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「2018年、電力分野のデジタル化はどこまで進んでいる?」でその様子をお伝えした電力分野におけるデジタル化の動きは、IoT(モノのインターネット)やAI(人工知能)、ビッグデータといった先端技術の進化とともに、さまざまな領域で広がっています。電力分野におけるデジタル化の最新動向を追うシリーズ第1回「2019年、実績が見えてきた電力分野のデジタル化①~火力発電編」では、デジタル化が電力分野の「3E(安定供給・環境適合・経済効率)」にもたらすと期待されている効果として、火力発電におけるデジタル技術活用の取り組みについてご紹介しました。今回は、バーチャルパワープラントにおけるデジタル技術の活用例をご紹介しましょう。
いまや、再生可能エネルギー(再エネ)は欠かすことのできない電源(電気をつくる方法)です。太陽光発電コストが急激に低減したことや、パリ協定をきっかけに低炭素・脱炭素化をはかる事業者の再エネに対する関心の高まりが、再エネの拡大を後押ししています(「今さら聞けない『パリ協定』~何が決まったのか?私たちは何をすべきか?~」参照)。太陽光発電などの再エネ発電の普及により、これまでの大規模発電所のような一極集中型ではない小規模な発電所が増加し、“エネルギーの分散化”が進みました。2019年以降は、固定価格買取制度(FIT)の対象期間を終えた“卒FIT”太陽光発電が大量にあらわれ(「住宅用太陽光発電にせまるFIT買取期間の満了、その後どうする?」参照)、投資回収が済んだ安価な電源として活用できるようになるなど、分散化の動きは今後もいっそう進展することが予想されます。これまで、日本では、一極集中型の発電所など発電設備が、さまざまな需要家(電力の消費者)に電力を届けるというかたちの電力ネットワークでした。しかし、これからは、小規模な発電所が増えることで、発電する側も分散していくことが予想され、よりいっそう高度な電力システムが求められます。このため、電力需給の予測をAIやIoTなどを使うことでより高度化するためのデジタル技術や、分散化した電源を集約(アグリゲート)したり最適に制御したりするためのデジタル技術が注目されています。
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このうち、分散化した電源を効率的に使う方法としては、「ディマンドリスポンス(DR)」や、「バーチャルパワープラント(VPP)」という方法があります。DRとは、需要側(ディマンド)の機器を遠隔でコントロールして電力の消費パターンを変化させる方法で、2017年度より、大口の需要家を対象とするものが実際に活用されています。またVPPは、電力系統上に散らばる再エネ発電機器や蓄電池などのエネルギーリソースを、IoT技術を使って遠隔で制御することで、エネルギーリソース側から電力系統に電力を流したり(逆潮流)、需要を削減するなどのDRをおこなったりすることで、大きなひとつの発電所のように利用するしくみです(「これからは発電所もバーチャルになる!?」参照)。天候によって再エネの出力(発電量)が変動した場合のバックアップとなる、需給バランスの新たな“調整力”としての活用も期待されています。
VPPを確立し、アグリゲーション・ビジネスを活発化させるためには、制御技術のさらなる改善が必要です。そのために2016年から、VPP構築のための実証事業がスタートしています。2019年度は72社が参画し、7つのグループが実証事業を実施しています。2019年度のVPP実証事業では、DRの制御の指令が入ってから15分以内にリソースを操作して、指令された削減量まで需要量を変化させることができるか、さらに随時変わる指令に3時間ついていくことができるかといったことを検証しています。
VPPでは、電力の供給者と需要家の間に立って全体のバランスをコントロールする「アグリゲーター(リソースアグリゲーター、アグリゲーションコーディネーター)」と呼ばれる事業者がキープレイヤーとなります。2019年度の実証事業事例を見るだけでも、従来の電気事業者だけでなく、コンビニエンスストアやビルオートメーション事業などのさまざまな産業の事業者がこの分野に参入しています。
大手電力会社がアグリゲーションコーディネーター兼リソースアグリゲーターとなり、さまざまなリソースを制御する実証事業です。家庭用および産業用蓄電池、エコキュート、電気自動車(EV)充放電器などを制御することを目指しています。ほかの電力会社やメーカーなど24社が参加しています。
コンビニエンスストアの需要を制御する実証事業で、東京・関西電力エリアの約1000店舗が参加しています。店舗に設置されているショーケースや空調、照明などを遠隔管理して、需要を抑制するシステムを構築します。
制御・計測機器を手がけるアズビルが、大規模な業務用ビルに導入された蓄熱設備や自家発電設備を遠隔制御してリソースを管理します。1棟だけの取り組みではなく、複数の建物のエネルギーマネジメントをおこないます。
東京電力ホールディングスを中心に、複数のアグリゲーションコーディネーターが共通基盤を使って連携する取り組みです。自家発電や大規模蓄電池を中心に、設備をリレー制御するシステムを構築します。事業グループとしては最大の30社が参加しています。
太陽光発電の事業者がアグリゲーターとなった実証事業です。需要以上の電力供給がおこなわれそうな場合、再エネには、発電量を抑える「出力抑制」がおこなわれます。この出力抑制を回避するためのサービス創出をめざした検討をおこないます。
小売電気事業者がアグリゲーターとなり、さまざまな蓄電池を制御する事業です。主に家庭用蓄電池を活用し、高度なエネルギーマネジメント技術により、太陽光発電で蓄電した電気を電力系統に戻すこと(逆潮流)の検証もおこないます。
複数の建物からなる大学のキャンパスをひとつの大きな需要と見立て、キャンパスの自家発電などを制御します。自動販売機、電気自動車(EV)、植物工場の空調や照明など、さまざまな業態やコミュニティでの需給調整ビジネスの可能性を探ります。
*****こうした最先端のデジタル技術を活用した実証事業を通じて実績を積みあげることで、電力系統が抱えるさまざまな課題を解決し、エネルギーを最適に活用する社会を実現することが期待されています。
電力・ガス事業部 電力産業・市場室省エネルギー・新エネルギー部 新エネルギーシステム課
長官官房 総務課 調査広報室
※掲載内容は公開日時点のものであり、時間経過などにともなって状況が異なっている場合もございます。あらかじめご了承ください。
2024年2月発行の「日本のエネルギー」パンフレットに基づき、2023年日本が抱えているエネルギー問題について3回にわたりご紹介します。