成長志向の資源循環経済システム「サーキュラーエコノミー」(後編)動きだす産官学パートナーシップ
SAFの導入拡大をめざして、官民で取り組む開発と制度づくり
なぜ、日本は石炭火力発電の活用をつづけているのか?~2030年度のエネルギーミックスとCO2削減を達成するための取り組み
成長志向の資源循環経済システム「サーキュラーエコノミー」(前編)どんな課題を解決するの?
未来の電力をあらかじめ約束した値段で売買する契約を結ぶ、「電力先物取引」。電気事業者の中には、この先物取引をうまく活用することで、大きく変動しがちな電力の価格リスクを抑え、安定的な価格で電力を調達している企業があります。「電力も『先物取引』?!(前編)~未来の電力を買って価格リスクを抑える」では、電力先物取引に関する基礎知識を、「電力も『先物取引』?!(中編)~電力先物を活用した電力事業のリスクヘッジとは」では電気事業者のヘッジ手法をご紹介しました。後編では、電力先物取引の活性化に向けて動き出した取り組みを見つつ、電力先物取引のこれからを考えていきましょう。
電力先物取引の活性化を図るべく開催された「電力先物の活性化に向けた検討会」では、「電力も『先物取引』?!(中編)~電力先物を活用した電力事業のリスクヘッジとは」でもご紹介したような、電気事業者のリスクヘッジ方法と電力先物取引の意義に関する整理がおこなわれました。また、電力先物市場が抱える課題や今後の方向性などが議論され、その活性化に向けた3つの課題と、解決のための取り組みが示されました。
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電力先物取引の導入企業を増やすには、電力先物そのものに関する認知や、電力先物のメリットや役割に関する理解を広める必要があります。また、近年では、電気を実際に使う企業などの需要家などの間でも、電力調達に関わるリスクを管理するニーズは高まっており、特に大量の電気を使用するメーカーなどの業界においては、電力先物が活用される余地があります。そこで、「電力先物の活性化に向けた検討会」は、取引所などの市場運営者に、普及のための啓発活動を求めています。
2023年10月にTOCOMと欧州エネルギー取引所(EEX)が開催した、電力先物取引の普及啓発を図るためのイベント「Japan Power Summit」
先物取引を開始するには、機動的なヘッジの運用を可能にする社内体制の構築や、会計処理などに関する専門知識が必要となります。これは、電力先物取引に新規参入しようとする企業にとってハードルとなり得ます。そこで、取引所などの市場運営者が、電力先物を導入する際のベストプラクティスや、業界の標準的な運用を共有することなどが求められています。
前述したように、電力先物取引をリスクヘッジの有効なツールとするには、取引市場に流動性があることが重要です。市場取引が増えれば増えるほど、市場で取引がマッチングしやすくなり、取引参加者の利便性が向上する、といった好循環が生まれるからです。流動性を拡大するための方法として、「電力先物の活性化に向けた検討会」は、(1)電気事業者が「先物」と組み合わせて利用している「現物」の制度や商流をふまえた上で先物市場を設計すること、(2)財務上信頼できる金融機関が取引に参入しやすい環境を整備するとともに、金融機関などにも清算機関の清算参加者として参加してもらうこと、それにより清算機関の財務の健全性を高めることが必要であると提言しています。
電力先物はリスクヘッジの一つの手法でしかなく、事業者が現物と先物を組み合わせてリスクヘッジしている以上、電力先物の市場設計や商品設計をおこなうには電力の現物の制度・商流への目配せは欠かせません。
発電事業者である検討会の委員からは、「電力はボラティリティが大きい商品のため(取引相手が市場のボラティリティに耐えられなくなるおそれがあり)、取引相手の信用リスクの管理が非常に重要。市場参加や大口取引のためには、財務的に信頼できる金融機関などが清算(「電力も『先物取引』?!(前編)~未来の電力を買って価格リスクを抑える」参照)に参加することが必要ではないか」といった発言もありました。さらなる大口の取引がおこなわれるためには、清算機関の財務の健全性を高めることが重要です。財務上信頼できる金融機関が取引に参入しやすい環境を整備することが求められています。
電力先物取引の活性化に向けては、透明・公正な取引環境の確保が不可欠です。検討会では、政府当局のみならず、市場運営者、取引参加者が相互に協力して市場監督をおこなう重要性について議論されました。政府当局としては、引き続き、法令や国際的な市場監視枠組みに基づいて市場監督をおこなうとともに、市場参加者や取引参加者のコンプライアンス意識についても注視していきます。こうした議論を受け、今後、政府やTOCOMなどの市場運営者を中心に、電力先物取引活性化に向けた取り組みが進められる予定です。電気事業者、電力を大量に利用している企業、金融機関の方々は、この機会にぜひ取引所のセミナーなどに参加して、「電力先物取引」への理解を深めてはいかがでしょうか。
商務・サービスグループ 商品市場整備室
長官官房 総務課 調査広報室
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