自動車の“脱炭素化”のいま(後編)~購入補助も増額!サポート拡充で電動車普及へ

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「CASE(※)」と呼ばれる100年に一度の大変革が起こっている自動車産業。「電動化」、「デジタル化(自動運転)」が自動車を選ぶ場合の新しいポイントとなるなど、その価値の構造も大きく変化しています。特に電動化は、「カーボンニュートラル」の実現のカギを握る重要な動きです。日本における、自動車電動化に関する考え方と目標をあらためて振り返るとともに、電動車の普及状況をご紹介している前後編シリーズ。後編では、環境にやさしい自動車の普及に向けておこなわれている、さまざまな支援策をご紹介しましょう。

電動車それぞれの強みを活かした利用法

動力源の100%が電気である「電気自動車(EV)」のほかにも、ガソリンと電気の両方を使う「ハイブリッド自動車(HV・HEV)」や「プラグイン・ハイブリッド自動車(PHV・PHEV)」、水素を使って電気をつくる「燃料電池自動車(FCV・FCEV)」があり、それぞれに強みと課題があります。

2050年カーボンニュートラルの実現という目標(「『カーボンニュートラル』って何ですか?(前編)~いつ、誰が実現するの?」参照)に向け、日本としては、特定の技術に限定することなく、多様な技術の選択肢を追求することとしています。それによって、日本の強みや産業基盤を活かすこと、また技術間のイノベーション競争を促進することを狙っているのです。

それぞれの電動車の強みと課題を考えると、以下のようなマッピングが考えられます。たとえば、航続距離(積んだ燃料や電池で一度に走行できる距離の長さ)が短い小型EVは、近距離の移動や、“ラストワンマイル”と呼ばれるような物流の最終区間の配送に利用することが考えられます。一方、EVにくらべれば航続距離の長いFCVは、充てんインフラの整備が課題ですが、移動ルートがある程度固定されている商用車用途であれば、そのルート上に充てんステーションを適宜配置することで、水素を充てんしながら長距離を移動することが可能になると考えられます。

このような、電動車それぞれの強みを活かした利用方法が検討されているのです。

日本の自動車メーカーも電動車戦略を表明

みなさんもご存じのとおり、日本の自動車メーカー各社も、カーボンニュートラルに向けて、EVやFCV、HV・PHVなどの電動車比率を今後高めていくことを表明しています。

カーボンニュートラルに向けた各社の目標(2022年6月時点)
トヨタ、ホンダ、日産、マツダ、三菱各社の2030年目標や2050年目標を示した表です。

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このように日本でも供給側の動きは活発になっていますが、需要側はというと、「自動車の“脱炭素化”のいま(前編)~日本の戦略は?電動車はどのくらい売れている?」でもご紹介したとおり、たとえば、電気自動車の場合、新車販売台数自体は伸びているものの、販売台数に占める割合はまだまだ小さいというのが現状です。

電動車の購入を検討する際に、みなさんが気になるポイントはどこでしょう?それは大きく分けて、①価格と②航続距離ではないでしょうか。これは、どちらも技術開発によるところが大きい課題です。PHVなどは、以前に比べれば価格は低下しているものの、とはいえ、電動車は今も高価格帯となっています。また、EVなどの航続距離は伸び続けてはいるものの、従来のガソリン車にくらべればまだまだ十分とはいえません。

さらに、③充電ステーションなどインフラが整備されているかどうかも気になる要素でしょう。そこで、国は、電動車普及の目標実現に向けて、主に以下の4つの施策をパッケージとして、包括的な支援策を講じています。

リストアイコン 電動車の購入補助
リストアイコン 充電・充てんインフラの整備
リストアイコン 蓄電池(バッテリー)産業の確立
リストアイコン 自動車産業のサプライチェーン・バリューチェーンが電動化対応するための業態転換

それぞれの支援内容を簡単にみていきましょう。

購入補助、インフラ整備、開発支援…電動車の普及をうながすさまざまなサポート

電動車の普及促進

「2035年までに、乗用車の新車販売で電動車100%」という目標の実現を目指し、EV・PHV・FCVを対象に、購入補助事業をおこなっています。2022年度は予算額を拡充し、補助上限額を大幅に引き上げました。たとえば、EVの場合、これまで補助上限額は40万円でしたが、85万円に増額しています。

詳しく知りたい
CEV補助金

充電・充てんインフラの整備

充電・充てんインフラの整備は電動車の普及と表裏一体であり、電動車の導入支援と両輪として進める必要があります。そこで、2030年までに急速充電3万基、普通充電12万基および水素ステーション1000基の整備を目指し、設備費や工事費を補助する事業をおこなっています。

EVやPHV用の充電設備については、特に、集合住宅、高速道路のサービスエリア、山間部などの空白地域などで重点的に整備をおこなっていきます。

急速充電器、普通充電器の設置数の推移を示した棒グラフです。

(出典)ゼンリン

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FCV用の水素ステーションについては、民間企業の取り組みとも連携しながら、四大都市圏と、それを結ぶ幹線沿いを中心として整備していきます。

水素ステーションの写真と、整備状況を示した表です。令和3年12月時点で全国で約169か所となっています。

(出典)(C)岩谷産業株式会社

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蓄電池産業の確立

蓄電池については、先端的な蓄電池・材料の生産技術や、リサイクル技術を使った大規模製造拠点を国内に設置する事業者に対する補助をおこなっています。

補助の条件は、先端的なリチウムイオン電池といった技術的先進性があること、大規模投資であること、車載用電池の場合は置き型(定置用)電池の生産に転用できる設備であること、国内サプライチェーンの強靱化に役立つものであることとなっています。

自動車産業のサプライチェーン・バリューチェーンが電動化対応するための業態転換

電動化が進むと、自動車産業に関わる方々に、影響をおよぼす可能性があります。たとえば、エンジン部品などのサプライヤーは、電動車部品の製造にトライすることも考えられます。

そうした「攻めの業態転換・事業再構築」を、専門家派遣による技術・経営課題の解決や、設備投資・研究開発・人材育成費用の補助などを通じてサポートする「自動車産業『ミカタ』プロジェクト」を立ち上げました。自動車産業に関わる方々に、電動化対応などに向けた“見方”を示し、企業の“味方”としてサポートしようという取り組みです。

これらのさまざまな支援策で、電動車の普及と電動化への動きを促進していきます。一方で、「多様な選択を追求する」ためには、さらなる次世代のイノベーションも並行して育てていかなければなりません。

そこで、「グリーンイノベーション基金」を通じ、次世代電池・モーターの研究開発や、FCVに必要な水素のサプライチェーン構築をサポート。さらに、ガソリン車の「内燃機関」のような従来の技術やインフラを活用できる、「合成燃料」(CO2を資源として活用し水素と組み合わせて製造した燃料)の研究開発も進めていきます。

また、自動運転をおこなう車載コンピューティングの省エネルギー化、効率的な運行とエネルギーマネジメントをおこなうシステムなども、開発を進めます。

自動車のカーボンニュートラルは大きなチャレンジであり、さまざまなイノベーションが必要です。選択肢をせばめることなく、さまざまな可能性を模索していきます。

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