成長志向の資源循環経済システム「サーキュラーエコノミー」(後編)動きだす産官学パートナーシップ
SAFの導入拡大をめざして、官民で取り組む開発と制度づくり
なぜ、日本は石炭火力発電の活用をつづけているのか?~2030年度のエネルギーミックスとCO2削減を達成するための取り組み
成長志向の資源循環経済システム「サーキュラーエコノミー」(前編)どんな課題を解決するの?
最近、「バーチャル(仮想)」という言葉をよく耳にするようになりました。臨場感あふれる仮想空間を体感できる「バーチャルリアリティ(VR)」はおなじみのものになりましたし、ビットコインなどの「仮想通貨」も話題ですね。実はエネルギー分野でも、この「バーチャル」という言葉が使われ始めています。エネルギー分野でバーチャルになるのは、発電所そのものです。
電気はその性質上、生産と消費を同時に行わなければなりません。このため、発電所は、単に電力を生産するだけでなく、必要な量を瞬時瞬時に供給することで、電力システム全体の需給バランスを調整するという働きもしています。ここ数年で、太陽光発電や燃料電池など規模の小さな発電設備が、住宅やオフィスなどに広く散らばって設置されるようになりました(小規模分散型電源)。これはつまり、これまで電力を使うだけだった私たち(需要家)も、電力会社と同じように電力をつくることができるようになっているということです。また、蓄電池や電気自動車、ヒートポンプなども普及したことで、分散してエネルギーを貯めることもできるようになりました。これらにより、発電設備により発電した電気を使ったり、発電した電気が余っているときには蓄電池に貯めておいて、必要なときに使ったりすることができるようになり、それぞれの需要家が節電をおこなうことで電力を生み出す「ネガワット」と呼ばれる取り組みも進んでいます。"バーチャルな発電所"とは、このような、あちこちに散らばっている発電設備などをひとつに束ねて、あたかもひとつの発電所のように利用するしくみのことです。それぞれの設備の発電量や蓄電量が小さくても、まとめて制御することで、大規模な発電所のように、電力の需要バランス調整に役立てることができるようになります。このしくみを、「仮想発電所(バーチャルパワープラント、VPP)」と呼びます。
VPPで細かな需要管理ができるようになれば、天候によって発電量が大きく変わる再生可能エネルギー(再エネ)で発電した電力を、ムダなく使うことができるようになる可能性があります。再エネの導入量をさらに拡大したい日本では、2015年6月に政府が閣議決定した「日本再興戦略」で、VPPを活用していくことが記されました。これを受けて、2016年4月に経済産業省が発表した「エネルギー革新戦略」では、VPP技術の実証実験や事業化を促すことをうたっており、2020年度までの5カ年計画で補助金を設けて、VPPに取り組む企業を支援しています。
実証実験には、電力会社はもちろん、IT、通信、小売、大学、自治体など、さまざまな企業や組織が参加しています。VPPは、多種多様な技術やノウハウを集めることで実現できるしくみだからです。たとえば、VPPでは、あちこちにあるたくさんの発電設備や蓄電設備を、需給の状況に応じて、リアルタイムに細かくコントロールする必要があります。そのためには、より優れたIT技術や通信技術の開発が重要になります。最近話題になっている「IoT(すべての機器がインターネットに接続し通信を利用してサービスを提供する、モノのインターネット)」技術とも関連するといえるでしょう。さらに、VPPで"発電所"の一部となる各家庭や企業の参加をどうすれば増やせるか、最適なビジネスモデルの検討も行われています。補助事業以外にも、たくさんの企業がVPPの実験に乗り出しています。皆さんが"発電所"の一員になる日も、そう遠くないかもしれません。
省エネルギー・新エネルギー部 新エネルギーシステム課
長官官房 総務課 調査広報室
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