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JXTG堺製油所(提供:JXTGエネルギー株式会社)
「石油がとまると何が起こるのか? ~歴史から学ぶ、日本のエネルギー供給のリスク?」でもご紹介したように、石油は今も、私たちの使うエネルギーの多くを占めるもっとも重要なエネルギーの1つであり、これからも戦略的に確保していくことが重要です。今回は、石油の安定供給をはかるため、日本の石油精製・元売企業が取り組む国際競争力強化の動きをご紹介します。
日本国内の石油需要は、1999年のピークから2016年までに約3割減少しており、2030年にはさらに約2割減少すると見られています。それにともなって、2000年以降、国内の石油精製能力は約2割減少し、石油製品を取り扱う全国のサービスステーションの数も、約4割減少しています。
日本の石油精製能力と石油製品需要量の推移と見通し
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こうした中で、石油供給を担っている日本の石油精製・元売企業は、経営統合を進め、供給過剰な構造を抜け出し、安定的な経営基盤の強化をはかっています。しかし、需要の減少にあわせて供給力も下げていくと、新規設備の導入やメンテナンスなど、供給インフラを維持していくために必要な投資も抑えられていくこととなり、競争力が低下してしまう恐れがあります。
一方、世界に目を転じると、石油製品の需要は、今後も増加していく見通しです。その中でも、経済が成長しているアジア地域での需要は、ひときわ増加することが見込まれています。
世界の地域別石油需要見通し(百万BD)
(出典)IEA『World Energy Outlook 2017』
こうした国内外の状況を考え合わせると、今後、日本企業も、石油製品をアジア各国へと輸出することが考えられます。しかし、輸出業での競合は増加しています。世界的な需要の増加にともなって、製油所の建設は世界各地で急速に進展しており、特にアジアでは、大規模・最新鋭の製油所があいついで誕生しています。これらの製油所は高い競争力をもっており、輸出業の競合がさらに増えていくことが予想されます。また、中国沿岸部など新興国にも製油所が新しく増設されており、品質の差がだんだんと縮小していることも、国際競争の激化につながっています。一方で、日本国内の製油所では、製油所の生産性の指標である「稼動信頼性」「操業コスト」「精製能力規模」において、韓国などの輸出型製油所よりも低い数値となっています。国際競争環境の激化が予想される中、日本の製油所は国際競争力を向上するための取り組みが求められます。
そこで、製油所における国際競争力の強化や石油産業の中流・下流分野の積極的な海外展開をうながし、石油産業のあたらしい収益源を確保できるようにしていく必要があります。たとえば、原油を精製する際に、付加価値の高いガソリンなどの製品をできるだけ多く生産するなどして、原油の有効利用をうながす取組をおこなっています。原油を精製してガソリンなどを取り出すと、付加価値の低い「重質油(残渣油)」が残ります。そこで、「エネルギー供給構造高度化法」という法制度に基づいて、重質油の分解を促進し、原油の有効利用を進めるよう働きかけています。これまでの取り組みの結果、日本の製油所では、重質油を分解する装置の装備率は、世界的に高い水準を実現することができています。しかし、国際競争力の高い他国の製油所にくらべて、この重質油分解能力の活用は、まだ十分になされていません。そこで、こうした分解装置のさらなる有効活用についてもうながしています。ほかにも、石油コンビナートでは、複数の事業者間での連携をはかるようにうながす取り組みも進めています。既存設備の有効活用、世界最先端の精製プロセスの導入や、輸出能力の強化などを進め、製油所の競争力強化を目指しています。
石油精製・元売企業のグローバル展開は、海外需要のとりこみによる強い経営基盤の確保や、石油製品のサプライチェーンを多様化することによるリスクの低減など、さまざまなメリットが得られます。一方、今後、アジア地域では、需要の増加に合わせて供給能力も増加するだろうと見込まれており、アジア地域の市場を獲得するためには、海外企業との競争に勝ち残っていくことが必要です。日本企業にとっての市場機会を見極めながら、さまざまな支援策を通じて、石油企業の国際競争力の強化や、海外市場への挑戦などを支えていきます。
資源・燃料部 石油精製備蓄課
長官官房 総務課 調査広報室
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