アジアの脱炭素化と経済成長をめざす「AZEC」(後編)日本企業が参加する先進的プロジェクト

AZECの写真です

2025年10月、「アジア・ゼロエミッション共同体(AZEC)」の第3回首脳・閣僚会合がそれぞれマレーシアで開催されました。前編では、本格的な実行へと踏み出した2025年のAZEC会合の成果についてご紹介しました。後編では、AZECの下で、民間企業などが取り組んでいるさまざまな分野のプロジェクトを紹介します。

電力・運輸・産業分野におけるAZECの実績

第3回AZEC閣僚会合では、脱炭素に向けた新たな成果・取り組みが報告されました(「アジアの脱炭素化と経済成長をめざす『AZEC』(前編)2025年の成果は?」参照)。AZECでは、日本とAZECパートナー国の政府、企業、金融機関の間で協力するプロジェクトを積極的に推進しています。今回の閣僚会合でも、新たに約50件のMOU(覚書)が発表され、これまでに閣僚会合、首脳会合の場で発表されたプロジェクトは、延べ約540件にのぼっています。

これまでも、AZECでは個別プロジェクトの推進と政策協調を通じて、電力・運輸・産業の3つの分野における脱炭素化を推進していました。現在も引き続き、それぞれの分野において、日本企業が参画し、プロジェクトに取り組んでいます。

電力分野:アンモニア専焼ガスタービンの商用利用

化石燃料への依存度が高い東南アジアでは、火力発電の脱炭素化を現実的な形で進めることが重要です。その方法のひとつが、燃焼してもCO2を排出しないアンモニアの活用です。マレーシアでは、IHIとペトロナスグループの協業のもと、商用化に向けて、燃料のすべてをアンモニアとするアンモニア専焼ガスタービンを用いた発電事業の実現に取り組んでいます。

アンモニア専焼ガスタービン(IM270) 
燃料のすべてをアンモニアとするアンモニア専焼ガスタービンの写真です。

運輸分野:持続可能な航空燃料のサプライチェーン構築に関する共同検討

今後、道路交通分野を含めたさまざまな分野で、持続可能燃料の世界的需要拡大が見込まれており、アジアでもその需要が増していくと考えられます。たとえば航空分野については、出光興産がマレーシアの石油大手国営石油会社ペトロナスと共同で、持続可能な航空燃料のサプライチェーン構築・強化に向けた共同検討を実施しています。今回の連携を通して、非食用油原料を含むバイオ原料の大規模な確保、安全・安定性といった実現可能性調査などを実施し、持続可能な航空燃料の流通・販売網の確立を目指しています。

産業分野:工業団地とスマートシティにおける再エネ導入・エネルギーマネジメント実証

アジア地域では、産業構造のなかで製造業が高い割合を占めています。そのため、製造業のサプライチェーンの脱炭素化の構築に向けて、工業団地の脱炭素化を進めています。

住友商事は、ベトナムのタンロン工業団地内で再生可能エネルギー(再エネ〔太陽光〕)発電を設置・運営し、近隣で開発を進めるスマートシティでは太陽光発電や省エネ機器等の導入を計画しています。今後、蓄電池を活用した再エネ比率の向上・エネルギーマネジメントの実証にも取り組む予定です。

タンロン工業団地に設置されている太陽光パネル
ベトナムのタンロン工業団地に設置されている太陽光パネルの写真です。

2025年は協力分野がバイオ燃料や生産プロセスに拡大

これまで発表されたMOUでは再エネ、水素、アンモニアなどの電力分野が中心となっていましたが、第3回AZEC閣僚会合で発表されたMOUでは、バイオ燃料や生産プロセスの低炭素化など、新たな協力分野が際立ったことが大きな特徴です。代表的な2つの事例をご紹介します。

事例①バイオ燃料

バイオテクノロジー企業ユーグレナは、マレーシアの石油大手ペトロナスやイタリアのエネルギー大手エニと共同で、マレーシアで商業規模のバイオ燃料製造プラントの建設・運営事業に出資しました。2028年後半にはプラントの運転開始をめざしており、稼働すればアジア最大級のバイオ燃料プラントになります。

このプラントではSAF(持続可能な航空燃料)やHVO(次世代バイオディーゼル燃料)などの製造を予定しており、15%を出資しているユーグレナは年間約10万KLのバイオ燃料の取り扱いを見込んでいます。将来の持続可能燃料への需要に対応するとともに、アジア市場の航空・輸送分野の脱炭素化に貢献する事業としても期待を集めています。

バイオ燃料分野でMOUを締結
マレーシアで、バイオ燃料分野におけるMOUを締結したときの写真です。

事例②産業の燃料転換

ラオスでは、エネルギー企業TSBグリーンネックスが、グリーン水素バーナーによる燃料転換事業についてMOUを締結しました。ボーキサイトからアルミナを精製する焼成工程の熱源を、これまで使われていた化石燃料からグリーン水素に転換し、脱炭素型アルミナ精製(グリーンアルミニウム)の実現をめざすものです。グリーンアルミニウムの需要は今後世界で拡大する見込みで、日本の水素関連技術を活用できる機会となっています。

TSBグリーンネックスは、これまでもラオスでの太陽光発電による電力供給事業や、ラオス国内で生産されたグリーン水素によるコーヒー焙煎事業などを手がけており、ラオスの脱炭素化の一助となっています。

産業の燃料分野でMOUを締結
ラオスで、グリーン水素バーナーによる燃料転換事業についてMOUを締結したときの写真 です。

このほかにも多様なMOUが締結されています。マレーシアでは、三井物産がマレー半島沖南部でCCS(「日本でも事業化へ動き出した『CCS』技術(前編)〜世界中で加速するCCS事業への取り組み」参照)の取り組みをおこなう計画です。シンガポールでは、三菱UFJ銀行とNEXI(日本貿易保険)が、アジアにおける脱炭素化投資の拡大に向けた協力をおこなう予定です。また、タイではミネベアミツミが蓄電池を活用した太陽光発電事業の協働を推進していきます。

ほかにも、先進技術からファイナンスまで、さまざまな形で日本の協力プロジェクトがアジア各国で進められています。

二国間対話の枠組みにおける課題について議論

AZECでは、このような民間企業の取り組みを支援するものとして、多国間の枠組みとしてだけでなく、それぞれのAZECパートナー国との間の対話も通じて、プロジェクトの進展を後押ししています。

インドネシアでは、「AZEC Japan-Indonesia Joint Task Force」において、ベトナムでは「AZEC/GX推進ワーキングチーム」において、個別のプロジェクトが直面する課題や解決策について検討が進められています。これらの国以外にも、AZECパートナー国との間での対話の枠組みや、二国間対話の場での個別プロジェクトの進展に向けた議論を実施しています。これらの二国間の枠組みなどにおける相手国政府との継続的な議論によって、商用化に向けて進展した事例もあります。

インドネシアでの二国間対話
インドネシアでの二国間対話をおこなっているときの写真です。

AZEC全体では引き続き、トランジション・ファイナンスなどのルール形成を目指しつつ、AZECパートナー国と協力し、二国間対話などの機会を通じて、プロジェクトの進展を後押ししていきます。

お問合せ先

記事内容について

長官官房 国際課
GXグループ 地球環境対策室

スペシャルコンテンツについて

長官官房 総務課 調査広報室

※掲載内容は公開日時点のものであり、時間経過などにともなって状況が異なっている場合もございます。あらかじめご了承ください。