな不測の事態が発生する設定になっています。そのたびに発電量や必要な電気の量が変化しますので、常に電力需給バランスがとれるよう、調整を続けなければなりません。
ゲームのニュース速報画面
《 さまざまな要因で電力需給は突然変化する 》
調整がうまくいって各ステージをクリアすると、あなたの需給調整力などを評価する「スコア」が表示されます。電力を調整するには、火力発電が変化に対応しやすく使い勝手も良いのですが、「電力の需給に合わせて供給できたか」ということだけではなく「CO2排出量をなるべく抑えることができたか」もゲームのスコアを決める大きなポイントとなるため、火力発電によって大量のCO2が出てしまうとスコアが下がってしまいます。実際の電力需給バランス調整と同じように、ひとつの発電方法に頼りきらず、さまざまな電力方法をバランスよく組み合わせることが重要です。また、当日の電力調整は、スピーディーな判断が求められるため、ゲームでも不測の事態が発生してからの需給調整には制限時間が設定されています。実際の運用でも、電力会社はすみやかに電力需給バランス調整を実施しています。このゲームは、わかりやすさを重視する観点から、一部の設定を単純化または簡略化していますが、実際の電力事情や運用方法を参考に制作されており、楽しみながら、電力需給バランスのしくみや重要性について理解を深めることができるようになっています。ぜひ、みなさんもゲームを通じて電力の安定供給にチャレンジしてみてください。
長官官房 総務課 調査広報室電力・ガス事業部 電力基盤整備課
長官官房 総務課 調査広報室
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