成長志向の資源循環経済システム「サーキュラーエコノミー」(後編)動きだす産官学パートナーシップ
SAFの導入拡大をめざして、官民で取り組む開発と制度づくり
なぜ、日本は石炭火力発電の活用をつづけているのか?~2030年度のエネルギーミックスとCO2削減を達成するための取り組み
成長志向の資源循環経済システム「サーキュラーエコノミー」(前編)どんな課題を解決するの?
北海道や東北などの寒冷地では、冬の電気代がひと月10万円を超えるケースもあり、特にオール電化の家庭で、電気代がかさむという声をニュースなどで耳にします。電気代が10万円を超える家庭の月間の消費電力量は3000~5000kWh程度であり、平均的な家庭の消費電力量である約400kWhと比べてもかなり大きくなっています。ただし、一口にオール電化といっても、使用する機器によって消費電力量には大きな差があります。はたしてどのような機器の利用が消費電力量を押し上げているのでしょうか。今回は、特に高額な電気料金の請求の背景にあるオール電化の電力消費の実態と、消費量をできるだけ抑えるためにできることは何か、お伝えしていきます。
水温や気温の影響で、冬場はどの家庭でも電気代やガス代が高くなりがちです。夏場に20℃を超える水道水を40℃にするのに比べ、冬場に10℃未満の水道水を40℃にするためは、より多くの熱エネルギーを必要とするからです。これに加えて、現在は世界的なエネルギー高騰の影響で、家庭の光熱費も例年に比べて上がっています。特に、オール電化住宅においては、ひと月10万円超の高額になったケースも報道されています。電気代が月10万円を超える家庭の消費電力量は3000~5000kWh程度であり、平均的な家庭の消費電力量である約400kWhと比べてもかなり大きくなっています。なぜ今、オール電化住宅において、このようなことが起きているのでしょうか。そのもっとも大きな理由は、使用している機器にあります。電気代が月10万円を超えるオール電化世帯の消費電力量の内訳を見てみると、あるケースでは、約7割が『蓄熱暖房機』による暖房、約2割が『電気温水器』による給湯となっています。これらの機器は、オール電化住宅が普及し始めたころに使用されていたもので、こうした旧式の機器が電気代を押し上げる大きな要因となっています。
そもそも、オール電化住宅は、火を使わないので火災のリスクが低く、夜間の電気代が昼間の電気代よりも割安に設定されたプランなどもあって、平成2年(1990年)頃からだんだんと普及し始めました。非電化住宅よりは使用電力量が多くなるため、昨今の状況では、電気代が高くなる傾向にあるのは事実です。しかし、電力量1kWhあたりの料金で見ると、オール電化住宅は非電化住宅よりも割安となっています。また、一口に「オール電化住宅」といっても、使用している機器によって、消費する電力量は大きく異なります。たとえば、平成2年(1990年)頃から平成10年(1998年)頃にかけて普及した、初期のオール電化住宅では、給湯にヒーター式の『電気温水器』、個別の暖房に『蓄熱暖房機』、『パネルヒーター』、セントラル方式の暖房に『電気ボイラー』などを使用するのが一般的でした(初期型の機器の中には現在でも販売されているものがあります)。しかし、平成15年(2003年)頃からは、省エネ性能のさらに高い電化製品が普及し始めています。『ヒートポンプ給湯器(エコキュート)』などの給湯器具や、寒冷地向け『暖房用エアコン』、『ヒートポンプ暖房システム』などです。これらの給湯器や暖房機器は、ヒートポンプを使って取り込んだ空気の熱を使ってお湯を沸かすシステムで、省エネ性能にすぐれており、電気の使用量を大幅に削減できるメリットがあります。
『電気温水器』や『蓄熱暖房機』などを使用した、初期のオール電化住宅では、冬季の月間使用量が3,000~5,000kWh程度である一方、『ヒートポンプ機器』を使用するオール電化住宅では1,000Wh程度であり、使用電力量に2倍以上の差があるのです。
では、新しいオール電化住宅では、電気代がどの程度節約できるのでしょうか。たとえば、給湯機器の場合、従来の『電気温水器』に比べて、『ヒートポンプ給湯器(エコキュート)』は約75%の電気料金削減になると試算されるほか、『蓄熱式床暖房』に比べて、ヒートポンプを用いる『エアコン』は約72%の電気料金削減になると試算されています(それぞれ東京電力エナジーパートナーの試算による)。実際に、月10万円超え電気料金の要因のほとんどが、『蓄熱暖房機』による暖房、『電気温水器』による給湯であったことを踏まえると、『ヒートポンプ給湯器(エコキュート)』や『エアコン』の利用で、大幅に電気料金が削減されることが期待できます。
電気料金の比較イメージー給湯の場合(東京電力エナジーパートナー試算)
東京電力エナジーパートナーのHPより作成
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電気料金の比較イメージー暖房機器の場合(東京電力エナジーパートナー試算)
省エネ性の高い機器を使用すれば、電気の使用量を大幅に減らし、電気代も抑えることができます。とはいえ、機器を入れ替えるためには初期費用がかかり、これが導入のネックとなることも考えられます。そこで、家庭のエネルギー消費で大きな割合を占める給湯分野について、政府は、省エネ性能の高い高効率給湯機、具体的には、ヒートポンプ給湯機(エコキュート)やハイブリッド給湯機、家庭用燃料電池(エネファーム)の導入に一定額の補助金を交付する支援策を新たに創設しました。
給湯省エネ事業(高効率給湯機導入促進による家庭部門の省エネルギー推進事業費補助金)(令和4年度第2次補正予算額:300億円)
電力会社でも、初期費用ゼロで導入できるよう、機器のリースサービスや、買い替えのサポートをおこなっています。例えば、北海道電力では、「スマート電化リース」として、ヒートホンプ給湯機(エコキュート)、寒冷地向け暖冷房エアコン、IHクッキングヒーターなどのリースをおこなっているほか、東北電力では、「エコ替えキャンペーン」として、ヒートホンプ給湯機(エコキュート)や指定の暖房エアコンを購入・設置すると、サポート金を進呈するキャンペーンをおこなっています(2023年3月時点)。こうした省エネ効果の高い機器は、電力の消費量を大幅に削減できるため、電気代を抑えられることに加えて、現在、暖房などに多く使われている石油系エネルギー消費も減らすことにつながります。寒冷地である北海道や東北では、暖房や給湯に灯油が使われる割合が高く、これを減らしていくことは、日本だけでなく、世界中が取り組んでいる地球温暖化対策にも役立つ取り組みです。
2020年 家庭用用途別エネルギー消費原単位(ウエイト)について
(出典)住環境計画研究所2020エネルギー統計年報(東北電⼒資料より)
このほか、日常生活のなかでも、冬場の使用割合の高い暖房や給湯を上手に使い、機器の特性に応じた省エネ手法をとることも電気料金の抑制につながります。たとえば、電気温水器を使用している場合、タンクの沸き上げ量や沸き上げ温度を抑える設定にする、蓄熱暖房機であればエアコンと併用し蓄熱量を減らす、などです。昨今の厳しいエネルギー事情のもとで、安定的にエネルギーを供給するとともに、できるだけ電気を効率的に使用できる取り組みや、脱炭素にも貢献できる方策を、政府としても推進していきます。
電力・ガス事業部 電力産業・市場室省エネルギー・新エネルギー部 省エネルギー課
長官官房 総務課 調査広報室
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