自動車の“脱炭素化”のいま(前編)~日本の戦略は?電動車はどのくらい売れている?

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「CASE(※)」と呼ばれる100年に一度の大変革が起こっている自動車産業。「電動化」、「デジタル化(自動運転)」が自動車を選ぶ場合の新しいポイントとなるなど、その価値の構造も大きく変化しています。特に電動化は、「カーボンニュートラル」の実現のカギを握る重要な動きです。今回は、日本における、自動車電動化に関する考え方と目標をあらためて振り返るとともに、現在の電動車の普及状況をご紹介。さらに後編では、電動車の普及促進に向けたさまざまな支援策を見てみましょう。環境にやさしい車に乗り換えようか…と迷っているみなさんのお役に立つ情報もあるかもしれません。

※Connected(つながる)、Autonomous(自動化)、Shared & Service(利活用)、Electrified(電動化)の略

自動車に起こっているさまざまな変化

近年、自動車産業に起こっている変化は、自動車がネットワークを通してあらゆるものにつながる、「コネクテッド(Connected)」、自動運転技術の進化による「自動化(Autonomous)」、シェアリングなど車の使い方が変わる「シェアリング・サービス化(Shared&Service)」、動力源を電化する「電動化(Electronic)」の4つに大別され、これらの頭文字を取って「CASE」と呼ばれています。こうした自動車産業を取り巻く変化は、高齢化や人口減が進む中での移動手段の確保、交通事故や渋滞の大幅な減少といったさまざまな社会課題の解決に資するとともに、新たな社会価値の提供をもたらすことが期待されています。

もうひとつ、自動車に大きな変化をもたらしている潮流として、世界共通の課題となっている「カーボンニュートラル」を目指す動きが挙げられます。気候変動の問題を解決するため、CO2などの温室効果ガスの排出を全体としてゼロにしようというもので、日本も2050年までに達成するという目標を表明しています(「『カーボンニュートラル』って何ですか?(前編)~いつ、誰が実現するの?」参照)。

カーボンニュートラルを表明した国・地域
カーボンニュートラルを表明した国・地域を、達成目標が2050年/2060年/2070年のどれかを色分けした上で示した世界地図です。

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カーボンニュートラルの実現のためには、さまざまな領域での取り組みが必要です。中でも、日本におけるCO2排出量のうち、自動車を含む運輸部門からの排出が17.7%を占めていることを考えると(2020年度)、運輸部門での脱炭素化に向けた取り組みは、非常に重要なものと言えます。

運輸部門における二酸化炭素排出量
日本のCO2排出量とその割合を、産業・家庭・運輸など部門別に示した円グラフと、そのうちの運輸部門における自家用乗用車・営業用貨物車・自家用貨物車などの割合を示した棒グラフです。

(出典)国土交通省「運輸部門における二酸化炭素排出量」

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このように、車の使い方や作り方が大きく変化する中で、CASE技術の開発と社会実装を加速化させ、新たなモビリティ社会を実現していくことが、官民の共通した課題となっています。

電気、ハイブリッド、燃料電池…多様な「電動車」と長所・短所

では、自動車の脱炭素化はどのような方法で実現できるのでしょうか?ひとつには、CASEのうちの「E」にあたる、「電動化」を推進することです。また、燃料をガソリンからバイオ燃料や「合成燃料」(CO2を資源として活用し、水素と組み合わせて製造した燃料。「エンジン車でも脱炭素?グリーンな液体燃料『合成燃料』とは」参照)などに置き換える方法も考えられています。

「電動化」といってもさまざまな手法が存在します。電気を動力源として使う自動車を「電動車」と呼びますが、動力源の100%が電気である「電気自動車(EV)」のほかにも、ガソリンと電気の両方を使う「ハイブリッド自動車(HV・HEV)」や「プラグイン・ハイブリッド自動車(PHV・PHEV)」、水素を使って電気をつくる「燃料電池自動車(FCV・FCEV)」があります。

これらの電動車には、それぞれに長所と短所があります。たとえば、EVは走行時のCO2排出はゼロですが、コストの高さ、航続距離(積んだ燃料で走行できる距離の長さ)が短いなどの短所があります。また、搭載する電池の製造過程ではCO2が排出されます。

これらの電動車について、各国の普及目標は以下のとおりとなっています。日本としては、上記のような各電動車の長所・短所も踏まえ、特定の技術に限定することなく、あらゆる技術の選択肢を追求することが必要であると考えており、「2035年までに、乗用車新車販売で電動車100%」という目標を掲げています。

各国の電動化目標
各国の電動化目標について、EV・FCV・PHV・HV・ICEそれぞれについてどのような目標となっているか整理した表です。

(出典)公表情報を基に経済産業省が作成 ※ICEとはガソリン車のような内燃機関を持つ自動車のこと

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日本がかかげる「経済と環境の好循環」を実現するための産業政策である、「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略(グリーン成長戦略)」では、注力すべき14の重要分野のひとつとして、自動車・蓄電池産業が位置づけられています。

自動産業の成長戦略の概要は、大きくまとめると、以下のとおりです。

リストアイコン 電動化の推進:2035年までに、乗用車新車販売で電動車100%を実現するために、包括的な措置を講じる。(商用車については8トン以下の小型車/8トン以上の大型車で別途目標値を設定)
リストアイコン 水素社会の実現:クリーンで安価な水素の確保と商用車における水素の活用を推進する。
リストアイコン 燃料のカーボンニュートラル化: 2040年までの自立商用化を目指し、合成燃料の導入拡大・コスト低減を図る。

各国の電気自動車の新車販売比率

では、現在の世界各国における電動車の普及状況は、今どうなっているのでしょうか?

電気自動車(EV)に限ってみると、グローバル、特に欧州と中国では、販売台数が着々と伸びています。新型コロナウィルスの影響を受けた優遇策の強化も、急速な販売台数増加の一因となっています。一方で日本をみると、EVの販売比率は伸び悩んでいる状況です。こうした現状も踏まえ、あらゆる支援策が総動員されて、電動車の普及が推し進められています。

主要国・地域における電気自動車の販売比率の推移
主要国・地域における電気自動車の販売比率の推移を示したグラフです。2022年で中国は21.7%、欧州は14%、北米は5.9%、日本は2.5%となっています。

(出典) マークラインズ、自工会データ

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後編では、電動車の普及・拡大に向け、どのような支援がおこなわれているかをご紹介しましょう。

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