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アジアの脱炭素化をさらに促進!「AZEC首脳会合」で今後10年のためのアクションプランが採択
2024年のG7は、脱炭素政策のさらなる加速と拡大で合意
第2回AZEC首脳会合での集合写真(出典)経済産業省
アジアの著しい経済成長を支えながら脱炭素化を目指す枠組みとして、2022年に日本が提唱した「アジア・ゼロエミッション共同体(AZEC)」。これまで日本とAZECパートナー国との間でさまざまな取り組みがおこなわれてきました。2024年10月には「第2回AZEC首脳会合」が開催され、「今後10年のためのアクションプラン」を含むAZEC首脳共同声明が採択されました。アジアの脱炭素化をさらに促進していく今回の共同声明の内容をご紹介します。
AZECは、アジア各国が脱炭素化を進める理念を共有し、エネルギートランジション(移行)を進めるために協力することを目的として、2022年に日本が提唱しました。ASEANの多くの国は、石炭・天然ガスを中心とした火力発電に依存し、製造業が産業構造の中で高い割合を占めるなど、脱炭素化に向けて日本と同じ課題を抱えています。そのため、日本の技術やファイナンスの活用などを通じて、アジアと手をたずさえて脱炭素化を実現することを目指しています。
日本に加え、インドネシア、タイ、ベトナム、フィリピンなどの東南アジア諸国とオーストラリアの計11カ国がパートナー国として参加し、2023年12月に首脳会合が、2023年3月と2024年8月には閣僚会合が開催されてきました。今回、2024年10月には、2回目となる首脳会合がラオス人民民主共和国のビエンチャンでおこなわれ、日本からは石破内閣総理大臣、武藤経済産業大臣が出席しました。今回の首脳会合でAZECパートナー国の首脳からは、AZECを主導してきた日本の取り組みや、「AZEC原則」への強い支持が示されました。地域の脱炭素化、経済成長、エネルギー安全保障を同時に達成しつつ、各国の事情に応じた多様な道筋の下でネットゼロを目指すべく、再生可能エネルギー推進、火力発電ゼロエミッション化、CCS技術(「知っておきたいエネルギーの基礎用語 ~CO2を集めて埋めて役立てる『CCUS』」参照)などの排出削減対策や、技術革新、エネルギー移行に向けたファイナンス促進により、地域として温室効果ガス排出削減を進めていくことへの重要性が表明されています。さらに、成果として、「今後10年のためのアクションプラン」を含むAZEC首脳共同声明が採択されました。現在AZECパートナー国で進行中の350件以上のエネルギー分野を中心とした協力プロジェクトのさらなる推進に加えて、各国とのルール形成をはじめとした「政策協調」という新たな協力フェーズに進展しました。
(出典)内閣広報室
今回の首脳共同声明では、まず、AZECパートナー国が今後も足並みをそろえて取り組みを推進していくために、これまでに合意された内容の再確認がおこなわれました。まず、世界の脱炭素化に貢献するため、2023年の「COP28」で採択された決定文書に記載のある「2030年までに世界全体で再生可能エネルギー(再エネ)の発電容量を3倍にする」などの目標について、AZECでも取り組みを加速することを確認しました。またAZEC構想の具体化とAZECパートナー国の地域戦略の実施を加速し、各国の戦略や取り組みを反映した形で進めていくことも、合意しました。さらに、8月におこなわれたAZEC閣僚会合の成果である、電力・運輸・産業のセクター別イニシアティブやアジア・ゼロエミッションセンターの立ち上げについても、首脳声明で歓迎されました。そして、今回の最大の成果といえるのが、「今後10年のためのアクションプラン」の採択です。これまでの議論をふまえた上で、より具体的なアクションプランが策定されました。その内容を次の項目で詳しく見ていきましょう。
(出典)経済産業省
アクションプランには、大きく3つの柱があります。
脱炭素化に役立つ活動を促進するためのルール形成などが「AZECソリューション」として盛り込まれました。たとえば、脱炭素化の取り組みを実施していくには、温室効果ガス(GHG)がどこで、どれだけ排出されているかを把握することが重要です。そのため、GHGの算定や報告の促進、サプライチェーン全体の排出量の可視化を進めていくことが合意されました。これにより、脱炭素の取り組みや技術が経済的にも評価される「脱炭素市場」の拡大も期待されています。また、この可視化は、サプライチェーンがアジア全体に広がっている日本企業にとっても、自社のサプライチェーン全体の排出量を可視化することにつながるため、メリットがあると考えられます。さらに今回、脱炭素化への着実な取り組みに多額の資金供給(ファイナンス)で支援するという金融手法「トランジション・ファイナンス」を推進していくことについても合意されました。エネルギーの移行に必要な技術・製品・サービスなどへの資金供給を加速させ、今後も高い経済成長が続くとされるアジアの国々の現実的な脱炭素移行を支援していきます。
また、農林・運輸・港湾や道路インフラといったエネルギー分野以外でも脱炭素化に向けた取り組みを推進することも盛り込まれています。
現在AZECパートナー国で350以上の協力プロジェクトが進行中ですが、個別プロジェクトをさらに積み上げ、脱炭素化の取り組みを加速していくことも盛り込まれました。そのため、ODAや各機関(日本貿易振興機構/JETRO、エネルギー・金属鉱物資源機構/JOGMECなど)の政策ツールを活用し、再エネおよび省エネルギー対策推進などのエネルギー開発において、プロジェクトを進展させていく方針です。
8月の閣僚会合で合意されたセクター別の取り組みなどをさらに促進するため、イニシアティブを始動・推進します。具体的には、GHG排出量の多い電力・運輸・産業分野の脱炭素に向け、再エネの最大限の導入、火力発電のゼロエミッション化の促進に向けた水素・アンモニア・CCUS技術などの利活用、持続可能燃料に関する実施可能性調査、工業団地の脱炭素化の促進に必要な政策策定支援などを実施する予定です。また、8月のAZEC閣僚会合で合意しインドネシア・ジャカルタに設置された機関「アジア・ゼロエミッションセンター」が、知的エンジンとして取り組み全体を牽引していきます。各国の現実に沿った脱炭素化ロードマップの策定などもサポートしていく予定です。上記3つの取り組みを相互に推進していくことで、全体の好循環を生み出すこともアクションプランの目的のひとつです。GHG排出量の多い分野のロードマップやルール形成を先行し、成功モデルを示すことで、取り組み全体を活性化していくことが期待できます。
今後も今回のアクションプランにもとづいて、今後は具体的なロードマップづくりやルール形成を進め、アジアの脱炭素化に貢献していきます。
GXグループ 地球環境対策室長官官房 国際課
資源エネルギー庁 長官官房 総務課 調査広報室
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