日本の新たな国際資源戦略 ①石油の安定供給基盤をさらに強化する

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近年、世界のエネルギー情勢は大きく変わりつつあります。エネルギーに使用される燃料など資源の多くを海外から輸入している日本は、こうしたエネルギーを巡る世界の動きに大きな影響を受けます。そうした状況を踏まえ、日本の新しい「国際資源戦略」が、2020年3月に策定されました。エネルギー政策の原則である、「安全性」をベースとした上で「安定供給」「経済効率性」「環境への適合」のバランスをとる「3E+S」の方針のもと、日本はどのような対策を取ろうとしているのか、4回に分けてお伝えします。

日本のエネルギーの4割を占める「石油」の安定供給を図るために

日本にとって、ひじょうに重要なエネルギー資源と言えるのが、石油です。一次エネルギー供給構成では、およそ4割を占めています。自動車の燃費向上や電動車(xEV)の導入などにより、日本国内の石油需要は年々、減少しているものの、石油が重要なエネルギーであることに変わりはありません。

そんな石油の大部分は、輸入に頼っています。輸入先はサウジアラビアがトップで35.8%、続くUAEが29.7%、このほかカタールやクウェートなどを含め、中東地域が約88%を占めています(「日本のエネルギーと中東諸国~安定供給に向けた国際的な取り組み」参照)。今後しばらく、こうした状況は続く見込みです。

日本の原油の輸入割合
2019年の日本の原油輸入量を円グラフで示しています。輸入量は1日あたり約300万バレルです。

(出典)財務省貿易統計

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しかし近年、中東情勢は緊迫化しています。2019年に、サウジアラビアの石油施設が攻撃されたことなどは、記憶に新しいところです。こうしたなかで、引き続き石油の安定供給を確保するためには、輸入先が特定の国に集中するのを避け、リスクを減らす必要があります。そのためには、サウジアラビアやUAEだけでなく、中東内のほかの産油国とも資源外交を積極的に展開し、密接な協力関係を構築していくことで、供給源の多角化につなげていくことが大切です。

そこで、新戦略では、関係構築の取り組みを強化することが掲げられました。これまで、中東諸国との関係は、独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)をはじめ、エネルギー関連機関などが、それぞれ個別に構築していました。

今後は、これらの諸機関の対応を連携させ、官民一体で中東諸国との関係を築いていくことが重要です。こうした考えから、政府が仲介役となって「中東産油国協力協議会」を開催することになりました。今後は長期的視野に立って、オールジャパンで中東各国との関係強化に取り組んでいきます。

中東以外の新しい資源の調達先も確保する

世界の石油・天然ガス等の需給構造は、大きな変化が生じています。

供給側については、近年では中東以外にも、米国のシェール革命や、ロシアの北極圏での天然ガス開発、中南米・アフリカの油ガス田開発などにより、新たな資源供給源が出現しています。また、需要側については、世界の需要は引き続き拡大傾向にあり、特に中国やインド等のアジア各国が大きな割合を占めていく一方、日本の割合は減少していく見通しとなっています。

こうした変化を踏まえ、新戦略では、以下のような取り組みを進めることが掲げられました。

米国のシェール開発への参画

米国のシェール開発を中心的に担っているのは、主に中小規模の企業で、近年はこれらの企業のM&Aが増加しています。日本の企業も、こうしたM&A案件に積極的に参画することで、操業の主導権を持つことが可能となります。

こうした日本企業の取り組みについては、JOGMECが支援してきましたが、これらのM&A案件は非常にスピーディーにおこなわれているため、参画の機会を逃さないためには、JOGMECの対応をさらに加速させる必要があります。

そこで、支援にあたって個別事業の審査をおこなう際には、厳格性を保つことは当然として、スピード感を持って対応し、ビジネス展開をスムーズにすることを目指していきます。また、日本企業がオペレーターを務める場合には、債務保証料率を引き下げることで、積極的な参画をうながすなどの対応をとっていきます。

中南米やアフリカの油ガス田開発への参画

近年、これらの地域では、新たな油ガス田が発見されていますが、その開発は従来とは違った形で進められるケースが目立ちます。たとえば、これまでは事前に探鉱をおこない、資源がありそうだと見込まれてから企業などが出資を決め、案件を立ち上げる流れが一般的でしたが、近年はまず権益を押さえ、その後で探鉱をおこなう例も増えてきています。

また、地下の資源を探すための探鉱技術もめざましく進んでおり、「地震探査」(人工的に地震を発生させ、その地震波の伝わる状況から地下構造を解明する方法)についても、3Dによる精緻な方法が主流となっています。

しかし、このように状況が変化しているにもかかわらず、日本企業には知見がまだ十分に蓄えられていないため、事業に参画するハードルが高くなっているのが現状です。そこで、JOGMECによる出資などの「リスクマネー機能」(「石油・天然ガス『自主開発比率40%以上』をめざす上流事業の取り組み」参照)をさらに強化し、従来は対応していなかった探鉱出資の対象をさらに広げるなど、柔軟に取り組んでいきます。また、JOGMECが企業に先行して調査をし、事業の有望性を事前に評価する取り組みをおこないます。

海外メジャーのフロンティア案件例
南大西洋を中心とした地図です。ガイアナ、エジプト、南アフリカの案件例を紹介しています。

(出典)JOGMECホームページなどをもとに資源エネルギー庁作成

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石油メジャーとの開発協力

中東などの産油国では、これまではその国の国営企業が油田の開発を担っていましたが、近年では「石油メジャー」と呼ばれる巨大なグローバル企業が探鉱をおこなうケースも増えています。そこで、こうした石油メジャーをパートナーにした共同探査や、3D地震探査など多様な調査にも対応できるよう、JOGMECが柔軟に支援していきます。

石油備蓄を効果的に活用する

エネルギーセキュリティを強化するためには、資源の「備蓄」をおこなっておくこともとても重要です。石油に関する日本の備蓄は、以下の3種類で構成されています。

①国が保有する「国家備蓄」
②石油精製事業者などが保有する「民間備蓄」
③日本国内のタンクに、産油国の国営石油会社が保有する「産油国共同備蓄」

我が国の国家備蓄石油の蔵置場所(原油)
国家備蓄石油の蔵置場所を日本地図上で示しています。

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現在は、これらを合わせて国内消費量の200日分あまりを確保しています。

主要国の石油備蓄日数(2019年5月時点)
主要国の石油備蓄日数を棒グラフであらわしています。純輸入国の平均値は215日となっており、日本は187日です。

(出典)IEAホームページなどをもとに資源エネルギー庁作成

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しかし、すでに述べたように、近年は中東情勢が緊迫化しており、石油の供給が長期にわたって制約される懸念も高まっています。そこで、いざというときに備蓄が有効かつスムーズに活用できるよう、平時から訓練やシミュレーションなどの活用体制を整備していくことが必要です。新戦略では、そのために、官民が連携して新しい組織を立ち上げ、非常時にもしっかりと対応できるようにしていくことが掲げられました。

また、日本の石油備蓄を活用して、アジアのエネルギーセキュリティ向上につなげることも重要です。もし、アジアの石油事情が危機におちいった場合には、日本にも多大な影響が及ぶと考えられるためです。

経済成長がいちじるしいアジア各国では、石油消費量が急増しています。しかし、多くの国では原油の輸入を中東に依存しているうえに、じゅうぶんな備蓄を保有しておらず、セキュリティ対策が万全とは言えません。

アジア各国の原油輸入元(2019年)
中国、インド、日本、その他アジアの原油輸入元をそれぞれ積み上げグラフであらわしています。いずれも中東の割合が最も高くなっています。

(出典)BP統計

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そこで、日本がこれまで蓄積してきた経験や知識、備蓄資産を生かして、アジア地域全体のセキュリティ向上のハブとして貢献することを目指します。緊急時に原油・石油製品を融通させることなどもふくめて、備蓄協力を積極的に進め、ウィン・ウィンの形でセキュリティ強化を図っていきます。

石油を安定的に供給できる基盤を強化する

石油はまだまだ重要なエネルギーのひとつであり、今後も、引き続き安定供給できる基盤を維持することが必要です。

そのためには、石油精製・元売会社が競争力をつけるとともに、今後拡大が見込まれるアジア市場へもビジネスを展開し、ネットワークを構築していくことが重要です。政府も資源外交を積極的におこない、海外の情報収集や提供をおこなうなど、支援を続けていきます(「国際市場の競争に勝ち残るために~石油精製・元売企業の競争力強化」参照)。

また、万が一のことが起こった場合にも安定的に供給できるよう努めていくことも課題です。近年、地震や台風など自然災害によって引き起こされた大規模な停電や、中東情勢の緊迫化による燃料価格の急騰など、突発的に燃料調達が困難になる事態が増えつつあります。こうした事態が起きたときにも、電力供給への影響を最小限におさえなければなりません。そのため、緊急的な支援をおこなう機能を強化するべく、いざというときには国が前面に出て燃料調達に取り組むための手段を整備します。

次回は、存在感の高まる「液化天然ガス(LNG)」についての新戦略をご紹介します。

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