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災害から得た教訓を活かして、資源エネルギー庁は各関係機関と“強い石油供給網”をつくるためのさまざまな対策を進めています。「災害から学び、強い『石油供給網』をつくる②~災害時にもスムーズに供給するために」では、これまでおこなわれてきた取り組みについてご紹介しましたが、石油供給網のさらなる強靭化を推し進めるため、2018年10月と11月に、資源エネルギー庁において有識者による会議が開かれました。そこでの議論と、今後の対策をご紹介します。
2018年は、西日本を襲った豪雨、近畿地方に被害をもたらした台風、北海道で起こった地震など、さまざまな自然災害が相次いで起こった年でした。「平成30年北海道胆振東部地震」では、日本で初めてとなるエリア全域におよぶ大規模停電(ブラックアウト)が発生し(「日本初の“ブラックアウト”、その時一体何が起きたのか」参照)、石油供給網にもさまざまな影響が生じました。これらの自然災害を受けて、政府は、重要なインフラの安全性や強靭性をあらためて確認する緊急点検をおこない、11月末をメドに対策を取りまとめることとしました。緊急点検の対象となったのは、以下の3つです。
これを受けて、11の府省庁において130にもおよぶ項目の点検が実施され、「防災・減災、国土強靱化のための3か年緊急対策」(PDF形式:413KB/首相官邸)が打ち出されました。製油所・油槽所・サービスステーション(SS)といった燃料供給インフラについては、2011年3月の東日本大震災や2016年4月の熊本地震において生じた課題を解決すべく、これまでにもさまざまな対策が進められてきましたが、今回の緊急点検では、「電力喪失等を原因とする致命的な機能障害を回避する必要がある重要インフラ」として、さらなる対策の必要について検討をおこないました。
具体的には、2018年10月19日と11月15日に開催された「災害時の燃料供給の強靭化に向けた有識者会議」で、これまでの取り組みの進捗状況を確認したことに加え、重要インフラの緊急点検や、さらなる課題への対応策に関する議論をおこないました。
ガソリンなどの石油製品は、中東などから輸入した原油を製油所で精製、あるいは海外から石油製品を直接輸入し、そこから油槽所と呼ばれる貯蔵施設などに運ばれ、タンクローリーで各地のSSまで届けられています。
日本における石油産業のサプライチェーン
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災害時にもこの供給網が停止しないようにするため、それぞれのポイントで強靭化が進められてきました。有識者会議では、それらの対策について進捗などを点検し、今後、主に以下の4つのポイントについて注力していくことが示されました。
北海道胆振東部地震では、停電により、地域の石油製品の供給拠点である製油所・油槽所の出荷能力が減少しました。また、出荷設備の被害はなかったものの、一部の精製設備で被害が発生しました。そこで、全国の製油所・油槽所について、停電時に出荷を継続するために必要な非常用発電機の整備状況や、強靭化対策の実施状況を点検しました。
製油所・油槽所の点検結果
これを踏まえ、資源エネルギー庁では、各地域で災害時にも平時と同程度の出荷能力を維持するため、製油所・油槽所の非常用発電設備を整備・増強する取り組みを支援するとともに、油槽所などにおける大規模災害を想定した耐震化などの強靱性評価や、それをふまえた強靭化対策を推進していく予定です。
「住民拠点SS」の整備は、2016年4月の熊本地震において、一般の避難者や被災者の方々が給油できる拠点を整備する必要性が認識されたことを踏まえ、進めている取り組みです。今回の緊急点検の結果、「住民拠点SS」は2018年10月時点で全国に計1,948カ所が整備されており、2018年度末までには全国に計3,553カ所が整備される見込みであることが確認されました。
住民拠点SSの都道府県別の整備状況
大規模な停電が長期化した場合などにもSSの供給力を十分に確保するためには、この「住民拠点SS」の整備をさらに図っていくことが重要です。そこで、今回の緊急点検の結果を踏まえ、2019年度頃までに全国に計8,000カ所を整備するという目標を可能な限り早期に達成できるよう、今後、「住民拠点SS」の整備を加速化していきます。供給サイドについては、ほかにも、「タンクローリーの緊急通行車両の事前届出の促進」や、「燃料輸送路を災害時に優先的に啓開する(障害物などを取り除いて通行できるようにする)道路にするための働きかけ」などの対策をさらに進めていくこととなりました。
病院や避難所など、災害時にもその機能を維持することが求められる重要な施設については、石油供給網の回復にかかる一定の時間のあいだも、事業を継続することが必要となります。そこで、こうした重要施設が災害時にもその機能を維持できるよう、平時からの備えとして、自家発電設備の設置やその稼働を確保するための燃料を「自衛的備蓄」として確保することが呼びかけられています。資源エネルギー庁では、東日本大震災における教訓を踏まえ、こうした病院や避難所などの重要施設における石油やLPガスの燃料タンク、自家発電設備の設置を支援しており、2017年度末までに全国で計555カ所の施設に燃料を備蓄するためのタンクなどが導入されました。今回の緊急点検では、病院を管轄する厚生労働省、国立大学付属病院を管轄する文部科学省、下水道を管轄する国土交通省、通信施設を管轄する総務省などと連携し、重要施設の燃料備蓄の状況や、非常用電源の整備状況などを確認しました。今後は、各重要施設の所管省庁を通じて、資源エネルギー庁が重要施設における災害時の燃料供給に関する理解の促進や燃料備蓄などの状況の把握をおこなうとともに、関係省庁に働きかけ、毎年度、燃料備蓄などの状況の確認をおこないます。また、重要施設などの自衛的備蓄のための支援の拡充や、災害時の燃料調達方法のさらなる理解促進を進め、備蓄の強化を図っていきます。
近年の災害では、石油製品は今どういう状況か、どこで手に入れることができたかといった情報がTwitterで拡散されるなど、SNSがとても重要な情報源になっています。そこで、有識者会議では、こうした情報収集・発信を積極的におこなうよう提言がなされました。まずは、2018年度内に、石油連盟などによるSNSを開設し、災害時の石油製品の供給状況などについて積極的に情報を発信していく予定です。また、災害発生時に被災地域の住民の方々が必要とする情報を効率的に発信できるよう、全国のSSやLPガス中核充填所の営業情報・在庫情報などの情報をタイムリーに収集・発信できるシステムの整備も検討していきます。石油供給網全体の強靭化を実現するためには、石油供給網にかかわる各プレーヤーが、各所で、このようなさまざまな取り組みをおこなうことが重要です。資源エネルギー庁では、今回ご紹介した対策を含め、有識者会議で取りまとめた対策を早期に実現し、今後いつどこで起こるか分からない自然災害に備え、石油供給網のさらなる強靱化を進めていきます。
資源・燃料部 政策課資源・燃料部 石油精製備蓄課資源・燃料部 石油流通課
長官官房 総務課 調査広報室
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